Hello,Goodbye,Night City‼   作:不落八十八

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四十七話

 《アフターライフ》、伝説が眠る場所にして、新たな伝説が始まる場所。

 だなんて箔の付いている場所に俺たちは来ていた。

 リトルボスはタケムラの依頼に心底困惑しながらもGOサインを出し、ついでにヘルマンが《Relic》の開発者だと追加情報を貰った。

 ……何処からそんな機密情報を手に入れているのだろうか。

 まぁ、兎も角だ。

 俺とジャックは意気揚々と《アフターライフ》へと向かい、ヴァニーとサーシャは興味無しと車に待機。

 ヴァリーはジュディのところでアフターケアをしているらしく、暫くは無理と返答していた。

 

「にしてもよぉ、まさか俺たちが《アフターライフ》に来れるサイバーパンクになれるなんてなぁ」

「リトルボス様々だろ、俺たちだけの名声じゃ無理だ」

「へっ、そうだな。だからよ、俺とお前で這い上がって行こうじゃねぇか。新たな伝説の始まりって奴だ」

「……はぁ、リトルボスに懇々と今ある伝説について説かれてたのはもう抜けたのか?」

 

 溜め息と哀憫と、そう言うのはやめて欲しいと言うめっちゃくちゃ心にクる表情で懇々と言われて、派手に死にますと言える奴はそう居ない筈だ。

 

「いやいや、んな訳ねぇだろ。新たな伝説って言ったじゃねぇか。生きたまま伝説になるのさ、俺たちは。それが出来るのは俺たちだけだ、そうだろブロダー」

「まぁ、そうだな……。今一番の追い風を感じてるしな」

【おぉ、俺みたいな中途半端な伝説にするなよ。ぶっちゃけアレ六割くらいミリテクの擦り付けだからな。死人に口無し、だからって外部スピーカー付けるのはやり過ぎだろうがよ。クソっ、段々とあの頃の事を鮮明に思い出しやがる】

「景気付けに一杯やってから行くか。テキーラ・オールドファッションに少々のビール、唐辛子を塗したジョニー・シルヴァーハンドでも飲んでな」

【……嘘だろ、俺のカクテルだと? しかもビールを少々だぁ? テキーラはロックに飲むもんだ。死んだ俺に小便でも引っ掛けてから火を付けたってか。随分と嫌われたもんだな、それを考えた奴によ』

 

 ジョニーは《アフターライフ》への階段に態と転がり落ちてそのままフロアの端で不貞寝し始めた。

 その解釈は……どうなんだろうな。

 表現のせいで妙にしっくりと来てしまった。

 てかお前、ビールを小便扱いすんな、美味いだろうが。

 

【……糞不味い場末の酒場にあるビールなんてそんなもんだ。最終的には同じって話だ、時代考えろヴィンセント。今と昔のビールが同じだと思うか? かさ増しにドラッグウォーター、川の水に濾過された小便、ひでぇとこは工業排水だ。良くも悪くもアウトローがエッジ効かせてたのさ。……だから、純粋に酒飲むならテキーラやらの蒸留酒が一番だ。美味さは勿論、安全って意味でもな】

 

 嫌な尖り方をした時代だな。

 第三次企業戦争の頃だもんな、熱核にバートモスの追い討ちで生活ままならない時代では仕方が無い、か?

 成る程、ジョニーの表現にも納得出来てしまった。

 

(今度美味いビールを飲みに行こうな)

【おぅ、楽しみにしとくぜタダ酒だしな】

 

 ジョニーの機嫌も治ったので、肩を竦めたジャックに追い付く。

《アフターライフ》の入り口を巨漢が塞いでおり、門番宜しく立ち塞がったのをジャックがニヤリと笑った。

 ……ジャックは筋肉マニアだからな、鍛えてるらしいし、感じるもんでもあったんだろうな。

 

「一見はお断りだ」

「タケムラの代理で、ローグに依頼の報酬と情報の取り替えを頼まれている。連絡が行っている筈だ。ヴィンセントが俺だ」

「……しばし待て、一杯引っ掛けていろ」

 

 巨漢は連絡を取った後に横にズレた。

 ジャックがナイス筋肉と伝え、巨漢はナイス筋肉と返し、俺は意味不明な筋肉アーチを潜る羽目になった。

 少しゲンナリしつつ、中へ入れば其処はサイバーパンクらしい酒場があった。

 奥を見やれば事前に情報を探って外見を覚えたローグの商談風景が見えた。

 ジャックとカウンターに座り、バーテンダーの女性に……女性?

