Hello,Goodbye,Night City‼ 作:不落八十八
……リトルボスの了解も得られた事でチップを開封したのだが、肝心の連絡先に覚えがあった。
パナム・パーマー、バッドランズに住まうノーマッドクラン《アルデカルドス》の一員の女性である。
面識は勿論……ある。
コーポ時代に、バッドランズでラフェンシヴに顧客リストを奪われそうになり、逃走劇を繰り広げた時に助けてもらった少女……、いや、もう女性か。
まるで元カノに連絡をする気分だ、別に円満な別れだったがヤる事ヤってるので少し気まずい。
既に連絡先はホロに残っているが、最終履歴は数年前だ。
今更連絡してきて何よ、と言われてしまいそうだなぁ……。
「なんでそんな顔をしてるんだヴィット。さっさとホロ掛けちまえよ」
「あぁ、ジャック……。連絡先の女性と面識あるって言ったら笑うか?」
「……手を出し過ぎだろ、もう少し控えた方が良いんじゃねぇか?」
「コーポ辞めてからは一度もしてないさ、アレは一種の現実逃避の様なものだったからな。今は充実しているし、お前と馬鹿やるのも楽しいしな。ストレスもあんまり溜まってないんだ、実に健康的だ」
「はん、神の思し召しだな。隣人を愛し過ぎです、自重しなさい、って言われてんのさ」
「かもな。……はぁー、また女性陣に白い目で見られそうだ」
「今更だろ」
「……だな」
ジョニーにファックサインを親指と人差し指で作った輪っかで前後させたジェスチャーで無言で煽られつつ、古めかしい履歴から意を決してパナムにホロコールを送る。
『もしもし? ヴィンセントじゃない、久しぶりね。元気してた?』
『あぁ、久しぶりパナム。コーポを辞めてサイバーパンクになったよ、お蔭で大分充実してる。こうして依頼が入ってくるくらいにはな』
『依頼? ……まさか、あの陰険老害糞婆から? うーん……、あんたと久しぶりに喋れるのは嬉しいけど、きっかけが嬉しくないなぁ……』
『悪いな、一応パナムの盗まれた物やらを取り返す依頼を受けてるんだ。困ってるんだろ? 今度は俺に君を助けさせてくれよ』
『あの日のお礼はもうたくさんシてくれたじゃない。アレのせいで恋人出来てないんだからね、絶倫極太フランクさん?』
『あ、あはは……、それ、俺のせいか? 他の奴が下手くそなだけだろ』
『はぁ、性感帯を見つけるのは上手でも、乙女心を探すのだけは下手くそなのよね、アンタ』
『……よく言われる。んで、何処に向かったら良い。一度顔を合わせようじゃないか』
『そうねぇ……、ポニータ通りの降車場に来てよ。今、そこでポンコツを修理してるから』
『あの車はどうしたんだ? って、あぁ、盗難品の車ってまさか……』
『そう言う事、私とあんたのホテルだったあの車が盗まれたのよ。見つけ次第ぶち殺してやるわ』
『あー……、うん、すぐ向かうよ。一人の方が良いか? 俺は今チームに入ってるから盗難品の回収の時はチームでやるが』
『んー、別に良いわよ。お互い三年も経ってるんだし、むしろあんたが入ってるチームの面子を見せて欲しいくらいだわ』
『ははは……、大分愉快な奴らだ、多分パナムも気に入ると思う』
『そう? なら、楽しみにしとく。じゃあ、また』
久しぶりに見るパナムは何処か艶やかになった笑みでホロを切った。
……大分成長してたなぁ、可愛い系だったのに美人系に育っちまってまぁ。
ホロコールの枠越しでも分かるくらいに美人に成長したパナムは元気そうだった。
ポニータ通りと言うと、東部バッドランズ手前か。
カン・タオの輸送AVのルートはバッドランズ南部と東部の境界の様な所を通るため、《アルデカルドス》の縄張りは南東部くらいなのだろう。
そうじゃないとローグが手を借りるように言わない筈だ。
バッドランズの荒野はハリケーンの発生も割とあるので、地形に慣れた者たちじゃなければ生きていけない環境だ。
そして、そんな環境でさえノーマッドが生きていける活力がある。
それに救われた経験があったのでローグの提案を前向きに検討できた訳だ。
「ノーマッドが関係してるとなるとヴァリーも連れた方が良いな。別にエヴリン死んで無いんだし、そろそろ仕事に戻って貰うか」
「だな。現地集合で良いだろ。連絡してやれ」
「はいはい……」
