Hello,Goodbye,Night City‼   作:不落八十八

25 / 78
二十五話

「そういや、ジャグラって色々とテック仕込んでるけど、どれくらい強いんだ?」

 

 はい、出たー、強いテック使ってるから最強なんだろー奴ー。

 ……まぁ、デイビッドの疑問は確かであるし、そういや一度も戦ってる所見せた事無かった、と今更に思い出す。

 それは午前中の施術を終えて、昼休みを兼ねて昼食の輸入物の天然油そばを二人して啜っている時の事だった。

 恐らくながら、リパードクの仕事を見ていて、客に移植するテックたちを見て思った事なのだろう。

 割と精神的に疲れていたオレはふと思ったのだ、強い所を見せておかないと最終局面で留守番コースなのでは? と。

 よくある話だ、実は味方の中でぶっちぎりに強いのに戦うシーンが無くて、作者の後書きで実はこいつが動いてたら物語が終わってた、みたいなパターン。

 それはいかんなー、いかんぞー、と脳死で行動を始めていたオレは、一つの依頼を完了させるべくデイビッドを誘ったのだ。

 もはや自家用車のそれなデラマンに乗り、二人で後部座席に乗ってブリーフィングをする。

 

「ミッションの説明をしよう。此度の目標はタイガークロウズの一端のボケが勝手に作った麻薬製造工場の完全破壊だ。名称はキラキラ、星の砂の様な綺麗な見た目をしていて、接種するとサイケデリックな心地で多幸福感に包まれて視界いっぱいにキラキラとした星の輝きめいた光景が見られるそうだ。……なので、これはオレ個人からの依頼だ。始末の仕方は一任する。だが、拒否権は与えない、徹底的に潰せ」

「……え゛!?」

「冗談だ、そう言う風にしようと温めていた依頼の一つと言うだけだ。それをオレとお前でやるってだけだ」

「いやいやいや……、ジャグラがタイガークロウズに手を出しちゃ拙いだろ」

「本当にそう思うか?」

「え?」

 

 恐らくオレの身を案じての心配から出た言葉なのだろうが、再三オレはワカコに言っている事がある。

 脳と薬物だけは治療できないから嫌いだ、と。

 と言うか、そもそも薬物を市井に出回させるな、マジで。

 ただでさえカオスなごった煮なナイトシティで、ドラッグハザードが起きたらどうするんだマジで。

 どいつもこいつも誰もがラリって、薬物のために殺し合う場所になったらマジで詰むぞこの街。

 ただでさえ、サイバネティクスな汚染が進んでいると言うのに、其処に悪化させるようなもんを持ってくるんじゃない。

 故に、オレはこの依頼を出し続ける予定だった。

 けれど、デイビッドの疑問を聞いて気分が変わったのだ、どうせやるなら徹底的にやるか、と。

 

「オレはな、デイビッド。薬物ってのがマジで嫌いだ。アレはな、テックじゃ治せない不治の病になる。そんなもんが大流行したナイトシティを想像してみろ、どれほどの地獄絵図が生まれるかを。誰もが薬を求めて、エディーを搔き集め、奪い取り、殺し合い、自滅していく街を本当に見てみたいか? 路地裏の一角どころじゃない、それこそ大通りで誰もが薬物でラリっている光景を見たいのか?」

「それは……」

「で、だ。ましてやオレが所属させられちまってるタイガークロウズから薬物が出るだぁ? 気に入らねぇ、気に入らねぇんだよデイビッド。オレは今、腹の底から怒りで煮え滾っているんだ。分かるか、この激情が、伝わるか、この激怒が。分からないだろうから、見せてやろうと思ったんだよ」

 

 オレの本気具合に漸く事態のやばさを理解したのか、デイビッドが生唾を呑んで顔を険しくした。

 そうして、デラマンはオレの指示した通りにリトルチャイナにある、傍目から見ればただの自動車整備工場にしか見えない店舗の前に止まる。

 此処が初期製造ロット工場であり、此処が栄えた事で各地に小さな工場がひっそりと作られる事になる。

 なので、オレが盛大に潰す、それはもう徹底的に完膚なきまで滅ぼす。

 一見カタギのそれに見えるが、後ろのデイビッドも気づいた様に従業員らしき人物らは全員タイガークロウズだ。

 そして、スキャナーによって露わになった血痕やゲロの跡からキラキラの反応が出ている。

 ……まぁ、《メガコン》を用いて既に敵情視察は監視カメラをハックして済ませているので間違いは無い。

 地下一階に製造ラインを建造しており、物質的な証拠が出揃っているため吹っ飛ばして問題無い。

 

「んじゃ、やるかー」

 

 オレはデラマンのトランクからこっそりと這い出た、光学迷彩によって姿を消していたウェポントランクに手を翳す。

 するとオレの指示に従いアームを使って目的物を取り出してくれたので、躊躇い無く投げ付ける。

 それが入口付近で屯っていた者たちの足元に転がり、形状を把握して回避行動に出た時だった。

 瞬間、青白いスパークが迸り、周辺一帯の機械類が全て破損した。

 

「……は?」

「EMPグレネードで先ず先手を打つ」

 

 勿論、範囲内に居たタイガークロウズの奴らも例外ではなく、反射神経ブースターなどを脊髄に取り付けているであろう奴はその場で痙攣して倒れ伏していた。

 そこへF-GXフラググレネードを複数投げ込んで、CHAR焼夷グレネードを一つ添える。

 最初に投げたグレネードが炸裂し、誘爆して破片が周辺一帯を切り付けながら火炎が撒き散らされて周辺機器に引火、ガスボンベなどにも飛び火して被害は更に拡大して広まって行く。

