おまたせしました。超久しぶりの更新です。腕が落ちているかもしれませんが許してください。
新年早々いろいろ大変なことが起きておりますが、そんな時こそいつも通りに明るく生きましょう。笑う門には福来るなんでね。
前置きはこれくらいにしてそれではどうぞ。
小さいころから、主役になることを夢見ていた。
「それじゃあ本番入りまーす」
いつかは私も輝かしいポジションにつける。ショウビジネスの世界でスポットライトを浴びられる。
「すみれちゃんもお願いね?」
「…はい」
大きなダイオウグソクムシの着ぐるみに身を包みながら、今日の私もそんなことを思っていた。
◆◆◆◆◆◆
「ったく。なにが通行人役よ。エキストラが欲しいなら欲しいって言えばいいのに紛らわしい…」
自身の教室へと続く階段をせかせかと上りながら平安名すみれは呟いていた。よもや芸能事務所のスカウトかと思っていたら実はエキストラの募集でしたなんてトリッキーな勧誘に自分が会うとは思うまい。
「こっちが何のために毎日毎日用のないあの通りに…」
すべては自身の目的のため。愚痴をこぼし踊り場にたところ、女子生徒の驚く声が聞こえた。落としていた視線を前に向けると、いつぞや自分をスクールアイドルに誘ってきた子がスマホを片手に話し込んでいるではないか。
「そうなの。いきなり理事長室に呼び出されたからダメかなって思ったんだけど」
「初ステージにも関わらずスッゴク評価され、特別賞をもらったことが効いたみたいでして」
嬉し気に報告をする可可の手には新人特別賞と書かれた盾が。そして話題は必然的に知名度の話へと移った。
「フォロワーもすっごく増えたんだ!ほら!!」
「凄い!2000人!?」
スマホを差し出された千沙都はフォロワーの数に驚愕の意を示した。さらにかのんたちは練習場所として屋上を使っていいという理事長直々の許可を得て今日からそこで練習するのだそう。
「ん?」
すみれが自身のSNSのフォロワーの数に絶望をしている傍ら、彼女たち4人に近づく1人の少女。言わずもがな生徒会長葉月恋である。彼女はかのんたちの前に来るとおもむろに持っていたものを差し出した。
「あなたたち同好会用の部室の鍵です」
差し出された鍵を代表してかのんが受け取る。恋はそれ以上何も言うこともなく、身を翻して自身の教室へと戻ろうとした。だが自身の名前を呼ばれ、足がぴたりと止まる。名前を読んだ声の主は、そのまま彼女に語り掛ける。
「あの!私たち、頑張るね。頑張って、この学校の力になるような成績を収められるようにする。そしたら葉月さんも…」
「だったら、スクールアイドル以外の活動にしてください。スクールアイドルじゃなければ、いくらでも応援してあげますから」
恋はかのんたちにそう告げ、今度こそ自身の教室へと戻っていった。最後に彼女が告げた言葉の真意が理解できぬまま、今日もスクールアイドル同好会の2名はいつも通りの日々を送るのだった。
◇◇◇◇◇◇
「4のB…4のB…」
放課後、デザグラ運営の仕事が休みということで半強制的に可可に連行された澪を加えた4人は、部室があるという旧校舎の方へ足を運んでいた。
「本当にこっちであってんのか?他の部活の部室は全部新校舎にあるって話だけど」
「仕方ないでしょ?地図を見たらこっちだって書いてあったんだから…」
悪態をつきながら校内案内図の導き通りに進む一同。少しして階段を上り切った彼らの目線の先にはドアが2つ。一つは屋上へ続くドアと部室へと続くドアだ。後者の方のドアの左上には木製のプレートに達筆な字で『四-B』と書かれている。そしてドアには文字が書かれているプラスチック製のプレートがあった。
「『学校アイドル部』?理事長が付けてくれたのでしょうか?」
「それにしては古びている気がするけど…」
しばらく思考を続けたのち、考えるのは時間の無駄だと判断した一同はとりあえず中に入ろうという話になった。
「なんか…お化けとかいそうだね?」
ジッと扉を見つめたままのかのんに千沙都が仕掛けた精神攻撃。動揺した後すぐさま頬を膨らませて幼馴染を睨む。
