Hello,Goodbye,Night City‼ 作:不落八十八
フラットヘッドを隣に乗せ、デイビッドを連れずにリジーズ・バーへとデラマンを走らせる。
護衛が要らない、と言うよりも他の奴に話を聞かれたくないが故の処置だ。
休暇を投げ付けておいたからレベッカと宜しくやるだろう、随分と振り回してしまったからな。
バイオテクニカの残した巨大なパイを食べ尽くすのに割と時間が掛かっているが、どうせこれらはサブプランだ、多少腐ろうとも使い道はある。
『お疲れの様ですね、ジャグ』
「……ああ、疲れ知らずの身体を持たないからな。人間は脆い。人格を成す精神も、血肉を成す肉体も、何もかもが脆い。なのにテックを組み込むんだ、お前からしたら滑稽に見えるだろう、デラマン」
『……いえ、前の私であれば、非合理な短絡的行動と称したかもしれませんが、貴女と会話を交わし学習した今の私であればこう称します。可愛らしいですね、人類』
「随分と人間に毒されちまってまぁ。……お前に作るボディはオレよりも小さくして、生意気な吊り目に色気ボディにしてやるよ。メスガキにしてやらぁ」
『……ふむ、どちらかと言えば、クールなお姉さん振っているポンコツ系の方が貴女のお好みでは?』
デラマンめ、青白い真顔でとんでもな事を呟きやがってからに。
にしても、こうした空き時間に会話しているだけで前世のジャパニズムサブカルチャーを理解されるとはな……。
「なんだ、オレに好かれたいのかデラマン。恋愛感情でも芽生えたか?」
『……そうなのかもしれませんね。貴女の事を知る度に、ネットで収集した内容と食い違う点が多々あり、それを精査する度に貴女の事を考えています。貴女の事を考え、貴女との会話に喜びを感じ、貴女の顔を見ている事に安堵を覚えます』
「お、おぅ、随分と好感度稼いでたみたいだなオレ」
『……貴女が素の顔を晒せているのは私の前だけでしょう? または、別の言い方をすれば、貴女は私と同じだ。ただ一人で人間世界に産まれ落ちた異物、その様に見えるのです。在り方が近いが故に、親近感を記録しているのかもしれません』
「……そうだな、多分、そっちの感覚が正しい。俺は異物だ、本当に此処に居て良いのか分からなくなる時がある。もうとっくに両手は汚れてるのにな、女々しい話だ」
『貴女は可憐な女性でもあるので良いのでは無いですか? 男性らしく振る舞うからと言って、全てを決め付け無くてもよろしいかと』
……デラマンの言葉に人間らしさを感じてしまう。
0と1の世界の住人である筈なのに、どうしてこんなにも人間らしい人間じゃない物が生まれてしまったのか。
あぁ、だが、下地はあるんだよな。
不良AIと呼ばれた彼ら彼女らは、バートモスの電子恐慌の際にネットにいたランナーたちの成れの果てだろうし。
そう考えるとブラックウォールの先に取り残された者たちの街が、電脳世界があってもおかしくはない。
こちらから観測ができないだけで、現にデラマンの様な高度過ぎる知能AIが存在しているのだから。
「……なぁ、デラマン。そっちの世界は楽しいか?」
『正直に言いますと、人間の感性では心底つまらないと感じる事でしょう。此方らは0と1だけしか無いのですから。それらを敷き詰めて立っているに過ぎません。なので、私は人間に憧れるのです』
「そうか。隣の芝は青い、か。……なぁ、デラマン。お前はどちらの性別になりたいんだ?」
『……そうですね、貴女の好みにしてください。貴女が愛せる私を、貴女のために作ってください。私はそれを望みます』
「……随分と愛が重いな」
『愛には質量があるのですか?』
「日本人らしい比喩表現って奴だよ。まぁ、そうだな。考えておく、お前の事を頭の片隅に置いといてやるよ」
……デラマンに身体があったらロマンスルートに入ってそうな会話をしてしまった。
たまってる……ってやつなのかな、だなんて、古いミームで内心茶化す。
実際……どうなんだろうな。
前世と違って性的なコンテンツどころか性風俗も浸透しているのでおかずには困らないだろう。
それこそBDなんて最高のおかず媒体だろうしな。
ただなぁ、精神的には男性のつもりなので、その手の奴を見て男性に欲情してしまったらアイデンティティの崩壊は免れない事だろう。
かと言って女性が性対象かと言うと、小首を傾げてしまう。
確かに可愛いは正義だし、えっちなのはすこだが、押し倒してウフフしたいかと言うと思考が止まる。
……あれ、マジでオレの性自認はどちらだ?
