前回の終盤、今回、そして次回の序盤はオリストです。今回は主にデザイアグランプリの説明回となります。そして今回、早くも一つの伏線が回収されます。読者の皆様にとっては終盤何言っているかわからない点があるとは思いますが、その点も次回ある程度すっきりさせる予定なのでご安心ください。
そして、今回から仮面ライダーサイドに焦点を当てたお話では、後書きの一文にデザグラのルールなどが書かれます。
それではどうぞ。
「デザイアグランプリか…」
自室に一人、手に持っているとある一つのものを見つめながら呟く澪。時刻はすでに0時を回っていた。彼はベッドの上で寝転がると、今となっては昨日のことを思い出していた。
◇◇◇◇◇◇
「理想の世界を叶えるゲーム?」
目の前に置いてある紙を黙読しながら呟く。その呟きは疑問として聞こえていたようで、近くにいた白服の男が反応し口を開く。
「ああ。最後までゲームに生き残り世界を守った者は、その報酬として理想の世界を叶える権利を得る」
「そんなこと言われても、理解に苦しむというか…」
「そう思っちまうのは無理ねえよ。俺も最初、焦ることばかりだったからな」
頭を抱える澪をなだめるように、隣の席に座りそう言うウィン。澪は状況を飲み込み辛くなっている自分に対し優しく声をかけるウィンに安堵の表情を浮かべる。少し時間が経ち、ようやく3割程度理解できたところで彼はずっと気になっていたことを聞く。
「ところでそろそろ聞きたいことがあるんだが…。あんた誰だ?」
先ほどから喋っているこの白服の男の正体をいつまでも知らないままではいけないので、そろそろ聞いてみる。
「私のことはウィンから聞いていると思っていたのだが…」
「いや、ウィンさんからは何も聞かされてないけど…」
澪の言葉を聞き、どういうことだお前と言わんがばかりの眼差しをウィンに向ける白服の男。ウィンは澪をこのバイトに勧誘するので精一杯であり、そのことまでは話せていないと語る。白服の男はため息をつくと、すまないと謝罪をし、自己紹介を始めた。
「私はギロリ。このデザイアグランプリを仕切っているゲームマスターだ」
「ゲームマスター?」
「簡単に言うと、この運営の代表格ってことだよ」
ウィンの簡単な付け足しにあぁと理解の表情を浮かべる澪。そこからto白服の男もといギロリを主導に数時十分話を聞き、澪は以下の情報を手に入れた。
「つまりデザイアグランプリってのは…。世界にはびこる『ジャマト』って呼ばれる怪人から世界を守るために開催されるゲームで、ラウンド制で行われる様々なゲームを順にクリアしていって、その都度最下位だったプレイヤーはゲームから脱落。もちろん、命を懸けたゲームだからもしゲーム中に死んだりする場合もある。で、最後ステージをクリアして生き残ったプレイヤーが世界を守り切った報酬として、理想の世界を叶えることができるってことか」
「そういうことだ」
ルールは各ゲームごとに毎回定められるということ。ゲーム自体の大まかなシステムについては特に複雑そうな感じのことはなさそうなので、心の中でほっと胸をなで下ろす。
「デザイアグランプリの内容は分かったんだけど、バイトって何をすればいいんだ?」
「その発言を聞いておいてなんだが、やってくれるのか?」
「やれるだけやってみるよ。俺だって理想の世界を叶えたいしな」
半ば強制的に誘われたのにも関わらず、了承の意を示した澪。そんな彼を一瞬神妙な面持ちで見つめるギロリ。ウィンと目を合わせると互いに頷き、彼はすぐ近くに隠しておいた一つの箱を澪の前に置いた。
「これは?」
「開けてみろ」
表面にビックリマークがでかでかと書かれた長方形の箱をスライドして開ける。すると中には比較的コンパクトサイズのアイテムと、丸形の何かが入っていた。
「これは…ベルト?」
「それは『デザイアドライバー』。ゲームに参加するプレイヤーはそれで『仮面ライダー』になるんだ。逆に仮面ライダーに選ばれない限り、ゲームへの参加資格はない」
ウィンの解説を聞きながらデザイアドライバーなるものをくるくると回転させながら眺める。ドライバーは実にシンプルな造形をしており、目立つ点があるとすれば、正面から見て左上に突起があるくらいだ。ドライバーの観察を続ける澪に、ギロリは箱に入っていたもう一つのアイテムを取り出し解説を加える。
「これは『IDコア』。ゲームに関する記録や情報は全て、ここに保存される」
「ゲームに関する記録?」
