Hello,Goodbye,Night City‼   作:不落八十八

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六十一話

 テックルームの回転する椅子でくるくるしながら考え事をしていた。

 一つ、この世界に産まれて考えた事がある。

 どいつもこいつも自分の身体をサイバネ化し過ぎじゃね? と。

 ……いやまぁ、先日まで色々とインプラントしていたオレが言うのも、その、なんだ。

 滑稽である事は理解しているが、冷静になって考えに考えた結果、トニー・スタークは天才だったのだと至った訳だ。

 トニー・スターク、アイアンマンの中の人にして機械工学の生きるブレイクスルー。

 身体へのサイバーウェアのインプラントを最低限にし、着脱式のパワードスーツ着た方が強くね、とアダム・スマッシャーの真逆を行く結論が出た。

 

「……けどなぁ、基本的にステルス侵入からの潜入工作でドンパチか、真正面からカチコミスッゾコラーがナイトシティの常識だからなぁ。パワードスーツ着てる暇ある? 無いよね? なら最初から身体サイバネ化しろよな、って感じだしなぁ……」

 

 ヴェノム宜しく寄生してミュータントスーツと化す作品なんて作れないし、と言うか最新のアイアンマンってナノマシンだったわ、無理ゲー。

 そうなると……、やはりするしか無いかサイバネボディに魔改造を。

 サイバーウェアを真っ新にした事で取れる選択肢は増えた。

 取り敢えず、クイックハック対策を第一にして、機動特化にする事は確定事項だ。

 サンデヴィスタンは神経系に負担を掛けるが戦闘能力の向上率が段違いだ。

 あるか無いかで形勢の有利不利がはっきりとしてしまう悪魔のシステムだ。

 だが、装着の負荷は非常に高い。

 既に神経系マシマシの人工脊髄に取り替えている事もあり、サンデヴィスタンの導入は容易なのだが、一つ欠点がある。

 神経加速によって得られる殺人的な瞬時思考と枷の解かれた筋肉稼働によって齎されるそれが、あくまで人間の限界を越えた速度であると言う事だ。

 使い終わった時の偏頭痛と筋肉痛はクールダウンと共に訪れる訳で、稼働中に車よりも速く走れるかはポテンシャルに左右される。

 だからこそ、振るわれた武器や弾丸を避ける事が主流になり、近付いて近接戦闘を仕掛ける場合は技量が必要になる。

 

「……短時間の稼働で良いならスラスターとかでも良いんだよなぁ。ごっつい機械を飛ばすよか人の身体は軽いから推進剤も少なくて良いし」

 

 良い例で言うなら進撃の巨人の立体軌道装置とかだ。

 距離と速度のためにアレはアンカーを射出しているが、短距離の連続稼働であるならばアンカー機構は外して良い。

 人間サイズなら推進剤を用いたスラスターよりも、噴射機構でエアジェットの方がスマートだな。

 破壊されたらーとかは考えてはならない。

 何故なら生身だったら出血多量コースだ、何も変わらない。

 一度《デラマンズ》の機体でシミュレーションだな。

 流石にぶっつけ本番で試作ユニットを脚をぶった斬って取り付けるのはナンセンスだ。

 ……待てよ? ゴリラアームの機構を脚に使うのはどうだ?

 強化腱などと組み合わせて、人外の筋力を得た方が応用が効くな。

 そうなると稼働時は人の脚の姿じゃなくても良いな。

 

「……人間サイズのアーマードコア作ってる気分になってきたな。テンション上がって来たわ」

 

 デザインはスマートにしてクレイジーをスパイスにひとつまみ。

 外側はリアルスキン……、いや、メカバレは浪漫だな、コーティングにしよう。

 配線の無駄は無くしつつ、無骨に耐久全振りで……。

 

「うーむ、自画自賛ながら頭可笑しい出来の設計図になったな……。金掛かり過ぎてワンオフって感じで最高にサイコって感じだ。……ヨシッ」

 

 後でデラマンに部品を出力して貰って組み立てるか。

 そうなると両腕も改造したいなぁ、医療用クロームアームと付け替えられる様にして、換装機構を組み込もう。

 普通にゴリラアームってのも芸が無いし、何かしら付けたいが……。

 無難にマンティスブレードとか?

