戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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七七話

引き取られた親戚と別れ、俺は単身上京をした。

都内の安いアパートを借り、そこから高校に通っていた。特奨生として入学する為に努力をして来た甲斐あって俺の学費は免除されていた。

特奨生になったのはなるべくあの家族と関わりたく無かったから。

 

俺は毎月生活費を口座に入れてもらってバイトをしていた。掛け持ちは勉強に支障が出るからしなかったけど、生活の足しにはしていた。

そして高校に入学してから少しした頃、俺の住むアパートに差出人不明の封筒が入っており、中には行方不明となっていた祖父の遺産の入った通帳と貸金庫の鍵と判子が入っていた。

 

最初は驚いた。そもそも探しても祖父が契約した銀行を全て調べたが、見つからなかった祖父の遺産。それがいきなり自分の手元にポンと渡されたのだ。驚かない訳がなかった。

一瞬、突如湧いて出た大金に何に使おうかとも考えたが、それではただの成金野郎だと思って使わずにしまう事を選択した。その為、未だに貸金庫に行ったことは無かった。

 

そして高校生もバッチリ人と接する事なく生活していたのだが、入学式の時にふと気になった男がいた。

それは入学式の際に総代としてスピーチをした小野寺輝と言う男であった。

 

その男は初手に思ったのは『陽気な優等生』と思っていた。はっきり言おう、包括力と人を落とす話術が異様に高い。あれはもはや才能と言うべきだろう。おかげで二週間くらいで彼の周りには女生徒が集まっていた。少なくとも男子が羨ましがるくらいには……

だからこそ俺は警戒した。その時は他クラスであったが、もし同じクラスになった場合はあの空気にのなれたら死ぬと……

思えばその時から蓮子と同じクラスだったな……

 

 

そして静かに一年生を終え、二年生になってクラス表を見た時。俺は半分絶望した、なんと小野寺が同じクラスメイトとなったのだ。何と運が悪いかと思いながら、俺は絶対静かに関わりたくないと思いながら教室で『日本のいちばん長い日 運命の八月十五日』を読んでいた。

 

 

 

 

 

そして静かに二年生を過ごそうと決心してひたすらに気配を殺して本を読んでいたある日、俺はついに見つかってしまった。

 

「やぁ、君は何を読んでいるんだい?」

 

目が痛くなりそうなほど眩しいその姿に思わず嫌な顔をしてしまう。『昭和16年夏の敗戦』を読んでいた俺は思わず軽く睨みつけてしまうと、彼は言う。

 

「そんな怖い顔しなくても良いじゃないか……」

 

そう言いやや苦笑しながらその男は俺の目の前に座ると色々と聞いてくる。

 

「君はいつもそんな本を読んでいるのかね?」

「あぁ、そうだ」

 

すると小野寺はとんでもない事を言い出した。

 

「そんな、危ない本なんか読んで大丈夫なのかい?」

 

その一言で俺は内心キレてちょっとだけ彼に嫌味まじりに答える。

 

「……あぁ、少なくとも女を転がして遊ぶよりはよっぽど歴史の勉強になるからな」

「……そうかい」

 

そう言うと小野寺は消えていった。

 

そしてその翌日から彼らの親衛隊による攻撃が始まっていた。

 

陰口は当たり前のように言われ始め、偶に物が消えた。だけど、口撃はそもそも耳塞いでいるような生活だから自動的に聞こえなかったし隠された物も直ぐ見つけてそのまま何事もなく授業を受けていた。

時間的に見つからない時は俺は教科書のページを思い出しながら受けていた。

偶に蓮子が貸してくれる事もあったが、そもそも授業を受けながら高校卒業後のことを考えていたから。実はあまり使っていなかったりしていた。

 

そんな意味もないバカなことだと思いながら二年生が終わるまでの日数だと思っていた。

高校入学時に俺の経歴を見て思わず絶句してしまっていた先生達はこんな虐めを受けていた事に気づくと早速対処をしていた。

学校側も生徒の自殺者を出されたら評判が落ちると思っていたのか、俺のことを毎度の様に確認し。偶に厳しい対応をしていたが、全部無駄だと俺は感じていた。

言って仕舞えば『手駒は一杯居る』状態で、いくら同級生が生徒指導送りになろうとその根本を抑えなければ意味がない。少し前の時代の麻薬犯罪の取り締まり方と同じように根本を抑えなければ……