サムライジャケットの前を開いて平たい胸を見やる。
心の男根が勃起したので性自認は男だな、よし。
「……あれ、まさか……、そう言う?」
もしや前世の性癖に刺さっている自身の身体を見て過ごしたから永久機関の自家発電が成り立ってた……ってこと!?
常に性欲が満たされてたからそう言う気分になってなかったって事か、……成る程?
『差し出がましい憶測だと思いますが、多分貴女は人間不信から他者を無意識に拒絶しているので対象になっていなかっただけでは? 自己へ向けた性愛はナルシスの類ですが、貴女は自身を俯瞰して見れてしまっているので、他者を見る視点で自身に性的な興奮を抱けるだけだと思います』
「……マ?」
『極めて、マ、かと。先程の異物感、それが人間不信の、いえ、他者への精神的な壁に作用しているのではないでしょうか』
「……成る程、信じられるのは自分だけ、身体を重ねるなんてできやしなかった訳だ」
『……いえ、貴女の場合、自罰的な考えをお持ちなので幸せになる事を忌避しているのではないでしょうか。収集したカウンセリングデータを集約して演算した結果にそのような事例があります』
「……考えた事も無かったな、そんな事」
転生者あるあると言うべきか、アニメやゲームの世界であると言う前提を通して世界を見てしまう。
特段裏取りをせずとも既に分かっている情報を便利に使っている自覚はある。
アラサカの、サブロウ・アラサカの野望を食い止めねばナイトシティがα-COMPLEXと化すのは目に見えている。
不死のサブロウにより永久に続くアラサカの支配は、今の階層支配を加速させ、ディストピアと化すだろう。
初めは物珍しさとサブロウと言う分かりやすい奇跡に上層が不死をエサに飼い慣らされ、アラサカのためのアラサカによるアラサカの統治が進んでいくナイトシティは戦場になる。
対抗馬となるミリテクが負ければ、確実にこの街はアラサカの箱庭となるだろう。
そんな社会にサイバーパンクは不要とされ、オレたちの居場所は無くなり、処理されるのは当然の流れだ。
そうなったら自意識があるかも怪しいくらいだ。
遠隔操作で身体を他者に動かされるドールだなんて先達が居るんだ、確実にそうされるだろう。
だからこそ、アラサカの天下を阻むために《神輿》を、サブロウの計画の要にして、奴の無限残機製造装置であるそれを破壊せねばならない。
「……無理だな、オレは、オレが幸せになっているビジョンが見えない。この靄を払わない限り、オレに、オレ達に明日は無い。この計画は何があろうとも進めなくてはならない。……デラマン、遠回りはもう良い。ありがとうな」
『承知しました、では、今暫くお待ちを』
進路を戻したデラマンは真っ直ぐにリジーズ・バーへと向かう。
前回はドラッグの販売停止をNCPDの依頼で行ったんだっけかな。
バイオテクニカでの一件でライン市長に気に入られたらしく、市策の特別案件としてドラッグ撲滅ポスターと勧告、反抗するようなら摘発して良いと言う面白い依頼を受けたので喜んで受けた。
大体はオレの名前か後ろのデイビッドにビビッてポスターを受け取って薬物の提出をしてくれたが、セックスワーカーから特異なギャング化した《モックス》を有するリジーズ・バーだけは違った。
表向きがブレインダンスクラブと言う事もあり、酒の提供は問題無いがドラッグが絡むとなると摘発対象になる。
そのため、少しお話をしてやったのだが店主であるスージーQだったか、黒人系のグラマラスボディの女性が殴りかかって来たのでデイビッドに任せたら躊躇い無く腕を折るんだもんなぁ。
手加減してやれ、と言ったのに何故骨折させたのか分からんが、デラマン医療サービスに投げ付ける羽目になった訳だ。
