黒の飛蝗は橙色の夢を見る   作:世界一孤独なチンパン

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 先週のお約束通り今回で完結させると言った結果、作者史上めちゃくちゃ長くなってしまいました。一気に詰め込みすぎるといかんね。

 今回から、本作品をお読みいただくにあたり【▶ ~♪】のような見慣れないマークが出てきます。それは、『その曲を流しながらお話を読んでね』ということなので、バックグラウンド再生やらなんやらで音楽を流しながらお読みいただくと物語がより一層楽しめると思います(絶対に面白くなるという保証は出来ません)。

 今回でスパスタ本編+オリストを加えた約2,3週間にわたり連載した課題編が終了いたします。次回スパスタ4話オリストを挟まずに駆け抜ける予定です。そして、次話を投稿すると同時にオリ主の設定も投稿させていただきますのでお楽しみに。

 それではどうぞ。


#11 課題Ⅶ『クーカー~遂行~』

 

 時刻は午後7時。わずか2時間半の準備が終わり代々木スクールアイドルフェスの会場へと集ったかのんと可可。観客席にはSunny Passion含めその他のスクールアイドルを一目見ようと、街中の人たちが大勢いた。

 

「凄い人…!」

 

「さすがはスクールアイドル。夢に見たステージデス!」

 

 かのんは集まった人たちの多さに驚愕し、可可は夢にまで見たスクールアイドルのステージに自信が立てることへの感嘆の声がでていた。

 

「どうしよう…緊張しちゃう…」

 

「もし歌えそうだったら、始まりの時合図をクダサイ。歌えなかったとしても、堂々としていてクダサイ。可可が歌いマス!」

 

 ギリギリまで自分を信じて頑張ってみるとは言ったものの、いざ今観客として身に来てくれている大勢の人を目にすると少したじろいでしまう。不安の声を漏らしたかのんではあったが、もしダメだったとしても可可が代わりに頑張って歌ってくれると聞き、少しだけ心が軽くなった。

 

「ありがとう…!」

 

 かのんが可可に精いっぱいの感謝を述べていたそのころ、会場から少し遠くにいた金髪の少女。いつぞやの登場である『平安名すみれ』の耳が、ふと入ってきた黄色い歓声に反応しピクピクと動く。

 

「ん?」

 

 すみれのそばを始まっちゃうやらいそげやらと言いながら駆け抜けていく彼女と同世代の少女たち。その行先が気になり、彼女も経った今駆け抜けていった少女たちを追いかける。ビルの陰からひょっこりと顔を出してみてみれば、入学式の翌日に自分に声をかけてきたオレンジ髪の生徒がグレーのボブカットの生徒と背中を合わせ待機している。

 

「フンッ。道理でスカウトが街にいないわけね…」

 

 すみれはそう呟きながら目線の先にいる2人を見つめていた。

 

 

 

 6日前に可可によって決められた2人だけのユニット名を叫び、エールを送る千沙都。

 

「お姉ちゃん頑張れー!!」

 

 自身の姉の晴れ姿を見ようと千沙都同様エールを送るありあ。その他大勢のエールを受け取り、かのんと可可の2人は拳をぐっと握りしめる。だが、他の観客よりも遠くから見ていた澪にだけ気づいていた。

 

 2人の握りしめていた手は、かすかに震えていたのだ。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「大丈夫…大丈夫…大丈夫…」

 

 多くの期待の視線。もうすぐ歌うことになる、かのんと可可のデビュー曲。だが、何よりも緊張が勝ってしまう。呼吸の仕方が分からない。どういう風に歌えばいいのか。もし歌えなかったらどうなってしまうのか。そんなネガティブな思考に陥っていたかのんだったが、それは背中越しにいるもう一人のパートナーにも言える状態だった。可可は自己暗示をひたすらに続けていた。絶対に大丈夫。と。

 

「どうしたんだろ、2人とも…」

 

