Hello,Goodbye,Night City‼   作:不落八十八

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五十五話

 サンセット・モーテルの一室でジョニーの手荒な精神分析のせいでどったんばったんした事で、俺の事情を洗いざらい話す羽目になった。

 つい最近依頼でアラサカのヨリノブから《Relic》と言う生体チップを盗む為に紺碧プラザに忍び込み、奪取は成功したが《機龍》の横槍が入り命からがら逃げ出した先でアダム・スマッシャーに心臓をぶち抜かれた事。

 そして、死んだ影響で《Relic》が正式稼働してしまったが、リトルボスの蘇生によりシーケンス処理が途中で止まり、中に入っていたジョニーに作り替えられる前に止まった事。

 それらの副作用で中身のジョニーと精神内で同居する事になり、徹夜で腰振ってたせいで寝不足で、頭回らない状態でショッキングな事態に混乱していたところをシャイニングウィザードされて正気に返った場面だった事。

 

「……つまり、私たちのセックスは見られてたって事?」

【んな野暮な事するかよ、寝てたわデカ尻女】

 

 ジョニーが弁明のために煙草を咥えながら、キャスター椅子に座ってベッド脇を通過して行った。

 ……なんか記憶から取り出せるの増えてないか?

 今のそれ、俺の前のオフィスにあった椅子だろ、防諜部時代のそこそこ良いやつ。

 

「んな野暮な事する奴じゃないさ。で、だ。リトルボス曰く、市販予定の《Relic》と違って俺に入ってる《Relic》は特別性で、生体ナノマシンが使われてて抜けないんだ。そのまま引っこ抜くと脳の一部をずるりと出す様なもんだからさ」

「ふぅーん、まぁ、良いけど」

「ははは……、んで、これの設計者、アンダース・ヘルマンがカン・タオのコンボイに紛れて亡命しようとしてるから、それを捕まえるのに《アルデカルドス》の力を借りたい、だからローグからパナムの依頼を受けて来た訳だ」

「成る程ね、コンボイの輸送路が私らの縄張りの上を通る訳だ。それに、報酬はしっかり出るんでしょ? ならソウルも喜んで食い付くと思うわよ。部族を養うために色々と迷走してるから」

「そんなに困窮してるのか?」

「まぁね、バイオテクニカの輸送機をたまに襲って資金にしてたから、あ、確かあんたの所の人じゃなかった? バイオテクニカ潰したの」

「……そうだな、うちのリトルボスだよ。薬物とスカベンジャーを忌み嫌う真っ当にして正攻法のビッグフィクサーだ」

 

 いや、ほんと、謀略を政府の人間を絡めて損得勘定で成功させるとかマジでフィクサーだよ、黒幕って意味で。

 暴力と医療を司るフィクサーとかやば過ぎるだろ。

 永久機関じゃねぇーか。

 それでいて権力に興味が無いとかもはや人工嵐みたいな人だな……。

 

「……リトルボスって言ってるけど若い人なの?」

「確か……十六って言ってたな」

「はぁー!? 若過ぎでしょ、そんな歳で企業を一つ潰してんの!? はぁー……、流石都会生まれ、天才は違うね……」

「リトルボスは天才だけど努力型だからな……。一番手に負えない天才タイプで、始まりがリパードクだから尚更になぁ」

「うーわ、教養と資材が無いと出来ない職業じゃん。物事の組み立てが上手いからフィクサーとして成立してるんでしょうね」

「あぁ、成る程な」

 

 パナムがシャワーを浴びに行ったのを機に昨晩脱ぎ捨てた衣服を着る。

 会話を思い出し、改めて凄い子の下で働いてんなと再確認できてしまった。

 思えば、全てを無くして掛け替えのない友人だけが残ったあの日が分水領だったんだろうな。

 ジャックが居てくれたからこうしてサイバーパンクとして成長できているし、殺伐とした依頼ばっかりだが此方の処理能力を越えない内容なのもリトルボスの配慮だろう。

 実際、リトルボスが居なければあの日、紺碧プラザで派手に死んでいたのだろうし。

 