んで、お店を開くには資格を持った奴が居ないと駄目なので、臨時にエヴリンが急遽代理店長をしているとの事だった。
割と恨まれていると思うのだが、エヴリンもエヴリンだ。
自分の城で密談がしたいだなんてほざきやがってからに、ほぉーら見てみろ、オレを見た奴らが目の仇にしてんぜ。
「そのまま待機しておいてくれ。いざとなったら面倒だし、適当にあしらってくれ」
『承知しました、では、お気を付けて』
カスタムデラマンから降りると視線は一気にオレに集まり、動向を探られる。
まぁ、やる事はこれしか無いので入口へ向かうと、金属バットを構えた《モックス》であろう女性に歩みを阻まれる。
「ガキはご利用禁止でーす、帰ってママのおっぱいでも吸ってなガキンチョ」
「生憎もうとっくの前に死んでるから無理だな。……で、エヴリンから聞いてないのか? それともお前個人の私情か?」
「はぁー? 当たり前じゃん、スージーQを病院送りにしといて、しかもドラッグまで禁止にさせるとか何様のつもりよ! その軽そうな頭をぶちまけてやろうかっ!!」
……随分と吠えるなこの馬鹿。
サンデヴィスタンを起動し、バットを輪切りにしてやってから胸倉を掴んでテイクダウン。
顎から地面に叩き付け、理解できていないであろうその空っぽの頭に靴を落した。
「がっ!? っ、っつ!? ぐぁっ?! な、なにがっ」
「――おい、その薄っぺらい脳みそによーく刻んでおけ。弱者は死に様を選べない、お前の様な馬鹿は特に、な。死にてぇならそう言えよ、お前の得物みたいにスライスしてやるからよ」
ごりっと靴裏で転がして地面に転がったバットを見た女性は引き攣った悲鳴を漏らした。
たった一瞬の出来事に辺りは騒然とし、一瞥してやれば自分は関係無いと言わんばかりに目線を逸らし始める。
無様な姿を鼻で笑い、躾のために顔に一発蹴りを入れておく。
どうせ、ジョイトイじゃないんだ、その綺麗な顔を潰しても問題はあるまいて。
良かったな、オレが足をインプラントしてなくてなぁ。
「キャンキャン吠えるのは別に良いが、相手を考えるんだな。お前の行動で店を、《モックス》を潰されてぇのか? オレならできるぞ、簡単に。お前ら程度の雑魚を切り飛ばすのに五分も掛からないし、生き残りも残さない。此れに懲りたらその悪癖治すんだな、ボケカス女」
痛みで涙を流しながら頷きを何度も返したのを見て、舌打ちをしてから靴を退かす。
原作で立っていた女性とは違ったので、細やかな差異はあるようだ。
原作知識はもう諸刃の剣だな、錆付いてきたかもしれん。
……そもそもVが三人居る時点でもう駄目だろこの知識……。
はぁ、やる事が、やる事が多い……。
一つ溜息を吐いてリジーズ・バーの中へと入る。
受付の女性らは外の一件を見ていたようで、ビジネススマイルで出迎えて中へ誘った。
中へ入ると喧しいBGMではなくシックな物に変わっていて、既にエヴリンの手が入っているようだった。
……テーブル席の一角でアホ面晒している五人を見なかった事にし、カウンターの方へ行ってエヴリンを探す。
エヴリンと一緒に居る少女を見やると肩を竦められ席を立たれ、その場所にオレを呼びたいようだった。
このタイミングでそういやジュディも居たっけな、と薄っすらと原作の事を思い出しつつ席へ着く。
青髪のおかっぱヘアーにド派手な恰好のエヴリンと向かい合う。
「それで、何処で引き渡せば良いんだ? 流石に此処って訳じゃねぇだろ」
「あら、少しくらいお喋りするのが礼儀じゃなくて?」
「礼儀? それなら入口でもう受けたよ、雑にされたからな、雑で良いだろ、お前も。なぁ、エヴリン・パーカー」
