戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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七九話

幼い頃から自分は見えない檻の中で育っていた。理由はとても簡単で、自分は天眼と言う特殊な眼を持つ家系に生まれたからだった。特に、自分の場合は先祖返りと呼ばれるほど強い天眼を有していた。

 

 

 

天眼はかつて彼の地を支配していた特殊な人種が神から受け取った、見えない物を見通せる特殊技能である。例えば精霊と呼ぶ光球が見えたり、霊が見えたり……普通の人には見えない物が見えるその眼は変わりに魔法を使う事が出来なくなる物だった。

 

正直、自分なこんな天眼なんていう物があるから外に居た同い年の子と同じ様に外に遊び回ることができなかった。だから、ちょっとだけ親に反抗して家から抜け出す道を作っていた。そして、その穴がバレない様に工作もしており、今後も抜け出す事ができる。正直、マルティーナには申し訳ないけど……

 

でも、自分なあの家から抜け出したい一心で抜け道を作った。そして、街に出た後のことを全く考えておらずうっかりしてしまった。そんな時、僕は有る人達と出会った。

 

その人の名はカセリーヌ・モンローとディルク・ゲーリックと言う人だ。この間まで戦争をしていた帝国からの旅行者だと言い、カセリーヌさんは昔は役者をしていたと言っていた。

僕はその人を天眼を使って見た時、思わず声を上げて驚きそうになってしまった。何故なら、二人の頭上に天使の輪の様な物が浮かんでいたからだ。それは昔、古い伝承にある神の加護を受けた人の特徴であると思い出した。まさか、本当にこんな人がいるのかと思ってしまったが、声を抑えて二人の話を聞いていた。

この時代に神の加護を受けた人が居るのかという驚きがありながら、なるべく観察して目に焼き付けておきたいと思いながら自分はカセリーヌさん達と話をしていた。ディルクさんはぶっきらぼうと言うか面倒臭そうというか、結構雑な感じだったけど根は優しいんだとカセリーヌさんから聞いていた。

 

結局、マルティーナにバレて家に返されたけど、その時の興奮が抑えられなくて僕はマルティーナに神の加護を受けた人がいたと話してしまった。

初めは半信半疑と言った様子だったが、僕のその興奮具合や先祖返りと言われるくらいの強い天眼からそれが真実なのだと理解してマルティーナも驚いた様子を見せていた。

 

今度、ここに内緒で呼んで欲しいとマルティーナに懇願しながら、僕はカセリーヌさんとディルクさんとまた会える事に期待していた。

 

しかし、カセリーヌさん達は二日後には止まっていたホテルから居なくなってしまっており、出て行ってしまったのかと思うと少し悲しかった。

もし会えるなら、また会いたいと思いながらジョヴァンニはその伝承の乗った古文書を見ていた。

 

「…あっ、もしかしたら……」

 

ジョヴァンニはふとある事が思いつき、目に力を入れて天眼を発動させた。黄金色の目に薄く魔法陣が浮かぶと高台にある家から街を見下ろしていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「ぐああぁぁぁぁ!!痛ぇぇぇぇ!!」

「黙らっしゃい!!手当してんだから!!」

 

松島に怒鳴られ、悲鳴を上げながらガーゼで血を拭き取られているのは南部茂であった。その傍では心配そうに茂の様子を眺める蓮子の姿があった。

あの爆破事件から二日後、彼等は街郊外の廃倉庫で治療を行っていた。

 

茂は軽く怪我をしており、脱ぎ捨ててある教国兵からいただいた服には穴と血が付いていた。目の前の状況に思わず目が点になりながら大湊が聞いてくる。

 

「それで、いったい何があってこうなったんだ?」

 

そう聞くと、蓮子は茂が無事でホッとしたのか先ほどよりは余裕のある声で答える。

 

「初めに禁書保管室に入って調査したんだけど、その後茂くんが血相を変え戻ってきて逃げろって叫んだら……」

 

すると、蓮子はその時の状況を詳しく話した。

 

 

 

 

 

「不味いっ!?蓮子逃げろ!!」

「え?どうしたの?」

 

血相を変えて武器庫から戻ってきた茂に疑問符が浮かぶ蓮子であったが、茂は蓮子の手を引きながら言う。

 