 澪と同じくらいの距離で見ていた景和が不思議そうに呟く。澪はただ黙って2人を見つめていた。

 

「何してんの?あの2人…」

 

 遠くからでは見えないため、観客席の方へ移ろうと思ったのか。サングラスをかけこそこそと移動を開始した。だが、それが悲劇を生んだ。

 

「うわぁッ!?」

 

 誤ってコードに足を引っかけ転倒。しかもそのコードは、会場の照明器具へと接続されている一番抜いてはいけないコード。あろうことかこの平安名すみれという女。転倒した拍子にそのコードを抜いてしまったのだ。当然そのあとすぐに起こったのは、ステージの停電。

 

「!?」

 

 会場一帯にどよめきが起こる。

 

「一体どうなってる?」

 

「英寿さん、道長さん。これって…」

 

「分からない…。でも、最悪の事態を想定するなら…」

 

「でも、ジャマトの気配は今のところないから、もしかしたら本当に機械の故障かも…」

 

 個人の用事を済ませ、タイミング悪く駆けつけた英寿と道長。澪を含む4人は脱走したジャマトの襲撃かと考えるが、観客席の方から悲鳴が聞こえていないこと、そして多少情緒が不安定になっているものの、2人に命の危険が及んでいないことから、単なる機械の故障と景和は推測する。

 

「やっちゃったったらやっちゃったのよぉ…」 

 

 停電の犯人基平安名すみれは、急いでコードに駆け寄り修復を試みる。ステージの明かりが消えたことで、会場を包むのは先ほどとは打って変わっての恐ろしいほどの静寂。とんでもないほどの焦りを見せ、抜かれたコードの両端を交互に見つめるすみれをよそに、会場内の空気は段々と重苦しいものへと変化していく。

 

『フェスで醜態をさらせば、この学校の評判にも関わります』

 

 いつか、生徒会長に言われたことを思い出す。やはり自分の理想なんて、叶うはずないのだろうか。自分自身のことを夢と言ってくれた可可の夢まで潰すことになってしまって。そんなので、よく可可の力になりたいなどと言えたものだ。あの頃の自分を殴ってやりたい。それほどまでに、かのんの心は絶望で埋め尽くされていた。

 

 

 

 

「そうだ…」

 

 澪は目線の先に2つの白いお団子があるのを見つけた。かのんには見に来るなと散々言われていたが、この際だから仕方ない。説教や愚痴は、後でいくらでも受け付けよう。

 

「嵐!!」

 

「澪君!?なんでここに…」

 

「細かい話は後だ。それより、あれ。持ってるか?」

 

 澪は手で握る形を作ってから左右振るようなしぐさを見せる。千沙都はそのジェスチャーですべて察したようで、カバンの中から白色の棒を1本取り出して澪に渡す。

 

「まさかこれが役に立つなんてな…」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

「なにそれ…」

 

 とある日、可可に呼び出されて廊下についた澪。そこで彼は、可可から一つの白い棒を差し出された。

 

「ライブを行うにあたって用意した、特性ブレードデス!フェス当日に来てくれた皆さんにお配りする予定でして…。よろしければ、レーさんにもおひとつ持っておいてほしくて…」

 

「ブレード…。って作ったのか!?」

 

「ハイ!」

 

「まじかお前…」

 

 まさかこの世にブレードを作れる女子高生が存在していたとは。そう思いつつ手を伸ばして受け取ろうとした澪だったが、

 

『失敗してるところなんて見られたら、それこそ歌うことが嫌になりそう…』

 

 少し前、かのんが陰でぽろっと呟いていた言葉を思い出す。自分が行くことで、彼女の大好きなものを壊したくはない。そう考え、受け取ろうとした手を引っ込める。

 

「悪い。その日俺バイトでさ。お前たちのライブ見に行けねえんだ」

 

「そうデスカ…。ごめんなさい」

 

 それを聞いた可可はばつが悪そうに顔をうつむける。

 