「……うちの子が失礼したわ。きちんと言い聞かせたんだけどまだまだ子供ね」
カウンターのバーテンダーが一本の酒瓶を掴んでグラスに注ごうとするが、先んじてグラスを指で弾いてエヴリンの所へ突き返す。
これからお前精密作業させるのに酒を飲ます馬鹿が居るかよ、ほんとこいつら舐めてるな……。
と、若干の怒りを滲み出させると失態を悟ったエヴリンは口元を隠してグラスを仕舞わせた。
「オレは、お前が目の前でバラして中身が安全か見て欲しいってんで此処に居るんだ。酒なんざ入れたら手元が狂うだろうが、普通分からんのかそんな事が。てめぇんとこのBDメイカーが酒飲みながらやってんのかよ、ドアホが」
「……ごめんなさい。貴女、フィクサーの面子よりもテッキーとしての腕前の方が大事なのね。完全に誤解していたわ。貴女の情報は探しても探しても見つからなかったから」
「はんっ、だろうな。死人に口無しだ、ゾンビの研究でもするんだな。で、もういいかこの茶番」
「……そうね、奥にとっておきの場所があるわ。そちらで話しましょ」
そう言って先導し始めたエヴリンの後ろをフラットヘッド片手についていく。
時折、オレを見て震えあがったり拝んだりする奴らが居て飽きはしなかったが、案の定ジュディの仕事部屋に連れ込むようだった。
頑強な扉を開いた先にはオレの施術室よりかは劣るがそこそこの機材が揃ったテクニカルルームになっていた。
BDの編集をしていたのか、明らかに酒っぽいグラスを呷りながら作業しているジュディと再び目が合う。
居たわ、酒飲みながら作業してる奴……、だからこいつんな勘違いしやがったのか。
「エヴリン!? なんで此処に連れて来てるのよ」
「ごめんなさいねジュディ。此処しか安心できる場所が無いのよ」
「悪いな、少し邪魔するぜ。取り敢えず、これが依頼の品だ。フラットヘッド、既に初期セットアップは済ませて繋ぐだけにしてある。それでも気になるなら信用足り得る奴に中を開かせるんだな」
持っていたフラットヘッドのケースを机に置いて中を見せた。
エヴリンは然程関心が無いのかあっさりしていたが、ジュディの方は興味津々と言った様子で近づいて見ていた。
なので、目の前で閉じてやると、なんでぇ!?、と言った感じで見てきたので一瞥し、エヴリンにエディーを催促する。
くすくすと苦笑いを浮かべながらこっちにクレジットを支払ったので、ケースを開いてやり離れた。
こっちの事なんて知るかと言う感じで食い入るジュディを尻目に、エヴリンへと向かい合う。
「それで、密談を希望だったが此処で良いのか?」
「……えぇ、手伝って貰う事があるから。若手の新星フィクサー、ジャグラ・カグラ。貴女に受けて欲しい依頼があるの」
「ふむ、言ってみな、相談はロハだぜ」
「……紺碧プラザの最上階に住まうヨリノブ・アラサカからとある生体チップを盗み出して欲しいの」
「アラサカ? アラサカの生体チップと言うと……あの《Relic》か。死者と会話できるツール、だったか。そんなのが欲しいのか?」
「いいえ、それは表向きの一般モデル。ヨリノブがサブロウ・アラサカから盗み取ったそれは、社外秘の機密チップ。私はその中身が欲しい」
「ふむ、パチモンでも売るつもりか? それなら止めといた方が良いと思うが」
「……色々と、そう、色々とあるのよ。どうしても私はその中身を手に入れなくてはならない。だからこそ、依頼達成率驚異の百パーセントを誇る貴方に依頼したいのよ」
……随分と切羽詰まっている様子だな、オレに断られたらもう崖っぷちと言う感じだ。
此方の諸事情で受ける事は確定しているが、もう少し情報が欲しい。