 近接戦闘をするつもりは無いしなぁ、技量で負けるし。

 となるとプロジェクタイルランチャーか?

 でも爆発物を腕に積むのはなぁ……、誘爆怖くない?

 利便性に優れて使い易い代物、か。

 

「いや、知らんわ。暗殺用のサプレッサー付きの小銃で大概が何とかなるだろ。そうなると、サイバーウェアに大ダメージを与える系か? ……電気、熱、化学、うーむ。あ、スタンボルトをニードルに落とし込んで射出するのはどうだ。……格好良過ぎだな!」

 

 ニードル射出機構を搭載して、ニードルの先端にスタンボルトを仕込んで当たったらEMPが炸裂する感じにするか。

 ……試算で、一本あたりエピック級の銃くらいの値段になるが、人件費とか削減してプライスレスだ、ヨシッ。

 資材費だけだな、値段変わらねー、ばっかみてぇー!

 やばいな……、普段からしてた筈なのに楽し過ぎる。

 デーモンによる不調がどれだけ酷かったのかを理解させられてしまった。

 出来上がってしまった二枚の設計図をパスワードロックしてデータ保存する。

 ……四肢を改造するなら内部もか?

 成る程、アダム・スマッシャー理論はナイトシティにおける最適解だった訳だ。

 掌返しなんてナイトシティの常識だからな、積極的に使っていけ。

 

「けどなぁ、そこまですると生身である必要無くない? だなんて人間性皆無な答えに辿り着くしなぁ。流石にそこまで人間辞めたくないな」

 

 防刃防弾耐熱耐冷の衣服か……、それなんて対魔忍スーツ?

 破られがちだが実際肌に傷は付いてないからなぁアレ。

 ゆきかぜみたいなレオタード系のサイバースーツでも開発するか。

 合成炭素繊維と非ニュートン流体あたりで防御性能マシマシにして、SAMURAIジャケットを羽織る感じか……。

 サイバーパンクって感じだな、ヨシッ。

 実際、貧乳ボディに黒いインナーは最強な組み合わせだからな、映えるぜ。

 四肢を改造してるから地味に最適解なんだよなぁ、自由な駆動域と衣服が破損しないと言うメリットはでかい。

 

「……いや、同人エロゲかよ。露出は減らす方向で」

 

 普通にネットランナースーツみたいなサイバースーツで良いわ。

 ハイなテンションのせいで変な方向に思考が向かい掛けたな、危なかった。

 どうも思考がふわふわとしている気がする、酒はまだ飲んでいないんだが……。

 くるくると椅子を回転させながらスーツのデザインを考えていると、二階のオフィスの方に来訪のブザーが鳴った。

 ……誰だ?

 デイビッドは今日は隣のガンショップの実家でグロリアさんとまったりしている筈だし、ヴィットたちはまだバッドランズの筈だ。

 

『ジャグラ、レベッカとルーシーが相談があるとの事で来訪されましたが如何しましょうか?』

『んー? 珍しい組み合わせだな。まぁ、暇だったし、そっち行くから入れて良いぞ。茶菓子とお茶出しといてくれ』

『分かりました』

 

 デラマンからのホロコールを受け取るが、何でデイビッドの彼女候補たちが来てるんだ?

 デイビッドの誕生日はまだ先だし、《エッジランナーズ》の活動に支障は無いとメインから報告されているし、いや、マジで何の相談だ?

 エレベーターで二階に上がると、見覚えのある格好のレベッカとルーシーが神妙な表情で座布団に座っていた。

 出された茶菓子と緑茶にはまだ手を出していないようだが、はて、何でこんなに緊張しているのだろうか。

 

「すまないな、一階で作業していた。こうして直接会うのは久しぶりだな。健康診断は月末だが、何か問題があったか?」

「ぁー、えっと、その……、あーしらちょっとジャグラに相談があってぇ……。その、デイビッドの事なんだけどさ」

「……ふむ? 手を借りたい案件でもあるのか?」

「……雇い主の貴女にこうして言うのも何だけど、デイビッドを戻して欲しいのよ。《エッジランナーズ》のメンバーとして」

 

 ……ん? デイビッドを戻す?