「さてと。そしたらこのまま《アルデカルドス》に来なよ。依頼の話をソウルに持って行ってくれれば、私への癇癪も収まるだろうしね」

「そうだな、ソートンで運んでくれ。実働は五日後だからチームで動く必要も無いしな」

「そだね。そしたら責任重大だねヴィンセント。あんたが気に入られなきゃ、チームの人らが肩身狭いよ」

「んな事欠片も思って無いだろ」

「まぁね? あんたならクランの皆も気に入ると思うよ、何せ私の男だし」

「……一応言っておくが、睾丸インプラントで避妊してるからな」

 

 そう申し訳無く言うと、パナムは此方にデニムを履こうとして桃尻を突き出してる最中に、勢い良く振り向いて叫んだ。

 

「えぇーッ!? 折角危険日ど真ん中だったのに! 嘘でしょ!? だから頑張って六回も出して貰ったのに!」

「……はぁ、だろうと思った。あの日も中に出してただろうが、気付け」

「あの頃まだ生理来てないから孕まないのは分かってたわよ」

「これだからバッドランズの女は! 強か過ぎるだろ、と言うか何故気付かなかった昔の俺ぇー!?」

「えへへ、こんな荒野の娯楽なんて車飛ばすか、ね?」

「だからと言って一目惚れした野郎に捧げんな!? もう少し自分を大切にしろじゃじゃ馬娘!」

「いや、ヘマして落ちた私を受け止めるために、銃弾の雨の中、コンボイから飛び降りて抱き締めてくれる様なイイ人を逃す方がアレじゃん? こう見えても一途なんだからね!」

 

 もぉーっと照れた顔で言われてしまえば、流石に何も言えやしなかった。

 ……俺もそろそろイイ歳だし、身を固めても良いかもな。

 ワンナイトの関係で終わった関係が多過ぎて、少し感覚が麻痺してたかもな……。

 危険日狙って既成事実どころか出来ちゃった婚を狙われるくらいに好いてくれてる訳だしな……。

 

「……そうだな。と言うかそんな回りくどい事せんでも良かったろ。まぁ、パナムらしいけどな」

「……? ヴィンセーー……んっ」

「俺もそろそろ身を固めようかなと思ってたんだ。パナム、俺の女に、恋人にならないか?」

 

 不意打ち気味に腕に抱き込んで、可愛い事を抜かす唇を奪ってから口説いた。

 パナムは顔を真っ赤にしてポカンとしてから、俺の胸に倒れ込んでからこくんと可愛らしく頷いた。

 こいつ強気な印象が強いけども、未知に対して拾った木の棒を振り回してるのと同じで、男勝りがちな女の子だしな。

 

【なぁ、ヴィンセント。おめでたいところに水を差すようだが、《Relic》の件が終わるまでセックス禁止な。《Relic》の稼働の伸びが一番良い行為に堂々のランクインだ】

(……マジかよジョニー、そりゃ無いぜ)

【俺がお前に成り変わった後に、そいつの世話をさせる気か?】

(……分かったよ、一週間……二週、三週くらいか。死ねるな)

【まぁ、そもそもそんな暇があるかが分からんけどな。あの嬢ちゃんの事だ、衛星軌道から万物を見下ろして計画立ててそうな気概な気がするが】

(……うーわ、否定できねぇ。もしかして早まったか?)

【はっ、自分の命欲しさに必死こくぐらいなら、惚れた女の笑顔のために、だなんて口にしとけよ。お前ならそっちの方が、らしい、だろ?】

(違いない。ありがとなジョニー。流石はリトルボスが推してるロックンローラーだ)

【そうなんだよな、あの嬢ちゃん、何気にライブ音源の奴流してるからな。あそこまで愛されてると尻が痒くなるぜ】

 

 照れ隠しとは言え、表現もうちょいどうにかならなかったのかお前……。

 口笛吹いて消えたジョニーに呆れた視線を向けつつ、感極まっているパナムへの抱擁を解いた。

 

