戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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何でこんなにお気に入りとか増えた……???
((((;゚Д゚)))))))


八八話

統合作戦本部……今度の法律改定で国防省と名を変えるその場所で、終戦条約に不満を覚える強硬派による人質事件。人質となったのは各軍部のお偉いさん達で、その中には義父や義姉の姿もあった。

 

「今の指揮官は?」

「マンリヒャー・フォン・ブラウストン少将であります」

「貴族の少将か……」

 

自分が言えた立場ではないが、貴族だから信用ならん。

 

「囲っているのが貴族の指揮する部隊だとまともに動くと思うかい?」

「どうでしょうか…あまり聞き覚えのない軍人ですので……」

「基本的に人質事件は手こずるからな……」

 

交渉役がどれだけ上手くやってくれるかの問題だが……。

 

「我々はどう動きますか?」

「そうだな……」

 

我が部隊はどの軍の命令系統にも入らない完全独立した部隊。そして上司は陸軍参謀総長だ。その司令官が人質となっている今、自分達はどう動くべきか……。

 

「俺が話して見るか……」

 

そう呟き、ディルクは演算機やら諸々を脱ぐと制服に着替えた。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

現場の司令本部となっている街の公園にディルクは入る。行く先々で勲章を付けているために敬礼を受けている中、ディルクは公園のとあるテントに入った。

 

「閣下、ディルク・フォン・ゲーリック少佐殿をお連れ致しました」

 

自分と同い年くらいの一兵卒の後を追ってテントに入ると、そこで一人の将校と面会した。

不精に生えた髭、緩い目元。そして何よりはち切れそうなほど膨れた腹。見るからに貴族のボンボンに見える将校が座っていた。

 

「うむ、ご苦労であったな。少佐」

「はっ!」

 

敬礼を受け、ディルクも立ったまま敬礼するとマンリヒャーは言う。

 

「来てくれてそうそう悪いのだが、此処は若者の来る場所ではない」

「…それはつまり……」

「今回の事件、君が関わらなくて構わない。此処は我々の仕事だ」

 

その目はどこか馬鹿にする様な目で、自分を排他的にみていた。此処で負けじとディルクも反論する。

 

「失礼ながら少将閣下、現在の状況はお教えてはくれないのですか?」

「無論だ。部外者に今の状況を知らせるわけにはいかない」

「私の家族の状況もですか……?」

 

そう言うと、彼は頷いた。

 

「そうだ。下手に情報を流せば、君も混乱してしまうだろう?」

 

そう言い、マンリヒャーは執拗にディルクを追い返そうとした。

 

「しかし、これほどの事件です。いつ報道するのかはお教えいただけませんか?」

「今日の夜にラジオにて発表する。それまで君は家にいる事だな」

 

そう言うと、マンリヒャーは目配せをすると周辺の兵士がディルクをテントの外に案内した。

 

「此方に、少佐殿」

 

そう言い、追い出されてしまったディルクはそのまま諦めて街を歩く。

 

 

 

 

 

現在、レルリンは厳戒態勢にあり。市民の外出は制限されていた。街中に集結した陸軍部隊が展開し、上空には監視用の航空機が展開していた。

 

「相手の目的すら教えてくれないとは……」

 

試しに寄ったが、しまっていたあのカフェの前でディルクは立ち止まる。何かしらに関わらせてくれるかと思ったが、その前に追い出されてしまった。

公園で自分を見ていた兵士のうち一部、おそらくマンリヒャー少将の部下は自分を腫れ物を見るな目をしていた。

 

「俺、そこまで悪い事したかな……」

 

自分の今までの行動を思い返しながらカフェを移動しようとした矢先。

 

「ミャア」

 

一匹の黒猫がディルクの足元に近づいてきた。

 

「?」

 

するとその黒猫はディルクの足で体を擦り始めた。野良猫かと思いながらディルクは黒猫の頭を撫でながら軍服のポケットの中を漁っていると、その黒猫はディルクの身体を離れ、顔だけ此方に向けてもう一度鳴いた。

 

「……着いて来いって?」

 

するともう一度鳴いたので、ディルクは部隊に戻る途中ではあるがその猫の跡を追いかけた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

黒猫の跡を追って都市の裏路地に入ったディルクはそこで建物の壁にもたれ掛かる一人の人物を見た。

 

「っ!?デニスっ!!」

 

もたれ掛かっていた男の名を叫んでディルクは近寄る。すると、声をかけられたデニスはディルクの顔を見ると驚きと安心した表情を浮かべた。

 

「よう…ディルクか……」

「お前、どうして此処に……!?」

 

身体を支えた時、ディルクは生暖かい感触を感じて触れた手を見ると掌は赤く染まっていた。よく見るとデニスの腹部は血で滲んでいた。

 

「怪我をしたのか?!ちょっと待ってろ」

 

そう叫び、治癒魔法を使って腹部の銃瘡を手当てする。

 

「いやぁ、見つけてくれて助かった……」

「例ならそこの猫に言っとけ」

「ありがとよ……」

 

そう言い、デニスの側で心配げにみている黒猫の頭をデニスが撫でる。するとその黒猫は嬉しそうに甘えた声を出した。

治癒魔法で出血を止め、弾痕をディルクは確認した。

 

「弾は残っていなさそうだな……ちょっと痛むぞ」

「うっ、結構来るな」

「近場の病院に連れてってやる。それまでの辛抱さ」

 

そう言い、脇の下から首を入れてデニスを背中に担いだ時。

 

「動くな」

 

ディルクは背中から銃を向けられた。これには流石にディルクも驚く。

 

「……誰だ?」

 

