Hello,Goodbye,Night City‼   作:不落八十八

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二十四話

 普段は客が乗る施術台の上でぼんやりと天井から下げたモニターで古めかしいアニメを見ながら考え事をしていた。

 父さんの死、デイビッドとの出会い、《エッジランナーズ》の結成、ファラデーの分からせ。

 ……はぁ、随分と上手くやれたな、我ながら花丸百点をあげたい気分だ、自分にな。

 いや、ほんと……、上手く行って良かった。

 デイビッドはアダム・スマッシャーにスマッシュされる事無く、2077年の舞台へと上がれる資格を得た。

 アニメ後半程のリーダーシップは得られなかったが、その代わりに掛け替えの無い日常と仲間を得られた。

 ほんと……、良かった……、もっとも、その分オレに負担がのしかかったが、今後の事を考えれば些細な事だ。

 どうせ、Vがアラサカタワーを、《神輿》をぶち壊すその日まで生きていられる保証も無いしな。

 

「……さて、デイビッドの時もそうだが……今回はやらかさないようにしよう」

 

 デイビッドの時のやらかし、それはサイバーパンクエッジランナーズの時間軸の誤認だった。

 2077年、つまりは来年にVによるアラサカファック頑張り物語が始まる訳だ。

 ワカコからTバグ経由で受け取ったのだろうサンドラ・ドーセットの救出依頼。

 車の中でプレイヤー用にミリテクの軍用テック、まぁ、所謂チュートリアルがあったりする頃だ。

 ……そして、どのVの視点でも非常に仲が良かったジャッキーの死を以ってACT2、本編とも呼べるストーリーが始まる。

 うーん、流石に十四年も経っていると記憶も若干薄れているな。

 確か、ノーマッドVは郊外からジャッキーと密輸入の依頼を受けて意気投合したんだっけか。

 んで、ストリートチルドレンV、長いな、ストリートVはペペの店で仲介を頼まれてから、アホに車泥棒を命令されてジャッキーとブッキングしてタッグを組むんだっけ?

 で、だ、コーポVはアバナシーとか言う女を、上司のジェンキンスからの命令で暗殺してこいやーと言われるものの、恐らくその上司の密告かポカでVが事前バレしてアラサカ防諜部から追い出され、ジャッキーと一からやり直すんだったな。

 ……うーむ、困っちゃうな。

 ぶっちゃけ、ストリートVとコーポVしか足跡を辿れないんだよなぁ。

 前者は高級車のスクリームシート、まぁ、週刊誌みたいな奴で特集されてから。

 後者は……何だっけ、なんか宇宙に関するなんかの奴らが死にましたーみたいなニュースがN54で流れた頃だっけか。

 ノーマッドVは、取り敢えずバッドランズ方面でバッカーなるチームが吸収合併された頃としか分からん。

 ぶっちゃけ、バッドランズ、荒野の方の情報は殆ど手に入らない。

 何せ、あいつらノーマッドと言う少数民族的な暮らしをしている奴らは必要が無ければナイトシティの方に近付かないし、ナイトシティ側からとしてもそいつらの情報を追う意味が無いからなぁ。

 

「……まぁ、どのVであってもジャッキーが起点になっている事が幸いだよな」

 

 いずれのVも必ずナイトシティに来る事が運命付けられている事もあり、ジャッキーと一緒にヘイウッドのフィクサー、パドレの所で傭兵をやっていた時期がどれくらいの長さだったかで探す場所も変わってくる。

 ACT2の時点で確実に2077年である事は分かっているが、ACT1の時期が2077年の内だったかまでかは分からない。

 

「そういや、ノーマッドVはイグアナの密輸だっけ。それっぽい情報流しておけば……、いや、別にイグアナ要らんから来ても困るわ」

 

 はぁー……、もう少し分かりやすいタイミングがあればなぁ……。

 だなんて、思っていたが思い出す内にヒットする情報があった。

 それは、多くのプレイヤーが窮屈に感じたであろうワトソン地区の封鎖だ。

 サンドラの依頼の夜にワトソン地区が何らかの理由でNCPDによって封鎖される。

 

「いや、その時点で大分後手だし、そうだったワトソン封鎖されるじゃねぇか……」

 