 ……まぁ、ナイトシティじゃ性転換はお洒落みたいにできるしな。

 そう言う人が居ても不思議では無いが、《アフターライフ》に居たのが驚きだった。

 ……いや、トラブルの対処を考えたら合理的か。

 見目麗しく、出るとこ出てて、筋骨もあるんだしな。

 よく見やれば身体の骨格が男性のそれであり、豊胸とホルモン剤、指輪付けているし下もしてそうだな。

 前にイタした奴に下腹部を装着型にして、日替わりで名器インプラントを取り替えたりする奴も居たっけな。

 有名なBD女優のだからリアルさが違うのよって話だったが、元の具合が分からんから何とも言えないよなぁ。

 

「いらっしゃい。何を飲む?」

「へへっ、テキーラにビールを少々、唐辛子を添えてくれ」

「へぇ、予習はバッチリなのね初顔さん。そちらは?」

「俺は……、最高に美味いビールにしてくれ」

「んだよ、ヴィット。一緒に飲もうぜ、追加で二杯だお姉さん」

「やだもぅ、そんな歳じゃないわよ。はい、ジョニー・シルヴァーハンドとサッポロビールね」

「よーし、英気を養うぞヴィット。俺たちの伝説に!」

「……やれやれ、仕方が無いな。俺たちの伝説に」

 

 グイッといったジャックに合わせ、俺も一気にかっ喰らう。

 かぁーっ、喉にくるな、唐辛子も相まって随分と辛口だ。

 俺の隣に座ったジョニーも、俺が飲んだそれを再現して左手で掴んでグイッといった。

 

【辛くも苦い味だな。頭テキーラな俺にビールを加えて渋味足せば完璧だったとでも言いたげだな。この酒のセンスは間違いない、ローグだな。……二股掛けた時にビール瓶で殴られたのを思い出した。そのまま火を付けられそうになったっけな……】

 

 明らかにコンセプトそれじゃねーか。

 二人だけの思い出を酒の味にするだなんて良い趣味してんな。

 サッポロビールの瓶をジャックと回し飲みしながら待っていると、バーテンダーのクレアに奥へ行く様促された。

《アフターライフ》のど真ん中のテーブル席を占領する年老いても尚美しさを残した女性がニヤリと笑った。

 彼女こそがこの《アフターライフ》の女主人にして、歴戦のフィクサー、生きた伝説の片割れ、ローグ・アメンディアレス。

 リトルボスとはまた違った気迫に固唾を飲むが、呑み込まれぬ様に気張る。

 

「へぇ、アンタらがあの娘の子飼いかい。中々見る目があるようだ、良いね、座りな」

「あぁ、お会いできて光栄だフィクサーローグ。タケムラの代理人のヴィンセントだ。アンダース・ヘルマンの情報とチップを交換するよう言われている」

「話は聞いている。これが成果だ、中身を確かめな」

 

 情報チップをテーブルに滑らせ、不敵な表情で腕を組んだローグを信用し、チップソケットに差し込む。

 光学インプラントを経由して網膜に映り込んだ情報は、カン・タオの輸送AVに紛れてそのまま本国の倉庫へ亡命するプランだった。

 決行は一週間後、大規模な輸送計画であり、ただの科学者程度では前倒しは出来なかったようだ。

 亡命用の輸送AVは既に何度も使われた形跡があるようで、ナイトシティに残っている一機がそれに使われると予想されている。

 

「成る程、腕の良いのが居るんだな。これがタケムラから渡されたクレジットチップだ。確認してくれ」

「アラサカのチップ払いはいつもの事だが、これは随分と古いな……」

 

 そう言ってローグは受け取ったチップを部下らしき人物に手渡し、チップスキャナーに差し込ませた。

 その部下が確認を終えて頷いた事で、取引は穏便に終わる事ができた。

 その場を去ろうとした俺の左肩を押さえ付け、顔を覗き見る様にしたローグと視線が重なる。

 

「……ちょっとした小遣い稼ぎをするつもりは無いかい? 上手くやればカン・タオの輸送AVを落とす手駒が手に入るかもしれないよ」

「それは……、リトルボスに話を通す事は出来ないか? 俺の独断では無理だ」

「へぇ、随分と行儀が良い。だが、仲介料を取られる程大きなヤマでも無いのさ。間抜けな小娘の盗難品を取り返しに行って欲しいだけなんだ」

 

 何処か遠い顔を浮かべたローグは右肩の圧を緩ませ、耳元に囁いた。

 カン・タオの輸送AVが通る輸送経路はバッドランズを突っ切るものとなっており、初撃を外して逃げ出された時のリスクは大きい。

 しかし、バッドランズに根無しの家を持つノーマッドを引き込めれば追跡も容易になる。

 

「それに、小娘が所属するアルデカルドスはそこそこの規模を持つノーマッドだ、余計なハイエナも減るだろう」

「……成る程な、今後の円滑な仕事のための潤滑油が欲しい訳か。分かった、リトルボスに前向きに提案してみる」

「あぁ、良い返事を待っているよ。そうそう、一つあの娘に伝言を預かって欲しいんだ」

 

 そう言ってローグは囁きを止めて、ソファに背を委ねる。

 

「《アフターライフ》はいつでも歓迎する、とね。あの嬢ちゃん、ファラデーやらのツテが無ければ此処に来れないと勘違いしてそうだから、教えておいてやってくれ。一度顔を合わせて話してみたいのさ」

「あ、あぁ、分かった、伝えておく」

「宜しい、では盗難品の場所と小娘の連絡先がこれだ。あの嬢ちゃんに許可が取れたら中身を見な。開封したら此方に分かる様にだけしてある。疑うなら嬢ちゃんに渡しな」

 