「ああ。例えばその時行われたゲームがポイント制のゲームだった場合、自分が何ポイント獲得したかという記録がここに保存されるんだ」
「なら、デザイアドライバーの中心部分にIDコアをセットして仮面ライダーに変身するってことか?」
「そういうことだ」
ドライバーとIDコアについての知識も理解した。澪はギロリからIDコアを受け取ると、今度はそれをじっくりと眺める。そのせいで、その時ギロリとウィンが2人そろって神妙面持ちでこちらを見ていたことに気が付かないでいた。
「IDコアになんか書いてあるんだけど、これは?」
「あぁ。それは君が変身するライダーの顔を簡略化して描いたもの。『ライダーズクレスト』だ」
その後も気になる点を澪が質問していきギロリとウィンが答えるという構造が数回続いた。気づけば、すでにお昼時になっていた。
「他はもうないか?」
「最後に一つだけ聞かせてくれ」
ウィンもこれからウェザーハーツとしての練習が控えているということで、時間的にこれが最後の質問になった。
「なんで俺が選ばれたんだ?俺なんかよりももっと仮面ライダーになるのに相応しい人が居るはずなのに…」
初めてウェザーハーツのライブを見に行ったあの日、彼は普通にライブを楽しんでいた一客だった。しかし帰ろうと劇場に背を向けたとき、ウィンに呼び止められ、このバイトの勧誘を受けた。あの場所にはもっと人はいたのになぜか自分が選ばれた。澪はずっとそれが気掛かりだったのだ。
「それは…。お前がいい奴だったからだよ」
「いい奴?」
「ああ。俺たちウェザーハーツは最近テレビに取り上げられたことでようやく人気が出始めた。でもそれよりも前から、お前は俺たちを応援してくれてた。まあ、一アーティストとして恩みたいなもんだ」
「そっか…」
自分に恩を感じているといわれ、恥ずかしくなり照れくさそうにIDコアを見つめる澪。その後も少しばかり話をしているといつの間にかギロリが彼に渡し忘れていたものがあると言って下がっていった隣の部屋から戻ってきた。
「これを渡し忘れていた」
「スマホ?」
「ああ。ただ、デザグラのみで使えるスマホだ。名前は『スパイダーフォン』。デザイアグランプリの各ラウンドや、デザイアグランプリ自体の開始を知らせてくれる他、ゲーム中のスコアを見れるようになっている。もちろん君が普段使っているスマホ同様、通信手段としても利用可能だ」
最後にスパイダーフォンをデザグラ関係者以外に絶対に貸さないようにという忠告を受けた澪は、もと来た入り口から帰る。
「理想の世界か…」
帰り道を歩きながらふと呟く。彼はふと思ってしまったのだ。スタッフである自分にも、最後まで勝ち残れば理想の世界が叶えられる権利があるのではないかと。だが聞きそびれてしまった今、事実かどうか分からない。そんなことを思っているうちに自分の家に着く。ただいまと言いながらドアを開けた彼が真っ先に見たのは
「まじかお前」
「う゛ぅ゛~…」
女子高生とは思えないほどの汚らしい声を出しながら、涙目で机に突っ伏しているかのんであった。
◇◇◇◇◇◇
澪が去って少し経ったデザイアグランプリの控室。そこにウェザーハーツの仲間との練習を終えたウィンが肩や首などを回しながら入ってくる。
「お疲れ様」
「随分、お前らしくない言葉をかけるようになったんだな」
「あの頃と比べて、お前のスケジュールもタイトになったからな」
「もしかしたら忙しすぎて、デザグラには参加できねえかもしれねえぜ?」
「立ち話もなんだ。座って話そう」
カウンターの席に座るウィンにコーヒーを提供するギロリ。
「もうすぐ彼らが返ってくるころだ」
暫くウィンとの談笑をしていたギロリが壁掛けの時計を見て呟く。その言葉通り、控室の入り口の外から足音が聞こえてくる。
「お、じゃあ報告の時間と行くか」
ウィンは席から立ちあがり、部屋の中央にあるソファーのもとへと向かう。やがて部屋のドアが開き、一人の男がやってきた。
「よっ。お疲れさん」
「その様子だと、お前も練習を終えたらしいな。パンクジャック」
ちなみにパンクジャックというのは、ウィンが変身する仮面ライダーの名前だ。男はソファーに座り、軽く伸びをしてから2人に尋ねる。
「それで、あの子は来たのか?」
「ああ。テストは無事クリアした。君の言う通りデザイアドライバーとIDコアを渡して今日は帰らせたよ。デザグラのルールとかも説明したうえでな」
「しっかしよお。お前もひどい奴だな。初めてくる奴にいきなり警備隊ライダーを差し向けるなんて」