 すっかり忘れていた。

 しかもそのワトソンの封鎖はジャッキーが死ぬ紺碧プラザでのあれこれの後まで残っている。

 ゲーム的なメタで言えば、場所を制限する事でメインストーリーをさっさと進めろやと言うお達しなのだろうが、現実的に見れば数週間の隔離措置である。

 ……マジで、いったい何が起こっていたのやら。

 気になって調べても何処にもその情報が落ちていないので、ゲーム的な封じ込めで理由は特にない、と言うのが有力だ。

 ……ゲームなら、だ。

 此処は残念ながら現実であり、ナイトシティもワトソンもそこにある。

 唯一オレがこの一件で手を出せるとしたらデクスによってデラマンタクシーが使われる時にテコ入れするぐらいだ。

 その時に必ず救急医療パッケージを搭載させて送り出す、絶対にだ。

 無理だったら最悪封鎖をぶち抜いて……、嫌、駄目だ、まーたこのパターンか。

 色々と動かすために上げたクレドが、街での名声が枷になるとは……。

 

「……え、マジでどうしよう。と言うかワトソンの封鎖ってマジで何で封鎖されんの???」

 

 うーむ、正直、時期的に早いかもしれないし、かと言って遅いと初動が遅れるから手遅れになるかもしれない。

 NCPDの無線情報やらを毎日傍受しておくか?

 もしかしたら此処は現実だからワトソンが封鎖されない可能性だってある。

 ……それはそれでタイミング掴めなくて詰むんだが???

 

「うーん、……マジでどうしよう、どうするのが正解なんだ……?」

 

 原作のACT1はプレイヤーやVに対し、ジャッキーと言う掛け替えの無い相棒の死、そして新たな相棒との交代によって夢と覚悟を背負う重要な場面だ。

 死んだジャッキーの分までこのナイトシティでビッグになってやる、と言うハングリー精神を呪いの様に刻み込み、身体に入り込んだジョニーによって自身の死と言うカウントダウンのスイッチを入れられる訳だ。

 ……まぁ、メインクエを進めずにサブクエから進むと何時の間にかジョニーとそれなりの関係になってたりして、メインクエに戻って変な感じになるんだが、そう考えるとメインストーリー自体は地続きと言うかスパンが短い可能性が出てくる。

 正直言ってジャッキーの死は回避できる死だ。

 死因がマックスタックの輸送機タレットの弾丸である事は間違い無いが、それは理由であって結果ではない。

 ジャッキーの本当の死因は……出血死だ。

 言うまでも無く、土手っ腹に穴を開けられた状態で最上階付近から地下まで降りて、デラマンタクシーで脱出するまでの時間は血を失わせるには十分過ぎる時間だ。

 デラマンに乗った時までは確実に生きていたし、《Relic》を手渡す気力もあった。

 と、なればやはりデラマンに医療パッケージを常備化させるのが先ず最善手だ。

 次に、ジャッキー自身に止血包帯や簡易医療キットを持たせる事だろうか。

 

「……けどなぁ、今のオレって一度会っただけのリパードクでしか無いからなぁ。あれから一度も来なかったし……」

 

 まぁ、理由は分かる、確実に金欠だろうって事は。

 ……いや、待てよ?

 今のオレはジャパンタウンの若手フィクサー、原作のVが地区に入った時の様にそれっぽいホロコールをしても問題無いのでは?

 と言うか、フィクサーとして開店始めたぜーっと接点を作りに行っても良いのでは?

 よーし……、少しだけ希望が戻って来た、流石はジャッキー、今生も宜しく頼むぞ……!

 ……折角だし、ヴィクターさんにも会いたいんだよなぁ、Vの頼れるリパードクのイケオジ。

 あんなに浪漫溢れる渋いメカニックに会いたくない原作プレイヤーなんて居ないだろう!

