戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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七〇話

 

「俺と蓮子は付き合っているぜ」

 

 

 

雷雨のルテティアの中。屋上でそう言った茂に一瞬世界が止まったような感覚……と言うかこの場が凍りついた。

一瞬固まった小野寺は恐る恐る聞く。

 

「う、そ……だろ……?」

 

するとそこで蓮子がきっぱりと今までの鬱憤を晴らすように言う。

 

「いや、寧ろ私を特別扱いしただけでアンタを好きになると思った?」

「……は?」

 

すると蓮子はそこから捲し立てた。

 

「私はね、アンタみたいに簡単に人の命を弄ぶ奴が一番嫌いなの。絵里を突き落とした件然り、茂くんを砲撃して殺そうとした件も含めて」

「そんな……」

「だから私はアンタが死のうがどうでも良い。……茂くんは人の命を弄ばない。少なくとも彼のお陰で私達はここまで生き延びられた。

苦しんだからこそ、茂くんはその痛みを与えない為に私達を鍛え上げた。

 

 

 

……君は本当は私達のことを邪魔な存在だと思っているでしょう?」

「そ、そんな事はない!!」

 

反射的に反論するも、蓮子は彼の逃げ道をどんどん塞いでいく。

 

「じゃあ、聞くけど。貴方は私以外の人間に何か施しを与えた事はある?

どうして私じゃないって分かった時に簡単に絵里の首を絞めれるの?

どうして、同級生を邪魔だからと言って見知らぬ人も纏めて大量に殺したの?」

「……」

 

返す言葉を失っていると蓮子はズカズカと小野寺に近寄る。拳銃で撃たれないかと心配になる横川達だが、茂は絶対撃たないと確信していた。寧ろ射線上に蓮子が入るから頭を撃てないと冷や汗を掻いていた。

 

「命を簡単に捨てられるのはね、貴方が本当はどうでも良いと思っている証拠。だから簡単に命を捥ぎ取ることができる。

自分は興味がないから、他人が交通事故を起こして大怪我を負っても、自分には関係ないと思っているのと同様。貴方は自分を愛していると言ってくれた人に興味がないから、死んでも自分には関係ないと思っている。

 

 

……貴方はそこら辺に転がるクズと同じよ」

「っ!!」

 

目の前でハッキリとそう言われ、小野寺は目を泳がせて動揺する。すると、蓮子は最後に留めを刺した。

 

 

 

「ーーこの脳内花畑野郎が。私の目の前から失せろ」

 

 

 

その瞬間、蓮子は思い切り小野寺の頬を叩いた。既に拳銃は下に力無く降ろされ、銃口は下を向いていた。

顔が揺れ、鍛えられた蓮子の本気のビンタを喰らった場所が頬が赤くなると。呆然となった小野寺に背を向けて茂の方に歩み寄る。

 

「終わったか?」

「これでスカッとしたわ。絵里は良いの?」

「ええ、小野寺のあの顔が見れて清々だわ」

 

そう言い、二人は再び忌々しい小野寺を見ると。彼は呪詛の様に何かを呟く。

 

「…い……ない……けない………」

 

すると小野寺は拳銃を前に向けて叫んだ。

 

「そんなわけが無いっ!!」

 

その瞬間、小野寺は拳銃の引き金を持った。瞬時に蓮子の前に障壁魔法を展開すると小野寺の叫びと共に無造作に引き金が引かれる。

 

「小山さんがそんな言葉を言うはずがない!!誰だお前は!!本物の小山さんは何処だ!?何処にやった?!」

 

そう叫び、引き金を弾くも。分厚い茂の障壁魔法で防がれ、蓮子にダメージは無い。寧ろ小野寺の凶変に舞鶴達が驚いて銃の引き金に掛ける力が消えてしまってた。

拳銃の引き金を七回弾き、中の残弾が無いのに引き金を弾く小野寺を確認した茂は片手にフェドロフを持って引き金を引いた。

 

「がぁっ……!!」

 

