Hello,Goodbye,Night City‼   作:不落八十八

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五十話

 ソートンが取引先である場所へと向かって行く……と、思っていたのだが道がおかしい気がするなー。

 なんでフリーウェイを下ってんだ、と隣を見やればパナムがニコニコ笑顔で洞穴らしき場所へと中指をおっ立てていた。

 

「……パナム? 取引は?」

「いやぁ、物品が足りないかもしれないなーって。此処がナッシュのアジトって言ってた場所なのよね」

「……はぁ、まぁ、良いけども。報酬は貰うからな、これは依頼とは別件だから」

「えぇ、良いわよ。あのクソボケの断末魔を聞けるならね。モーテルで一晩で良い?」

「朝までコースな。代金は俺が立て替えておくから誤魔化しといてくれ」

「ありがと。さっすがヴィンセント、あの頃と変わってないわね」

「そう言うパナムは随分と育ったな、あの頃ツルペタだったじゃないか」

「そりゃティーンエイジャーだったもの」

「……は? 聞いて無いが?」

「そりゃ言ってないもの。じゃなかったらおぼこなガキなんて抱かないでしょ?」

【こりゃ一本取られたなヴィンセント。良かったなバッドランズで、法の目が届かない場所でよ】

「喧しいわ」

 

 ジョニーにゲラゲラと煽られながら、つい口にしてしまったがパナムは気にした様子は無かった。

 はぁ、これだからバッドランズの女って奴は……、戸籍なんてないから偽造と言うか口任せと言うか。

 取り敢えず、チームホロに依頼続行の旨を伝えておくか、盗難品の一部が足りないって事で。

 了解の返事が返って来たのでパナムにGOサインを出すと、ニンマリと笑みを浮かべてソートンを加速させた。

 ……岩肌が近いんだがっ!?

 あぁもうこれだからバッドランズの女は!!

 ヴァリーと言いノーマッドは車狂いが多いが、その同じ割合で運転狂いも多い。

 道の半ばで屯していた奴らを跳ね飛ばし、ソートンを赤く染めたパナムは空いた手で再び中指を立てた。

 そうして、辿り着いた場所は元は坑道の中継所だった場所で簡素なアジトだった。

 取り敢えず、窓を開けてフラッシュバンを投げておき、此方に注目していた事を後悔させておく。

 パナムの目元を一瞬隠し、仄暗い場所で瞬いた一瞬の閃光から守っておく。

 

「残業の時間だおらぁっ!!」

「……なんか別の私怨みたいなの混ざってない?」

 

 岩陰に隠れ、ネコマタを構えてクイックハックを行なう。

 はん、ちょろいICEだな、ほらもう抜けたぞ、視界不良のデーモンを喰らえっ!

 ついでに化学汚染も喰らえ、感染型のなっ!!

 ジャックたちが追いついて無いのにドンパチし始めてしまったのでヤケクソ気味で色々と放る。

 さっきのラフェンシヴの腰元から拝借したグレネードなどもぽいぽいと投げてやれば、金網越しに破片が炸裂して目元を押さえた奴らを殺傷していく。

 まるで鴨撃ちだな、だなんて思っていると頭上を掠める銃弾の反撃があった。

 へぇ、随分と良い物使ってるな、後で拾っておこう。

 フラッシュバンを岩陰の反対からころりと転がしてやれば、そいつはマズルフラッシュを瞬かせそちらを狙い撃った。

 場所は、二階の事務所っぽい所か、へっ、素人め。

 チャージしたネコマタの一撃を胴に撃ち込み、倒れたところを追撃して仕留める。

 テックスナイパーライフルの恐ろしさを思い知るが良いさ、可愛い名前してるが恐ろしいんだぜ。

 

『フェスティバル会場は此処かー? ヒャッホォウー! 死ねよやぁっ!』

『派手に暴れたな、お蔭で動きやすいぜ』

『随分と張り切ってるみたいね? 追加報酬は何だったのかしらね』

『あ、ヴィットの口座から引き落としだからね』

 

 ……サーシャにバレてーら。

 と言うかヴァリーの勘の良さがとんでもないと言うか、もはや決め打ちしてないかこれ。

 まぁ、間違って無いから何とも言えないなぁ!

