戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

63 / 150
六三話

共和国領内に入り、下士官から情報を得た新編第五〇〇降下猟兵大隊の面々。

彼等は警官達と取引をした翌朝。トラック倉庫にて新設された第四中隊と第五中隊はそれぞれ牽引自動車やトレーラーに乗り込んでいた。構成員は共和国で独立魔導砲兵大隊の所属であった転移者達の同級生二九名で構成されている。

帝国軍の重牽引車(SSー100)や接続している幌で囲われたトレーラーに乗り込み、ディルクはトラックの荷台に乗り込む。同車には蓮子が隊長の第四中隊隷下第一小隊と横川率いる第五中隊隷下第一小隊が片手に短機関銃を持っていた。

 

「俺が先導する。お前達はトラックで追いかけて来い。俺が上から弾着観測を行う。五発撃ったら砲兵は撤退だ」

「「「「了解!!」」」」

 

ディルクは目出し帽にゴーグルを被るとそのままフル装備でそのままトラックから牽引車に指示を出す。

幌に覆われたトレーラーの中身は戦車輸送用のトレーラーに搭載されたアハトアハトだ。弾薬込みで搭載されており、重牽引車に乗れない砲手担当の同級生が既に乗り込んでいた。元は彼等は砲兵隊出身、砲の使い方は慣れたものであった。

 

「移動する。検問には気をつけろ」

 

そう言い、間借りしていたトラック倉庫から移動を始める。幹線道路をトラックを先頭に四台の車列が走って行く。

後方にアハトアハトを引く重牽引車はそのまま幹線道路を走って行く。そんな中、先頭のトラックの中で茂達は広げた地図を見ていた。

 

「攻略目標は東西戦争時代の旧トーチカだ。まずは砲撃で揺動を行い。その後、正面から突入する」

「それで大丈夫なの?」

「障壁魔法を展開すれば大丈夫だろう。それに、砲撃で一部通路は崩れると予測している」

 

そう言うと、運転をしていた横田が渋滞を見つける。

 

「うわ、渋滞だ……」

「この先で検問をしている証拠だ。迂回するぞ」

「了解」

 

そう言うとトラックを先頭に四台のトレーラーは幹線道路を降りて下道を走り始めた。

 

「この先の森の奥だ。ここはリユン警察の管轄下にある。つまり、派手に撃っても軍の訓練という事になる」

 

そう言い、トラックはやや揺れる砂利道を走っていった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

リユン郊外の森の中。高地の中に佇む放棄されたベトン製のトーチカの中で、抵抗軍兵士がトランプに興じていた。

 

「ここに配属されて二週間か……」

 

ポーカーをしながら一人の抵抗軍兵士が呟くと同じように他の者も呟く。

 

「全く、暇でしかない。敵を撃つのかと思っていたら、こんな場所で荷物番だ」

「いつになったら作戦は始まるのだ……」

 

彼等は戦後の再編で軍をクビになった徴用兵であった。今まで戦場という食い扶持があったが、戦争が終わり一文無しになった彼等の再就職先がこの抵抗軍であった。じゃあ、国内の工場に就職すれば良いじゃないかと思うかもしれないが、彼等は戦場という非日常に取り憑かれた戦争の亡霊である。

人を撃つことに抵抗が無い。武器を持ちたいという欲求が根底にある彼等に、もはや日常生活は飽き飽きしていたのだ。

こう言った兵は戦場では果敢に突撃を敢行する素晴らしい兵士だが、平時ではただの戦闘狂でしか無かった。

 

「ストレート」

「悪いな……フラッシュだ」

「何っ?!」

 

ポーカーをしていた彼等は一向に戦いの起こらない。暗殺と言う微妙な事ばかりしている上に飽き飽きし、そろそろ抵抗軍を抜け出そうとも考えていた。掛けポーカーをして、掛けていたワインを手に取った一人は思い返すように呟く。

 

「しかし、ここに入った時の予防接種は痛かったな」

「あぁ、全くだ。俺、あの接種を受けて二日くらい腕が動かなかったぜ」

「新型のワクチンだったか?」

「あぁ、なんでも戦争中に軍が作った新しい薬らしい。毒ガスに耐えうる体になるそうだ」

「ほぉ、そいつはスゲェや」

 

そんな話に興じていると、ポーカーをしていた三人のうち、一人が不可解な音を聞いた。

 

