Hello,Goodbye,Night City‼   作:不落八十八

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十三話

 いやー、メインたちは強敵でしたねぇ!!

 だなんて煽りをしたくなるぐらいの大勝利に大本営はお喜びである、祝え!

 とまぁ茶番はそれぐらいにしておいて、無事にメインたちをオレの子飼いにできた。

 そもそもの話、ファラデーに目を付けられたのがこいつらの運の尽きなんだよね。

 だってあいつコーポに憧れて脳を焼かれた夢追い人の三下の小物なんだもの。

 このナイトシティにおいて、そいつの恰好と言うものは心理的なモノを表す鏡に等しい。

 自分がまだまだ若々しいと思ってる奴は露出が強い、ローグが良い例だろう。

 ババア無理すんなって感じの恰好であるが、アンチエイジングなどで保った美貌を半ば残している辺り自信家のそれだ。

 そう言った観点で見たファラデーと言う男は、典型的な成金思想だ。

 良い物を着飾っている自分は上に立つ存在として相応しい、だなんて笑っちゃうようなロマンチストな訳だ。

 アラサカの幹部を見れば分かるが、くっそ性能の高いデバイステックを身に付ければ良い。

 なのに、何故かとち狂ってキロシを四つも入れているファラデーと言う馬鹿は非常に憶病な性格をしている奴だと分かる。

 自分で見たモノしか信じられない、誰かを信じようとしていないその姿勢は根っからの心情から来るものだ。

 憶測であるが、恐らくスラムからの成り上がりを成し遂げた過去があると見える。

 幼少時代に見上げていた企業に憧れを抱いていて、産まれのせいでコーポに成り切れないのに、アラサカだなんて大企業に頼られただけで有頂天になるような典型的な小物。

 それがファラデーと言う愚かなフィクサーの男の全貌と言えよう。

 部下や誰かに任せず自分の手でキーウィを撃った様に、別人を侍らす事のできない上司失格野郎。

 そもそも部下居るのかね、いっつも一人で居る様に見えたが、はてさて。

 となるとキーウィは典型的な駄メンズ好きーと言う事になる。

 ルーシーのお世話を買って出ているあたり、ズボラな人が好みなんだろう。

 ま、それは兎も角として、先の一件の結末を語ろうか。

 

「救急隊員を辞めるって……、本当かよ」

「うん……。まぁ、今回の一件で色々と、ね。……ありがとうございました、本当に、助かりました」

「良いって良いって、友達の母親を助けたようなもんだから、デイビッド、お前への借りはこれでちゃんと返したからな」

「……俺とお前の恩と借りの比率既に片方に過重してねぇ? 主に俺の負債って意味で」

「あはは……、良かった。デイビッドにも良いお友達が出来て。ほんとうに……、良かった……っ」

「母さん……」

 

 メインたちを帰らせ、後日に連絡するから首洗って待ってろと言い付けてからの事だ。

 ぐっすりすやったグロリアさんは場所の変化に非常に戸惑っていたが、愛する息子に抱き着かれて心の底から安心したのかそれ以上取り乱す事は無かった。

 そして、今回の一件が理由で既に救急センターの方に違法行為がバレている事、デイビッドがグロリアさんを救助した事、メインとの取引は此方で終わらせて円満解決した事、治療等は既に終わっていて帰って良しと言う事も伝えた。

 非常に疲れ切った顔でそれらを聞いたグロリアさんは、自身の夢をデイビッドに押し付け過ぎた事を静かに悔いながらも、自分を助けに来てくれた愛する息子への愛を爆発させて数分程抱き締め合っていた。

 そうして、改めてお互いの主張を冷静に伝え合い、デイビッドはアカデミーを自主退学してサイバーパンクの道に……と言うと心配させるのでオレの助手として働く事になり、グロリアさんは今回の件を機に違法行為から足を洗って仕事を辞める事にした。