「いやいや!別にお前が謝ることじゃねえよ!!見に行けえ俺が悪いんだし…。でも…」

 

 澪はそこで少し口ごもる。不思議に思った可可が彼の最後の言葉を復唱する。

 

「でも…?なんですか?」

 

「優勝。頑張れよ…」

 

「…ハイ!ありがとうございマス!!」

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 可可に…そして遠回しにかのんへと送ったエール。その言葉が彼女の胸に残っていると信じ、かのんの夢を守るために嘘をつき、可可からあの時受け取ることの出来なかったブレードを天にかざす。

 

「行くぞ。嵐」

 

「オッケー!」

 

 彼らはそのスイッチを、力強く押した。

 

◇◇◇◇◇◇

 

 ふと、視界の端にぽつりと輝く2つ光があった。その光にいち早く気づいたのは、可可。現実逃避をしようとばかりに閉じていた目を片方開ける。

 

「あっ…」

 

 2つあった光は3つへ、3つあった光は4つへ。5つ…6つ…。その光は段々と広がっていき、観客席のすべてを色とりどりの光で埋め尽くした。

 

「かのん!!見て!」

 

 可可は慌ててかのんへと呼びかける。彼女にもその光が目に入り、押し寄せていた絶望が、一気に消え去る感覚がした。

 

 

「はわわわわわわ…」

 

 こんな感動シーンの最中、その雰囲気をもぶち壊さんとするすみれの焦った声。一方で澪は覚悟を決めて大きく息を吸い込んだ。

 

 

「頑張れーッ!」

 

「今の声…まさか…」

 

 聞きなじみのある声に目を見開く。次から次へと彼女たちの元へクラスメイトをはじめとする様々な人からの応援。そして、本来来てほしくなかったと思っていた者からの応援。それらを受けて、かのんはフッと笑みをこぼす。

 

 馬鹿らしい。こんな簡単な答えがあることに、私はいつまで悩んでいたんだろう。自分は、1人では何もできないかもしれない。でも、みんなとなら…!

 

「歌える…。一人じゃないから!」

 

 彼女の目は、入学式の日と同じくらいに輝いていた。今なら自信をもって改めて言える。自分は、歌が好きだと。

 

 その気持ちを体現するかのように、ステージの照明が生まれたばかりの2つの小さな星を照らし出した。そんな彼女たちの名は『クーカー』。

 

 

【~♪Tiny star:クーカー】

 

 

 2人が作り出す独創的な世界。そのパフォーマンスは文字通り、見る人全てを虜にした。曲が終わった後、2人を待っていたのはけたたましいほどの歓声と拍手喝采。

 

「うぅぅ…」

 

 その凄さに、幼馴染は目尻に涙を浮かべたほどだ。フェスの1番目にするにはもったいないほどのステージが終わった2人は、大きく礼をして舞台袖にはけた。

 

◇◇◇◇◇◇

 

 あれから1時間弱。すべてのステージが終わった。フェスの大トリを飾ったのはSunny Passion。さすがは前年度のラブライブ全国大会出場者というだけあって、そのパフォーマンスから生み出される世界観は圧巻のものであった。だがそのライブをみても、かのんの心には後悔の気持ちは一切なかった。

 

「すべての演目が終了いたしました。これから、表彰に移ります。参加されたすべてのスクールアイドルの皆さんは、壇上へとお集まりください」

 

 アナウンスの指示で参加をしていた全スクールアイドルが壇上へと集まる。横一列に並んだ少女たちをずらりと一瞥した司会はマイクスタンドの前に立ち、言葉を発した。

 

 

 

 

『ただいまより。代々木スクールアイドルフェスの表彰式を…』

 

「皆伏せろッ!!!」

 

