戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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七八話

教国内に潜伏中と思われる抵抗軍副司令であるヘイルダム・ルメイの追跡のために教国に侵入したディルク達五名は、その日。車に乗って走っていた。前方ではサイドカーに乗ったカセリーヌとディルクが白い祭服に身を包んで顔を隠した状態で走っていた。

そして教皇庁から少し離れた所で停車するとそのまま二人はサイドカーを降りた。

 

「大湊は此処で待機して脱出路の確保だ」

「了解」

「俺と蓮子で内部に入る。蓮子、書庫に入れば援護はないと思ってくれ」

「了解」

「松島と百里は予定通りに動いてくれよ」

「了解」

「……了解」

 

それぞれ確認を取ると、茂達は祭服を着る。二人はそのまま片手に鞄を持って教皇庁に向かって歩き出す。その様子を見ながら大湊達は外の様子を眺めていた。

 

 

 

 


 

 

 

 

あの後、ジョヴァンニの着ていた祭服を受け取りにマルティーナと言う女性が部屋に来て、服代を渡しながら祭服を回収して行った。その際、俺と蓮子をやけに見ている様な気もしていたが、嫌な予感を感じて一回泊まる場所を変えていた。

あれから三日経ち、アンジョラ大司教に連絡を折り返した時にこう言われた。

 

『あんたはペッツと並ぶくらいヤンチャ坊主だ』

 

そう言われ、やや不服ではあったが。鍵を手に入れるのに三日ほどかかると言われ、俺たちは此処に来ていた。

教皇庁の入り口に入り、前と同様にゲートを通って中に入って中を進む。金属物は何も持って来ていない。

そして教皇庁を歩いていると巡回中のカピロテを被った兵士が横切り、その姿を横目にディルク達はそのまま鞄を持ったまま中に向かう。

中に入ればこちらのものだが、必要な鍵がある。それを今から受け取りに行く予定であった。

 

 

 

歩いて多くの職員が行き交う館内食堂のある席に座り、ディルクは机の裏に手を当てるとそこにはテープで貼られた魔導鍵があった。

綺麗なオパール色の感応石。見ただけでわかる最高グレードの純度。少なくとも帝国では滅多にお目にかかれない逸品だ。

今では貿易条約で毎月一定量の感応石が入ってくる様になったが、帝国はもしもに備えて人工で感応石を作る研究を続けていた。中級ほどの、所謂実践レベルの感応石を作れる様になったらしいが、量産までは入っていないとデニスから聞いたことがある。

 

現在、アンジョラ大司教と対をなす人物としてマッキ・カーター大司教と言う人物がおり。そいつが転移魔法を追跡し、抵抗軍に金を流した人物と言われている。つまり、黒檀の騎士団と白檀の騎士団を動かした人物という事だ。

どちらも教国的には義勇軍であり、正式な部隊ではないとされているが。武器供与を行ったりそもそも教国の孤児で構成されているあたり。諸外国は武装をした教国の騎士団であると認識していた。帝国は死んだ事になっている転移者達を共和国に勘付かれない様にするために公表はしていない。

しかし、マッキはやばい事に上に無許可でこの二つの騎士団を動かした事で慌てて隠蔽しているらしい。まぁ、あそこにいた全員は全滅していたしな……

 

今、二つの騎士団は再編中で訓練を始めているそうだ。あの騎士団になる子が可哀想だとも思ってしまう。少なくとも戦いで死ぬときに笑顔でいれるやばい集団に仕立て上げられてしまうのだから……

 

「……行くぞ」

「了解」

 

魔導鍵を手に入れ、席を立ち、二人は移動を始める。これは一種の戦争なのだ。冷戦に近い、睨み合いの戦争。

やれやれ、戦争続きで参りそうになると思いながら俺達はそのまま人気の少ない場所に向かう。

 

 

 

 

 

武器がない俺達はどうするべきか。答えは簡単……

 

「うっ……!!」

「ぐぁっ!!」

 

目の前にいる二人の教国兵を縛り上げる。此処は教皇庁の端の物置で、警護はないのだが近くに衛兵詰所があるから頻繁に武器を持った教国兵が通る場所であった。

二人組の教国兵を確認した後に二人で同時に首を絞めて気絶させた後に、彼らの持っていた武器と弾薬。それから衣服と名前を頂戴していた。そしてその後、二人の教国兵を物置の奥に押し込むと、

 

「さ、行くぞ」

「うん」

 

カピロテを被り、装備を全部回収して背中に教国製半自動小銃(ブレダPG)を背負う。教国は基本的に慢性的な人手不足の影響で女性兵士も多い。その為、女性の一般兵でも特に違和感はなかった。

 

 

 

小銃を持ってエレベーターに乗り、俺は受け取った魔導鍵をエレベーターのボタンの下にあった穴に入れる。

横のランプが開くと、体に違和感があった。

 

「おっと……」

 

体から魔力がごっそり持って行かれる感覚があり、これが軽いトラップなのだろう。その後、エレベーターが動き出して下に移動を始めた。

 

「大丈夫?」

「全然、帰っていけるくらいは残っている」

 

そう言い、二人は小銃を手に取るとエレベーターが到着するのを待っていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

チンッ!