「ま、挨拶も兼ねて行こうか。見えない爆弾が炸裂しないうちにな」

「ん、そうだね。因みに新しい族長になる気は」

「無い無い。そう言う器では無いさ。精々が綺麗な鳥達の止まり木だ。今はお前専用だがな」

「えへへっ、それもそっかー。そしたら私がクランを抜けてヴィンセントのお嫁さんって訳だ。何処住んでるの?」

「H10メガビルディングの、真ん中ちょい上ってところか。後々招待するさ、何度でもな」

「約束だかんねっ! ローグのババアが噛んでるのがムカつくけど、もうどうでも良いや! よーし、カン・タオの輸送船を根こそぎ頂こうか」

「いや、ヘルマン一人で良いから。物資までチョッパーしたら流石に目を付けられる。一応リトルボスが武装AVの準備をしてくれる手筈だ。目的のコンボイだけ落とす簡単なお使いだ」

「それ、カン・タオの警備部隊かっ飛んで来る奴じゃん」

「……どうだろな、正直リトルボスに睨まれるなら、前の、コーポ時代の俺なら迷わず切り捨てるけどな。パシフィカに居座ってたギャングを一つ潰すために、バイオテロ案件としてリークしてNCPDを動かして、実働部隊のガイノイドに火炎放射器で念入りに焼却できるフィクサーに絡まれたくねぇなマジで」

「え、何それ? ってああ、さっきやってたニュースの奴? ……え、怖っ、普通にカン・タオに引き渡す様に言ったらお終いなんじゃないのこの依頼」

 

  パナムの疑問に……、確かに、と頷いてしまった。

 それは空中遊泳中のジョニーも一緒で、ついお互いに見合わせてしまった。

 先程の一件も含めてだ、リトルボスはあくまで俺らを主体に事を動かしたい意図が見える。

 

【まるでGMだな。俺たちトラブルシューターに依頼を投げるあたりがまさに、だ】

「リトルボスは俺らを使って何かをしたい。だが、オルトの名前を出したら途端にアレだぞ? 仮にリトルボスがゲームマスターなら……」

【俺たちにシナリオをなぞって欲しいんだろう。俺らの考察とアクション次第で省けるくらい大規模なロングストーリーを、な。……なら、案外俺の考えは間違ってなかったのかもな。あの嬢ちゃんはオルトを知っている。今から半世紀前の、それこそアラサカと真っ向からドンパチしてたミリテクの特殊部隊が知る様な情報だ。俺の栄光を知る為に、ってだけじゃあ見つからないぜそんなもん】

「《神輿》の情報が先だったらどうだ?」

【……成る程な。《神輿》はソウルキラーの専用機器と言っても過言じゃねぇ。その逆も然り、だ。それなら筋は通るな。となると……】

「【《神輿》の確保または破壊が目的、か】」

 

 ジョニーの考えと一致したそれを口にする。

 成る程、少し見えてきたな。

 リトルボスが本当に欲しいのはアンダース・ヘルマンじゃない。

 その過程で手に入れる予定の《アルデカルドス》、つまりはアラサカ襲撃の末端員の補充だ。

 

「……マジで?」

【……一度やった俺が言うが、死ぬ程きっついぞ。皆でお手手を繋いで仲良く帰還だなんて到底無理だ。それに、俺とお前の死因でもあるあの全身テックの黒光野郎をどうにかしなきゃならねぇ】

 

 アダム・スマッシャー、か。

 名前を聞くだけで心臓のあたりがジクジクと痛む。

 幻痛だって分かっていても、あの時の衝撃、苦痛、激熱が忘れるなと戒めてくる。

 目の前できょとんとしているパナムが視界に入る。

 ……少し、思考をクールダウンさせよう、あくまで今のは仮定だ。

 リトルボスが本当にそれを考えているのなら、もっとスマートにやる筈だ。

 …………本当に?