 司会の声を一人の男の声が遮った。何かと思いそちらを見たのもつかの間。観客席の向こう側、かのんたちから見た遥か後方から緑色の斬撃が放たれた。澪は咄嗟に千沙都を庇うようにして抱きしめる。そして次の瞬間、澪がいたすぐ後ろからけたたましいほどの爆音と爆炎が観客を襲った。幸い、近くにいたものが軽いやけどを負うほどの被害で済んだが、突如として襲撃された観客は皆パニックになり逃げ惑う。

 

「大丈夫か。嵐」

 

「う、うん…。助けてくれてありがと…」

 

 粉塵を吸い込んでしまったのか、咳き込みながら自身の安否を答える千沙都。澪は彼女の無事を安堵するが、それと同じくしてこちらに向かって宙を舞いながら倒れこんできそうな影が3つほど見えた。その3つの影の正体は英寿、景和、道長。3人は地面を転がり、澪の近くへとやってくる。

 

「英寿さん!景和さん!道長さん!大丈夫か!?」

 

「なんとか…」

 

「それより気をつけろ…」

 

「気をつけろって…まさか!」

 

「ああ。脱走したジャマトの1体だ…」

 

 英寿の言葉に合わせるように、爆発でかかっていた霧の向こうから1体のジャマトが姿を現す。緑色の体色に、チェスの駒のナイトを模した頭。いつぞやのデータで見た『ナイトジャマト』の姿があった。

 

『この時間。この場所…。どうやら奴の情報は正確だったようだなぁ…』

 

 ナイトジャマトは12体ほどのポーンジャマト(以後下っ端ジャマトと呼ぶ)を引き連れながら、フェスの会場を見ながら呟いた。

 

「なぜナッジスパロウのところから逃げ出した?」

 

 道長がナイトジャマトに尋ねる。その隙を見て澪は千沙都を含む観客をステージ側へと避難させていた。

 

『逃げ出したわけではない。連れ戻されなかっただけだ』

 

「その割には帰りたそうにもしてなさそうだがな」

 

『当然だ。そう易々と帰るわけにはいくまい。俺の目的のためにな』

 

「様々な考え?」

 

『ジャマトグランプリの再開催だ』

 

 英寿たちは息を呑む。『ジャマトグランプリ』。簡単に言えデザイアグランプリのジャマト版。最後まで生き残ったジャマトがジャマ神となり、残酷な世界を叶えることができる。

 

『本来ジャマトグランプリは我々ジャマトのために作られたもの…。だが、あの時ジャマ神となったのはあろうことか仮面ライダーである貴様だった』

 

 ナイトジャマトは剣先を道長に向けそう告げる。次第に口調は憎悪が込められた荒々しいものへと変化する。

 

『故に俺は思い立ったのだ。再びジャマトグランプリを開催し、この俺がジャマ神となる。そして今度こそ、俺たちジャマトの楽園を作り上げるのだと…。そのためには、とある人間の力が必要だ。そしてその人間は、今この場所にいる者の中にいる…』

 

「何!?」

 

『お喋りはこのくらいでいいだろう…。ゼラテウ(やれ)

 

 ナイトジャマトが下っ端たちに聞いたことのない言語で語り掛けた。この言葉を受け取った下っ端たちは、短剣を持って観客や、ステージにいたスクールアイドルたちに襲い掛かる。

 

「させるか!!」

 

 間一髪景和たち3人が下っ端たちを抑え込み、生身のまま戦闘を開始する。

 

「澪君!みんなを安全な所へ!」

 

「わかった!!みんなこっちだ!早く!!」

 

 景和の指示を受けて澪は素早く観客達を避難させる。ステージ上にいた出演者たちも観客たちに紛れて遠くへと避難した。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

「かのんちゃん!可可ちゃん!」

 

「ちぃちゃん!怪我はない!?」

 

「私は大丈夫!かのんちゃんたちこそ大丈夫!?」

 

「無問題デス!」

 

 千沙都は避難してきたかのんと可可と合流する。安否を確認し合う3人。ひとまずお互い怪我がないことに安堵し合う3人だったが、可可が本来ここにいるはずの人物がいないことに気づく。

