戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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第六章
六八話


正暦一九三九年 一〇月二八日

共和国首都 ルテティア市内

 

季節は冬に入ろうとし、時折雪が降る季節になってきた。

一週間ほど帝国軍が駐留した時があり、『帝国軍のピクニック』と言われた時期もあったこの首都だが、今は別の意味で緊迫していた。

サイレンを鳴らしながら警察の装甲トラックが走り、短機関銃を持った警察の部隊が車に張り付いていた。

 

 

 

 

 

そんな景色を眺めながら市内のカフェで一組の男女が座っていた。二人は店の外の様子を眺めながら話していた。

 

「随分と慌ただしいね。空気がピリついているよ」

「あぁ、軍隊が出ている位だからな。相当警戒しているな」

 

日本語で話しながら蓮子と茂はカフェで前にある施設を眺めていた。

 

「やはり、国の執行機関だけあって警備はかつて無いほど厳重だな」

「ええ、そうね」

 

その視線の先にはある石造りの建物があった。

 

 

 

 

 

現在、茂達が見ているのは国家監視局本部、通称DSN。設立してから間もない国家機関であるが、対テロ対策や防諜を主に行う共和国の公安警察である。

 

国内で立て続けに起こる抵抗軍によるテロ行為に郷を煮やしたフランク警察が先月設立したテロに対処する事に特化した機関であった。軍隊並みの火力を持ち、譲り受けた軍用の装甲車も持ち合わせる中々エグい集団だった。国防大臣を暗殺された軍隊も協力したようで、訓練には軍が協力していると噂されていた。

何せ相手は軍人崩れの集団。戦争に慣れた彼等に対抗するには同じように重火器を持った隊員が必要であった。

 

「すげぇな、軍用の短機関銃を装備しているのか……」

「帝国の短機関銃も持っているよ」

「一々帝国製反対とか行ってられないってわけか」

 

軍用半自動小銃を持っている辺り、本気だと感じていると茂達は席を立つ。

 

「さ、俺達と狙いは同じなんだ。行くぞ」

「了解」

 

そう言うと茂が代金を払って店を後にした。

 

 

 

 

 

共和国はもう転移者などの証拠隠滅を諦め。転移魔法の指揮官であり、抵抗軍の司令官をしているジュール・ファブールを全力で追いかけていた。

国家に無断で禁術を使用した彼は監視局の中で指名手配を受けていた。勿論マスコミも、新たに設置された政府機関で彼が指名手配を受けた事は掴んでいた。だが、公表したらうっかり共和国に侵攻の理由を作ってしまうかもしれない爆弾を発表することは無く、テロ組織だからと言う理由で報道をしていた。実際、国家の要人を暗殺した彼等は市民からも危険な集団として認知されていた。

講和条約を結んだ使節団を中心に暗殺している事から平和を脅かす存在と言う風に誘導されていた。

帝国でも共和国との国境近くの街で爆発があったりと抵抗軍の勢いは前よりも増えていた。

 

戦争はまだ終わっていないと豪語して街をぶっ飛ばす彼等に数ヶ月前まで戦争をしていたとは思えない程共和国と帝国は抵抗軍に頭を抱えていた。

戦後に交わされた貿易協定の締結も相まり、共和国と帝国の関係は非常に落ち着いていた。

まだ戦争の後が残る中、両国は次の戦争に頭を悩ませていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

国家監視局本部の視察を終えた茂達はそのまま市内のとある住居に入る。

現在、第五〇〇部隊は共和国で抵抗軍に関する情報収集と白い悪魔と呼称する転移者ヘイルダム・ルメイの追跡を行っていた。

まぁ、数日前の襲撃で教国がバックについた抵抗軍に困惑しているから、そっちで独自に探してくれと言っているような物なのだが……

あの通信の後リユンから移動し、ほぼ半年ぶりにルテティア戻ってきた訳だが……

 

「何処もかしこも警察だらけで参りそうだ」

 

そう呟き、街角に止まっているパトカーを見ながらゲンナリしていた。現在のルテティアは厳戒態勢が敷かれており、街中を装甲車や小銃を持った警官が所々に立っていた。そりゃそうだろう、短期間で要人を二人も狙撃され、尚且つ犯人は捕まっていない。これに、警備を担当していたルテティア警視庁と共和国親衛隊は面子を潰される形となっていた。それでこの有様だ『絶対テロリスト殺すマン』となっていた。

街にはテロリストの顔に懸賞金が掛けられ、国債購入の張り紙が懸賞金の紙に変わって居た。

街には人が出歩く代わりに装甲車が走り出し、時折検問も設置されて居た。

 

 

 

 

 

市内のアパートに入り、階段を登る。此処は一時的な拠点として借りた場所であった。大家と顔合わせをした時に『大変な時期に越してきたねぇ』と言われてしまった。部屋に入ると、そこには持ってきた武器を隠す大湊を含めた同級生達の姿があった。