 

「デイビッドを戻すってのはどう言う事だ? あいつは研修に行かせただけで《エッジランナーズ》のメンバーでは無いが。つまりは引き抜きたいと言う事で良いか?」

「ま、まぁ、そうなる、わね。その……デイビッドが居ないとその、困るのよ、色々と。分かるでしょ?」

「……んん? いや、前衛は足りてるだろう。メインから依頼の報告を受けているが、問題無いと聞いているが?」

「んのクソメイン……。対岸の火事だと思いやがってからに……」

 

 レベッカがFワードと共にメインの名を呟いた。

 そして、同時にルーシーが額に手を当てて天井を仰いだ。

 

「えぇと、何か報告が上がってないだけで現場で問題が起きてるのか? それを改善するために直談判と言う感じか?」

『……はぁ。ジャグラ様は貴女方の様な雑魚恋愛脳では無いのです。と言うか、全く伝わってませんよ言いたい事が』

「デラマン? 何を言って……」

「あー、もう! だから言っただろ! これだからインテリは! デイビッドと話す時間すら取れないんだよ! ジャグラにべったりだから!」

 

 ……?

 ホロコールでもしたら良いんじゃないのか?

 小首を傾げたらレベッカがちゃぶ台に倒れ伏した。

 深い溜息を吐いたルーシーが死んだ目で口を開いた。

 

「……分かってたつもりだけど、こうして目の当たりにすると結構クるわね……。私たち、デイビッドが好きなのよ。一人の女としてね」

「……あぁ! そう言う相談か! ……ん? 何でそれでオレに相談を? お前らの恋愛事情なんだから勝手にしたら良いじゃないか」

 

 思った事を伝えたら今度はルーシーがちゃぶ台に沈んだ。

 代わりにレベッカが起き上がり、ちゃぶ台を台パンしてから口元を引くつかせて言った。

 

「デイビッドがお前の事が大好き過ぎて勝ち目が無いんだよ! あぁーっ、もうっ! なんでんな事を言わなきゃならないんだ!」

「……いや、だから何でそこでオレに当たるんだ? デイビッドが好きなら告白すれば良いだろう?」

『ぁー、その、ジャグラ様? 振られるのが目に見えてるのに告白はしないと思いますよ?」

「……何故だ? 意識させる事はできるだろう。少なくとも可愛いレベッカに告白されて喜ばない男は居ないと思うが……」

 

 どうも話が噛み合っていない気がするな。

 レベッカとルーシーはお互いに見合ってから、神妙な顔付きで此方を見やる。

 いや、恋愛相談とかそう言う経験の無いオレにされても仕方が無いんだがな……。

 心做しかデラマンの視線も胡乱な感じな気がするんだが、え、オレ何かしたか……?

 

「その、ジャグラはデイビッドが好きじゃねぇのか?」

「デイビッドの事は好きだが……、恋してる訳ではないな」

「あー……、成程、そう言う事かぁ……、通りでおかしいなと思ったのよ……。つまり、貴女とデイビッドの関係はあくまで上司と部下で、デイビッドの絶賛片思いって事で良いのかしら」

「まぁ、そうなんじゃないのか? デイビッドの気持ちはオレには分からんが、傍から見ればそうなっていると言う事だろう?」

「「『…………はぁ』」」

 

 ぇ、えぇー……、めっちゃくちゃ溜息吐かれたんだが……?

 いや、別にデイビッドから告白された訳でも、オレからした訳でも無いし、そういう感じのあれこれは無いんだが?

 レベッカとルーシーは二人して頭を抱え、デラマンは肩を竦めてやれやれポーズ。

 ……いや、オレにどうしろと?

 

「じゃあ、別に私たちがデイビッドの恋人になっても問題は無い、そう言う認識で良いのよね?」

「あぁ、別に構わないが……。え? んな事を態々聞きに来たのかお前ら、暇かよ」

 

 思わず思った事を口にすると二人の顔が……、よく分からない感じになった。

 怒りながら困惑していると言うべきか、複雑そうな感情だけは伝わってくる。

 

「……あんたは、それで良いのか?」

 

 レベッカの力強い問いかけに、オレは笑顔で頷いた。

 

「あいつが幸せそうに笑ってられるなら、それでも良い。生きてるからな、どうにでもなるさ」

 

 そもそもの話、デイビッドが生きているだけで大金星なのだ。

 エッジを超えて、サイバースケルトンだなんて冷たい棺桶の中で死ぬ宿命だったんだぜ?

