抜かった、抵抗軍にしてやられた。
目隠しをされた男が心の中でそう呟く。彼は帰宅中に襲われ、こうして何処かに連れてこられていた。
周りでは複数の男の声がし、指示を飛ばしているようだった。
『周りにはよく注意しろ。まぁ、部隊が此処を嗅ぎつけるとは思わんがな』
『だが、警戒に越した事はない。何せ警備の責任者だからな』
旧式の共和国兵の軍服を見に纏う彼等は三ヶ月前の戦争を忘れられない戦争狂共だ。
武器を持って人を撃つ事に達成感を覚える、現実が嫌いになった奴らだ。
元々はただの一部隊だったが、そこに戦争を忘れられない馬鹿と。共和国はまだ戦えたのに降伏をしたと言い、現政府に反発する者が合流して居た。
彼の指揮下にあった本来の部隊員はほとんどが帝国軍の侵攻でKIAしている。唯一残っているのは……
「お目覚めですか?アンドレイ・ソルニエ局長」
今、自分の前に座っている若き天才魔導砲兵……ヘイルダム・ルメイだけだった。
彼は非常に心の籠もって居ない金属的な声で私にそう伺いを立てて居た。
マジック・ソナーを見て居たディルクは紅茶を持ってきた蓮子のおかげでこのルテティアにヘイルダム・ルメイが来ている事を把握し、マジック・ソナーの示す方角を走って居た。
「目標は20区にいる。急いでそっちに迎え」
『了解です。因みに上には?』
「どうせ言ったところで下手に手間取る。今は時間が命だ、後で構わん!」
『了解』
三七式を背負い、雷雨の中を軽い装備だけ持って屋根伝いにルテティアの街を走る。無線の相手は市外で待機してアイスフォーゲルに乗るコンラート大尉だ。今頃トラックに乗って追いかけているに違いない。
下ではオートバイに乗ったカセリーヌ達が夜のルテティアを疾走して居た。道路脇を進み、車を追い越して行き。上を飛ぶディルクの行き先を聞いていた。
貧困層が多く住むルテティアの行政区に移動し、ディルク達は目的であるヘイルダム・ルメイ捕縛の為に急いで移動をして居た。幸いにも雨天という事で誰も上を見て居なかった。傘を刺さない共和国人ではあるが、さすがにフードを被るので上を見ることはなかったのだ。
屋根を走り、距離の離れた道路では演算機の空圧で飛行し、魔力が漏れるのを警戒しながら進んでいた。
現在ロッフェル塔に魔導レーダーが設置され、市内全域で魔導反応を確認することが出来た。
過剰な魔力と低い魔導適正で常に魔導反応を示してしまうディルクは今もあの魔力相殺眼鏡を掛けたまま動いていた。
雨でレンズが濡れてもお構いなしにマジック・ソナーを頼りにスタントマンのように直線で飛ぶ事三〇分。ディルクは貧困街のとある集合住宅の屋根にたどり着いた。
「こちらエンジェル、目標の建物に辿り着いた」
『早すぎだろ、こっちはまだ11区を走っているぞ』
「早くしろ。準備が終わったら連絡」
『了解。急いで向かう』
そう言い、蓮子率いる諜報偵察小隊はルテティアを急いで移動する。いよいよ小野寺輝と対面するのだと。聞きたい事を問い詰めるのだと確認する彼等はバイクを走らせる。雨の中を突っ切り、20区に入ったところで無線を入れる。
「こっちは20区に着いたぜ」
『よし、そのままーーー通りに迎え。俺が上空に合図を送っている。光増幅魔法を使え』
「了解です」
そう言い、目元に眼鏡を掛けて魔法を展開すると空に一本の光の線を確認する。
「あそこか……」
サイレンを鳴らす警察が遠くにいると感じながらその灯りのある場所に向かう。
そこは十階建ての集合住宅であった。ルテティアの貧困街では一般的な、建物であった。
屋上にディルクがいるその場所の近くにバイクを停めるとそのままカセリーヌ達は片手に消音器付き拳銃や
「っ!!」
集合住宅の室内の階段を登る時、上に短機関銃を手に持つ私服姿の抵抗軍兵が居たが、咄嗟に消音魔法を使って先頭を進むカセリーヌがモーゼルで撃ち抜く。
因みにあのアンデッドがトラウマになって彼等は死んだ後も頭を一発だけ撃っていた。もう慣れてしまったが、恐らく絶対慣れてはならないやばい感覚であると彼等は分かっていた。しかし、脳天を撃たなければ此方が大変な目に遭うと思考が追い付いたからこそ、その行為に意見することは無かった。
そして階段を進んでいると突如上から声が聞こえ掛けたところで途切れ、上からディルクがびしょ濡れの私服姿でリュックサックに偽装した三七式を背負って、片手にフェドロフを持って降りて来ていた。上の方を見るとそこには複数の倒されたのであろう抵抗軍の兵士の遺体が転がっていた。
「うわ、この時代だと違和感しかないね」
「仕方ねぇだろ。これが一番良いんだから……」
そう言うと、ディルクはフェドロフの残弾を確認する。
「気を付けろ、この建物の何処か…いや、この建物全体が抵抗軍の拠点かもしれんからな」
「「「了解」」」
「先頭で俺が行く。お前らは後に続いて障壁魔法を展開しろ」
「他の仲間は?」
「時と場合によっちゃぁ要るな」
そう言うと、ディルクはマジック・ソナーを確認する。
「……此処だな」
建物の丁度真ん中、五階の部屋にマジック・ソナーを振り回して反応を確認したディルクはそのまま扉の前に立つ。