「爆弾だ。武器庫に大量の時限式の爆弾が仕掛けられていた」

「えっ!?何で?!」

「俺も分からん!ただ、俺たち以外にも此処に来た奴がいるって事だ……っ!隠れろっ!!」

 

そう言い、地下の物陰に隠れるとその先で灯りと悲鳴らしき声が聞こえて来た。

 

「何だ貴様ら!!」

「撃てっ!!」

 

その直後、小銃弾の弾ける音が聞こえ、その直後に複数の銃撃が飛んで目の前で教国兵は蜂の巣にされていた。

 

「(一体何が……っ?!)」

 

その時、通路の影から複数の人間が現れ、思わず身を隠す。五、六人ほどの人が暗い通路を歩いており。何か話していた。

 

「爆薬の設置を完了しました。五分後にここを爆破します」

「よし、撤退する。ここでの仕事は終わりです」

「「(っ?!)」」

 

その声を聞き、隠れていた茂達は一気に警戒心が高まり、思わず顔を見合わせた。

 

「「(何故ここに小野寺が……??!!)」」

 

二人して同じ事を思ってしまった。

ここは教国の中でも特に警戒体制が高い場所。そんな場所にテロリストである小野寺が居るのが疑問でしなかった。いや、それよりもここに小野寺がいると言う事は何かしら抵抗軍に関する情報が集まるかもしれない。しかし、爆破すると言ったと言う事はここで生き埋めになる可能性があった。

 

茂達は知りたい情報は知ったし、ここだ死ぬわけにはいかないから。悔しいがここで撤退しようとしたが……

 

「だがまずは…そこに隠れている教国兵を片付けて下さい」

「くそっ、気づいていたか……」

 

すると、その瞬間。隠れていた物陰に向けて抵抗軍兵士が銃撃を敢行する。持っているのは帝国製突撃銃や、共和国製短機関銃。掠った弾丸が岩を抉っていた。

 

「ちっ、エレベーターに乗って逃げるつもりか……!!」

 

影に隠れながら移動する小野寺達を確認した茂はそう呟くと障壁魔法を展開しながら持っていた半自動小銃でバースト射撃をして灯を消す。

辺りが真っ暗となり、目元に光増幅魔法を使った暗視を使って正確な射撃をするとそこにいた兵士は倒れていった。

多種多様な銃が採用されて混同している教国の武器だが、茂達が奪ったブレダPGは短い連射であるバースト射撃ができる画期的な機構を有していた。

そしてモノクロの視界から抵抗軍兵を一発ずつ撃って皆殺しにするも、彼等は前の時と同様アンデットと化して起き上がって来た。

 

「ちっ、またアンデットか…しつこい奴め……」

 

そう呟くと、茂はアンデット化した抵抗軍兵を頭に向けて撃つ。

 

「援護する!!」

 

そう言い、蓮子も小銃を握ってバースト射撃をしながら近寄ってくるアンデッド兵を倒して行く。いつも通り頭を撃ったら倒れて行く。ゾンビゲームの様な光景に思わず嫌気が出てしまう。まさか、異世界でリアルゾンビゲームをする羽目になるとは誰が思うだろうか。まぁ、異世界転移自体ラノベだけの世界だと思っていたんだけどさ……

 

そんな思考ができるくらい余裕で抵抗軍兵を倒してエレベーターに向かうと、そこで銃撃を受けて隠れる。音的に共和国製の7.65mm弾だろう、共和国では一般的な拳銃弾だ。……因みにこの拳銃弾を追いかけるとピダーセンデバイスと言う面白い銃に辿り着く。

 

 

 

抵抗軍兵を倒し、小野寺を追いかけている茂は障壁魔法を展開しながら小野寺を倒す為に飛び出して接近する。

 

「っ?!」

「……っ!!」

 

小銃を持って小野寺と対峙すると、相手は少し驚きながらも言う。

 

「なるほど…君はあれで驚かないのか……」

「……」

「反応は無し…か。じゃあ……」

 