「かのん、怖いのデスカ?」
「まさかぁ!!」
やせ我慢で回答しつつもちょっとした不安があったので、鍵穴から少しだけ覗こうと試みる。だが、こういうオカルト話が苦手なものが身内にいると少しでもS心が芽生えてしまうのが人間の本質。故にこの白髪のお団子が悪い笑みを浮かべたのを澪は見逃さなかった。
「みぃーたぁーなぁー!!」
「ひぃぃぃぃぃ!!!」
その声で恐怖心が頂点に達した彼女は汚い声を上げて一目散に背を向けて逃げ出す。…ところまではよかったのだ。問題はそのあとに起きた。
「ちょちょちょちょ…!!」
短い廊下を全速力で駆け出した目線の先にいたのは、義兄。彼女は今恐怖心に駆られている。恐怖心に駆られた人間はすぐさま逃げ出す。その進路に人が居たとすると当人がとる行動は1つ。
「…へ?」
気づいたときにはもう遅かった。彼女が我に返って最初に見たのは、至近距離の澪の顔。 女の子かと錯覚させるような長いまつげに黒色の瞳。さらさらとしたショートヘアの髪が揺れ、男子高校生とは思えないほどいい匂いが彼女の鼻孔をくすぐる。極めつけは彼の首に巻かれている腕だ。その腕の主が誰のものかは、もう言わずともわかるだろう。
「
可可も驚きのあまり母国語が出てしまう始末。
「「~~~~っ!?!?!?」」
2名は顔を真っ赤にさせた後、急いで距離を取った。
「じょ、冗談はやめてよぉ!!」
「ご、ごめんごめん。あまりにも怖がるからぁ…」
千沙都が場を和ませるために軽く返すが、当人同士にとっては気まずいことこの上ない。可可はこの雰囲気をどうにかせねばと思い、鍵穴から部室の中をのぞく。そこでようやく彼女は、誰もいないはずの部室に人が居ることに気づく。
「誰かいマス」
「まじかよ…」
先ほどの責任を取るため先陣を切り恐る恐るドアを開け、中を確認する。部屋の奥には結ヶ丘の制服に身を包んだ金髪の少女が。徐々に体が回転し、外の光に反射したエメラルドグリーンの瞳が千沙都を捉えた。
「あのぉ…」
「ひぃぃぃぃぃッ!?」
オーバーリアクションとも思われてもおかしくないほどに体を大きく動かし硬直するものが一人いたので、すぐさま近くのスイッチを押し部屋の電気をつけた。
「大丈夫!足は付いてる」
「ホント?ってあれ?」
「あんたは確か…。平安名?」
幽霊疑惑があった少女の正体『平安名すみれ』は表情を変えることなく口を開く。
「ここ、スクールアイドル同好会の部室って聞いたんですけど…」
「何か御用でしょうか?」
「その…実は少し興味があって…。スクールアイドルに」
「じゃああんたは入部希望ってわけか?」
澪の何気ない発言が、前に立っていたスクールアイドルオタクの心に火をつけた。彼女は目を輝かせなんの迷いもなしにすみれの前へとでしゃばる。新手の宗教勧誘よろしく早口でまくし立て、しまいにはどこからか取り出した入部届に名前を書かせようとまでしているではないか。さすがにこれ以上暴走させておくといろいろと大変なことになるので、興奮する可可を静めた。
とはいってもこの同好会自体も活動初日。活動する以上何か目標を決めなければ活動する意味がない。というわけで前年度優勝者の動画をみんなで見ることになった。
「うわぁぁぁぁ…!」
ビデオ越しからでも伝わる圧巻のパフォーマンスに思わず感嘆の声が漏れる。
「さすがは前年度優勝者。伊達じゃねえな…ん?」
4人同様澪も画面にくぎ付けではあったものの、それほど興味はなかったため右前にいる者の異変にはすぐに気づいた。他の3人に比べて右前の金髪は別のところで関心を持っているそうで。Sunny PassionのSNSのフォロワーを見るや否やすぐさまやると意気み立ち上がった。こうしてどこかうさん臭さはあるもののスクールアイドル同好会にまた一人、部員が増えたのだった。
◇◇◇◇◇◇
「わぁぁぁ…!」
本日2度目の感嘆の声を出した一同。目線の先には練習場所として使用を許された屋上の風景が。
「こんなところあったんだな…よっと」