 さよなら一万エディー、サーシャお前、容赦無いな!?

 この恨み辛みをラフェンシヴに叩き込んでやるしかないな、へへ、楽しくなってきたぜ。

 

「……何と言うか、戦闘狂しか居ないのあんたのチーム……。あんたも含めてだけども」

「まぁ、数ヵ月後にはパナムも似たような感じになってるよ」

「ならないわよっ!? と言うかもう傭兵業は諦めるわよ、あんたらみたくなりたくないから!」

 

 ドカドカとソートンのトランクに入っていたグラードをぶっ放しているパナムに言う資格あるか?

 めちゃくちゃ良い笑顔でミンチみてぇな感じにしてるじゃねぇか。

 そんなこんなで無事に掃討は終わり、検分に入る訳だが……パナムのグラードに粉々にされた死体の臭いがやばい。

 躊躇わず胴をぶち抜きやがったなこやつぅ。

 

「パナム、それ使うなら心臓か頭狙えよ。未消化の物とか、生命だったものが撒き散らされてひでぇ事になってやがる」

「え、殺し方にも何か流儀があるの?」

「後処理の手間だよおばか。胴の下をぶち抜いたらこうなるんだよ。俺らが始末した奴はそこそこ綺麗だろ」

「へぇ、ほんとだ」

「此処がよく訪れる場所とかだったら悲惨だぞ、掃除が大変だ」

 

 目の前の惨状と臭いに、風上だったらしいパナムが此方に近付いた事で理解して青い顔で顰めっ面を浮かべた。

 こらこら、背中に引っ付いて俺の匂いで中和しようとするな。

 へへっ、じゃねぇのよ、いちいち可愛い奴だなまったく……。

 

【ベタ甘じゃねぇか。言動一致させろよティーンファッカー】

(……お前も大概じゃねぇか!? ファンの子と7Pとかチーズかよてめぇ)

【……酒が良い感じに入ると、な? 分かるだろ? そう言う気分だったんだよ】

(喧しいわエイジャーファッカー)

 

 肩を竦めてんじゃねぇ、お前も類友だかんな。

 気持ちが分かってしまう自分が少し悔しい。

 パナムを後ろから押してナッシュとやらの死体を探すと、改造品のテックライフルを握った奴がそうだったらしい。

 ……アキレスの改造品ってところか、帰って中身を見てみるか。

 たまに拾う改造品を眺めるの楽しいんだよな、お宝拾った気分になる。

 

「金目の物は奪わないんじゃなかったの?」

「これは単なる趣味だ。他人が丹精込めて改造した品を見るの楽しいんだよ。持ち主も黙って持っていくのを肯定してくれてるしな」

「……まぁ、いいか。えーと懐に……あったあった。金庫の鍵。中にあると良いんだけど」

 

 事務所の粗探しにより仮眠ベッドの下から金庫が見つかり、開錠すると筒状の医療品が入っていた。

 

「やっぱり。デラマン製薬製の抗生物質とかが無かったからガメてたのね。バッドランズに医療品は必要不可欠なんだけど、入手経路が大変なのよね」

「へぇ、そういやバッドランズにはデラマン出してないしな」

「診察料が取れないって分かってるからでしょうね。診察拒否されないから助かってはいるんだけどね」

「まぁ、リトルボスも商売人だしな……。変な贔屓をするつもりが無いんだろ」

「そう言えばあんたのお仲間が乗りつけたのもデラマンだったわよね。デラマンってタクシー会社だと思ってたんだけどどうなってんの? AIの反乱的な騒動でもあった?」

「いや、うーん、説明がしづらいと言うか、確かな根拠がある訳じゃないからなぁ。端的に言えば、リトルボスが感情が芽生えかけてたデラマンを初恋キラーして侍らせた結果、かなぁ」

「……どゆこと?」

 