 どうしようもない不安が胃の辺りから込み上げてくる心地だった。

 

【はんっ、どうすりゃいいのかだなんてもう決まってんだろうが】

「……どうしろってんだ」

【直接聞きに行けよ、それで解決だ。それともなんだ、あの嬢ちゃんが話してくれない堅物だと思ってんのか? むしろ逆だろ、よくぞ見破った、だなんて言いそうなタイプだぞ】

「だが……、それが、本当だったらどうするんだ。何も考えずに行くのも愚策だろ」

【それを踏まえて聞きに行けってんだよ。それでもサイバーパンクかてめぇ。頭空っぽにしてロックなテキーラ流し込んでぶっつけ本番で行け、我流のロッカー式処世術だ。その場のノリで割とどうにかなる】

 

 自信満々な良い顔で宣うジョニーを呆れ顔で見つつ、どうしたものかと頭を抱える。

 思わずベッドに座り込んだ俺に胡乱な表情のパナムがばっさりと言った。

 

「いや、良く分からないけどチームで相談してみたら良いんじゃないの?」

 

 ……それで上手く行くチームだったらどれだけ良かった事か。

 いやまぁ、間違ってはないか、むしろこんな問題を一人で抱えている方が拙いか……。

 深い、それはもう深い溜息を吐いて俺はチームホロを繋げるのだった。




【Tips】


・昨夜はお楽しみでしたね
今作のコーポVはしっかりと睾丸インプラント済みで避妊をしっかりしている、えらい。
ワンナイトロマンスに溺れる日々をしていたからでもあるが、単純にハニトラ対策としても入れている。

・パナムはVの嫁
今作におけるパナムは、コーポ時代のVが色々と追われていた時に助けた縁でガチ惚れしている。
ハリウッド映画が作れそうな濃密な体験を多感な十代で経験し、惚れた男に処女をあげたが年齢を隠していた事で切れた縁の紐を一途に握り続けていた。

・ジャグラくんちゃんの大誤算
今作のVとジョニーは仲良しこよしのお喋りなので、元々の地頭が良いヴィンセントとやけに勘の良いサイコロッカーのせいで野望が一部バレた。
もっとも、これまでのスマートな仕事のお陰で間一髪断定を免れた。
ぶっちゃけるとこれからアルデカルドスとローグの話を入れても話が膨らまないので最終章にカチコミます。
原作まんまで進むならそれ原作で良くねってなるしね。
後、ぶっちゃけVの状態って長々と依頼やらやってて良い状態じゃねぇだろって言うマジレスでもある。
今作は緩和されてるけど、原作はマジで崖っぷちで懸垂し始めてるようなものなので……。
















[レ] メイン①:デイビッド・マルティネスが生存している。
[レ] メイン②:ジャッキー・ウェルズが生存している。
[レ] メイン③:Vにジョニーが存在している。

[レ] サブ④:エッジランナーズのチームが全員生存している。
[レ] サブ⑤:精神の均衡が崩れておらず、不安定なサイバーサイコになっていない。
[レ] サブ⑥:男性人格が女性人格を認知している。
[レ] サブ⑦:女性人格が男性人格を応援している。
[レ] サブ⑧:ジャグラの野望に気付くイベントを閲覧している。
[レ] サブ⑨:ジョニーとの関係が良好。
[レ] サブ⑩:ジャグラのロマンスが起きていない。


100% true√ 最終章 LET'S ROCK'N'ROLL / ロックを叫べ へ続く。
90%~70% BAD√ 【セキュリティクリアランスにより閲覧不可】
60%以下 退廃エンド

ジャグラとのロマンスが一度でも起きていた場合は、ワタシちゃんが先に陥落するのでサブ⑤が自動失敗し、連鎖して⑥⑦が失敗になる。計-40%
サイバーサイコ化し、方向性が色欲に固定されて性欲の権化と化したジャグラによって、デイビッドがフードファクトリー地下のジャグラルームに監禁されフェードアウト。
Vは原作通りに死神エンドか星エンドでアラサカタワーに突っ込みに行く√になる。
無論、ジャグラとデイビッドとデラマンとのホロコールは繋がらないため、Vの《Relic》は原作まんまになるため寿命ががっつり削れた状態で生きていく事になる。
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