 

「そういえば、レーさんは?」

 

「私たちを逃がしてくれて、それから…」

 

「「「もしかして…!」」」

 

◇◇◇◇◇◇

 

「ハッ!」

 

「ハァッ!!」

 

「ダァッ!」

 

 澪が避難させるのを見届けた3人は下っ端ジャマト達を相手に生身の戦闘を繰り広げていた。彼らは最後の3体を地に伏せさせ、正面にいるナイトジャマトを見据える。彼らの周りには、12体の下っ端ジャマトたちが痛みに悶絶していた。

 

「あとはお前だけだ」

 

 道長が余裕そうな声でナイトジャマトに告げる。だが地に伏せられている者たちを見ても、依然として彼は焦る態度を見せなかった。

 

『フン。誰が俺だけだって?』

 

「何?…!?がッ!」

 

 彼の言葉を不思議に思う英寿だったが、突然横からの衝撃をくらう。そこには先ほどまで痛みに悶えていたはずの下っ端ジャマトが倒される前のように元気になっていた。

 

「英寿!ぐあッ!」

 

 景和、道長も続けて攻撃を受ける。

 

「一体どうなってやがる」

 

『倒される瞬間に俺の細胞を移植した。貴様らの攻撃をくらって痛みに悶えていたように見えたのは、俺の細胞が適応するまでの副作用で苦しんでいただけだ』

 

「細胞を移植だと?」

 

『俺たちがジャマ―ガーデンにいたころに編み出した技術だ。人類の医学が日々進歩しているように、俺たちジャマトも日々進化を遂げている…。それだけのことだ』

 

 ナイトジャマトが説明を続けている傍ら、彼の細胞が順応したようで下っ端ジャマト達は次々と元気を取り戻す。そこへ避難を終えた澪が駆け付けた。

 

「皆!大丈夫か!?」

 

『さっきのガキか…。仮面ライダーの力を持たない貴様が何の用だ?』

 

 ナイトジャマトは澪に挑発する。だが、見つからないようにと人間に擬態してひっそりと暮らしていた彼は知らなかった。

 

「他の仲間から聞いてなかったのか?俺も仮面ライダーだってこと」

 

 澪はドライバーを見せ、ナイトジャマトに挑発し返す。彼が驚愕の表情を見せる一方、澪はドライバーに自身のIDコアをはめ込む。音声が流れ、変身の準備が整った。

 

「そういやなんで変身しなかったのさ」

 

「こんな時に限ってドライバーを置いてきた」

 

「まじかよあんたら…まあいいや。今カッコつけるのは俺だけで十分だ」

 

 澪がそう言いながらドライバーを腰に巻きつける。それをみて、英寿は思った。彼は何も変わっていない。世界がやり直される前の彼のままだ。と。

 

「フェスをぶち壊した責任。取ってもらうぞ!」

 

 澪は先日英寿から渡された建設重機を模したような黄色いバックル『パワードビルダーレイズバックル』に、赤い剣が描かれた小型のバックル『ギガントソードバックル』をセットした後、それをドライバーにセットする。

 

《SET!CREATION!》

 

 待機音が流ると、建材が組みあがるような音に合わせ、背後に建築現場のようなオブジェクトが出現。左手を斜め下に移動させた後、交代するように右手を斜め上へ。そして両手を移動させ、力をためるような体制に。(イメージは仮面ライダー2号参照)

 

 彼は変身するために言葉を放つ。理想を叶えるためではなく、人々を守るために。

 

「変身!」

 

 バックルの起動を行うためのハンドルレバー『パワードヘビーローダー』を引き、『セーフティーロックアーム』がIDコアを固定する。

 

《DEPLOYED POWERD SYSTEM》

 

《GIGANT SWORD!》

 

 彼の姿がエントリーフォームのような素体に変化した後、ロボットアームのような上半身が彼の体に装着される。

 