 パナムの困惑顔に曖昧な苦笑いを返すしか出来なかった。

 ぶっちゃけリトルボスもビジネスしてたら惚れられて侍りに来られた困惑側の人だしな。

 ……それをまぁいいかと受け止めるリトルボスもリトルボスだがな。

 リトルボスは差別を嫌うからな、区別はするが。

 来るもの拒まず、去るもの追わず、ただし薬物バイヤーとスカベンジャーは別、の精神で誰にもフラットな対応をするのがリトルボスだ。

 だからあのアラサカに正面からファックサインを掲げても誰も手出しが出来やしない。

 何故かって? あの《アフターライフ》で啖呵切った話が周りに回って一種の神話めいているからだ。

 別視点で見るとサイバーサイコに一番近い少女だなんて言われている程に狂気的でありながら正気を保っている末恐ろしさが行動にも出ると考えられているからだ。

 やはりアラサカの軍用試験モデルを二種移植した件は一波乱起こしたらしい。

 もっとも、残りのサイバーウェアもリトルボスが持っていると噂されてるしな。

 ……明らかに俺の左腕に内蔵された電磁加速型プロジェクタイルランチャーがその一つだしな。

 ……気付かない振りをしていたが、ヴァニーの両腕両脚もそれっぽいんだよなぁ。

 明らかに他のゴリラアームよりも威力があるし、軽業師の様な動きで脛から飛び出ていたあのマンティスブレード、微かに震えていて切れ味もヤバいんだよなぁ。

 全部揃ってる上に既に全部使われてるとかやばみの極みでは? ……考えるのはもうやめよう。

 

「取り敢えず一件落着だな。今度こそ取引先に行ってくれよ?」

「あはは、これ以上は無いよ。正直今回の取引のメインがこれだから、無い方がまずかったんだ」

「……最初からそれを言ってくれれば追加依頼にはならなかったんだが?」

「ごめんね?」

「……はぁ、まぁいいか。サンセット・モーテルだったか?」

「分かったってば。これカーナビなんてハイテク付いてないから探しても無駄だから」

 

 だなんて和気藹々をスプラッター現場ですんのはどうなんだろうな、女心ってのは分からんなぁ。

 時刻も夕暮れ、チームも一度現地解散し、モーテルに残る選択肢を取った俺らは、分かってるから宜しくしとけ、とあっさりと取り残された。

 駐車場でパナムの取引を眺めながら、程良く育った巨尻を見つめながら時間を潰す。

 こうして空いた時間が出来るとふと思う事がある。

 ……リトルボスは俺らに何をさせようとしているのか、と。

 リトルボス……、ジャグラ・カグラは十六歳の少女にして、今やナイトシティの一角を名乗れるフィクサー。

 そんな人物が《Relic》を埋め込んだままの俺のために態々依頼と言う扱いで取り出し方を探す?

 リトルボスは《Relic》を使って何かをしたがっているのは確実だ。

 じゃないと天邪鬼なジョニーが事あるごとにリトルボスを持ち上げる理由が分からない。

 恐らく、俺の心臓移植手術の際に、リトルボスはジョニーに何かを言っていたのだろう。

 

「……駄目だ、分からない。なぁ、ジョニー、リトルボスは何を抱えてるんだ」

【……俺なら懐柔しやすいと思ったか、ヘタレめ。あの嬢ちゃんはな、神を気取ってるのさ。無意識にな。何もかもが見えているからこそ、自分しかいないと勘違いして、取り零す事を極端に恐れてやがる。……俺にも理由までは分からない。だが、俺を使って何かを成したいらしい。……じゃなきゃ、嫁入り前の身体をあんな風にはしないだろうよ】

 

 助手席に座り込んだジョニーは、煙草の味を楽しむ様な素振りを見せずに、苦ったらしい表情を浮かべていた。

 

