黒の飛蝗は橙色の夢を見る   作:世界一孤独なチンパン

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 今回は作者の都合上、字数少な目でお届けします。それではどうぞ。


#15 好誼Ⅱ『パッションアイランド~決意~』

「初めまして!Sunny Passionの悠奈と」

 

「麻央です」

 

 改めて自己紹介を済ませた2人に対して可可の多少の暴走があったもののなんとか席に着き、ここに来た目的を話しだす。

 

「ライブ?」

 

 どうやらSunny Passionの生まれ故郷である島で毎年彼女たち主催のライブがあるらしく、今年のゲスト枠にLiella一同を招きたいというのが、今回の来訪の目的らしい。順位を決めるライブではないものの、島を盛り上げるという目的のために開催されているライブは毎年多くの地元民、そしてスクールアイドルファンを盛り上げているのだそう。どうするのと軽く決断を迫る千沙都に対し、3人の意見は満場一致だった。

 

「出たいです!出演させてください!」

 

 かのんたちの熱い意気込みを聞いた悠奈と麻央は互いに顔を見合わせ笑みを浮かべる。

 

「詳細はまた後日連絡するから」

 

 寂しいと告げる可可に麻央は日課の練習があるからと言い、良ければ一緒にどうと誘いを持ち掛けた。悠奈もせっかくの機会だからとこれに賛同し、近くにいい練習場所はないかとかのんに問いかける。それに返答したのは彼女たちの根っからのファンである可可。彼女はすみれに対し、

 

「すぐに案内するのデス!あなたの神社に…」

 

 と言い放った。いつもはムキになり反論するすみれなのだが、この時の可可の表情は有無を言わせぬ謎の威圧感があり、どう反論しても言い負かされそうな気がしたのでここは素直に折れることとなった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「ほわぁぁぁぁ!!!」

 

 興奮で声を上げる可可。東京都代表ということもあり、彼女たちは練習も全力であった。それ故に放たれる強者のオーラやパフォーマンスの完成度。それらを直に受けた面々はあるものは驚愕、あるものは感嘆の声をあげていた。

 

「すごい…!」

 

「スクールアイドルってこんなにレベル高いの…!?」

 

「東京代表だからね…」

 

 これまで可可に対してスクールアイドルをアマチュアと称し小馬鹿にした態度をとっていたすみれでさえもこの驚愕っぷりだ。

 

「幸せすぎマス…もう思い残すことはありまセ~ン…!」

 

 腑抜けた声が聞こえたので、3名が視線(すみれはジト目)を横に向ける。先ほどからライブ会場のファンよろしくブレードを振り回しながら練習を鑑賞していた可可。だがあまりに感極まったのか、涙はまだしも鼻水まで流す始末。そして空いた右手で持っていたのは、あの家にあったSunny Passionのポスターだ。

 

「よく持ってきたわね。それ」

 

 すみれが可可にティッシュを渡しながら呆れたように呟く。鼻をかんだ可可だが、余韻がまだ収まっていないようなので、ひとまず彼女を蚊帳の外にして話をすることに。

 

「普段はどんな練習をしているの?」

 

「え…どんなって、大したことはやってないですけど…。基本は、ちいちゃんにコーチしてもらってて」

 

「メニューは?始めたばかりなのにあんなパフォーマンスできるなんてすごい…」

 

「どんな練習してるんだろうって麻央と話してたんだ」

 

 まおと微笑み合いながらそういう悠奈。麻央は秘密でもいいと言うが、別に秘密にするほどのものでもないので2人に見せてみる。すると彼女たちは今までの柔和な表情から一変し、真面目な顔つきになり尋ねる。

 

「これ、考えたのは?」

 

「あ…私です…」

 

「よく考えられているわ。あなたはスクールアイドルではないの?」

 

 いち早く穏やかな表情に戻った麻央が練習メニューに関して称賛の言葉を送り、また彼女はスクールアイドルではないのかと尋ねる。

 

「はい。私はお手伝いで…」

 

「ちいちゃんは小さいころからダンスをやっていて、学校でも音楽科でダンスを専門的に勉強しているんです!」

 

 幼馴染の自分に関しての熱弁に若干照れくさくなる千沙都。一方で悠奈と麻央はそこから何かを感じ取っていたようで千沙都に目線を送り納得の声を漏らす。

 

「さ!じゃあランニングしよっか!」

 

「え…?」

 

「まだ太陽出てますけど…」

 

「このくらいなら全然平気でしょ?さあいこう!!」

 

 故郷の島が南にあるということで、かのんたちにとっては脳筋と言えるべき発言が悠奈から飛び出す。先ほど可可が倒れたということもあり炎天下での運動は避けたい一同ではあるが、彼女たちがすでに走っているのに加え

 

「行くの?」

 

「当たり前デス!お二人が誘ってくれたのデスよ!」

 

 とやる気に満ち溢れた可可が居たため、しぶしぶ足を動かすのであった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

「今日は本当にありがとうございました!」

 

「ううん。お礼を言うのは私の方!」

 