《READY FIGHT!》

 

 黒いバッタを模した仮面に赤い複眼。黒一色の体には似合っていると言えば噓になるほどの、明るい黄色の装甲。これこそが、彼のデザイアグランプリのプレイヤーとしての基本形態。『仮面ライダーホッパー:パワードビルダーフォーム』だ。澪…いや、ホッパーは右手に持った赤い剣『ギガントソード』の剣先を相手に向け、啖呵を切った。

 

「さあ。ライブスタートといくか!…なんてな。ハアッ!!」

 

 

【▶ ~♪Trust last:倖田來未&湘南乃風】

 

 剣を両手に携え敵を迎え撃つ。下っ端ジャマトから繰り出された攻撃をよけ、カウンター形式で斬撃を繰り出していく。豪快かつ的確な剣技に下っ端ジャマトたちは次々と地面に突っ伏していく。

 

「気をつけろ!こいつらはナイトジャマト鬼ごっこの奴らとは違う。気絶させたままだとそのうち被害者が出るぞ」

 

「まじか…!気絶させるのがダメだってんなら、お命頂戴するしかねえってことか」

 

 英寿の忠告を聞いたホッパーはすぐさま別の対処法を導き出す。

 

「多少心は痛むけど…やるしかねえ」

 

 パワードヘビーローダーのギミックを再度作動させ、剣に赤いエフェクトが纏わりつく。

 

「悪いな…お前ら…!」

 

《GIGANT STRIKE!》

 

「ハァ~…デヤァァッ!!」

 

 回転しながら放った斬撃は、いまだ攻撃を受けていなかった下っ端ジャマトさえも巻き込み12体ほどの数を一気に爆散させた。

 

『なんだと!?』

 

「後はてめえだけだ。このクソカス野郎…」

 

「なんか、口調荒くない?」

 

「さすがのあいつも、この事にはお怒りになったんだろ」

 

 普段との変わりように若干引き気味の男性御三家。一方のナイトジャマトは、その気迫に押されたのかじりじりと後ずさる。

 

「このフェスを楽しみにしてた人達の思いを踏みにじった貴様は…絶対に許さん!!」

 

『ヒッ!?…さ、先ほど同胞を倒すのに少し躊躇っていたではないか!!き、貴様に慈悲という言葉はないのか!?』

 

 先ほどとは打って変わって急に命乞いを始めるナイトジャマトに、彼は冷たい目で返す。

 

「あいつらには(・・)な。でもお前は違う。お前に慈悲なんて与えない…。この一発で決める…!」 

 

 ギガントソードを投げ捨て、パワードヘビーローダーを今度は2回稼働させる。足にエフェクトが纏わりつき、目が赤く発行した。それを合図に、バッタの戦士は宙へと舞い上がる。

 

《GIGANT VICTORY》

 

「くたばれクソッカス野郎ォォォッ!!!」

 

 

 突き出した右足にエネルギーが集約し、ナイトジャマト目掛けて突撃。とても平和を守る戦士とは言えないほど汚らしい言葉とともに放ったライダーキックは、ナイトジャマトの体を粉砕せんとする勢いで直撃した。あまりの衝撃にナイトジャマトは後ろに大きく吹き飛ぶ。

 

『忘れてはいないだろうな…。俺の他に脱走した仲間は後4体…。そいつらも日々貴様ら人類と同じく日々進化を遂げている。貴様らの最も恐れる脅威となる日も、そう遠くはない…』

 

 一度は起き上がろうとするも、爆発の予兆を見せた彼は脅しとばかりに彼に向かってそう告げる。だが、仮面ライダーとなった彼にはその脅しの言葉さえも聞かなかった。

 

「んなこと関係ねえよ。俺はただ理想を願う心を奪おうとする奴らを片っ端からぶっ潰すだけだ」

 

『手下1匹葬るのに躊躇っていた餓鬼が…偉そうな口を…』

 