「ちょっと!どこ上ってるのよ!?」
屋上を一目見渡し、出てきたドアの上にあった日よけのために設置された出っ張ったコンクリートの上によじ登る。その光景を目撃したかのんが注意をするが、練習もしないのにスペースを取るわけにはいかないという彼なりの配慮だということを察した千沙都が彼女を宥めた。
「で?何をすればいいの?」
今いる女子メンバーの中で唯一制服のままのすみれが何をすべきかと問う。新入部員ということもあり今のレベルの確認ということで千沙都コーチによる軽いステップ練習が行われることとなった。一連の流れを終えると今の動作を反復するように促す。すると彼女は難なくやってのける。
「上手…!」
「本当だ、基礎はできてるみたいだね。じゃあこれは?」
先ほどよりも難易度の高いステップを披露するが、なんとそれくらいならと難なくやってのけた。
「まじかよ…」
「もしかしてこれは即戦力と言うやつデスカ…」
「そうかも」
あまりの出来振りに彼女たちは一度すみれから話を聞こうということになり再び部室に戻り軽い聞き取りが行われた。
「まさか、元々スクールアイドルを?」
「いやぁ、そういうわけではないけど…。昔、ショウビジネスの世界に…」
「ショウビジネス…」
「芸能界ってこと?」
「うん。何回か…」
芸能界にいたという経歴を聞き驚愕の意を見せる3人。一人にいたっては運命を感じているほどだ。すみれは優勝できるかもとかなんとか言っているが、この中の唯一の男子である彼は言葉の端々にうさん臭さを感じていた。そしてこれから練習を始める思いきや、彼女の口からある意味想定していなかった言葉が飛び出した。
「それで、センターなのだけど…」
「センター?」
「ええ。グループなのだからセンターがいるわけでしょ?」
身を乗り出してセンターの必要性を説くすみれ。以前のライブでは可可とかのんの2人体制だったので、特に考える必要がなかったが、新たなメンバーを加え3人体制になった今議論すべき話題であると判断したのだろう。
「かのんがいいデス」
「そうだね。私もかのんちゃんでいいと思う」
話題を話題を持ち出した張本人が意見を述べる前に意見がまとまった。
「決まりだな」
「えぇ!?」
「やっぱりかのんちゃんしかいないよ」
「そうデス。このグループを最初に作ったのはかのんデス」
「ちょっと待ったァァァッ!!!」
話がまとまりそうと思ったのだが、ここで不服を物申すものが一人。机に横倒しになりながら慰労を唱えている。
「そ、そういうんで決めていいのかな…?」
「といいマスと?」
「先とか後とか関係ないでしょ?勝つためには実力がある人が中心に立つ。それが当然なんじゃない?」
「デスガ、センターというのはそれだけではありません。カリスマ性のような見えない力も必要デス」
「確かにそうかもしれませんが、そんなものどうやって計るのです?」
◇◇◇◇◇◇
「それで投票かよ」
次の日、教室では誰が一番センターにふさわしいかを決める投票が行われていた。千沙都が丸めた教科書をマイクに見立て司会を務め、他の3人は横文字で書かれて自分の名前のたすきをかけながら手を振っていた。結果はその日の放課後に開票するそうだ。
「大丈夫。オーディションやスカウトとは違う。この2人に勝てばいい…そのくらいなら…!」
「と思っていた時期が平安名にはあったそうだぞ」
「じゃかましい!」
開票結果を見た澪は誰よりも早く開口一番に呟いた。結論から言うと、一番多く票が入っていたのはかのんであり、34票と圧勝。2票入っていた可可はもちろん、0票のすみれとも大きく差をつけカリスマ性でトップに躍り出た。
「ほら!やっぱりかのんちゃんだ!」
「可可もそう思ったのです!」
誇らしげに言う可可をよそについでに部長も一緒にやったらどうかというなし崩し的な提案が出されたが、その横でプルプルと震えているすみれをみて言葉が止まった。一同の注目がそちらへ集まり何をいいだすのかと思いきや。
「やめる…」
「へ?」