 

 

 

そんな風に思いながら学校生活をしていたある日。俺たちはこの世界に転移された。そしてそこからは皆の知っている通りの出来事が起こっていた。

非日常である戦争、人が簡単に死ぬ世界。平和が当たり前だった俺たちには強烈な印象を与えていた。

むしろ此処まで死者がいないのが奇跡と言っていい部類だ。俺だって部下を失ったと言うのに……

単純計算で次の転移魔法が発動するのは俺達転移してから四年後、つまり半年程と言う事になる。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

地図を広げて茂は作戦を練っていた。

あの後少し寝て、目を覚ました後。地図を広げて頭を回していた。すでに深夜と呼ばれる時間帯であった。

今、教国をジョヴァンニと名乗った少年と回っている蓮子達残りのメンバーは屋台を巡っているだろう。

それよりも、俺はこの設計図を見て冷や汗を掻かずにはいられなかった。

まず最初に、この施設の信憑性はペッツ総長のお墨付きであった。理由は定かではないが、アンジョラ大司教には絶対的に信頼できるところがあるそうだ。

 

 

 

俺たちは帝国からの旅行者としてサイドカーとビートルに乗って入国していた。

武器は拳銃を携帯し、ビートルの椅子の下に隠して持ってきていた。

現在、教国に入った俺たちは休暇を取って此処にきていた。休暇をとっているのでこの国で問題を起こしても国際問題に発展しないように手回しはしている。

俺たちの目的は教国内に小野寺が逃げ込んだと言う情報を掴み、捕える為に来ていた。それと、これは俺個人で気になった事なのだが。俺たちは禁術を保管している教国の書庫に向かおうと考えていた。理由は簡単で、教国があそこまで転移魔法を追いかけている理由にあった。

 

 

 

 

 

教国が転移魔法の追跡を始めたのは俺がルテティアに向かう少し前。大陸全体で魔力が失った事に不審に思った教国は独自で調査を行なっており、その結果禁術である事は把握していた。そこで教国は調査団を結成して派遣し、共和国に調査に向かったが何もなかった事からそのまま帰って行っていた。

しかし戦後、帝国の政治家の追及でその内容は世に広まる事となった。講和条約で使節団の一人が賠償金吊り上げのために禁術使用と条約違反を口にし、その後その人物が謝罪する事態になっていた。

そして現在、帝国の我が部隊は戦争終結と共に解散している事となっており、中隊毎に別部隊の配属として隠蔽し、転移魔法装置を追っていた。

 

 

 

教国は一般で言うところの大統領に値する地位があるのが教皇であり、大臣が枢軸卿。その下に大司教やらの役職が入っていた。この前教皇庁に入った時はエレニカ技師が作ったと言う職員証を見せていた。なんでも教国の職員証には魔力を覚えさせる感応石で出来ており、これが無いと中には入れないらしい。はぇ〜、現代のゲート見たい……でもそんな探知機っぽいの見当たらなかったけど……

 

 

 

 

 

大司教から受け取った地図によると禁書指定書庫に入るには通路は一つしかなく、それはエレベーターのみであった。それも地下奥深い、100mあると言うどうやって掘ったレベルの可笑しい奴だ。

いつもは上に上がっているエレベーターだが、地下に行くには魔導鍵と呼ばれる感応石出来たパーツを嵌めなければ動かないと言う。

そしてその鍵の手配はアンジョラ大司教が連絡をしたらやってくれると言われている。

 

問題は教皇庁に入り、禁術を見た後の行動だ。まず初めに武器の持ち込みをするにしたってキツイ。理由は簡単でボディーチェックに荷物検査がある。しかも抜け道がないと来た。入り口は常に衛兵が待ち構え、下手な行動を取ったら刑務所行きだ。