 なので、オレはトンビが油揚げを掻っ攫うように、グロリアさんを武器屋の販売員として雇う事にした。

 急展開過ぎるって? なら、詳細を語ろうか。

 ぶっちゃけ、俺の収入の大部分が武器販売サイトによる裏収入だからだ。

 フィンの伝手を経由してこっそりと裏で販売していたオレお手製の武器の売り上げが、著しい右肩上がりを叩き出しているのが現状である。

 なので、もう堂々と武器販売の資格を取って来て、隣の家屋を札束でビンタして買い取って改築しようかなと考えたのだ。

 けれどオレの身体は一つしか無いので、販売する売り子が欲しい。

 だが、取り扱う物の品質が品質なので一定以上信頼できる人物を雇いたい。

 そんなオレの悩みを解消できる人こそがグロリアさんだった、と言う事だ。

 ぶっちゃけ、武器は素材さえあれば片手間でも作れるので一つ二つお小遣いに消えてても問題無いのだが、見知らぬ誰かにそれをされるのは割とイラっとくるのでグロリアさんに白羽の矢を立てたと言う訳だ。

 それに伴い、武器屋になる予定の店舗の後ろ側に生活スペースを作り、マルティネス親子を住まわせてしまおうと画策した訳だ。

 

「……デ、デイビッド?」

「あー……、うん、母さんの言いたい事は分かるよ。でもな、ジャグラってそう言う奴なんだ。基本的に甘やかすぐらいに優しいんだけど、地味にハードルが高いのを期待してくると言うか……。ま、乗っかって良いと思うぜ」

「そっか……。なら、お言葉に甘えようかしら。武器の取り扱いは久々だから、大丈夫かしら……」

 

 H4ビルディングの住まいは家賃の支払いが滞った事で封鎖されていたようなので、オレが管理人に話を付けて私財を回収させて貰い、オレの家に居候と言う形で滞在して貰っている。

 隣の家屋を増築する形でガンショップの部分を作る事になるので一週間掛からないくらいで終わるそうだ。

 にしても……、デイビッド、オレが女だって事をマジで気付いてねぇな。

 風呂場でばったりと出くわした時も、あ、すまん、の一言で片づけたからな。

 こっちはバスタオルを肩に掛けて後ろ姿だったと言う事もあるが、気付かないもんかねぇ……。

 グロリアさんの方は気付いているっぽいけどな。

 いやうん、未だに生理が来てない事を理由に心配されてしまったからな、たじたじになるってもんだ。

 

「私、可愛い女の子も欲しいと思ってたの。お母さんの代わりだと思ってくれて良いからね」

 

 だなんて、善意50%母性50%な真っ直ぐな言葉を掛けられたら邪険にできないって。

 女の子っぽい恰好をしたらだなんて提案されるが、それが理由で路地裏レイプ案件に発展したら割と困るので丁寧に断った。

 死体の処理って大変なんだよ、相手にNCPDに手配されているような前科があれば別だが。

 いやまぁ、オレ自身ボーイッシュな美人である事は自覚しているが、性自認が正直半々なのでどちらかに偏るってのがどうも気持ち悪いのだ。

 なので、着飾るとしてもユニセックスな恰好をする事になるだろうな。

 そう言う事もあり、今はマルティネス親子が四六時中オレの補助の仕事に付いている。

 

「……血塗れにもならなくて、汚い物にも触らなくて、こんなに楽なのに、こんなに貰って良いの……?」

「母さん……っ」

 

 だなんてお涙頂戴な光景が見られたが、精神的な安寧を享受できて良かったんじゃないかね。

 基本的に隣のガンショップは受け取り専用にして、ネットで注文を受け付けた物を渡す事業にする予定だ。

 品質は全てレジェンダリーなため、五万エディーからが売値になる事もあり直接の売買は危険だと感じての処置だ。

 見た目的に《グラッカー》のクリニックと合体させる形なので、タイガークロウズの看板が良い仕事をしてくれる筈だ。

 オーダーメイドもしてやっても良いのだが、それをやるとリパーとしての時間が減る上に私生活の時間が減るので今はしない。

 アルマジロなどの衣服改造パーツは追々だな。

 ジャッキー用に色々とデザインを凝ったモノも考えてはいるが、実用性を考えると特殊繊維で編んだサラシとか万能止血包帯とかになるので若干畑違いなんだよなぁ。

 と、言うのが近況の全てだな、こっからが今後の話だ。

 

『ジャグ、お前さん、何やら手広くやってるみたいやなぁ?』

 

 ワ カ コ に バ レ た 。

 どうやらオレ自身に監視と言うか護衛っぽいのがついているらしく、先のメインの来訪も相まって色々としているのがバレてしまった。

 なので、嘘も方便と言う感じで、ワカコみたいなフィクサーを目指しているだなんて出まかせで言ってしまった。

 それにより、ほなやってみぃ、と依頼のリストを手にしてしまった訳だ。

 どーするよ、これ。

 いやまぁ、全部オレ自身で解決してしまっても良いのだが、それだとフィクサーじゃなくてソロの傭兵だ。

 なので、これを手元にメインが率いる《エッジランナーズ》へ依頼を押し付けようと画策している。

 そこにデイビッドを放り投げ、監視役兼教育としてサイバーパンク育成計画を稼働させるつもりだ。

 若手過ぎるフィクサー見習いと言う肩書きも得てしまって、多忙な毎日を過ごしているが実に充実している。

 ……この裏でジャッキーと仲良く下積み時代を送っているであろうVを探すミッションもあるってマ???