面倒事を全て押し付けられている気がするが、かと言ってジャックに任せるのも不安だからな。
男同士ならそこそこだが、ミスティぐらいしか女性経験が無いから会話の塩梅がなぁ。
ヴァリーにホロコールするとあっさりと通話に出た。
『今大丈夫かヴァリー』
『あぁ、ヴィット、こっちはもう大丈夫。ジュディもエヴリンのお見舞いに行ったのが良かったのか持ち直したから。仕事の話よね? ソートンで行けば良いかしら』
『それは良かった。今度の依頼にノーマッドが絡むからヴァリーには居て欲しかったんだ。今、待ち合わせ場所にマークするからチームマップを共有してくれ』
『了解。……あら、こっちの方が早そうね。先に行って待ってるわ』
ホロコールを切り、ジャックに頷いてデラマンに乗り込む。
ジャックが助手席にどかりと座ったので運転席に座る。
デラマンに目的地を伝えると静かに発進し、ハンドルが勝手に動き出した。
ポニータ通りはジャパンタウンからバッドランズ東部へ向かう途中にある工業地帯近くだ。
目的地に向かう間に依頼内容をヴァニーとサーシャにも共有し、パナムの盗難車を奪還する事を第一目標に据えた。
「にしても、ヴィットの下半身の友人が相手だなんてねー。ナイトシティも割と狭いね」
「ちゃんと後腐れの無いワンナイトだっつーの。いや、パナムとは何回かシたか……? 逃走劇で生存本能が刺激されたんだ、そうに違いない」
「……コーポ時代のヴィット凶悪過ぎない? 相手に隠し子されてたりしない? 知らない子供が居るかもよ?」
「それは無いな。精巣機能を管理するインプラント入れてるから常に避妊状態だ。托卵なんてしたくもないし、ワンナイトの相手にそこまでの責任は取れないからな」
「性的なことに関しては用意周到ね……。女性からすれば嬉しい気遣いなんでしょうけども」
デラマンのボンネットに寝転んだジョニーの煽りジェスチャーを無視しつつ、女性陣の白い目を通り越して生暖かい視線を受ける。
しゃーねぇだろ……、そっちに舵を切って無ければストレスでサプリ漬けになって吐いてたからな。
基本的にアラサカ社員は横の繋がりが味方じゃねーのよ、蹴落とすライバルか目障りなエネミーだからな。
フランクフルトの漏洩の件だって内輪揉めに外部要因が加わった結果だろうしな。
「はぁ、俺だって生粋の女好きだった訳じゃねぇ。逃げ場が丁度濡れ場だっただけだ、俺は悪くねぇ」
「あ、逃げた。ヤリ逃げだー」
「うっせ、一晩相手してやろうか小娘め」
「きゃー、おかされるー。……そう言えば四肢をショットガンで千切られた時にレイプされてないからまだ処女だなあたし。流石にグロかったのかな」
「特殊な性癖じゃなきゃ勃つもんも勃たねーよ。まぁ、月並みだが好きな人にやりゃ良いんじゃねぇか?」
「えへへ、ならジャグラさんに貰って貰わなきゃ」
「いや、ジャグは……、いや? どうなんだろうな。ノーマルって感じだが……バイなのかもな」
「にしてはデイビッドと良い感じじゃねぇか?」
「デイビッドはなぁ……。あれ、普通に男友達のノリで接してるだろ。だから信頼もしてんだ、迂闊に手を出したらどうなるか……。ワンチャン、オカズくらいはくれそうだが、本番はねぇだろうな」
俺の憶測に三人は、あー、と納得の声を揃えた。
リトルボスの感情次第だが、傍目から見ていると友人以上恋人未満、所謂親友ポジに居そうなんだよなデイビッド。
愛情を育むには遠くて、友情を育むには近過ぎる。
……難儀な事だな、まぁ、リトルボスもティーンエイジャーだし、これからだろ、多分。
人の恋路に手を出すとメンポ被ったニンジャに闇から馬で蹴られるって言うしな、相談に乗るくらいにしとかないとな。
だなんて談笑していたら遠くに見慣れたソートンが見えて来た。
ヴァリーは既に降りていて、近くの車に居る人物に……いや、パナムじゃねーか。
ポンコツを直してるって話だったし、手伝っているんだろう。
近くに止まるまでの間に修理が終わったのか、二人してハイタッチして喜んでいた、仲良いなおい。
デラマンから降りて二人に近付くと、パナムの成長具合に目が奪われる。
……ぺったんこだったのに随分と育ったなぁ。
だなんて思っていると満面の笑みを浮かべたパナムが俺に走り寄り、強烈なハグを以てして歓迎してくれた。
……こいつは、D、いや、Eか……?