 ぶっちゃけ、オレがリパードクになった理由でもある、あんな風に噛めば旨味の出る風格になりてぇのだ。

 しまった、どうせならオレのサンデヴィスタンの移植を頼めば良かったか……。

 後悔先に立たず、と言う事でそれは取り敢えず横に置いておこう、後でがっつり後悔するために。

 

「ふぅー……、取り敢えず線は繋がった、か。後でジャッキーにフィクサーになった報告と、依頼を受けないかと打診してみよう。ついでに近況も聞いてみて、Vとの邂逅に備えるか……」

 

 正直、デクスから依頼されるであろう《Relic》強奪をオレから依頼しても良いのだが、そうなるともう色々と崩壊しそうだからエヴリン経由で良いだろう。

 ゴミ山の所でデクス死ぬんだっけ、そういや近くにバートモスの死体の入った冷蔵庫みたいなのがあるんだっけか。

 ……手ぇ出しとくか、ぶっちゃけそれはメインストーリーに関連しないし。

 MAPの何処らへんだっけな……、あぁ、此処か。マッピングピンを刺しておき、後々回収させよう。

 死体と言えば、エブニケの船の近くにジョニーの死体があるんだっけか。

 供養のために左腕だけでも回収して置いてやるか? お代は生演奏辺りで手を打って貰う感じで。

 

「……原作だけしか知らないとジョニーって、悪友みたいな悪ガキロッカーボーイの格好良い奴って印象だが……」

 

 メタ的な視点で見ると、ミリテクの特殊チームに便乗してタワーにテロった挙句、アダム・スマッシャーに瞬殺されたチンピラだからなぁ。

 屋上でマロリアンアームズを蹴られて、プロジェクタイルランチャーで胴体を真っ二つにぶち抜かれてジョ/ニーされた辺りが本当の死亡時期だしな。

 その後のサブロウとの会話らへんは妄想の類だしな、当時のアラサカのCEOってサブロウの先代だし。

 ジョニーがジョ/ニられてからモーガン・ブラックハンドがミリテク部隊の救援に来て、その仲間が核爆弾でタワーを吹っ飛ばしたってのが真相だし……。

 ジョニーが人格コンストラクトになってるのって確か、なんかまだ生きてるしワンチャンあるだろって感じで仲間にオルトが居るであろう《神輿》に情報をソウルキラー経由でぶち込まれたんだっけか。

 原作でジョニーの記憶が食い違ってたり、オルトに妄言扱いされてたり、と踏んだり蹴ったりで暗示されてはいたしな。

 ……まぁ、死んだジャッキーがママ・ウェルズではなくヴィクターの所に運ばれ、紛失した遺体の行方をルート回収のために行った悪魔EDで知り、アラサカ絶対に殺すマンになったプレイヤーも多いと思うんだが。

 このシーンで死体から人格コンストラクト化はできない、と言うのが証明されている訳で。

 つまり、ジョニーはジョ/ニられて見た目死んでたが、しぶとくまだ生きてたから《神輿》にアップロードできた、と言う証明にもなってんだよなぁ。

 ジョニーは原作をプレイしてれば十二分に分かると思うんだが相当な自信家でありロマンチストでもあるので、実は俺が活躍して爆破もしてアダム・スマッシャーと激闘を繰り広げた結果サブロウもといアラサカの偉い奴にこやつできおるわと認められたからソウルキラーされて人格コンストラクトになったのだ、と中二病真っ盛りな妄想を真実と思い込めた節もあるんだよな、可愛い奴め。

 いや、自身は特別である、みたいなタイプだったから高二病の方だったか?

 まぁ、兎も角、なんやかんやあるが、最終的にジョニーはVの良き相棒として格好良い印象が残る訳だ。

 好感度が70%に達してれば、死神なんて怖くない、とどのルートにも行かない修羅の道を歩めたりする訳だしな。

 ……もっとも、CHIPPIN`IN 銀腕の男で選択肢をミスるといけなくなるってのは正直どうかと思うが。

 

「……まぁ、いいや、取り敢えず原作沿いで進んで貰う事は確定だ。じゃないと物語が、アラサカをぶっ潰すシナリオに進まないからな……。ジョニーが居なかったVだと多分普通にソロ傭兵として一生終えてただろうし」

 

 はぁ、結局やる事は多いな、過労死しそうだ。

 一先ず、ジャッキーに連絡してみるか、日中に。

 夕方以降だとミスティとラブラブしてたりするかもだし、ちゃんと配慮しとかないとな……。

 そういや、いつになったらデイビッドはレベッカとくっつくんだ?

 オレとしてはお前らのラブラブで幸せな光景を見ておきたいんだが?

 なーんか理由があってくっついてないっぽいんだよなぁ。

 オレの事は気にせずにラブラブちゅっちゅしてくれて良いのになぁ、やれやれ。

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