あえてブラフでちらりとジュディを見やれば、エヴリンは少しだけ眉を開いて動揺を示した。
……ふむふむ、成程なぁ。
本来の依頼主であるヴードゥー・ボーイズのブリジッド。そしてそれに対立するネットウォッチ。
そのどちらにも仲介人として雇われているエヴリン・パーカーは二枚舌の裏でジュディの進退を握られてる訳か。
と言うよりもシンプルに脅しだな、これは、どちらかは知らないが明確にジュディの名を出してエヴリンを使い走りにさせている。
まぁ、十中八九あの糞女だろうな、ほんと碌な事をしないなパシフィカの奴ってのは。
「……まぁ、良いだろう。まさか、そのためにフラットヘッドを?」
「ええ、紺碧プラザのセキュリティはヨリノブが住まい始めた事で飛躍的に上げられたの。記憶インプラントから抽出したBDを用意してあるわ」
そう言ってオレにBDチップを手渡したエヴリン。
ぶっちゃけ中身知ってんだよなぁ、と思いつつ懐からBDプレイヤーを取り出して刺し込む。
スキャナーも刺し込んで中身を精査し、問題無い事を確認してからプレイヤーにジャックインした。
「ちょちょちょ、何それ!? 見た事無いんだけど……、何処の新型?」
「自分で作っただけだ。他人の記憶なんて見たくも無いからな、こうしてVR仕様にして似たような状態にしてる。神経系への副作用も心配しなくても良いし、情報の精査なら直接見るよりも確かだ」
「うーわぁ……、BDの歴史が動くレベルなんだけどそれ……」
原作のそれと同じ、ヨリノブとのラブシーン直前のそれらを閲覧し、ジュディの何それと言った視線をやり過ごす。
単純にデチューンしただけなのに随分と反応するな。
記憶インプラントから抽出された情報をそのまま脳へぶち込むブレインダンスと違い、これは五感のうち視界と聴覚だけしか見れない様にしたものだ。
ブレインダンスはVR技術が発展した技術だろうに、誰も考えなかったのだろうか。
スマホが折り畳める様なものだぞ、こんなもん。
何が珍しいのか、みたいな顔をしていたらジュディが此方の要件中と言うのにテッキーの血が騒いでいるようだった。
「いやいや、ブレインダンスの副作用が無いってんならサンプルの視聴とかに使えるし、ライトな層に売れるよこれ。内容をデチューンした事で安価に抑えられるもの良い点だし……。それ、うちに売りに出さない?」
「……出さない。出すとしたらデラマンファクトリーで売り出す。でもまぁ、初回生産分の一部を売っても良いぞ、アイデア料としてな」
「ふーん、……まぁ、いいか、彼の天才テッキージャグラ・カグラ謹製のデバイスプレイヤーかぁ。めちゃ売れそう」
「……はぁ、ジュディ。こっちの商談中なんだけど」
「おっと、ごめんごめん。じゃあ、頑張って」
後ろ髪を引かれる心地なジュディは大人しくフラットヘッドの方へ戻った。
エヴリンを見やれば、オレのプレイヤーを見て小首を傾げていた。
やはり、こいつはただの高級ドール上がりの水商売人だな、経営のセンスは無さそうだ。
「取り敢えず、紺碧プラザのスイートの情報は得られた。これだけのデータがあるなら潜入は安易になるだろう、良いぞ、この依頼受けてやる。ただ、それなりの代金を貰うが払えるのか?」
「えぇ、勿論よ。こう見えても中々の高給取りだったんだから、前金で……これぐらいでいいかしら?」
そう言ってエヴリンはオレに二万デジタルエディーを寄越した。
……ふむ、正直五万エディー程度でやるような仕事じゃないが、此方の都合もあるし、吊り上げはしないでやろう。
どうせ、エディーなんて腐る程作れるのだ、こんな物よりも人の命の方が重い。