 そう言ってローグは情報チップを一枚手渡した。

 受け取った俺はチップケースに入れて懐に仕舞い込む。

 立ち上がるが今度ばかりはローグは止める事はせずに座ったまま。

 ジャックに目配せし、漸くこの場を去れたのだった。

《アフターライフ》から出た俺たちは冷や汗を流した額を拭って息を吐いた。

 あれがトップフィクサーと名高いローグか。

 思わず懐から煙草を取り出し、火を付けて煙を肺に入れる。

 ふぅー……、ストレスが紫煙と共に宙に消えて行く心地だ。

 

「実際、俺らだけだと失敗した時のリスクが重いから受けて正解だったよな?」

「あぁ、俺がお前でもそうしたさ。いやぁ、すげぇ圧だったなぁ。ジャグがどれだけ俺たちに甘いかよく分かるな」

「だな……。取り敢えずリトルボスに連絡か」

「頼んだぜ」

 

 すっかりお馴染みになった遣り取りに嘆息しつつ、リトルボスへとホロコール。

 二度、三度コール音が鳴り、五度目で会話が繋がった。

 もしや、タイミングが悪かっただろうか。

 

『……なんだ、ヴィットか。ふぁぁ、三時休憩に連絡してくるな、仮眠してんだよ』

『す、すみません、以後気を付けます』

『おう、で、なんだ? しょーもない内容なら治験に使うからなてめぇ……』

 

 やっべ、割とマジでおこだこれ。

 あのリトルボスの治験っていったい何をされるんだよ、めっちゃくちゃ怖いんだが?

 内心ビビりながら恐る恐る内容を伝える。

 

『え、えぇと、タケムラからの依頼通りローグとの取引を終えました。アンダース・ヘルマンがカン・タオに亡命する手筈を整えているようで、一週間後に予定しているようです。そこでローグから提案があり、ノーマッドクランの一つに伝手が得られる可能性のある依頼を預かりました』

『あー……、そう言う感じか。オーケー、受けて良いぞ。そのまま助力を得て輸送AVを撃墜して来い。発電施設のオーバーロードによるEMP以外でな。お前の首のチップに甚大な負荷が掛かる。武装AVを当日に作っておいてやるからそれで落とせ。以上だ。報酬はお前らのポケットに入れとけ、どうせ端金だ』

 

 それだけ言うと不機嫌なままリトルボスのホロコールが切れる。

 時刻を見れば15:22、十五時から仮眠していたら確かにキレられても仕方がないな……。

 ジャックに一応共有すると、クリニックの診察時間を見てないのか、と言われてしまった。

 ……そういや、客として行った事無いんだよなぁ。

 そこそこエディーも貯まっているし、インプラントの取り替えも視野に入れるべきだろうか。

 あ、やべ、ローグからの伝言を伝え忘れた。

 今から掛け直すと治験コースだろうから日を改めるしか無いな……。




【Tips】

・ジャグラくんちゃんの情報の出所
言わずもがな原作知識であり、出所を聞くと笑ってない笑顔で「お前がそれを知る必要はあるか?」される、怖い。
原作知識以外の情報はデラマンの収集し精査し裏付けされた《ドラゴンテイル》の密告が主である。

・ジョニー・シルヴァーハンド(カクテル)
諸説は色々とあるかもしれないし無いかもしれない。
ビール瓶殴打からの着火とか若いローグならやりそうだな、と。
または良い酒(ローグ)に悪い酒(ジョニー)を混ぜて唐辛子(恋の炎)を付けた可能性がある。
強気だが元彼に絆されてそれなりのところまで進んでしまうのがチャームポイントだそうな。

・バーテンダークレア
ヴィットの慧眼の通り、元男性である。
この事はサブクエのカーレースで訊ねる事で聞けたりする。
身体にインプラントする技術が発展しているナイトシティで性転換は、タトゥーを入れるくらいに簡単な施術の一つである。

初見にハートを鷲掴みにされたプレイヤーも多いとか。
尚、カーレースの行方は賛否両論である、原作やって確かめようね!
どうせならハイウェイレースとか常設して欲しかったなぁ。

・ジャグラくんちゃん博士の治験
バイオテクニカ製の薬剤を飲んだ後に、博士の作ったそれを打ち消す効能のアンチバイオテクニカ薬を飲むと言うもの。
シンプルでありながら、昨今の風潮によりバイオテクニカ製はえんがちょされているので普通に罰ゲームを通り越して拷問のそれである。
たまに変な効能の薬剤も爆誕しており、最近だと「性感度三千倍になる薬」が作れてしまった。
尚、服用者は段々と身体の神経系が性感帯と化し、最終的に全身が性感帯となって身動きができなくなる。
風に吹かれて肌を撫でられただけで数十回は絶頂するので普通に死ぬ。
ケージに入ったモルモットに投与したら心拍数の急激増加で即死した、怖い。
解剖検死したら全身が性感帯の神経と酷似していたのでドン引きだった、マジで怖い。
製造方法ごとこの世から抹消されたのでもう安心である。
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