【あの嬢ちゃんはな、お前を救うために腕を四本も増やしやがったのさ。あのジャケットは俺へのリスペクトも含まれてるのは確定的に明らかだが、本質は隠すためだ。本来なら一人でやる様な手術じゃねぇんだよ心臓移植なんてもんはな。だが、あの嬢ちゃんは人間不信の塊だから自分以外の奴を信じねぇ、だけど身体は増やせない、だから、物理的に腕を増やした】

「……は?」

【いやぁ、壮観だったぜ。お前の中から、ミリも動かない身体で見上げた時に、三対の腕が広げられた時はな。無表情な真顔でまるで天使の様だった。何もかもを自分一人でやり遂げて、お前を蘇生した時に何をしたか分かるか? 死のうとしたんだ、さっきまで生身の手で掴んでたメスで首を突こうとしてな。それを二対の機械の腕が止めるだなんて狂った事をしやがった。……あの嬢ちゃんはもうサイバーサイコだ。既に狂ってるのに正気を保ってやがる。……見てられるかそんなもんをよ】

 

 半分も吸っていない煙草を左手で握り潰したジョニーは深い溜息を吐いた。

 俺は……、何も言えなかった。

 サイバーサイコ? 普段通りのリトルボスを思い出す。

 ジャックたちと談笑し、デラマンに世話され、デイビッドと出掛ける姿が、思い出せる。

 思い出せてーー。

 

「これで、全てが始まる。始まって……、やっと終われる日が来る」

 

 真っ白な背景に浮かび上がるリトルボスは、メスの先で喉を傷付け、薄らと血を流していた。

 小さな手が握り締めたメスがより食い込む前に、機械の腕が手首と関節を握り締めて阻止していた。

 これは……ジョニーの記憶か? 

 違う、これは俺を通してジョニーが見た俺の視点の記憶だ。

 やがて記憶のリトルボスはメスをそっと銀皿に置き、その小さな手で俺の手を握った。

 

「お前らなら終わらせてくれる筈だ、そうだろ、V、ジョニー」

 

 ……ぐっ、ぶちりと記憶が途切れ、視界は現実に返り、取引先と話すパナムの尻が見えた。

 隣に居たジョニーは消えていて、あいつも少なく無い疲労を覚えている様だった。

 ……嗚呼、これで確信できた。

 《Relic》を追う事でリトルボスの隠している何かに繋がるのだと。

 リトルボスへの一生ものの恩を返せるならば、辿り着いてみせるさ。

 先ずはアンダース・ヘルマン、身柄をかならず手に入れてみせる。




【Tips】

・騙して悪いが……
原作も似た様な感じである。
裏切り者のナッシュからアイコニックを拾えるので忘れずに回収しよう。
コーポVらしいハック&テック、これが本来のヴィットの戦い方である。
知力ビルドだとレジェンダリーデーモンを手に入れるまでは多分皆こんな感じに戦うんじゃないかな。

・デラマン医療サービスバッドランズ支店の無い理由
ナイトシティと違い、ジャグラくんちゃんの怖さを理解していない奴が多いので、建てると何故かタワーディフェンスゲーム(現実)が始まってしまうのが目に見えているため。
仮に建つと少し離れた場所に無煙式焼却炉が作られる。
燃えてる薪は何だろな(目逸らし

・アラサカの軍用試験モデル計五種(シークレット無し)
一部はジャグラくんちゃんが拾ったが、ゴリラ、マンティス、ランチャーはデラマンが拾ってきた。
褒めてご主人様!と言う感じだったとか、ジャグラくんちゃんは笑ってない笑顔で執事メイドの頭を撫でた。

・ジャグラくんちゃん第二形態
完璧で幸福な人間不信が日本人思考と事故った結果、重要な事は自分の手でやらなくては安心できなくなった。
または、自分の手で失敗してしまえたなら踏ん切りも付くためでもある。
自分が始めた物語なので、自分が終わらせなければならないとミーム汚染されている。
言うまでもなく、正確な判断の出来ないサイバーサイコの判定は自他評価で決まるので、他者から見れば既にアウトだが、ジャグラくんちゃんの主観だとまだまだセーフだなと言う感じ、腹六分目くらい。
……狂気の沙汰ほど何とやら。
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