Hello,Goodbye,Night City‼   作:不落八十八

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十話

『昨日の夕方からの監視カメラ映像を覗いてみたがサントドミンゴ北部に向かったようだな。此処らにあるのは工場地帯で、隠し事をしやすいコンテナが沢山ある場所でもある。恐らく、此処らで軍用テックの取引を行なったんだろう。MAPにマークした辺りを大通りから怪しまれない程度に覗いてみろ』

「……りょーかい」

 

 デラマンにもう一度乗って、今度は陸路で怪しまれない程度の近場で降ろして貰った俺はジャグラの指示に従ってコンテナ群を見ていた。

 工場は人で溢れていて、働いている人たち全てが怪しく見えてしまう。

 怪しい人物、不審な人物、と目星を付けるもそれっぽい人物は居ない。

 ……じゃあ、やべー物を取引するとして使うような場所と言えば、どんな所だろうか。

 例えばコンテナで道路から見えない場所、もしくは四方を囲まれていたりする場所、後は……端っこの方、とか。

 

「……っ、こいつは……」

 

 工場地帯の外れの方にある橋の下、そこの壁にべったりと血が付いていて乾き方もスキャナーが示す通り真新しい。

 注意深く辺りを見回してみれば、黄色い衣服片が血を滲ませた状態で草陰に落ちていた。

 肌触りを今着ている上着と確かめてみれば、色々と鬩ぎ合う心地であるが同じ物だと分かってしまう。

 

『此処が取引現場か、または襲撃現場だな。考えられるとすれば、後者だ。恐らく、同業者に目を付けられてたんだろうな。日頃からサイバーウェアを盗もうと考えているような似たような奴が同僚に居たんだろうよ。そんで、明らかにお宝なテックを先んじて手に入れたグロリアさんから奪おうと取引現場へ向かう所を尾行して、人気の無い場所で此処に追い詰めて襲った、ってところか? スキャナーをもう少し走らせてみろ、情報を抜く』

「あ、ああ。分かった」

 

 何時の間に俺の光学インプラントにスキャナーをインストールしていたのか知らないが、取り敢えず言われた通りに辺りをもう一度見渡してみる。

 するとバイクが二台草花を潰した痕跡が見つかり、それらを辿って何処かに行くタイヤ痕を見つける事ができた。

 上出来だ、と言う呟きを聞いてから、数秒後に視界にタイヤ痕を追うナビゲートシグナルが浮かぶ。

 それに従いながら道なりに走って行き、坂を登ってトレーラーパークへと向かう交差路に差し掛かる。

 シグナルはトレーラーパークではなく、壁に落書きされた道へと曲がって行き、それらしきバイクが止まる屋根付きの倉庫があった。

 草むらに身を隠しながらそっと外を覗うと一見そこらに居そうな輩が煙草を吸って屯っていた。

 

『成程なぁ、最近のシックス・ストリートの暗躍にスカベンジャーが一枚噛んでたって訳だ。そこら一帯はシックス・ストリートって言う帰還兵が興したギャングが牛耳ってる。壁に書かれている星条旗とかで何となく雰囲気は掴めるだろう。でもって、スカベンジャーってのは文字通り死肉漁りの奴らの事だ。サイバーウェアや内臓を取り出して、闇市場に売りに出す正真正銘の屑共だな。待てっ!! よし、良い子だ、そのまま隠れてろ、話の途中だ』

 

 思わず倉庫へと走り出そうとした俺の身体をジャグラの一喝によって止められる。

 焦燥感が滲み出して汗が噴き出してくる心地だったが、ジャグラの言葉を待つ。

 フラットに、心の天秤を水平に保つ、揺らぐことの無い、フラットへと心を落ち着かせる……。

 

『あそこは恐らく中継場だ。今、近くの監視カメラのログを一気見したが、真夜中になっても明かりが点いていないのが分かった。発電機やら機材がそこにはない。言うなれば商品を取り纏めて置くだけの倉庫として使われているみたいだ。基本的に外に見張りを置いておくだけで、中に常駐はしていない。……ま、言い方はアレだが鮮度が命って事なんだろうな。死体から剥ぎ取るのと生身から剥ぎ取るんじゃ、商品の価値が違う。そう言う点では救われたな、グロリアさんが生きている可能性は非常に高い』