昨日引越し作業を始めたばかりだが、かなり片付いて居た。まぁ、元々荷物は極端の少ないし、此処は市内の拠点だしな……

 

「あ、偵察どうだった?」

 

すると部屋に入ってきた二人を見て大湊が聞く。

 

「あぁ、装甲車が走っていて何処も警官だらけだ」

「おぉ、怖っ。俺、久々に来たけどこんなんだったっけ?」

「いやぁ、もっと落ち着いてたよ。こんなピリついてないね」

 

そう言い、蓮子が答えると荷物をしまった彼等は一息吐く。

 

「うし、これで一通り終わったな」

「監視は?」

「今は百里がやっている」

「了解、そろそろ交代だな……」

 

そう呟くと、茂は階段を登って屋根裏部屋に向かった。

 

 

 

 

 

「交代だ」

 

階段を登り、最上階に移動するとそこで小銃片手に外を見ていた百里桃香に声を掛ける。

屋根裏には武器を収めた箱が置かれ、そこには武器弾薬が収められていた。引越し作業時に運送業者に扮して市外で待機している隊員達に運んでもらっていた。

茂が声を掛けると百里は振り向いて時計を見ると茂に小銃を渡した。

 

「ん……」

 

物静かな彼女はそのまま屋根裏を後にすると茂は受け取った小銃を持って双眼鏡を覗き込む。視界の先には空に探照灯を照らす政府庁舎があった。

大陸一高い建造物の鉄塔ロッフェル塔は灯が点灯し、終戦を祝う様にライトアップされていた。

戦争には負けたものの、主権は残った共和国政府は国民を黙らせる事にした。

帝国もルテティアを占領できたが、長期的な占領は出来なかった。と言うか補給が追いついていなかったのだ。全力で後方からトラックが追いかけていたが、恐ろしい速度で進む戦車師団に置いてきぼりにされていたのだ。俺は蓮子達を追いかけて居たから知らなかったが、もし共和国があそこで降伏しなかったら押し返されていた可能性があったとの事。

 

だから首都目前で共和国政府が降伏したのは実に運が良かったそうだ。因みに降伏後、戦闘が収まるまで一週間ほどルテティアに駐留した後にそのまま何もせずに帰って行った事から『帝国軍のピクニック』なんて言われて居た。因みにこのルテティア無血開城を指揮したフェリップ・ベタンは現在、共和国の大統領を務めて居た。

帝国軍は共和国全土の占領は初めから論外と考えており、全土占領をしようと考えて居た帝国の政治家の意向を無視する事を密かに決めて居た。

ルテティア占領で降伏しなかった場合はそのまま俺たちを飛ばして共和国後方に飛ばすつもりだったらしい。あぁ、恐ろしい……

 

そんな事を考えながら部屋に置かれた三七式を確認する。

これを使い出して二年近くなるかと思いながら俺は初期型よりも変わってしまったその機械を触る。三七式魔導演算機第三次改修型と言う長ったらしい名前を持ち、通信設備にガンラック。要である感応石棒装置などを持ち、外付けて印刷機も備えて居た。

もう全部これ一つでいいんじゃない方と思える機械を見ながらふとマジック・ソナーを見る。

定期的にこれを見て小野寺輝の居場所を確認しているのだが、時折マジック・ソナーが切れてしまうのだ。

これはおそらく小野寺輝自身の持つ魔力が圧倒的に少なく。頻繁に魔力切れを起こしているからかも知れないが、あの頭痛に耐えられるのかとも思って居た。マジック・ソナーは本人の持つ魔力に依存しているので、魔力切れになると反応が消えてしまう欠点があった。

 

この前の襲撃時もその魔力切れのせいで居場所が掴めなくて地団駄を踏んでしまった。

 

 

 

 

小銃を持って異変がないかの監視をしている身だが、マジック・ソナーを開くと今日も止まって居た。

 

「あぁ、また魔力切れか……」

 

そう呟くと、屋根裏の扉が開き。蓮子が紅茶を持ってきてくれた。

 

「はい、お疲れ様」

「おぉ、ありがとう」

 

そう言い、紅茶を受け取ろうとした時、茂の手が止まった。

 

「……っ!?」

 

マジック・ソナーを見て固まった茂を見て思わず蓮子が問い掛ける。

 

「どうしたの?」

 

すると茂は恐る恐るマジック・ソナーを見せた。蓮子が中身を見ると、同じように蓮子も固まって居た。

 

「こ、これって……」

 

蓮子が驚愕すると茂はすぐに動いた。

 

「移動するぞ。下の奴らに準備させろ」

「外には?」

「勿論だ。全員で囲い込むぞ」

「了解」

 

そう言い、蓮子は確認を取るとそのまま下に降りて行った。それを確認し、茂は思わず自分の武器であるフェドロフとブローニングオート5を探す。蓮子の話を聞き、慌てて大湊達も階段を登って来る。

そんな中、茂はマジック・ソナーを見て目を細めて警戒するように言う。

 

「奴がこの街にいる……!!」

 

 

 

 

 




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