放たれた弾丸が右肩を貫通し、服の下から血が滲む。拳銃を落とし、戦う術の無くなった小野寺に近づく。

 

「お前は人の命を何とも思わないクソ野郎だ。おまけに心の狭い奴と来た。これは俺からの冥土の土産だと思え」

 

そう言うと拳銃を持って小野寺の頭を狙う。すると小野寺は突如笑い始めた。

 

「ククク……ハハハハハ……!!」

「何を笑っている。ついに狂ったか?」

「そんな訳無いだろう」

 

そう言うと、小野寺は言う。

 

「僕は決めた……君を殺してやると……。そして本当の小山さんを取り戻すと……」

「何ふざけた事を……っ!?」

 

小野寺に接近した時、茂は気づいた。何故小野寺がこんな高い場所に逃げたのかを……

その瞬間、雨雲の中を一機の航空機が接近する。

 

「っ!!」

 

咄嗟に小野寺の体を掴もうとした時、小野寺は最後にこう言った。

 

「この借りはいつか返させてもらうぞ。南部茂」

「待てっ!!」

 

そう言い、体をすり抜ける様に小野寺の体は宙に飛んで行く。まさか、この時代でフルトン回収をするなんて誰が思うか。史実ならあと十年は先だぞ。

飛んで行った小野寺を見ながら思わず無線で指示を出す。

 

「大尉!目標が逃げた!追跡は?!」

『この雨では無理です!雲の中で衝突の危険があります』

「チッ…奴め、フルトンで逃げやがって……」

『?何ですそれ?』

「こっちの話だ、それよりも目標が逃げた。付近の部隊に連絡できないか?」

 

そう言い、無線でディルクは指示を出していた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「助かりました」

 

雲の中を飛行する教国製双発機の中でヘイルダムは教国の魔導士に手当を受けていた。茂から受けた銃弾は幸いにも貫通し、体に弾丸は残っていなかった。

回復魔法を受け、肩に包帯を巻いた彼はそこで雲の下に映るルテティアを見ながら呟く。

 

「やらなければならない。小山さんを取り返さなければ……」

 

その時の彼の目はとても悍ましい何かを滲み出していた。

 

 

 

 

 

『少佐殿、降りて下さい。見て欲しい人があります』

「……了解した」

 

雨の降る屋上から階段を降りるディルク。その後ろには立川と蓮子が追いかけ、他の者達は豹変した小野寺に驚き、唖然となっていた。

そしてそのまま階段を降りると制圧した五階の一室でディルクは椅子に縛られたスーツの男を見た。

 

「この人物は?」

「分かりません。部屋に入った時にかなり拷問を受けていた様で所々内出血をしていますね」

「ふむ……」

 

目隠しをされているのを見て、ディルクは取り敢えず指示を出す。

 

「取り敢えず他は撤収を開始しろ。騒ぎを聞きつけて警察が来るかもしれない」

「この人物はどうされますか?」

「俺が決める。まずは先に戻っておけ」

「了解」

 

そう言うとコンラート達はそのまま無線で連絡を入れるとそのまま集合住宅を出る。上にいた原田達も階段を降りて行き、止めてあったアイスフォーゲルに乗り込んで市内を後にして行った。

それを見送り、ディルクは立川に指示を出す。

 

「まずは怪我を治してくれ。話を聞き出す」

「了解」

 

そう言い、立川が得意の回復魔法を使って目の前にいる紳士の傷を手当てする。

 

「んぁ……」

 

回復している途中、声が聞こえてその男は意識を取り戻した。

 

「目が覚めたか……」

「君は……」

 

目隠しされたままその男は前を向いまま聞いてきた。

 

「抵抗軍を追いかけている者。と言っておこう」

「そうか……」

 

そう言うと、ディルクは頭の目出し帽を被るとその男の目隠しを取った。

 

「うっ……」

 

目隠しを取ったあと、一瞬だけ俺を見てギョッとなるもすぐに周りを見回す。そして視界の端で倒れる抵抗軍を見て理解する。

 