「はぁー……、良かった……」

『アホ、まだ安心できてねぇ。地下がある可能性は捨て切れない。そこに住居スペースだなんてあったら最悪だぞ、年若い未亡人の女性に手を出していない訳が無い』

「――は?」

『落ち着け、デイビッド。サイバーパンクになるならそう言った可能性も考えておけって話だ。何事も最悪を想定して目の前の最善を選べ。考え無しに銃を撃ってれば解決する程傭兵業ってのは単純な物じゃない。そのシマを牛耳るギャングの情報や、どういった噂が巷に流れているのか、そう言った情報の流れを読み取って最適解を導き出すのも学びの一つだ。今さっきオレがスカベンジャーの情報をお前に伝えた様に、そいつらにどう言う背景があるかを知っていれば導き出せる仮定が生まれてくる』

 

 瞬間沸騰機の如く怒りの感情が込み上げてきたが、あくまで仮定の話だ、と念押しされて冷静になる。

 確かに、母さんを見つけてハッピーエンドって時に知らない入口から纏めてズドン、なんて事も有り得る。

 スカベンジャーに攫われたからもう死んでいるだろう、なんて浅い考えで止まってたら取り零すモノも出てくる。

 今の話はそう言う事を伝えたいがためのジャグラの教えなのだと、奥歯を噛み締めてそれを呑み込む。

 

「わりぃ、続きを」

『よし、本来なら見張りの目を掻い潜って中に侵入して助け出すってのがベストだが、その倉庫へ入るための入り口が正面と裏口の二ヵ所だ。んで、それぞれ一人ずつ見張りが付いてる。しかも正面入り口の方には暇人なのか四人程居て談笑している様だな』

「詰んでるじゃねぇか」

『はぁー……、何のためにお前にスマイリーをくれてやったと思ってるんだ。裏口の方の見張りを始末して中へ入れ。そっちは使用済みの資材が置かれていて遮蔽物が多い、派手な音を立てるなよ』

 

 始末。そんな単語をあっさりと口にしたジャグラに正気を疑うが、今の状況で立ち止まってなんて居られない。

 こっそりと倉庫の壁際に歩いていき、スマイリーを片手に裏口の方へと歩く。

 そして、ついに角に辿り着いてしまった。

 角越しに恐る恐る裏口の方の見張りへ視線をやると欠伸をして瞳をチカチカと瞬かせて突っ立っているのが見える。

 スマイリーを見張りの男へと向けて、引き金を……引けなかった。

 誰かを殺すだなんて事を今まで学生だった俺が直ぐに出来る訳が無い。

 四肢を撃とうものなら悲鳴で正面の奴らに露見すること間違いない。

 だから、撃つならば確実に殺せる頭だけを狙うべきだ、と頭では分かっているが気持ちが付いて行かない。

 未だに隙だらけの見張りにスマイリーを向け続ける事、十数秒が経つ。

 ジャグラからの通信は聞こえて来ず、俺の行動を待ってくれているのが感じられた。

 ドクから買った裏BDの奴らの様に、俺も引き金を――。

 

『あん? うっわ、嘘だろ、このタイミングで介入してくるのかよ! デイビッド! 衝撃に備えろ!!』

「へ? うぉあっ!?」

 

 ジャグラからの通信から数秒も経たずに表の方からエンジンの音が聞こえてきたかと思えば、派手な爆発が轟いて衝撃が此方にも届いたかと思えば爆風に身体が転がる。

 二回転程して近くのコンテナに背中からぶつかるが、優秀な装備のお陰か痛みは殆ど無かった。

 

「なんだぁっ!? 襲撃かぁっ!」

 

