戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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最後に重大発表(多分)あり!


九四話

呼び出しを受け、指揮所に来たディルクは其処で何度目かもうわからないロンネル閣下と作戦の為の会議をしていた。

漆黒の降下猟兵服と言う特異的な格好ではあるが、人目を避けてやって来ているのであまり騒ぎにはなっていない。と言うかうち等の存在がバレると色々と面倒なんだ。

だが、ロンネル閣下やその周辺の人はある程度の情報を知っているが故に特に驚くことも無く対応してくれる。下手につっこんで聞かれることもないから有り難や有り難や。

 

「どうするのですか?」

「今の所遅らせるだけで良いと思いたいが……」

 

やや深刻そうな表情でロンネル閣下は言う。

 

「交渉役からの報告で、中の強硬派の精神状態が不味いと報告が上がった」

「それは……」

 

一瞬嫌な予感が走った。しかし、ロンネル閣下は其処で一瞬否定して言う。

 

「まだ事を起こしたわけではない。……ただ、()()()がある可能性がある」

「っ!!」

 

一瞬だけディルクは背筋が伸びる。だが、まだ行動を起こしていないと言う事で息を吐く。

 

「其処で少佐に頼みたい事がある」

「はい」

 

其処でロンネル閣下は自分に命令を下す。

 

「我々の存在はすでに貴族に知れ渡っており、下手に動けない。だが、君の所は貴族も気付いていない」

 

ロンネル閣下の言う通り、第五〇〇部隊は表向きは解散した事になっている部隊だ。閣下が知っているかは定かではないが……。

まぁ、知ったらペッツ参謀総長に誓約書を書かされるでしょうね。他言無用の……。

 

「其処でだ。我々が交渉をしている間に君達は中にいる強硬派の拘束をして貰いたい」

「……えっと?」

 

一瞬理解が追いついていないでいるとロンネル閣下は其処で自分に更に詳しく言う。

 

「今、地下に部隊が展開していると聞いている。其処から中に入って隠密行動を行なって欲しいと言うわけだ」

「……」

 

成程、それで知らぬ間に総長達を手助けしろと?

 

「失礼を申し上げますが……その作戦の危険性は承知しておりますでしょうか?」

 

ちょっと正気を疑う作戦に思わず聞き返すとロンネル閣下も事情を話す。

 

「もうすぐ参謀長達が人質になってから三日目になる。すでに情報は大陸中に出回り、今や注目の的だ。

それを見た諸外国は陸軍がまともに動かないと考えるかもしれん」

 

其処まで聞き、ディルクは理解する。クーデターが起こっている今、国内で混乱している間に国境を接する国々が一気に掌返して宣戦布告して来る可能性があった。

まだまだ周辺を海に囲まれて陸軍がすぐに動きにくい、日本人としての感覚が残っていると感じるとロンネル閣下は言った。

 

「だからとっとと事件を解決しないと他の国で何かした軍事行動を起こす可能性がある上。お偉いさんの精神もそろそろ限界が来る可能性がある。一々貴族の意見を聞き入れられないって事」

 

おそらくロンネル閣下だからこそ言える話だ。責任はロンネル閣下が全部負うらしい。まぁ、今の現場指揮官はロンネル閣下だしな。

 

「(責任を負うとか言ってる時点でダメな気もするが……)」

 

それでも秘密裏に動く事を許可された時点で随分有難いものだ。

 

「相手は烏合の衆だから制圧も簡単だろうし、人数も多いから一々確認もとっていないだろう。バレないように頼む」

「はっ!御期待に応えられるよう努力します」

 

そう言うとディルクは指揮所を後にして行った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

外で大騒ぎとなっている中、司令所の中では人質となっていた参謀長等は終わらない人質事件に徐々に憔悴し始めていた。今の所、ペッツが撃たれた話も音も無い。

 

「(彼は生きているか……)」

 

正直、彼らの真意が分からない以上下手に動けない。そう、こいつ等何を考えているのか全く分からんのだ。クーデターかと思っていたが、話を聞いているとどうやらそうでも無いらしい。

 

「(奴らは何を考えているのか……)」

 

どうやらこの強硬派はクーデターと考えている者()()()と言う烏合の衆も良いところといった具合のボロボロな集団だった。

 

『外の状況は?』

『皇帝陛下より作戦停止を受けたらしい』

『これで暫く時間稼ぎはできるな』

『これからどうすれば……』

 

情報漏洩も酷い状態だ、息子であればあり得ない話だ。自分が貧乏とは言え帝国貴族である事が恥ずかしく思えるほどだ。

しかし、貴族の影響力は馬鹿にできないものがある。それが今の状態だ。他の落ち着いた参謀などは馬鹿な強硬派の兵から漏れる情報を元に外の状況を盗み聞きしていた。

何でも外に展開した機甲師団は名将エドウィン・ロンネル率いる第七機甲師団であると言う。せっかちを体現した彼に現場指揮を任せられるのかと一抹の不安があるが、今の所何とか堪えているようだ。

 

「(ディルクが手回ししているか?)」

 

彼はややではあるものの帝国貴族の傲慢さに飽き飽きしている。よく堪忍袋の尾が切れないと思った。おそらく……

 

「(すでに動いているのか?)」

 