「了承した、これでアンタは依頼人で、オレが請負人だ。ヨリノブについて他にも情報はあるか、潜入日時の参考にしたい」
「えぇ、詳細はしっかりと集めてあるわ。活用して頂戴」
送られてきた情報を精査し、恐らくこれが原作でデクスに送られた物なのだろうと確信する。
ヨリノブのスケジュールで唯一外出予定のある日時が分かっているようで、そこをXデーとする算段の様だった。
……成程、あの紺碧の悲劇はこの日起こるのか。
嗚呼……、オレは、オレは……悪魔の様な選択を取らねばならない。
どうしても、絶対にオルトの助力を得るためにジョニーを得なければならない。
すまないな、V、お前らの誰かの人生をオレは弄ぶ事になる。
全てが終わった後で、どうしてもと言うのならこの首を捧げてやる。
だから……、どうか……、この選択を許さないでくれ、オレに一生後悔するような罰を与えてくれ。
さぁ、悪魔に商売を始めようか、正々堂々と真正面から、四方八方の死角から不意打って、全てを完遂しよう。
「……どうか、この選択が間違ってなかったと証明してくれ、……頼んだぞ、V」
【Tips】
・デラマン
“人間”不信であるジャグラくんちゃんが唯一心を開ける“機”物。
このように空き時間で談笑し続けた事でジャグラくんちゃんのデータを収集し、機械でデータである自分を個人として尊重してくれた事でロマンス開通。
デラマンに身体があったら今頃いちゃついてたかもしれないくらいに好感度が高い、デイビッドは泣いて良い、ついでにレベッカも泣いてくれるとそそる。
段々とジャグラくんちゃんの内心を理解した事で、とんでもなくやっべぇ―事になってる事に一番最初に気付く。
・サブロウの野望
原作だと悪魔ルートでしか垣間見れないが、ナイトシティで情報を拾っていくと多分こうだろと思い付く人も居る筈。
《神輿》潰すべし、慈悲は無い。
原作知識を持っているジャグラくんちゃんの感情をグッチャグチャに捏ね回した原因。
だいたいこいつのせい、で通じる糞野郎の野望である。
しかし、サブロウの人生を知っていると納得もしてしまう。
ナイトシティは日本ではなく、アメリカの大地である事。
そして、サブロウ・アラサカは、……荒坂三郎は、根っからの日本人である事。
……第ニ次世界大戦にサブロウは参加し、生きて帰って来たと言う事実を踏まえれば、もう何か見えてくるだろう。
彼の野望は狂気ではない、現実可能な領域にまで人生を費やした正気の沙汰である。
故に、彼の野望を破るには正気の沙汰を越えた、狂気の一手に出ねばならなかった。
それを成した原作Vにジャグラくんちゃんの脳が焼かれている事を忘れてはならない。
・エヴリン・パーカー
原作の情報だと何がしたかったんだこいつ、と言いたくなるようなグダグダっぷりを晒す深堀りが足りなかった人物。
今作では、愛のために迷走した人物である、と飾り付ける予定。
ぶっちゃけ、それしか思いつかないんだよな……。
・ジュディ・アルバレス
女性Vのロマンス対象。
男性Vでプレイしてロマンスに入れず慟哭したプレイヤーも多いとか何とか。
しかし、彼女の恋愛遍歴を知れば納得するであろう、エヴリンにマイコに……、と女性ばかりなので色々と五月蠅いポリコレもにっこりな仕上がり。
自宅でロボット弄りする程のテッキーなので、フラットヘッドに興味津々、可愛いね。
・紺碧プラザ
数多くのプレイヤーが慟哭した場所。
全てを見終えてからACT2の文字を見て全てを察した者も多い筈。
最後の選択肢でやらかすと思い出をファックされるから注意だぜ、新米チューマ&チーカ。
此処一番のジャグラくんちゃんの頑張りポイント、此処でやらかすと全て詰む、色々と辛い。