「君はDSNでは無さそうだな」

「あぁ、そうだ」

「では、同じく抵抗軍を追いかける帝国の者かね?」

「……」

 

この男は恐ろしく頭が回る人物かもしれない。そう思いながら俺はその男に聞く。

 

「あんた、誰なんだ?」

「私はアンドレイ・ソルニエだ」

「っ!!」

 

まじかよ、アンドレイ・ソルニエと言えば……

 

「あぁ、そうだ。国家監視局局長をしている」

「……」

 

まさかの人物に唖然としつつも俺は話を聞く。

 

「じゃあ、抵抗軍に誘拐でもされたか」

「あぁ、不覚な事にな」

 

二人はそう話すと、アンドレイはディルクに言う。

 

「まずは名も知らぬ君に感謝するよ」

 

そう言うと、ちょうど立川の回復魔法の治療が終わり、傷が癒えていた。

 

「あぁ、こんな若い子に治されるとはね」

 

そう言い、アンドレイは息を整えるとディルクに聞いた。

 

「ここまでしてくれると言うことは、何か望みがあるのかい?」

 

そう問われ、ディルクはアンドレイに言う。

 

「あぁ、そうだ。時折俺達が国内で何か事を起こすかもしれない。その時に揉み消しを頼もう」

「なるほど、それなら出来そうだ。……だが、それだと少し足りないな」

「何か見返りを?」

「ああ、君達を帝国の者と仮定するなら抵抗軍に関する情報と引き換えに揉み消しをしよう」

「……」

 

しばし考えたあと、ディルクは背中の無線機を使って本部に電鍵を打つ。

 

「連絡が返ってくるまで待て」

「あぁ、了解した。共和国人は時間にはルーズだ。帝国人と違ってな」

 

そう言い、アンドレイは吹き曝しの部屋で返事が来るのを待っていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「ーーー許可しよう」

「まて、アンドレイ・ソルニエの情報が来てからの方が……」

「閣下、持って参りました」

 

参謀本部の地下でペッツやコルネリスは話す。そして優秀な部下がアンドレイ・ソルニエに関する情報を持ってきた。

数枚の資料を読み漁ったあと、コルネリウス達が思わず呟く。

 

「教国に繋がりなし……か」

「こりゃ、優秀な奴だな」

「あぁ、息子に比べたらアレだがな」

「どちらかと言うとこいつはスーツが似合いそうな奴だな」

 

経歴を見てペッツはそう言う。今では国家保安局局長と言う地位にいる彼を見て、共和国での活動を円滑に動かす為には必要経費であると代表の二人は話したあと、返答を入れた。

 

 

 

 

 

「連絡だ、許可が出た」

「では、取引成立という事で」

「あぁ…そうだな……」

 

そう言うと、アンドレイとディルクは顔を合わせるとアンドレイが番号を呟き、ディルクは紙に番号を書き始めた。

 

「私の秘匿電話だ。連絡はそれを使うと良い」

「へぇ、DSN局長はそんなものまで貰っているのかい」

「あぁ、相手は軍人崩れだ。盗聴の危険があるからな」

「なるほど、面倒な敵だ……」

「それは同感だ」

 

そう言うと、カセリーヌがアンドレイを縛っていた縄を切るとアンドレイは自由の身となる。

 

「では、自分はここで」

「あぁ、また会う時があればその時は宜しく頼むよ」

 

そう言うとディルク達はそのまま下に停めてあったバイクに乗り込んで消えて行った。

 

 

 

 

 

ーー十分後

 

「閣下!!」

 

集合住宅に装甲車やパトカーが止まり、中に武装した警官達が入ってくる。自分たちの上司であるアンドレイの安否を確認し、抵抗軍の拠点であると探索を進める彼らを見ながらアンドレイは思う。

 

「(やはり、抵抗軍に関する情報は帝国の方が多く持っているようだな)」

 

そう思いながら後手後手の共和国にややため息を吐いていた。




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