 

静かな鐘の音と共に茂達は警戒をしながら静かにエレベーターを出る。

 

「……」

 

そこは恐ろしく静かで、ちょうど良い気温であった。核兵器用のバンカーとしても使えそうだと思いながら、茂達はあかりのない真っ暗な廊下を捜索する。

地図の通りであればこの先に禁術指定書庫がある。そのほかにも此処は教皇庁の重要な物があるそうで、中には霊廟やらもあるそうで当に教国の最重要部と言っていいだろう。むしろ、こんな簡単に入れた事に驚きを隠せなかった。

 

「此処だな……」

 

見張りの交代時間はおよそ四時間、バレるまで残り三時間半と言った所だ。それまでに仕事を完了させて撤退しなければ……

ある部屋の前に到着し、茂達は真っ暗な中。地図にあった禁術指定書庫の鍵穴に渡された魔導鍵を入れる。

すると地下全体に赤い赤色灯が点滅する。普通、こういう所にありそうなアラームは神聖な場所を騒ぎ立てないという謎理論で取り付けられていなかった。

 

扉が開き、中に入れる程になった時に二人は入るとそのまま扉を閉めて内側から鍵をかけた。分厚い鉄板に囲まれたこの部屋はそう簡単に破られることはないだろうと言う考えからだった。魔導鍵を回収し、中に入ると、そこには音楽室くらいの大きさの部屋に本棚が置かれて、分厚いハードカバー本が置かれていた。

 

「さて、探すか……」

「手伝うね」

「じゃあ、俺はこっちを調べる。蓮子は半分を頼めるか?」

「オッケー、任せて」

 

そう言い、二人で別れて転移魔法の情報がないかを魔導書を開いたりして探し始めた。

 

 

 

 

 

現在、教国にヘイルダム・ルメイを探す目的で入った茂達だが。茂的に言えば教国が隠している事を調べたいのが目的だった。そしてその内容は、禁術指定書庫に置かれた本を見て理解した。

 

「えっ、これって……」

 

中身を見た蓮子はそこで一瞬だけ固まってしまった。その理由は……

 

「何も書かれていない……?」

 

其処には『死者蘇生術』と書かれた魔導書なのだが、あったのは何も書かれてない羊皮紙であった。

指紋を残さぬよう手袋をして中を読んでいたが、まさかの中身に困惑していると茂は納得した様子で頷く。

 

「なるほど…これでようやく納得が行く。何故、教国が俺たちを執着に追いかけて来たか……」

 

そう言うと、茂はその手にある一冊の本を持って来た。その題名を見て、蓮子は目を大きく見開いた。

 

「それって……!!」

 

その本には『転移魔法』と書かれた魔導書があった。すると茂はその本を手に持って開くと、其処には真っ白な羊皮紙があった。

その事に理解が追いつかずにいると、茂が説明してくれた。

 

「つまり、この禁術指定書庫には理論だけが先歩きしている物も含まれていると言う事だ。表向き、全ての術を保有・管理していると豪語している教国だが。実際は一部の魔術がどの様な方法で発動をさせるか出来ていない……実証段階まで進んでいない禁術もあると言う事だな」

 

そう言うと茂は禁術指定書庫の本を漁り出す。すると其処で驚きの事実を見た。

 

「理論の一人歩きばっかしてんじゃねぇかよ……」

 

そう呟き、一度見終わった魔導書を元の場所に戻していた。

少なくとも此処に置かれた本は中身があるやつとない奴で棚が分けられていた。

禁術ではない奴は上にある国立魔術図書館にて自由に閲覧することができた。しかし、禁術指定の魔法はこの場所に来ないと見ることは出来なかった。それもそのはず、此処にある魔導書の一部は真っ白な本なのだ。そして、教国が転移魔法を追いかけていたのは研究結果を横取りして此処に保管する為。

何も書かれていないと言うことは抵抗軍と手を組んでも見つかっていないと言う証拠だった。

其処で俺は少し考える。俺が受けた信託は『転移魔法装置の破壊と、ジュール・ファブール並びに小野寺輝の殺害』である。だから、本来はこれを破壊する必要はない。だが……

 

「(転移魔法を悪用する可能性も無い訳ではない……)」

 

そこで少し考えた俺は地図を思い返しながら持っていた魔導書を仕舞うと、今まで人っ子一人来ない事に違和感を覚えながら禁術指定書庫を一旦出ると、横にある武器庫に向かう。

 

「あった……っ!!」

 

茂は武器庫に入ると、そのまま慌てて禁術指定書庫に戻って行った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「急げ!侵入者だ!!」

 

アラートが鳴り響き、地下に教国兵が走る。此処は教皇庁地下100mに存在する地下施設。教国の最重要施設であり、霊廟や禁術指定書庫が埋められていた。

唯一の連絡路であるエレベーターから完全武装した兵士が銃を持って地下一帯に兵士を走らせる。

 

「配置完了!!」

「よし、全ての部屋を探せ!まだ逃げていないはずだ!!」

 

異常があったのは地下からの直接の通報からであった。

兵士が地下を巡回する際に不審者がおり、その報告途中に通信が切れたことから。教皇庁全体を封鎖して逃げ道を塞いでいた。

 

「突入用意!」

 

そう言い、指揮官が指示をすると魔導鍵を持ってそれを嵌めて中に入ろうとした瞬間。

 

「「「うわぁぁあぁぁぁあああ!!」」」

 

目の前の重厚な扉が吹っ飛び、奥から真っ赤な炎があがって、地下が大混乱に陥った。

 

 

 

 

 

「ぐっ…ゴホッゴホッ……」

 

爆発が起こり、息をした教国兵は吹き飛んだ鉄の扉を眺めながら一部崩落した天井を見た。

 

「グッ…被害報告……!!」

 

そう叫ぶと、一部人間が返事をし。この状況では酸欠する可能性がある為にエレベーターに乗って避難をしていた。視界に端には燃え盛る禁術指定書庫の姿があった。

 

 

 

 

 

その日、教皇庁の地下の禁術指定書庫に入った侵入者が中にあった禁術指定の魔導書全てが消失した歴史に残る大事件が起こっていた。




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