 いつの間にか日は沈み、夕焼けが見れる時間帯。かのんたちは悠奈と麻央を見送りに最寄りの駅近くまでやってきていた。

 

「ライブ、よろしくね」

 

「はい!」

 

 そのあと息を切らしながら全力で返事をする可可にすみれが水を渡すという微笑ましい光景を見て、彼女たちは島に帰っていった。

 

 

 …と思っていたのだが。

 

「あの…お二人にお聞きしたいことがあって」

 

 駅のホームへと足を進める彼女たちを、千沙都が静止させた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「やべぇ…どうしよう…」

 

 時同じくしてデザイア宮殿のサロン。激闘を終えたライダーズがギロリの入れたコーヒーに舌鼓を打っている傍ら、彼は冷や汗を垂らしながら自身のスマホと睨み合っていた。ちなみにあの後どうなったのかというと、僅かな戦力の差でギーツがバッファに勝利。そのまま旗を奪い取り、彼らの勝利に終わった。

 

 そんなことはさておき、今睨み合っている彼のスマホにはかのんからのメールが数件。その後、1,2時間の感覚を開けて数回の不在着信。そこまではまだいいのだ。なら何が問題か。それは一番最後の不在着信の後に送られた1つの文章。

 

『帰ってきたら、いろいろ聞かせてもらうから』

 

 これはまずい。大分とまずい。表の表情では英寿達に心配されないようにポーカーフェイスで取り繕ってはいるが、彼は内心結構本気で焦っていた。

 

 フェス以降、かのんの澪に対する態度が不思議なほどに丸くなった。彼を名前で呼び、機嫌がいい日には彼をショッピングに誘う程。だが親密になればなるほど、心配させたときの見返りは大きくなるというもの。現に彼に送られたメールの数件の中のほとんどが、彼に対する心配のメッセージだった。

 

「この状態であいつにどう説明しよう…」

 

 デザイアグランプリの召集はいつも急。いつどんなタイミングで呼び出しが来るかわからない。そのことをかのんに伝えれるわけがなく、しかも今回に関しては昼間のウィンとの戦いで顔に怪我を負っている。そんな姿で家に帰れば、きっとあらぬ誤解を生むに違いない。悩みに悩んだ彼は

 

「今日ここで泊ってっていいですか?」

 

 ギロリに対し、初めて敬語でそう頼み込んだ。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「…な、なんだよ」

 

「…別に」

 

 翌日の朝、顔の至る所に絆創膏を張り付けた澪は背後からの鋭い視線に耐えかねて視線の主に声をかけた。これもまたフェス以降のことだが、澪とかのんが一緒に登下校することがあり、ほとんどは渋谷家で朝食を食べているときにかのんから誘われる形で成り立っている。だが今回は一緒に登校しているというよりかは、かのんが澪の一歩後ろを歩いている状態だ。

 

「昨日なにしてたの?」

 

 学校までの距離残り半分といったところで、かのんが口を開く。質問自体は昨日から予想していたのだが、いざその質問を真に受けてみると思わず口ごもってしまう。どうにか彼女を怒らせず尚且つ納得してもらえる言い訳を考えること約数秒

 

「昨日はちょっと急な予定が入って、その予定をこなしてたからどうしても携帯見れない状況だったんだよ。それに結構危ないところでやることだったから、長時間それに集中しないといけなくて…」

 

「それでその怪我?」

 

「うん。まあ…」

 

「…」

 

 咄嗟に弁明を重ねた結果これでまかり通るのかよくわからない言い訳が出来てしまった。それを聞いたかのんがより一層目つきを鋭くさせる。

 

「パフェ…」

 

「はい?」

 

「駅前の焼きリンゴパフェ。今回はそれで手を打ってあげる」

 

 焼きリンゴパフェというのは、渋谷駅の近くに最近来たキッチンカーで販売している品物だ。先週たまたま近くを通り、自分の好物がベースになっているということもあって興味本位で購入。見事にその味の虜になり、以降ちょくちょく通い詰めているのだ。もちろんそれで鋭い眼差しから解放されるのならと彼に選択の余地はなく、

 

「わかったよ…。悪かったな」

 

「ん。よろしい」

 

 謝罪と了承が同時に聞けたかのんは手のひらを反すようにフッと笑みを浮かべる。その笑みを見た澪は、心の中では調子のいい奴だなとため息を漏らすのであった。

 

 

「えっ…?ライブに行かない…?」

 

 昨日同好会に顔を見せれなかったことを他のメンバーにも詫びようと思い部室に出向いた澪。彼のメンバーに対する簡易的な謝罪を済ませた後、いよいよ練習開始と言う前に千沙都が話があると切り出した。その内容というのが『今度の島で行われるライブに自分はいかない』というもの。さらに、

 

「うん。それだけじゃなくて、夏休みは別行動をとろうと思うんだ。かのんちゃんたちと」

 

「ちいちゃん…?」

 

 その発言は遠回しに、彼女が同好会のお手伝いを一時的にやめるということを意味していた。誰もが予想していなかったであろう展開に、一同は驚愕の表情を浮かべた。ただ一人を除いて…。

 

「…」

 

 




 君の行動の、その真意

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