「今の俺は餓鬼じゃねえ。理想の世界を叶えるために、夢に向かって高く飛び上がる戦士。仮面ライダーホッパーだ」

 

 ナイトジャマトの言葉を受けたホッパーは正面を向くと、高らかにそう名乗った。それを聞いたナイトジャマトは、これ以上何も言うことはなく後ろに倒れた後その身を四方爆散させた。

 

【~♪■】

 

「ふぃ~…」

 

 その様子を見届けたホッパーは大きく息を吐きだしながら変身を解除し、生身へと戻る。英寿達のドライバーを忘れるハプニングにより大事になるかと思われた今回の事件だが、バッタの戦士の活躍により被害は会場の設備の一部破損という最小限のものに収まった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

 その後会場が一部破損したこともあり、運営の中には一部中止を検討した者もいたのだが、どうせ後残っているのは表彰式だけなんだから最後までやっちゃおうと運営のトップが言ったことで、当時の予定通り表彰式が行われた。

 

「で、お前らは1位を取れなかったと」

 

「うん…やっぱり1位はSunny Passionさんだった」

 

 かのんと澪は夜道を2人で歩いていた。澪は会場の修復の手伝いをすると言ってあの場所に残ったのだが、かのんと可可は自分に用事があるからと夜遅い時間帯まで待っていたのだ。可可とは少し前の十字路で解散したばかりである。

 

「後悔してないのか?」

 

「後悔って?」

 

「フェスで1位を取らないと部は設立されないって話だったんだろ?」

 

 澪は優勝できなかったことを後悔していないのかと問う。だが、当の本人は満足げに答えた。

 

「ううん。後悔はしてないよ。だって、叶えることができたもん。可可ちゃんと約束した、最高のライブが出来たから!」

 

「そっか…」

 

 嘘偽りのない満面な笑みを見て微笑する澪。彼女の手には『新人特別賞』と書かれた賞状が入った筒が握られていた。

 

「あ、そういえば」

 

「どうした?」

 

「ありがとう」

 

「ありがとうってなにが?」

 

 急に感謝の言葉をかけられた澪は何のことかと疑問を浮かべる。

 

「私と可可ちゃんが焦ってた時、真っ先に応援してくれたの、君だよね?」

 

「…それは」

 

「私さ、口では来ないでほしいとかなんとか言っちゃってたけど、やっぱり来てくれた時安心しちゃった。だからさ…」

 

 かのんはそこで言葉を止め、彼より大きく一歩前へ出る。そしての方へくるりと体を向けると

 

「来てくれてありがとう!澪君(・・)!」

 

 初めて、彼女が自分の名前を呼んだ。先ほどから変わらない満面の笑みを浮かべたままで。

 

「…俺は何も知らない」

 

「へ?!」

 

「そいつは、あれだよ…え~っと…俺のドッペルゲンガー…的な?」

 

 改めて感謝されたことが照れくさくなり、急に白を切り出したこの男。かのんの反論をものともせず、しまいには

 

「あ!お前の後ろにさっきの怪物が!」

 

「えっ!!??」

 

 かのんが振り返った時には、彼は一目散に駆け出していた。感謝したのに、その感謝を無下にされた。そう思うと、やはり感じるのは怒りである。

 

「待てェェ!!」

 

 怒りのかのんから逃げている澪だったが、その最中に澪は思った。

 

(普段は嘘つくの嫌いなんだけど…、こういう嘘だったら許してくれるよな。神様…)

 

【▶ ~♪未来は風のように:Liella!】

 

 マイナスから始まった2人の関係。先ほどの澪の行動で、現状最高まで達していた印象は少し下がったものの、着実に良好になっていっていた。まるでここが、始まりの瞬間とでも言うように。

 

 





 信じたことこそ、最大の理由。



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『遂行』…任務や仕事をやり遂げること。

『課題』…解決しなければならない問題。果たすべき仕事。

1話ごとの字数について減らすべき?

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