そう問いかけると、銃を突きつけた男は言う。

 

「憲兵隊だ。ディルク・フォン・ゲーリック少佐。貴方には情報漏洩の嫌疑が掛けられている。ご同行を」

「こっちは怪我人背負っているのにか?」

「こちらも仕事ですので……」

 

そう言うと、その憲兵を名乗った人物の他にも拳銃を持った憲兵の腕章を付けた兵士が数名現れた。それらを見てディルクは言う。

 

「コイツは俺の友人なんだ。せめて病院まで行かせてくれないか?」

「閣下より貴方を即刻逮捕する様命令を受けています」

「そうかい……君たちは俺の友人を見殺しにしても構わんと言うことか?ええ?」

「っ……」

 

ちょっと怒気を含んで言っただけなのにこの有様だ。おそらく憲兵でもまともに仕事をした事がない連中だろう。実を言うと治癒魔法で血は止めたし、中の治療も抱えながら現在している最中だ。こう言う時、魔法は便利だと思ってしまう。

 

「それに、誰の命令で俺を逮捕するって?所属番号は?所属部隊名は?」

「……」

「言えないのか?憲兵なのにか?」

 

そう言い、ディルクが振り返るとその憲兵は持っていたワルサーPPを軽くするわせて叫ぶ。

 

「動くな!」

「手が震えているぜ。憲兵さん」

 

部隊章は第一憲兵隊……どうやら軍籍は本物らしい。だが……第一憲兵隊は主に貴族から構成される憲兵隊だ。つまり、貴族の意思で動く部隊。

 

「そんな銃で撃てるのかい?戦争を経験して無いお坊ちゃん?」

「っ!!平民の分際で!!」

「撃てるのなら撃ってみると良い」

「っ!!」

 

明らかに煽り散らしているのが丸分かりだが、その憲兵は顔を真っ赤にして拳銃の引き金に指をかけた。

 

 

 

その時、

 

「うごっ!?」

「がっ!!」

「ぐはっ」

 

三人の俺を捕らえにきた憲兵は上から落ちてきた黒い影に押しつぶされる様に倒れた。すると上から演算機特有の圧搾空気の吹き出す音と共にコンラートが降りてきた。

 

「申し訳ありません。閣下」

 

真っ先にコンラートが頭を下げ、ディルクはそれを見て言う。

 

「いや、良い。それよりもウチの医療兵を呼んでくれ」

「はっ!」

 

コンラートは敬礼すると魔法で眠らした三人の憲兵を拘束していた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

その後、デニスを第五〇〇部隊の展開している裏路地に運び、そこで治療をさせたディルクは先程の経緯をコンラート達に言う。

 

「どうでしたか?」

「見事に追い出されたよ。若造は家に帰ってラジオを聞いてろ、だってさ」

「そいつはまた……」

 

コンラート達古参の部隊長が困惑する。

 

「まるで腫れ物扱いだったよ」

「なかなかな扱いですね」

「全くさ」

 

そう言うと、ディルクは部隊内の通信兵に聞く。

 

「情報の取得は?」

「はっ!逐一確認しております」

 

そう言い、Mボートに搭載されている盗聴器で電話線や無線を傍受しているのをディルクは確認する。

 

「現状は?」

「交渉は平行線を辿っていて一向に動きはありません」

「……」

 

報告を聞き、ディルクは少し考える。基本的に人質事件というのは解決に何日もかかる所業だ。事件発生からまだ半日ほどしか経っていないからまだどのくらい掛かるか……。

 

「(まぁ、ペルーの大使館の時も半年かかったしなぁ……)」

 

あれは長すぎる部類に入るだろうが……。

少なくとも五日くらいは見ておいた方が良いだろう。まだ事件は始まったばっかで強硬派連中も興奮で話にならんだろうし。

 

「相手の要求は……」

「終戦条約の改訂です。指揮をしたのは公爵のブランデンブルグ家の御子息の様です……」

 

ゲルハルト大尉が其れらを纏めた紙を渡す。こういう時に優秀な部下を持つと楽ちんだ。

 

「馬鹿な奴もいるもんだ。終戦条約は既に締結された後だっちゅうのに……」

「そもそも終戦条約は改訂できるんですか?」

 

そんなゲルハルトの問いにハインリムが答える。

 

「いや、前の終戦条約を撤廃して新たに終戦条約を締結すれば……多分」

「そんなの共和国と会議をセッティングしなきゃダメじゃ無いですか?」

「あぁ、まさしく無謀だ」

 

彼らの要求する終戦条約の改訂は共和国との折り合いも兼ねている上に、終戦条約の改訂をする為に会議をせねばならない。というか、彼らの要求を共和国が呑むはずもなく。せっかくの融和ムードがぶち壊しになってしまう。

 

「ったき、こっちは抵抗軍の対応で忙しいってのに……」

 

思わずそんな言葉が漏れてしまうと、他の隊員達も苦笑していた。現在、第五〇〇部隊のうち、第一から第三までの中隊が集まっており。残りの二中隊は共和国で待機している。待機といっても半分軟禁状態で、監視の目があるが……。

 

「取り敢えず共和国にいる部隊を呼び寄せよう」

「……宜しいので?」

 

コンラートがやや驚きを交えて聞くと、ディルクは言う。

 

「今の現状、人数は多い方が良い。皆も彼らの実力は知っているはずだ」

「了解しました。では直ぐに連絡いたします」

 

そう言うと、コンラートは連絡係に電話をしに行く。其れを見届けたディルクはデニスが治療を受けている筈のMボートに向かう。

 

「まずはデニスから色々と話を聞かねば……」

 

 

 

 

 

 




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