なんとあのテストは、男が考案したものであった。
「だが、お前のことだ。彼がテストをクリアすることを見越していたんじゃないのか?」
「また俺に化かされたか?」
だがその男はギロリの言う通り、倒すとわかっていたうえで考案したものだったのだ。男は顔の横で手で狐の顔を作り、挑発するように口の部分を開閉する。
「全く。あの時から全く変わっていないな。君は」
「なんてったって…俺は狐だからな」
そう言ってにやける男『浮世英寿』の言葉に、ギロリは頭を抱えた。
「早速だが、結果は?」
英寿は真面目な顔つきになり、2人に問う。ウィンは首を横に振ると、英寿と対局の位置に置いてあるソファーに座り話す。
「ドライバーを見せても、IDコアを触らせてみても何も起きなかった。多分、俺たちやデザグラの記憶に関しては一切忘れちまってるみてぇだ」
「そうか…」
「だが、今回の件があった以上デザグラやウィンのライブのみで彼とコンタクトをとるのは厳しいだろうな…」
ウィンの報告を受けた英寿は顔を曇らせる。一応ギロリが彼にあげたスパイダーフォンに細工をしたとは言っているが、それで効果を示すかもわからない。
「だが一応彼のことを調べていた結果、覚えていそうな記憶があった」
「そうなのか?」
「ああ。スクールアイドルというのを知っているか?」
「スクールアイドルか。確か俺がゲストとして出させてもらったバラエティーの特集でやってたな」
ギロリの言葉に英寿は過去自分がゲストとして招かれたバラエティーのコーナーを思い出す。彼は芸能人という職業柄、よくバラエティーなどにゲストとして出演させてもらっている。そのようなときに、現代の流行について触れる機会が多々あるのだ。
「私がスパイダーフォンを取りに行っている間、ウィンに世間話と称して彼の情報を聞き出してもらった」
ウィンがなぜ自分なのかという問いに対し回答していたあの時、ギロリが来るまで少し時間があった。しかし実は、あえて行き来する時間を作ることで、彼の情報を聞き出そうというギロリの策だったのだ。
「で、仕入れた結果がこれだ」
ウィンは自分のスマホのボイスレコーダー画面を表示させる。
「あとでちゃんと消しておけよ」
「わかってるって。じゃあいくぞ」
英寿の言葉にそう返したウィンは、再生ボタンを押す。
『ウィンさんはこれから練習だろ?』
『ああ。お前も来るか?』
『いや、俺は俺で応援しなきゃいけない奴がいるから』
『応援しなきゃいけない奴?』
『ああ。そいつ、スクールアイドルをやろうと今頑張っている最中なんだよ。音楽科に落ちたって言ってやさぐれてたみたいなんだけど、今ではもうその面影もないくらい活き活きしてる』
そこで再生ボタンを押し、録音の再生を止める。
「音楽科に落ちた…?待てよ?」
英寿は何かに気づいたように目を見開き、ギロリに尋ねる。
「あの子の名前は?」
「渋谷澪だ」
「もしかして…」
「何かわかったのか?」
「俺が先週持ってきた段ボール箱ってどこにしまったっけ?」
「そこの部屋のクローゼットだが…」
ギロリの指さす方へ小走りで向かう英寿。ガサゴソと音がした後、彼は一つの大きな段ボール箱を手に抱え戻ってきた。
「ファンレター?」
段ボール箱の中にはもう一回り小さい段ボール箱の数々。マトリョーシカ手法で入っていたのは、英寿がこれまでファンからもらった手紙の数々であった。英寿はつい先週の日付が書いてある段ボール箱を開け、無心で中身を一つ一つ確認する。彼の手は、一つの手紙を見て止まった。
「おいおいどうした?英寿」
ウィンの言葉に対し、彼は誇らしげにその手紙を見せた。
「どうやら、コンタクトを取れる手段があったみたいだぜ」
手紙には『浮世英寿様へ』という字と、彼へのメッセージが書かれていた。ファンというものは不思議なもので、推しに自分の存在を認知されたいという欲から、たいていの場合送り主であるその人の名前が書かれていたりする。故に今回も例外ではなく、手紙の最後にはしっかりと書かれていたのだ。
『渋谷ありあ』という名前が。
浮世英寿は、スター・オブ・ザ・スターズ・オブ・ザ・スターズである
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『手蔓』…①頼りにすることのできる特別な関係。つて。縁故。
②手がかり。糸口。
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