「?なんか砲声が聞こえなかったか?」

「え?何言ってんだ。今日が軍隊が演習でもしてるわけじゃ無い……」

 

その瞬間。開口部のベトンを砲弾が貫通し、目の前にあった机や武器を纏めて吹き飛ばした。

 

「「「うわぁぁあああ!!」」」

 

貫通したベトンの残骸が彼等を引き裂き、貫通した砲弾が中で破裂して見張りの彼等を吹き飛ばした。

その瞬間、抵抗軍の拠点である廃トーチカに警報が鳴る。

 

「敵襲!」

「総員戦闘配置!」

「野砲を出せ!!」

 

破壊されたトーチカを確認しながら大砲を手押しで運んでいた。

 

「くそっ!大砲を撃ってきやがった!!」

「気を付けろ!」

 

その瞬間、第二射と思わしき砲声が聞こえ、トーチカに着弾する。

 

「この音…… eighty-eightだ!!」

 

独特な発射音を聞き、戦場で聞いたことがある兵士がそう叫んだ。すると、周りにいた人が驚いた声を出した。

 

「何だって?!帝国軍が撃ってきたっていうのか?」

「そんな馬鹿な……!!」

 

その瞬間、第三射、四射が飛んできて周りに榴弾が降り注ぐ。

 

「地下に撤退だ!!急げ!!」

 

周りに死体が転がったのを確認し、このトーチカの指揮官が命令を下すと生き残った面々は怪我人も背負いながら慌ててトーチカの下に篭り始めた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「一番砲、南仰角1.5度下げ。二番、北東に1度上げ。三、四番はそのまま。第五射、撃てっ!」

 

廃トーチカの着弾を上空でディルクは確認する。森の中でトレーラーに乗せられた新型対戦車砲(8.8 cm PaK 43/41)では同級生達が砲弾を装填し終え、最後の砲撃を行った。発射された砲弾はそのままトーチカに着弾し、撤退中の抵抗軍の兵士を飛ばしていた。

衝撃力に若干の不安があるためにアウトリガーを出しながらこの砲撃していた。

 

「抵抗軍は撤退したか……部隊突入。砲兵は移動を開始しろ」

 

無線でそう伝えるとディルクはそのまま地上スレスレを飛ぶと片手にフェドロフを持ってトーチカの残骸に向かう。

 

 

 

先に突入するとそこでディルクは激しい弾幕に襲われ、思わず影に隠れる。

 

「撃て撃て!」

「近寄らせるな!!」

 

共和国製半自動小銃(RSC1917カービン)共和国製軽機関銃(Mle1924/29軽機関銃)を撃って弾幕を張っている彼等。そんな抵抗軍部隊を確認するとディルクは得意の穴あけ障壁魔法を展開して前に飛び出てフェドロフの引き金を引く。

 

「うわっ!」

「がぁっ!!」

 

射手を射抜き、そのまま接近し、銃剣を兵士の胸元に突き刺す。

 

「うわぁぁああ!!」

 

悲鳴をあげて倒れたのを確認すると、少し違う場所から短機関銃の銃声が聞こえ、その方に行くと蓮子達の正体がちょうど一室を制圧していた。

 

「行くぞ」

「了解」

 

片手にノルデンランド製短機関銃(スオミ KP/31)帝国製短機関銃(MP40)を抱えて蓮子達はそのままトーチカを走る。

警報が鳴り、ここには一〇〇名近くの兵士がいると予想していた。

 

ベトン製の薄暗いトーチカを走っていると、ある曲がり角で一旦足を止める。

 

「この先に残りの兵員だな……」

「えぇ……」

 

ミラーで、罠がないかを確認した後、ディルクが先頭で走り出した。

そしてそのまま各部屋の扉を開けて中に手榴弾を放り込む。すると途端に兵士達の慌てた声と爆発音が聞こえ、中で絶命した。

手榴弾を投げた後、トーチカの倉庫に入り、そこで隠れていた兵士はナイフを持った蓮子が接近戦を展開し、立川が小銃を持って影から反対側にいた兵士を狙撃していた。

それを見て思わず『お似合いの二人だ』と感じてしまっていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

砲撃を終え、潜入したディルク達を回収する為に銃声響くトーチカ近くに車を停めた横田。砲撃後の片付けを終え、幌を閉じていた彼等はそこで違和感を感じた。

 

「ん?」

 