その瞬間、小野寺は持っていた拳銃の引き金を躊躇なく引いた。その瞬間、障壁魔法を展開してお返しの小銃弾をお見舞いしたが、撃った瞬間に小野寺は消えていた。

拳銃の発砲炎で一瞬だけ見えなくなったその瞬間に小野寺は逃げ出していた。

 

「っ!!逃すかぁ!!」

 

そして、驚きの移動速度に驚愕しつつも茂は追いかけると、すでにエレベーターが閉じ始めていた。

慌てて茂がエレベーターの扉に手をかけた瞬間、中にいた小野寺が銃を突き付けながら言う。

 

「残念だな。もうすぐで此処は爆破だ」

 

そう言った瞬間、小野寺は引き金を引き飛び出した茂は放たれた弾丸を左胸にモロに受けて倒れてしまった。引き金を引いた小野寺は扉が閉まる中、拳銃をしまって余裕そうにしていた。

 

 

 

 

 

「茂くん!!」

 

慌てて追いかけて来た蓮子はそこでエレベーターの前で倒れている茂を見る。

 

「っ!?」

 

すると、彼の着ていた服に軽く血が滲んでいるのを見て、慌てて心音を確認する。

 

「……」

 

胸に耳を当てて少し待つと、ホッとした様子を浮かべた。その時、地下室一帯に警報が鳴り響き、赤いランプが点灯する。

此処にいるのが不味いと感じた蓮子は茂の腕を肩に持って軽く引き摺りながら適当な部屋に移動する。

 

「はぁ…はぁ…まだ此処なら……」

 

息をやや切らしながら蓮子は入った部屋で茂を横に寝かせると、部屋にあった大きな影を見た。

 

「此処って……」

 

よく目を凝らしてみると、そこには5m四方の何かが掘られた石棺らしき物があった。

思わず周りを見回しながら地図を思い返すと、此処が何処か分かった。

 

「此処は…霊廟か……」

 

そう呟くと、遠くから大勢の人が走る音と怒声が聞こえ、それが教国兵であると分かった。

 

「これで、終わりなのかな……?」

 

そう呟き、半ば諦めのため息が漏れた瞬間、部屋全体を覆う様に大きな振動が走る。

抵抗軍の仕掛けた爆薬が爆発した音だ。これだけの振動ならまず間違いなく死ぬだろう。

 

「……」

 

死ぬ前に走馬灯が見えるとはよく言うが、自分にはそう言うのは無かった。だが、今の自分に悔いはなかった。茂には申し訳ないが……

 

そう思って蓮子は気絶しままの茂を横に寄せると、そのまま目を閉じていた。そうして、死を悟ったと思った蓮子が目を閉じると、爆発の衝撃で霊廟のある部屋にも瓦礫が落ち始め、軽く破片が掠っていった。

 

するとその時。蓮子のポケットから金色の光が漏れ始め、二人を包見込むと、爆発があった地下施設に二人の姿は消えていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「……んで、気が付いたら街の外の森に放り出されていたと?」

「そんな所」

 

話を聞き、ペトロ郊外の廃墟の倉庫で大湊が言うと蓮子は頷きながらポケットに入っていたあのジョヴァンニからもらった黄金色のアクセサリーを不思議そうに眺めていた。すると、大湊は手に弾丸がめり込んだ蓮子の上げた蓮の花のブローチを見る。

 

「此奴で弾丸を防いだのか……運が良かったな。南部」

「まさか、映画見たいな光景を見るなんて驚きだね……はい、終わったよ」

「あぁ、ありがとう……」

 

そう言い、傷の癒えた茂は左胸を軽く触ると起き上がる。

あの小野寺の弾丸を受け止めたが、衝撃を完全に吸収できる事はできず、おまけに爆発時の瓦礫で傷を負ったから銃撃のショックよりもそっちの方が痛かった。蓮子には申し訳ない事をしたと思いながらも、いきなり森に放り出されていた事に疑問に思っていると俺たちのいる廃倉庫の扉が叩かれた。

こんな所に来るなんて絶対危ない奴だと一瞬で認識し、全員が拳銃を持って警戒していると、扉の奥から声が聞こえた。

 

『マルティーナ・アエルフェルです。ディルク・ゲーリック様は此処におられますでしょうか?』

 

扉の奥からは自分たちの知る声が聞こえて来た。




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