「ヴィンセント! 久しぶりね! 随分と体格が良くなったね」
「あぁ、パナムも元気そうで何よりだ。前の仕事と違って力仕事だからな、ひ弱なもやしじゃ居られなかったのさ」
「いや、あんた腰から下は前から凄かったでしょ。ランニングはまだ続いてるの?」
「んー、ぼちぼちだな。たまにジムに行くぐらいだ。……リトルボスのお蔭で割かし有名になっちまったから物陰が怖くてなぁ」
「へぇー、順調にサイバーパンクしてるんだね。私も新しい事をしようと思って傭兵業を始めたの。そして、初の依頼が運び屋で、手を組んだシックスストリートの奴に騙されて車ごと商品を持ってかれたのよ。取引自体を知らないとできないタイミングだったもの、確実にあいつね。はっ、馬鹿な奴よね、今時功を焦って失敗する例なんて幾らでもあるのに」
「同感だな。そこらの傭兵よりも恐ろしい奴の目に留まっちまったみたいだしな。お前が取引してるローグってのはナイトシティの中でもトップのフィクサーだ。そいつから何とかするように依頼されるって事は」
「あぁ……、信用を失って尻尾切りって訳。そんでもって、あのキルゼムの子飼いのあんたら来ちゃった訳だ。運が無いね、ナッシュも。まぁ、落とし前はその首で付けてもらうけどね」
「ははは……、キルゼム?」
「知らないの? 恨み辛み、理不尽な行いのカウンターとして動いてるフィクサーって話じゃない。標的になった奴らは一人残らず皆殺しで、誰も生きて帰れないって話よ?」
「あぁ……、そう言う……」
明らかに子飼いチーム一号の仕事っぷりから付けられた名前だなぁ、それ。
いや、うちも大概か? 今、俺のキルスコアどうなってんだ?
【俺が知る限り、お前のスコアは百十七人だ、すげぇなそこらのサイバーサイコよりも殺してるじゃねぇか】
マジかよ、殆どスカベンジャーだがそれだけの人数が死んでるのによくもまぁニュースにならないな。
脳裏にN54のロゴに首輪を付けて散歩するリトルボスの幻影が浮かんだ。
いや、どちらかと言うと表に上がってないのか。
……そう言えばバイオテクニカの時にNCPDと連携してなかったっけ?
首輪の先がNCPDのロゴにも付けられた、もはやオルトロスだ。
単純にギャングのアジトや事務所だから捜索されていない可能性が高いか、流石にリトルボスと言えどそこまではできないか。
または、俺たちの戦い方がステルスキルを基本としているため、外に漏れてないからか。
……そっちの方がしっくりくるな、リトルボスからも小火は避けろよと言われているし。
って事は今も死体やらが残っているって事か?
……異臭が発生するまで見つからないって事か、そっち側にはなりたくねぇなぁ。
「さて、本題に戻すわよ。ロッキーリッジって言うゴーストハウスを溜まり場にしてる。ラフェンシヴの奴らがあの時強奪に参加してたから、多分手先なのよあいつ。ナイトシティに出入りする尖兵って訳ね。私みたいなバッドランズから出ようとしたノーマッドを狙い撃ちしてるのね、クランに頼れないから泣き寝入りするしかないとでも思ってるのよ」
「ん? 今、《アルデカルドス》には居ないのか?」
「……ちょっとだけ、家出中ってとこ。バイオテクニカが潰れたじゃない? ソウルが、族長のソウルが企業に取り入る予定が潰れたから迷走してるのよ。ミリテクと手を組むだなんて言い始めたから説得したら出てけってさ。こう言う事何回かあるから、ソウルの頭が冷えたら仲間に連絡貰えるようにしてるって訳。それまで暇だから色々してみようかなってね」
「ふむ、そうか。そしたらうちから依頼を卸そうか? 取り敢えず、一つ、大きな案件を抱えてるんだ」
「へぇ、良いね。私の車を取り戻したら一度《アルデカルドス》に戻ろうか。ヴァリーも修理を手伝ってくれてありがとうね」
「別に良いわよ、同じノーマッドのよしみだから。そしたらヴィットはパナムの車に乗って、私はソートンを運転するわ」
「あぁ、そうだな。そうするか」
「そう言えば、そこの車って何処のメーカーの奴? 見た事無いんだけど」
『初めましてパナム様、私はデラマン。大いなるフィクサージャグラ様の部下です。この車はデラマン社にあったタクシーの一台をジャグラ様が改造され、装甲車並みの強度とF1カー並みの速度を出せるよう改造されたオリジナルです』
いきなり話し始めたデラマンの声に、パナムは心底驚いてぱくぱくと口を開いてから俺を見た。
いや、俺を見ても仕方が無いんだ、それ、リトルボスの部下だから、同僚と言うよりかは上司なんだよな、立ち位置的に。