「大尉、状況は?」
なかなか到着しないコンラート達に思わず聞くと、無線が帰って来る。
『申し訳ありません。渋滞に嵌まりましたが間も無く到着します』
「20区のーー棟の五階だ。飛行魔法兵は飛んで窓から入れ」
『了解、もう到着します』
「急げ、こっちは中に入るぞ」
そう言い、無線を開いたままディルクは指示を出す。
『少佐殿、到着しました。いつでも行けます』
「よし、直ぐに入る。建物の構造が把握できてない事に留意しろ」
『了解』
そう言い、ディルクはそこでカセリーヌ達を見る。
「俺は合図したら中に突入だ。三…二…一…」
カウントをした瞬間、ディルクは扉を蹴飛ばして中に入る。
「敵っ!!」
「わぁっ!!」
入った瞬間にフェドロフで目の前にいた二人を倒すと後ろから入って来たカセリーヌ達が散弾銃を持って中に一緒に入り、12ゲージ散弾を容赦無く撃った。
「がぁぁあああっ!!」
引き金を引いたまま持ち手をスライドさせ、そのままスラムファイヤで連射して敵に小粒の鉄球の雨を降らす。それと同タイミングで窓からコンラート達が窓を蹴破って入り、同じく突撃銃を放つ。
どっかの映画みたいに散弾銃を撃っただけで後ろに飛ぶことはなく、短機関銃を持つ彼等はそのまま散弾の餌食となるとそのまま部屋を制圧する。
「ヘイルダムは?!」
「居ません!」
「探せ!何処かにいるはずだ!!」
するとしたから階段を上がっていた立川から無線が入る。
『今、階段を誰かが走って行ったわ!』
「ちっ、階段か……」
報告を聞いてからのディルクの動きは早かった。
「大尉達は部屋を制圧した後、建物を見張れ!残りは俺と上だ!」
「「「了解」」」
そう言い、ディルク達は遺体の残る階段を登る。途中民間人が出てくる事はなく、そのまま遺体を避けながら階段を登った。
「っ!!」
そしてそのまま階段を上り切って大雨が降る集合住宅の屋上に到着した時、ディルクは銃撃を受けた。咄嗟に隠れると思わず茂は叫ぶ。
「お前がヘイルダム・ルメイか?!」
するととても久しぶりに聴く声がする。あぁ、直ぐにでも撃ち殺したい気分だ。
「あぁ、そうだ。そう言う君は帝国の者だね?共和国まで来て何の用だい?」
「お前から転移装置について聴くだけさ」
「なるほど、つまりは僕を拘束すると言う事だね?」
「あぁ、そうだ!」
そう返すとヘイルダムは隠れている俺に言う。
「ならば顔を出して貰おうか」
「その前に銃を捨ててもらおうか」
「それは無理だ」
壁越しにそう言っていると、階段で待機していた舞鶴が飛び出した。
「輝様っ!!」
「?!」
雷雨の中を片手に散弾銃を持った舞鶴を見て驚愕するヘイルダム。すると彼女を追うように他の面々も銃を持って屋上に出る。その光景を見てヘイルダムは思わず呟く。
「君達…生きていたのか……?」
すると、そんな彼等の一歩前に立川と蓮子が銃を向けながら聞いた。途端に蓮子を見て嬉しそうにも驚く小野寺。
そして立川が聞いたのは今まで彼等が帝国に協力しいていた理由であり、彼等が最も知りたい物であった。
「ねぇ、小野寺くん……
どうして私を車から突き落としたの?」
立川がそう聞くと。雷雨で激しい雨が降る中、小野寺は暫く呆然とした後に答える。
「それは…あの時は気が動転しちゃって……」
「そんなに蓮子の方が良かったの?普段言っていたじゃん、私達のことも愛してくれているってさ……」
「それは……」
思わず小野寺が答えに戸惑っていると、ある男が近づく。
「そいつの愛は薄っぺらい紙石鹸さ。水に浸すと消えるように、その愛はふとした衝動で簡単に消える」
現れた同級生達の後ろから声がし、先ほどの雷鳴混じりの聞こえずらいものでは無く。ハッキリと聞こえたその声に小野寺は明らかに目を大きく見開き、動揺の色を見せる。
そして、前に出たその男は鋭い視線を小野寺に見せた。
「南部…茂……!!」
「よう、三年ぶりだな小野寺」
そう言うと、小野寺は恨めしそうに呟く。
「やはり死んでいなかったか……」
「あぁ、地獄から甦って来たぜ。……貴様を殺す為にな」
そう言うと茂はフェドロフを右手で保持して構える。同様に小野寺も共和国製拳銃を構えた。
雷鳴轟く雨の中を二人が相対し、銃を向けていた。
暫くの間の後、小野寺が言う。
「遺体を確認しなかったからまさかとは思っていたが……」
そう彼は言うと、茂は答える。
「あぁ、その通りだ。せっかく味方を巻き込んで撃ったどデカい魔導砲撃が上手くいかなくて悔しいか?」
「チッ!!」
その瞬間、小野寺はディルクに向かって引き金を弾く。しかし、衝撃魔法で拳銃弾は簡単に防がれる。
「何っ?!」
「魔法弾を撃ったらしいが、威力が小さいぜ」
「そうかい……」
すると銃撃を受けた茂に蓮子が問いかける。
「大丈夫?」
「あぁ、何も問題ない」
「っ!!」
蓮子との短い会話だったが、それすら小野寺にとって憤慨させるのに十分だったようだ。
「貴様っ!」
「おっと、火に油を注いでやろうか?」
そう言うと、茂は小野寺にとって核爆弾にも匹敵する話しをした。
「俺と蓮子は付き合ってるぜ」
お気に入り登録、高評価をよろしくお願いします。