 裏口の見張りをしていた男は此方とは逆回りに表の方へと走って行き、幸運な事にスマイリーを撃つ事無く中へ侵入できそうだった。

 しっかし、表の方で何が起きているんだ。

 派手な爆発もあった事だし、此処に襲撃を掛けた奴が居るって事だろうか。

 見張りの奴らが応援を呼ぶ可能性があるので、今の内に裏口へと回って中へと入る。

 中は若者の溜まり場と言う感じで、ソファや机があってゴミが散乱していた。

 そして、片隅にはそれっぽいコンテナが施錠されている状態で鎮座しているのが見える。

 外で銃撃戦の音が聞こえ始め、随分と規模がでかくなっている事に冷や汗をかきながらコンテナへと辿り着く。

 

「ジャグラ、コンテナを見つけた。……ジャグラ?」

 

 先程からジャグラからの声が聞こえない、視界には未だにログインの状態のままだ。

 もしかしたら外の奴がジャミングでもしているのかもしれない。

 施錠されたコンテナの扉を開くべく、手回しハンドルに手を付けた。

 もう少しで扉の施錠が開く、そんな矢先に後頭部にコツンと硬い何かを突き付けられた。

 

「よぉ、人を探してるんだがよぉー、ちょーっと聞きてぇ事があるんだわ」

 

 それは女性特有の甲高さのある少女の声で、自分の優位性を信じているかのような強い言葉だった。

 ハンドルに回していた手を止めて、ゆっくりと両手を上げる。

 

「……奇遇だな、俺も母さんの行方を探してるとこだ」

「はぁ? ママを探してだぁ? 親離れできないお坊ちゃんがどーしてこんなとこに居るんだ、おら、答えなっ」

 

 拳銃を突き付けたまま少女が俺をコンテナへと押し付け、額を強くぶつけさせる。

 御かげで血が垂れたが少しだけ冷静になれた。

 ジャグラが言ってたな、此処に母さんが連れて来られたのは襲撃されたからだ、って。

 なら、もしもの話だが母さんと取引をしようとしていた奴がすっぽかされて調査をしていたとしたら。

 そして、幾つかの痕跡から俺みたいに此処を見つけ出したとしたら。

 

「俺はデイビッド、デイビッド・マルティネスだ。アンタが探してる相手ってのは、グロリア・マルティネスって言う人だったりしねぇか?」

「……ぁー、マジかよ、おいおいメインー。お前の取引相手の子供が来てるぜ、此処に。……へぇへぇ、分かったよ。ちっ、子供の御守しろってかこのあーしによぉ」

 

 後頭部に突き付けられていた拳銃の重みが無くなり、一つ息を吐く、そして後ろを振り返れば……。

 痴女が居た。

 パーカーを一枚羽織っただけで、ズボンらしい物は見受けられず、代わりに黒のサイバーブラとパンツを履いただけの全身インプラントの女の子が此方を何とも言えない表情で見ていた。

 髪も、肌も、瞳も、全てにインプラントを入れているようで、ミント一色の身体にサイバータトゥーのピンク色がやけに煽情的だった。

 振り向いた顔をコンテナに戻す。やばい、今の俺、顔が真っ赤になってたりしないだろうか。

 流石に女の子の生の身体をこんな近距離で見た事が無かったから網膜に焼き付いてしまっていた。

 

「んー……? どうしたぁ? 随分と耳が、真っ赤だなぁ。随分と初心なんだな、お前、このこのっ」

「ちょっ、やめ、止めろって!? 随分と気安くなったな!?」

「はははっ、流石に初心なガキにオラつく程苛ついてはいねぇって。きひひっ」

 

 小突かれた脇腹を押さえつつ、深い溜息を吐いて少女を見直す。

 背丈はジャグラよりかは高いようだが、頭一つ分くらい小さい。

 少女にしては随分と色気があり、風俗街に居そうな雰囲気が漂っていた。

 

「んで、この中に居る訳、あんたのママ」

「多分な。状況証拠的に此処に居ると思うんだが……っと」

 

 ハンドルを最後まで回して施錠を解除した俺はコンテナの扉を解き放つ。

 そこには後ろ手に腕を縛られた人たちが六人程居り、奥の方に見慣れた黄色い衣服を着た母さんの姿があった。

 思わず駆け寄り、身体をスキャナーで見ると腕の切り傷と頬の殴打痕しか見つからなかった。

 