 うへぇ、過労死しそう……、けれど、やらねばならぬ、やらねばならんのだ……。

 もっとも、原作プレイの時間軸から一年前がデイビッドの死である、と言うだけで、あの原作冒頭のジャッキーとの和気藹々とした成り上がり物語がマジで原作直前だった場合、Vの居場所が絞れないんだよなぁ。

 成り上がり物語が原作直前であったと仮定する場合、コーポVは社畜の真っ最中、ストリートVはチンピラ生活、ノーマッドVはお外でバッカーに所属してる。

 この情報だけでたった一人の人間を探せってマジ?

 いやまぁ、どのVであったとしてもジャッキーと出会うと言う都合の良い原作的な収束を見せてくれれば、ジャッキーを見張るだけで良いんだけれども。

 タイガークロウズの看板娘がソロの傭兵を見張ってるだなんて情報が流れたら戦争不可避だろうが、無理に決まってるだろ畜生がっ!!

 ぐぬぬ、自分の名声が作業の邪魔をするだなんて、このリハクの目をもってしても以下略。

 

「……いや、ほんとどうしよう。エッジランナーズのシナリオはもうバッキバキってぐらいに圧し折ったけど、どんな科学変化するか分からないのがナイトシティだからなぁ……」

 

 サイバーパンクエッジランナーズのシナリオは大別すると、学生編、サイバーパンク編、リーダー編前期、後期の四つに分類できる。

 学生編は自主退学で円満に終了させたので、今はサイバーパンク編に至る訳だ。

 今のデイビッドはサンデヴィスタンmk5ワープダンサーを搭載しており、ヒートシンクも三積みした状態で、ワカコからやっぱり貰った《白虎》を持たせて近接ビルドに特化させている。

 ワカコから、私の愛刀を預けるような相手が居ったんやねぇ、だなんて勘繰りもあったが、《悟》に次ぐ名刀を死蔵するだなんてアホな事を元プレイヤーであったオレがする訳が無かろうに。

 ワープダンサーを移植する際に、内緒でバイオコンダクターと予備心臓に生体モニターもこっそり取り付けておいたので生存能力に関しては今のデイビッドに勝る奴はそうそう居ないだろう。

 追加のサイバーウェアの取り付けは人間性コストを著しく損じるって?

 それなんだが……、オレも色々と考えたんだが、気付かれない様に完璧に移植しておけば、正しく作動する瞬間、つまりは死んだ瞬間でしか発覚しないので、結果的に付けていないと考えられないだろうか。

 なので、今のデイビッドは背中のワープダンサーしかインプラントが増えていないと誤認している状態だ。

 後はまぁ、ぶっちゃけ、今のオレが似たような状態なのにサイバーサイコシスのサの字も無いので問題無いかな、と。

 ……失敗しなくて良かったなぁだなんて、少しだけ思ったけれども。

 そういう後ろめたい理由もあったので、ワープダンサーの移植費は雇い主負担として決済してある。

 ま、十万エディーいかないぐらいだし、別に問題は無いな。

 これぐらいなら三丁くらい売れば戻ってくるし……。

 タイガークロウズは品質の良い武器を振り回せて、オレはエディーが貯まって、どちらもwin-winだな!

 尚、それらの脅威によってジャッキーや居るかもしれないVの身に不幸が起きない事をお祈りせざるを得ないのが地味に苦痛だ。

 ぐぬぬ、もういっそジャッキーもオレが囲うか? そっちの方がもう話早いか?

 そうなるとデクスター・デショーンこと短小銃をドヤ顔で構える糞デブ糞野郎との接点が無くなるかもしれないんだよなぁ。

 ある程度は原作に沿って欲しいけれども、心情的にはもう全てご破算にして誰もが幸せになった方が良いんじゃないかと転生者あるあるなジレンマに苛まれる今日この頃。

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