国防上、そろそろ事件解決をしなければ諸外国が動く可能性がある。それを現場主義者であるロンネル中将はよく知っているからこそ恐らく今日中に解決したいと考えている筈だ。彼の事だ、恐らく裏で色々ディルクに指示を出しているのだろう。

 

「(ペッツが毒殺でもされていなければ良いが……)」

 

コルネリウスは何をしているか分からない友人を想像していた。

 

 

 

 

 

二十時二五分

参謀総長執務室

 

人質となってから丸二日。ペッツは執務室に軟禁された状態で常に誰かの監視を受けていた。

出される食事に毒を入れている様子もなく、今の所殺されてはいない。

 

はっきり言って彼らの目的は不明だ。何せクーデターと言う者や単なる脅しと言う者と実に様々な烏合の衆以下の集団であったからだ。それもそのはずで音頭を取るブランデンブルクの臆病な息子がどっち付かずの優柔不断な男だったからだ。

()()()()()()()()の第一近衛師団に居たが、印象に残っていないと言う事はつまりそう言う事な為、まず間違いなくあの戦場だったら死んでいただろう。いや、死んでくれた方が良かった。

 

「(全く、何のために司令部占拠をしたのか……)」

 

正直、暇でしか無い現状。時折自分をこの席から引き摺り下ろそうと交渉にやって来る。一応銃を突き付けての交渉ではあるものの、現地叩き上げのペッツにとって怖くも何もなかった。寧ろ今の貴族の武器の扱い方に内心憐れむ程だ。

 

「(だからと言って下手に動けないのも事実)」

 

彼のどっちつかずな感覚がクーデターや脅しとして考えている彼ら強硬派を上手い具合にまとめ上げており、何十人といる兵を指揮っていた。

多勢に無勢、この部屋で監視する一人の兵を倒しても撃ち殺される未来しか見えなかった。

 

「(さて、そろそろ動く頃合いかな?)」

 

窓はカーテンで塞がれており、外の様子は見えない。だが、交代の隙をついて展開中の部隊を確認した時、ホッとしたものだ。

 

「(ロンネルであれば問題なかろう……)」

 

せっかちを人にしたような彼であれば直ぐにでも突撃するだろう。そう思っていたのだが……

 

「(貴族と言うのは恐ろしいな)」

 

こう言う時、余計に事態をややこしくするのが貴族の十八番。彼らの親が帝室に泣き縋ったようだ。おかげで事前の作戦は御破算となった可能性がある。

 

「(これだからこの国に貴族はいらぬのだ)」

 

コルネリウス?あの家は元々貧乏貴族だから平民のようなものだろう(無慈悲)。

今度爵位を返したらどうかと提案して見るかなどと考えながらペッツは執務室の椅子に座った。革命の際に彼を失う可能性があるのであれば、爵位を返上しても良いのでは無いかと考えていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「本当にやるのか?」

 

地下発電所の出入り口でハインリムが改めて問いかける。それに答えるのは第四中隊中隊長を務めるカセリーヌ。

 

「ええ、命令はお聞きした通りだと思われます。先輩」

「しかしなぁ……」

 

渋るハインリムにカセリーヌ達は短機関銃や拳銃を確認する。

 

「諜報が得意なのはご存知でしょう?」

「そうなんだがなぁ……」

 

顔を顰めるハインリムにカセリーヌは言う。

 

「もし阻止したいなら私達の手をここで止めれば良いんですよ」

 

そう言い、薄暗い灯りとベトンで塗り固められた地下の通路を確かめる。

彼らは演算機を持っていない。つまり、旧来の魔法兵程度の実力しか持っていないと言う事。ただ一つ、隠密行動に関しての能力が秀でている以外は……。

 

「では」

 

無音で扉を開け、発電所から出て行くカセリーヌ達第四中隊を見送り。ハインリム達第三中隊は与えられた任務である非常通電装置を破壊していた。

 

 

 

 

 

非常発電室は司令部地下の最奥に存在し、都市一帯の電源が落ちても通信設備や魔導レーダーの電源を残すための重要区画もである。しかし、今は外から通電されている状態なのでそれほど重要でもなかった。

と言うか、人質がいる現状。地下に人員を必要としておらず、主に食堂と執務室などの地上階に兵を配置していた。

 

「……」

 

特に薄暗い地下の警護などで入り口がないのだから必要ないと思われており、地上につながる階段に二人配置するだけで終わると言うお粗末なものであった。

 

「うごっ!?」

「ごふっ?!」

 

ほぼ明かりのない地下を背に地上を見ていた二人の兵は常闇から見えた銃口と、引き金を弾く音と共に気絶弾が発動して軽い脳震盪を起こして倒れた。

 

「……クリア」

「異変無し」

 

即座に二人を回収し、地下に引き摺り下ろしたカセリーヌ達は上を確認する。その手には拳銃や帝国製短機関銃をぶら下げ、上にいる兵士と同じ装備を持っていた。

すでに地下の武器庫に常駐していた職員はおねんねしているので、これにて地下の制圧は完了していた。

 

「さ、次の作戦を行うわよ」

 

カセリーヌの呟きに地下に居た全員は頷くと先ほど気絶させた二人を地下の一室に引き摺り込んでいた。




近々、なろうでも同じ作品名で出そうかと考えています。(なお実現するかはわからん)
中身も少し変更するつもりです。現在誠意製作中です!

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