そこらの車と変わらない様な見た目の筈なのに、対物ライフルも弾くと言うのだから恐ろしい車である。
恐る恐ると言う感じでデラマンを見始めたパナムは段々と溜息の様な物欲しさの込められた息を吐き始めた。
まぁ、分かるよ、そこのノーマッドのヴァリーも似たような感じだったからな。
「自動運転ができるとか、運び屋の仕事丸潰れじゃない? ……廃業しようかな」
「いや、受け渡しに難があるから……《デラマンズ》が居たなぁ。今度は物流にも手を出すのか?」
『今の所そのような予定はありません。運送業は多岐に渡るため潰してしまうとナイトシティに混乱を齎すため手を出さないよう言われています』
「つまり、言われてたらやってるって事よね……」
「まぁ、リトルボスだしな……。そこらの成金よりもよっぽどの稼ぎ叩き出してるからな、やろうと思えば、って感じだ」
「ひぇぇ……、あんた、ほんと運が良いのね、あの時と良い、コーポ辞めたってのに返り咲いてない?」
「ああ、自覚はある。俺はリアルラックだけはそれなりに良いんだ。良い女にも出会えるしな」
だなんて茶化してみたら、パナムは頬を少し赤らめて、ばかっ、と呟いてそそくさと自分の車に乗り始めた。
少し揶揄い過ぎたか、だなんて思っていたが助手席のロックを外しては俺が開けようとすると閉じる悪戯を返された。
……見やれば、べーっと舌を出された。まったく、お転婆は変わってないな、可愛いじゃじゃ馬娘め。
【Tips】
・ヴィットの女性遍歴と言う設定。
女性キャラとそう言う事をした事があると言う感じで話の繋がりを無理矢理ぶちこめると言う荒業ができる二次創作ライフハック。
ジャッキーとの会話で明らかにナイトシティ外でも営業してた事が明らかになっているのでそこを膨らませた。
ぶっちゃけるとこのコーポVはパナムルートなので何の問題無し。
ヴァリーはジュディルートです、え、知ってたって?。
ヴァニーは原作名前を持たないのでロマンス対象に固定はありません。
ケリーとリバーは泣いて良い。
・ヴィットのキルスコア
ぶっちゃけ、NCPD案件などを皆殺ししてると中盤くらいで多分三桁は普通に超えてる筈。
アイコニックが優勝賞品なサブクエがあるが、横着してショートカットして会場に着くとそのままドンパチに繋がったりするので新米プレイヤーは注意だ。
ガンマン大会を兼ねた新合衆国を祝う宴の場に居たシックスストリート全員が敵に回るためだ。
サンデヴィスタン型だと普通に一対一を繰り返せば楽勝なので近接がおすすめ。
……え? 大会中にサンデヴィスタンを? 勿論、使えます、チート参加者混ざってんよー。
・昨日の死亡者予想クイズの人数は~。
あくまでもNCPDによって判明している数の公表数であり、通報を受けたりしてなければギャングどものアジトにNCPDは突入しないので露見しない。
何処ぞの密告人たちもジャグラくんちゃんの子飼いのチームの事は当然知っているので、異常なし、と密告してないそうですよ、えらいね。
でも、異臭騒ぎに発展したら……なんて人も居るけど大丈夫です。
一般通過スカベンジャーが子飼いチームの行った場所の後片付けをしてくれます。
ナイトシティの自浄作用は完璧ですね、実に幸福に満ち足りています。
……え? そのスカベンジャーたち、龍の尾のタトゥーとか入れてるんですか?
番号も彫られたりするんですねぇ。流行ってるのかな(すっとぼけ
・デラマン物流サービスの予定は無し
ぶっちゃけ、あんまりにも手を広げ過ぎると袋叩きにされる可能性があるので自重した。
それにやる事が多くなりすぎてパンクするのが目に見えていたのもある。
まぁ、治安が良くなった場所で市民が平和に物流すれば良いんじゃないかな、とジャグラくんちゃんはぶん投げた。
尚、ナイトシティの転売ヤーの人数はなんと三桁にも満たないし、何なら毎日減っている。
どこの密告者たちの働きだろうなー?
失業者数も右肩上がりだが、雇用者数も右肩上がりと言う異常な数値を叩き出してるナイトシティ、市長もニッコリしながら胃の辺りを摩ってる。
フードファクトリーに隣接された工場には沢山の従業員が仕事をしているとか。
研究チームも発足し、より良い食事の改善に力を入れているとかなんとか
でもそこの社長、天然の牛のお肉を男友達と腹いっぱい食べてるそうですよ、完成形が分かってるから整えやすいね、やったね!
これにより市場に出回る合成ミートの質が跳ね上がったのは言うまでもない。
ねっしょりとしている感触の肉擬きとはおさらばです、実に幸福である。