おまけに導入されたばかりの金属探知機があそこにはある。二重底バックで隠してもよっぽどプラスチックでできた銃じゃないと抜ける事ができない。はて、どうしたものか……

 

「…いや、手はあるか……」

 

そう思うと、部屋がノックされた。

 

『あ、私よ。入ってもいい?』

 

扉の向こうの声は蓮子だった。俺は念の為の地図を仕舞うと、中に蓮子が入って来た。しかしそこにジョヴァンニの姿はなかった。

 

「あれ、あの子供は?」

 

そう聞くと蓮子は答えた。

 

「帰っちゃった。満足したからって……」

「そうか……」

 

まぁ、元々家出見たいな事をしていたし、外に出ていたいからと言う。貴族によくありそうな話だと思いながら俺は再び地図を広げると、地図の上に蓮子があるアクセサリーを置いた。

それは黄金色の透明な円形の石に教国を示す五芒星の刻印がされたアクセサリーの様であった。

 

「これは?」

「ジョヴァンニ君が案内してくれたお礼だってさ」

「ほう、こんな物を持っていたのか……」

「どうやら、教国の有名な家っぽかったよ?ジョヴァンニ君、専属のメイドさんいたし」

「……マジかよ」

 

思わずそう呟くと、蓮子はその時の状況を話してくれた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

ジョヴァンニを引き連れて街を歩いていると、ふとジョヴァンニがある場所を見て顔を青ざめていた。その異変に気づくと、カセリーヌが声をかける。

 

「どうしたの?」

「え、いや……」

 

すると、ジョヴァンニは咄嗟にカセリーヌの影に隠れる。それはまるでやや怯えている様にも思えた。

 

「どうしたの?」

「あっ!ちょ、ちょっと待っててください。動かないで欲しいです……」

「?」

 

するとその瞬間、カセリーヌ達の背後に誰かが立つ感覚があり。反射的に振り向いてしまったが、その瞬間。首元にタクティカルナイフの先端を突きつけられた。

 

「ーーー手を上げなさい」

 

このままだと一瞬で首を持ってかれると分かるから蓮子は大人しく両手を上げると、そのメイド服を見た女性にジョヴァンニが慌てて言う。

 

「わぁ、待ってマルティーナ!!この人たちは悪くないから……!!」

「……」

 

ジョヴァンニが慌てて話すと、マルティーナといった女性は持っていたナイフをしまうと呆れた声でジョヴァンニに言う。

 

「ジョヴァンニ様、勝手に家を抜けられては困ります。御当主様がご心配なされております」

「……はい」

 

それはもう非常にしょんぼりとした様子でジョヴァンニは肩を落としていた。するとマルティーナは自己紹介をした。

 

「お初にお目にかかります。私、ジョヴァンニ様の執事をしております。マルティーナ・アエルフェルと申します」

「は、はい。どうも……」

「この度は面倒をおかけして申し訳ありませんでした」

 

そう言うと、マルティーナはカセリーヌに頭を下げ。次にジョヴァンニを見て言う。

 

「さぁ、戻りますよ。ジョヴァンニ様、御当主様がお待ちでいらっしゃいます」

「はい……」

 

もはやはいはいとしか言っていないジョヴァンニに蓮子はどうすることも出来ないとは分かっていたが、それでも歯痒い気持ちではあった。

そしてマルティーナの手を取る寸前。ジョヴァンニはカセリーヌに近づいてある物を渡してきた。

 

「今日の御礼代わりに受け取ってください」

 

そう言い、ジョヴァンニは蓮子の手の中にあるアクセサリーの様なものを渡した。それは五芒星の掘られた琥珀の様な物で、魔石に似た光り方をしていた。

 

「(これは……)」

「では、またいつか会いましょう」

 

そう言うとジョヴァンニはマルティーナに引き連れられて私服姿のまま何処かに向かって行ってしまった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「後でジョヴァンニ君の荷物を回収に来るってさ」

「そうか……じゃあ、まとめた方が良さそうだな」

 

話を聞き、茂は部屋の隅に畳まれた彼の祭服を眺めながら次に地図に視線を戻していた。




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