 本来の今頃、生きているのはルーシーとファルコだけだろうし、こうしてレベッカが恋愛に真剣に向き合っている姿はとても尊くて、素晴らしいものだと思うんだ。

 

「人の命は軽くて重いからな、死への速度は皆同じだ。生きているうちに好きな事をしたら良い。誰も止めやしないさ」

 

 オレはそうしている、だから、お前らもそうしたら良い。

 好きな男の子に猛アタックをしてアプローチを掛けて恋を愛したら良い。

 女の子としてその方が健全だろう。

 まったく、デイビッドも罪な男だな、こんな可愛い子たちを引っ掛けてるのに、死に掛けのオレなんかを好きになりやがって。

 

「アラサカの件が終わったらデイビッドには暇を出しておこう。その時には、全てが終わっているだろうからな」

 

 嗚呼、その時にはワタシちゃんの陰に没して潔くこの世を去っている筈だ。

 ジョニーがオルトと旅立った時の様に、この身体をあるべき人格に戻さなくてはならない。

 死人は死んでおくべきだ、なぁ、そうだろジョニー?

 貴方の様に、ワタシちゃんの背を押してオレは消えるよ。

 それが、きっと……正しい事に違いないから。

 もうとっくに前世の記憶なんて覚えていないし、握り締めたネットミームとサブカルチャーくらいしかもう残ってない。

 両親の顔も、生前の自身の顔も、友人も、知り合いも、何一つとしてもう覚えていないんだ。

 導火線に付いた火がオレと言う個人から燃やして燃料にしていたのが今ではよく分かる。

 だから、もう良いんだ、オレは役目を果たす事に専念すれば良い。

 今では親友の様に思えるデイビッドなら、ワタシちゃんとでも仲良くやってくれるだろう。

 だから、レベッカとルーシー、あいつの事を支えてやってくれ、オレの一番の親友の良い奴だから。

 ……だなんて、口にできれば良かったのにな。




【Tips】

・オレくんの現状
灰は灰に、塵は塵に。
死人が生者の歩みを妨げてはならないと、デーモンから解き放たれた正気の思考は宣った。
狂気に溺れて水平に揺蕩うままであったなら、どれだけ楽に生きられただろうか。
とっくの昔に壊れていたのだと自覚してしまってカウントダウンを口ずさんでいる。
デーモンを通じて不良AIの魔の手によって既に自己を失いかけていたが、ジャグラ・カグラとして生きてきた十年間の思い出で食いしばり続けていた。
ワタシちゃんリジェネにより、HPが1と2を反復横跳びし続けて鉄壁化していた、護身完成。

ソングバードはネットダイブ用のインプラントをしていたが故にブラックウォールの魔の手に脳をチキチキされてあの始末だが、ジャグラくんちゃんは光学インプラント程度だったのでサイバーサイコシス初期から前期で進行が遅かった。
因みにソングバードのアレはサイバーサイコシス末期。サイバーサイコが後期(乗っ取られ)
(塔エンドを見たので漸く設定が固まった)
マックスタックは乗っ取り解除後に性能の上がった身体を理由に勧誘されてる感じ……、こいつらケアンの民か何かか?

 
 
……はい、塔エンドを見た事で色々と、こう、感情がめちゃくちゃと言うか、何と言うか……ね。
救いは無いんですか???
マーベルスパイダーマンの忘れられエンドくらい後味最悪じゃん……。
せめてポップな音楽で締めてよ、そのエンディングのトーンだとあまりにも虚しい……。
人混みに混ざるシーンでNever Fade Awayが始まってエンドロールドーン!とかで良くなかった……?
駄目ですか、そうですか……。
 
元がTRPGだから、シナリオがエンディングを迎えた事で、セッション後にキャラシートが仕舞われて、プレイヤーから有象無象のNPCになって暮らし始めた、みたいな表現なのかねぇ。
だからエンディング後がタイトル画面だったのか。
新しいキャラシートを作って遊んでねって事で。
成る程、つまり仮初の自由はルールブックのサプリみたいな感じな訳だ。
新しいシステムに武器や衣服と乗り物、舞台となる地区も増えて新しい敵も用意されて、地区を活かしたシナリオもある……、サプリだぁこれ。
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