「はぁー……、良かった、生きてた……」

「この人があんたのママって訳だ。つまり、メインの取引相手」

「……アンタら、母さんとはどう言う関係なんだよ」

「んー、そりゃ、買い手と売り手ってだけだな。外でドンパチしてる大柄ゴリラがメインで、その番がドリオ。軽薄そうでキモイのがあーしの兄のピラル。んでもって、此処には来てないけどそこそこの腕のネットランナーが二人、キーウィはおばさん、ルーシーは美人」

「ふぅん、アンタの名前は?」

「あーし? あーしはレベッカ。何だ、惚れちまったかぁ?」

「んな訳あるかよ、聞いただけだ」

 

 にひひっと笑みを浮かべて再び茶化してくるレベッカの小突きに少し苛立ちつつ、母さんを横抱きにして立ち上がる。

 そして、裏口からしれっと出て行こうとしたら流石にレベッカに前に立ち塞がれてしまった。

 無理だろうとは思っていたが流石に誤魔化されないか。

 

「いやいやいや、何しれっと帰ろうとしてるのさ。もうすぐ表の掃除も終わるからそのまま居なさいって」

「んな事より母さんの容体の方が心配だ。信頼できるリパーに見て貰うのが先に決まってる」

「ぇー? 肩に一発、頬に一発、ってぐらいだけじゃない? そういう臭いはしないし」

「……して堪るかよ」

 

 少し低い声で言ったからか、レベッカもバツの悪そうな顔であははと両手を上げて苦笑した。

 強硬突破も辞さない覚悟で通ろうとした時だった。

 上空から俺の目の前にデラマンが着陸し、中からジャグラが現れたのは。

 普段通りのオーバーオールに黒いタンクトップと言うラフな格好に、四対八眼のごっついデバイスヘッドを片手にぶら下げていた。

 そして、此方の状況を見て色々と察したのだろう、デバイスヘッドを助手席に放り込み、歩いて来た。

 倉庫正面から聞こえる銃撃戦の音なんて気にしていないかのような冷静な表情が安堵感を誘う。

 

「ジャグラ!」

「よぉ、初陣大成功おめでとうデイビッド。グロリアさんも外傷程度で済んでて良かったな。後ろに乗せな、うちで診てやるから」

「ちょっとちょっとちょっとー! そういうの困るんだよねー! デイビッドはあーしらと一緒に来て貰うんだからさぁ!」

 

 ジャグラとレベッカが相対し、互いの主張を押し通そうと睨み合いを始める。

 ……おかしいな、対峙する龍と虎が睨み合っているのが見えるんだが、どっちもジャグラの方に居る気がする。

 そして、一瞬の間にレベッカがジャグラの医療用モノワイヤーで煽情的な恰好で縛られて地面に転がされていた。

 ……なんでこんな破廉恥な縛り方したんだよ、スキャナーが勝手に亀甲縛りと言う単語を示したが、要らねぇよそんな情報。

 むぐむぐーっと口もしっかりグルグル巻きで縛られているからか声も出せないレベッカにジャグラは淡々と言い放つ。

 

「悪いが暫くそのまま転がっててくれ。グロリアさんはジャパンタウンの《グラッカー》で預かるから後始末が終わったら来いと伝えておいてくれ。ほら、帰るぞデイビッド。どうせ後でまた会うんだ、名残惜しいのは分かるが後にしろ」

「んな事思ってねぇよ。……じゃ、そゆことで。風邪引くなよ、レベッカ」

「むぐぐーっ!!」

 

 レベッカを跨いでデラマンの後部座席に乗り込んで母さんを座らせると、有無を言わさずに扉を閉めて空へと飛び立った。

 全身から力が抜け、深い息が漏れて疲れがどっと溢れ出してくる。

 いや、ほんと、母さんが無事で良かった。

 隣でジャグラが簡易的な診察をしているが特段焦った様子も無いので問題無さそうだ。

 窓から下を見やれば、何時の間にか倉庫前が鉄火場となっており、見張りしか居なかった筈のスカベンジャー側にも増援が来ているようだった。

 