視線の先には砲撃で倒れた抵抗軍兵士がおり、死んでいる筈であった。しかし、一瞬だけ動いていたような気がした。

生きていたのかと警戒し、銃を持ってその遺体に近づいた。

 

「……」

 

警戒しながらその遺体を見ていると、突如その抵抗軍は呻き声を出しながら身体を起こした。

 

「っ?!わぁぁあ!!」

 

咄嗟に叫ぶと、声を聞いた残った同級生が何事かと見て、生き残った兵士がいたのかと認識してそのまま銃を手に取って射撃した。

 

「ゔゔゔゔ…ああぁぁあ……」

「撃てっ!」

 

複数の銃撃を喰らい、その抵抗軍はそのまま倒れた。何が起こったのかと思っていると、次々に死んだと思っていた抵抗軍兵士が起き上がっていた。

中には顔が半分吹き飛び、血だらけになりながら起き上がったものもいたので思わず舞鶴が叫んだ。

 

「ゾ、ゾゾゾゾンビだぁぁあ!!」

 

 

 

 

 

内部を制圧したディルク達も突然の異常事態に混乱していた。

 

「何で死んだ奴が生き返ってんだよ!!」

「知るかっ!」

「とにかく全員倒せ!!死ぬまで撃てっ!!」

 

突如絶対倒したと思っていた抵抗軍兵士達は起き上がり、ディルク達に襲いかかって来た。

 

「逃げろ!部屋の中じゃ埒が開かん!」

「ちぃっ!!」

 

咄嗟にトーチカから逃げ出し、外に向かうとそこでも起き上がった死体が徘徊をしていた。

 

「うわぁ、目に前にもいっぱいだぁ!!」

「退けっ!」

 

その時、一緒に突入していた築城がどこから持って来たか分からない火炎放射器を持ってきて前に向けていた。

 

「これでも喰らえぇぇえ!!」

 

その瞬間、火炎放射器から真っ赤な炎が火を噴き、前にいた抵抗軍を火達磨にする。

燃えたゾンビを見ながら築城は言う。

 

「はっはっはっ!ゾンビは火で燃やしちまえば……」

 

火達磨になったゾンビを見ていると、彼等は火に包まれているのに悲鳴すら上げずこちらに近寄って来た。

 

「わぁぁあああ!!生きてるぅぅぅうう!!」

「馬鹿野郎ぉぉぉおおお!!」

「何してくれてんじゃぁぁあ!!」

「死ぬ気で逃げろぉぉぉおお!!」

 

そんなゾンビを見ながら慌てて彼等は逃げ出した。

 

 

 

 

 

「撃て撃て!ゾンビに噛まれたら終わるぞ!!」

 

パニックになりながら機関銃を撃つ横田達砲兵隊。その視線の先にはゾンビと化した抵抗軍兵士がゆっくりと近寄ってきていた。一部は頭が無くなってそのまま地面に倒れ、それを見ていた横田が叫ぶ。

 

「頭だ!頭を撃て!!」

「それマジのゾンビじゃん!!」

「やぁぁあああぁぁぁあ!!」

 

そして機関銃を撃ちまくった彼等はそのまま地上に現れたゾンビの頭を吹き飛ばし、全員を倒していた。

 

「はぁはぁ……終わったか?」

「どうだろう……?」

 

戦闘が終わり、全員が倒れたのを見た彼等は肩から息をしているとトーチカが中から爆発し、ベトンが粉々に砕け散って飛散していた。

 

「おわっ?!」

 

突然の爆発に驚愕していると、トーチカの残骸から内部に侵入したディルク達が出て来た。

埃まみれになりながらディルクは思わず口にする。

 

「はぁ〜、死ぬかと思った……」

「おい築城!ちょっとこっち来い!!」

 

そう言い、立川が築城を呼び出し、正座をさせて説教をし出していた。

そんな彼女らを見ながらも、ディルクは横田達と合流した。

 

「大丈夫だったか?」

「あぁ、ゾンビの追っかけられたがトーチカの弾薬庫に火をつけてこの有様だ」

「本当によくそれで生き残ったな……」

 

つくづく規格外だと思いながらも、ディルクの言葉で一気に現実に引き戻される。

 

「さ、行くぞ。この爆発じゃあすぐに警察が来る」

「ああ、そうだな」

 

そう言い、トラックに乗り込んで行き、すぐさま逃げ出していた。

 

 

 

 

 




お気に入り登録、高評価をよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。