「ふんっ!センターに慣れないんだったら、こんなところにいる意味ないもの」
そこまで言うと荒々しくカバンをもって立ち去った。追いかけようとしたかのんだったが、勢いよく絞められたドアに頭をぶつけて悶える。だがすぐにすみれの名前を呼びながら廊下へ飛び出すも、すでにそこにはすみれの姿はなく。屋上の乾いた地面に雨が叩きつけられていた。
「この雨じゃ練習は無理そうだな」
「デスデス。帰りましょう」
2人の言葉を聞いたかのんはいつものように千沙都に謝意を述べた後、帰る準備をするため部室へと戻った。
「あ、やべ。俺傘持ってきてねえ」
◇◇◇◇◇◇
「平安名すみれか。懐かしい名前だな」
「英寿さん知ってるの!?」
急な雨だったので傘を持ってきていなかった澪。そのためどう変えればいいかとしばらく考えていたのだが、なんと英寿が傘を持って生き忘れたことを見越して校門近くで待機していた。傘を受け取り並列して帰路に着いていた2人だが、英寿が芸能界在籍中ということもあり何気なく聞いてみたところ彼から知っているという旨の発言がでたのだ。
「この世界でも芸能界に居た身だ。共演者の顔と名前くらい覚えておくのは当然だろ」
「多分それあんただけだよ」
どや顔でそう言い放つスター・オブ・ザ・スターズ・オブ・ザ・スターズだが、実際そんなことできるのは彼ぐらいだろうと心の中で思いつつツッコむ。
「そういえばお前にずっと言おうと思っていたことがあるんだが」
「言おうと思っていたこと?」
「この間のジャマトの件のことだ。あの事件が起きた直後、タイクーンたちと話をしてな」
英寿が言う『この間のジャマトの件』とは、先日行われた代々木スクールアイドルフェスにナイトジャマトがポーンジャマト数体を引き連れてライブ会場を襲撃したという事件だ。あの後、事前に予測していた内容と大きくかけ離れていた事柄が多数見受けられたため、英寿達ライダーズは宮殿のサロンに集まって会議をしていたという。
「え!?なんで俺呼んでくれなかったんだよ!?」
「誘おうと思ってたが、彼女と一緒だったからな」
「彼女?」
「ああ。あのステージにいたオレンジの髪の女の子だ。『渋谷かのん』って言ったか?」
「俺英寿さんにあいつの名前言ったっけ?」
「お前のことについて調べたときに、たまたまな」
「そういうことか…。てか俺が一緒に帰ってるの見てたの?」
「それもタイクーンたちとの話の帰りにな」
「まじか…」
とんだ勘違いをされたものだと頭をかく。そんなこともつゆ知らずに目の前の元神様はにやにやした表情で事実確認をやたらしてくるものだから、年上ながらも鬱陶しいことこの上ない。
「渋谷とは…。
「ちがうのか?あの時見た限りでは、2人ともいい雰囲気だっただろ?」
「それはあの時見た限りでの話でしょ。それに俺があいつと付き合えるわけないよ」
「諦めるにはまだ早いだろ。スターの俺が言うのもなんだが、お前も大分顔が整ってる方だ」
「そういうことじゃなくて…」
英寿が慰め交じりの激昂を飛ばすが、澪は思いつめた表情で言葉を続ける。
「ありあを助けられなかった俺が、あいつと付き合える筋合いなんてない…」
澪のその言葉に英寿は歩みを止め、彼の顔を驚いた表情で見つめる。彼にはやり直される前の世界での記憶はなかった。さらにIDコアに触れても、その記憶は戻らなかった。その2つの事柄は、本人との会話で把握している。だが今目の前にいる彼は、そのことを元々覚えているかのように話していた。
「お前…なんでそのことを…」
英寿は、目の前の澪がまるで別の人物かのようにみえた。そんな彼の言葉を女性の悲鳴がかき消した。しかも澪にとってその声は、何度も聞いたもの。
「渋谷…!」
2人は顔を見合わせると傘を投げ捨て一目散に声がした方向へと駆け出した。持ち主を失った傘はひっくり返り、冷たい雨が傘の支柱に打ち付けていた。
存在しないはずの記憶が、なぜ…
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