「なんか凄い事になってるな……」

「あぁ、近くの工場が丸ごとスカベンジャーの小アジトだったらしい。先の一発が随分と響いたんだろうな、わらわらと蟻みたいに出て来て応戦し始めたっぽいぞ。んー、問題無さそうだ。薬を嗅がされて意識が飛んでるだけ……って感じじゃねぇな、そのまま仕事疲れで寝てやがるだけだ。健康上の問題は無し、湿布と消毒だけ処方するってぐらいだ」

「そっか……、ありがとな」

「なぁに、不幸中の幸いってだけだ。それに、グロリアさんを見つけるところまでちゃんとできたんだ。初陣にしては上出来だ。やったな、デイビッド」

「……おう」

 

 ジャグラにおんぶに抱っこな上にお膳立てもされて最後はカーペットまで敷かれた気分ではあるが、隣に居る母さんの生きている温かさに達成感が芽生えてくる。

 出て行く時にもやった様に右拳を突き合わせて、得難く頼もしい相棒と成果を喜ぶ。

 ……あ、そう言えば。

 

「倉庫に入ってから通信出来なかったのは何でなんだ?」

「奴さんのネットランナーにちょっかい出されたからだな。ま、シンプルでうざったい仕返しをしてやって後は放置だ。今も頑張ってるんじゃねぇかね」

「……いったい何したんだ?」

「然もICEの防壁でございって感じのポップアップを毎秒百個送りつけてやっただけだよ。本命の解除ボタンがあっと言う間に埋まるくらいの速度でな。一番真下にある奴を解除しないとうちのパソコンにアクセスできないんだが、送信専用のパソコンだけ動かしてDDoS攻撃してる上に、受信機能を外してあるから頑張って突破してもアクセスエラーで到達できないし、ポップアップは続くから性能次第では今頃処理落ちしてるだろ」

「なにそれ、えっぐ……」

 

 通常のICEだと三桁から五桁くらいのパスコードを入力して次々とファイアウォールの防壁を解除するらしいのだが、聞く話によれば五×五くらいの通常の物ではなく、百×百のクソウザ仕様で視界がポップアップで埋まる代物を送り続けているらしい。

 ネットランナーが用いるハッキングで日常的に見るデザインを流用しているので、よっぽど勘が良く無ければ気付けないそうだ。

 しかも、対処を止めれば延々とポップアップが続いてデバイスに負荷を掛けて処理落ちに追い込むらしい。

 内側にウイルスが入って来ている訳では無いので対処しても消えないし、接続を切っても電源を落とさない限り違うルートで送り続けられるんだとか。

 試しに一個だけ送って貰うと、視界に真っ赤なポップアップが現れて十桁のパスコードを打つ様に指示される。

 ずらっと並んだ百×百の防壁パズルを見て思わずげんなりしてしまう。

 これを毎秒百個送り付けられてきたらそりゃ処理落ちするわ。

 

「因みに本来の防壁の奴はこれな」

「ちっちゃ……。うーわ、細部殆ど同じじゃん……」

「だろ? だから真面目な奴ほど躍起になって引っ掛かるし、矜持があれば突破してやろうと尽力する。ただのポップアップで防壁でも何でもないのにな。だからと言って怠け者だと容量を圧迫して大事なデータごとゴミデータで押し潰される訳だ。デバイスを使ってるなら電源を切れば良いが、昨今のネットランナーはどいつもこいつも自分の身体を使うから対処せざるを得ないって訳だ。どーだ、アナログもまだまだ捨てたもんじゃねぇだろ?」

 

 そうドヤ顔をするジャグラに苦笑を返しつつ、目の前のポップアップを消す様に頼んだ。

 キョトンとした顔で、ぁー、と声を漏らした後に、頑張れ、とサムズアップをされた。

 嘘だろ、この面倒なの解かない限りそのまんまなのかよ。

 必死こいて《グラッカー》に着くまでに何とか解除したが、成程、これをやられた奴は堪ったもんじゃねぇなと同情せざるを得なかった。

 解除した後に名刺の裏に書いてあった可愛いデフォルメのタイガーが、お疲れ様、と労いの言葉を掛けてくれるオチ、本当に必要だった……?

 どっと疲れた俺はもうさっさと寝たい気分になった、状況的に寝れないが。




参考資料 原作版ブリーチプロトコル説明画面。

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