 

「F-GXフラググレネードで確実に殺傷し、CHAR焼夷グレネードで周囲一帯の破壊を行なう」

 

 ゲームでは直ぐに鎮火する小火は現実では無慈悲な殺意となり、工場内の火気厳禁な代物に飛び火して炸裂と炎上を齎していく。

 締めにMOLODETSバイオグレネードを地下一階へ続く階段の方へ投げ入れ、引火材料と逃げ出せないための妨害を追加する。

 

「MOLODETSバイオグレネードで逃げ出す者の妨害をし、噴き出すガスで地下にも被害を与える」

 

 そして、炸裂音の後に工場自体が上に持ち上がるかの様な轟音を立てて盛大に爆発した。

 地下にあるキラキラ製造のための材料などが詰まったタンクに引火し、派手に燃え上がったのを見てちょっとだけ楽しくなってきた。

 そうして、運良く、または、運悪く工場の屋上から投げ出されるようにしてタイガークロウズのチンピラが落ちてきた。

 目の前の地面にずしゃぁーっと吹っ飛ばされてきたそれに対し、ウェポントランクから取り出したそれを突き付ける。

 どでかい長方形の箱が付いているかの様なくっそでかいスマートテックショットガン。

 カン・タオのL-69ズオを狙いを付けて景気良くぶっ放した。

 五肢に向けて放たれた弾丸が無慈悲にも突き刺さり惨殺死体を一つ作り上げ、血溜まりで地面を汚していく。

 とまぁ、碌なインプラントも防具もしていない本当に木っ端な奴がこう言う姑息な事に手を出す訳だ。

 このズオはロックオンの射程範囲の短さと威力の低さがネックだが、改良してしまえばこの通りだ。

 八つの弾丸が正確無比に遠距離から飛んできて身体をズタズタにしていくとか怖いなー。

 因みに薬物をやっていたり作っていたり売ったりしていると何処からともなく飛んでくるらしいぞ、怖いねぇ。

 

「……それって?」

「L-69 ズオと言うスマートテック対応のショットガンだ。改良してデメリットを消してある」

「……サンデヴィスタンとモノワイヤーは?」

「使う必要あるか? こんなのに?」

「……っす」

 

 流石はオレの作ったレジェンダリー、いや、改造しているしモッド品質のズオだな。

 撃つのが楽しくてこんなにも引き金が軽く感じてしまう。

 既にひでぇ事になっている死体にマガジンを撃ち切るまで引き金を引き、ウェポントランクに改造ズオを仕舞い込む。

 デイビッドも流石に其処に何かが見えなくしてある事に気付いた様で、ズオが仕舞われた先を引き攣った顔で見つめていた。

 

「帰るか」

「……っす」

 

 と、言うのがオレの戦法であった。

 技術で底上げしたグレネードを用いて爆殺し、何かしらの理由で近づいた奴を改造ズオで仕留める。

 誘導型のフラググレネードは撃ち落される可能性が高いから通常のを使うのが常だ。

 正直、馬鹿正直に銃を撃つよりも逃げ場の無い殺傷空間を作って確殺する方が非常に楽だ。

 四方八方にグレネードをサンデヴィスタンでばら撒いて、リアルボンバーマンみたいな事をしてやったっけな。

 ……何処ぞのグレネード鼻のレシピ欲しいなー、マジで。

 

「参考になったか?」

「いや、うん、……鮮烈に」

「そうか、なら良かった」

 

 基本的に負担の強いサンデヴィスタンなんて常用しないんだぞデイビッド。

 相手の情報をこれでもかと知っていると、此処にこれして、こうしてやれば、こう! と言うのが出来る。

 原作ではデイビッドは学ばなかっただなんて散々言われていたが、うちのデイビッドはしっかりと教育させるからな。

 大体、脳死戦法のサイバーサイコから何を学べってんだ、ごり押しはある程度は上手く行くが死ぬ、とかか?

 アニメのデイビッドは憧れだなんて、理解から程遠い感情を抱いてしまっていたからああなったのだ。

 ……あれ、もしかしてアニメでサイバーサイコになり辛かった理由って、それか?

 裏BDのサイバーサイコ共の生の情報を脳にぶち込み続けた結果、それで耐性を持ってしまったんじゃ……。

 つまり、あの裏BDはサイバーサイコ予防の練習になる、可能性があったりするのか?

 と言う事は、デイビッドはクローム適性が高いのではなく、クローム拒絶反応を耐えられる素養がある、と言う事なのでは……。

 あっぶね、これは地味に違うから今後のインプラント計画に組み込まないと駄目だな。

 

「これにて依頼は完了。誰の手でも無い、タイガークロウズのリパードクであるオレが薬物を嫌っている事を流布するには丁度良いきっかけになるだろう。これで自重してくれるようになってくれると良いんだがな」

「なるだろ、この有様だし……」

「相手に何かしらの警告を与える時は、こうやって無慈悲に惨殺してやればそれだけで恐怖を煽れる。考えても見ろ、こうやって死にたいか?」

「……うわぁ」

 

 今日一の心の籠った返答に思わず苦笑い。

 この街は何かと死に様を美化したがるが、綺麗な死に化粧で死ねた奴なんて両手に収まるくらいだろう。

 桜の木の下には死体が埋まっているそうだ。

 では、ナイトシティと言う土壌で育ったあのアラサカと言う巨木はどれ程の死体を吸ったのだろうな。

 デラマンに乗り込みながら、アラサカタワーのある方角を一瞥し、帰路に就いた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。