Hello,Goodbye,Night City‼ 作:不落八十八
アダム・スマッシャーとヴィクトリアの拳の競り合いは総重量の差異によりアダムに軍配が上がった。
弾かれた右拳の反動を利用し、左のジャブを腹に叩き込むが通常稼働の一撃は音を奏でるだけに留まった。
ブシドーXのトレイン上での決戦の如く、巨体のアダムへ果敢に拳を叩き込むヴィクトリアだったが、旧パシフィカでチャンピオンと野良試合をした時よりも遥かに硬い感触に歯噛みせざるを得ない。
唯一アダムに通用するであろう武装はバニーホッパーのブレードであるが、脚からの展開が必要のため容易に出せない選択肢だ。
本来であればブーリャを使用するCOMRADE'S HAMMERの設計図をノヴァで設計した事により、本来の威力から20%程下がったものの、シリンダーが半分程になった事で持ち運べる弾数を増量させる事に成功したヴァリーの新たな愛銃が時折火を噴くが、対爆性能も高いのか装甲を貫通する一撃とはならなかった。
撃てば撃つほどアダムに対する選択肢が狭まっていき、記憶痕跡化した事でAIレベルの思考速度を得たアダムの学習能力により有効打成り得ないものを無視し始めた事もあり、ヴァリーの表情は悪くなっていく。
「クソッ、ICEが硬過ぎるっ、一ミリも進まない……ッ!!」
メインの盾の裏で必死にアダムへブリーチプロトコルを仕掛けるルーシーだったが、後方支援のキーウィとサーシャに加えてオルトと同時に攻撃を仕掛けていると言うのに全く進まないどころか押し返されそうになっている事に歯噛みせざるを得ない。
そんな様子を見るレベッカたちは神妙な表情でアダムを見やり、今までの経験を総動員して何か手が無いか考えを張り巡らせていた。
「キーウィ、アイツにウイルスを仕掛ける事は出来ないのか? 無限増殖する様なタイプ」
『無理よ! そんなものあったら今頃パシフィカ辺りから解き放たれてるわよ!』
「……なぁ、馬鹿兄貴、アレ、ならどうだ」
『はぁ? アレってどれだよ、流石に熱核は持ってこれないぞ』
「ちっげぇーよ、武装車両に積んでるあのレールガンだ。アレならあいつの装甲をぶち抜けるだろ」
『……はぁん、可能性は高いな。少し待ってろ、今、マッハで組み立ててやる』
「チッ、頼んだよ馬鹿兄貴」
現在、アダムは舐めプしているのか、はたまた二人の希望を圧し折ろうとしているのか、サンデヴィスタンを使用せずに単純な肉体による暴力のみで二人を圧倒している最中だ。
二人が決死の思いで起死回生のナニカのための時間を稼いでくれている間に、武器の弱さで加勢に回れないレベッカたちはひっそりと準備を進めるしか出来なかった。
時折、邪魔になる様に顔や眼前へ援護射撃をし、少しでもヴィクトリアのホッパーによる攻撃ができる環境を作る事ぐらいだった。
「……こうなる事を予期してた訳だ、流石だなアイツは」
レベッカは援護射撃をしつつ、小さく独り言ちた。
デイビッドがジャグラによってアップグレードされていく過程を見ているが故に、どれだけアダムの事を警戒していたのかを感じさせる。
斬鉄が可能な《ビャッコ》を早々に手渡し、尚且つ鉄火場に放り込んで実戦経験を積ませ、サンデヴィスタンをしっかりと入念に馴染ませる環境を作っていたのは対アダムとしての切り札にするためだったと考えれば理解も進む。
しかしながら、最後の最後でジャグラはデイビッドを手元に寄せ、此方には送らなかった。
真の切り札を手元に置きたかった理由は恋慕か、それとも……。
考えれば考える程、レベッカは複雑な心境になっていく。
アダムと言う明確な死神を目の前にしているからか、生存本能が刺激されている様だった。
「……デイビッドが居れば、こんな奴あっと言う間に――」
「おぅ、呼んだかレベッカ」
「は?」
後ろを振り返ればジャグラの方に居た筈のデイビッドが若干気落ちした様子で盾の後ろに隠れていた。
《エッジランナーズ》の面々が大声を出さぬ様に静かに驚愕していると死んだ目でデイビッドはへへへと笑った。
「用は済んだからこっちの応援に行けってよ。今、ジャグラは上で一人でサブロウと戦ってる。んで、今はどう言う状況なんだ?」
「……サブロウと? あいつは死んだんじゃなかったのか?」
「例の《Relic》とやらで実の娘に寄生しているらしいぜ。ヴィットも侵攻が進んでたらあんな風になってたのかと思うと恐ろしいな」
「はぁー? ……まぁ、よく分からんが、最強の傭兵とドンパチしてんだよ。あいつも記憶痕跡とやらになってて、機械の身体に人格をインストールしてっからくっそ硬いんだよ」
「あぁ、成程、だからあんな感じになってる訳か。《神輿》はどうなったんだ? ヴィットが居ないって事は成功したのか?」
「それが……、先手を打って破壊されてたらしいわ。アダムの《Relic》にコピーして、別の場所に輸送する手筈だったみたい」
「ふぅん……、珍しいなジャグラが予想外すの。まぁ、いいか。やる事は変わらないしな」
粗方の内容を受け取ったデイビッドがすぅっと息を吸う。
瞳を鋭くして戦闘思考にギアチェンジしたのを皮切りに、サンデヴィスタンを使用してアダムに肉薄、鯉口切った《ビャッコ》の抜き打ちでヴィクトリアに伸ばされていた左腕を横合いから両断した。
そして、残りの数秒で更に切り伏せようとしたがアダムもサンデヴィスタンを使用し、即座に地面を蹴って穴の開いたゲートの方へと跳び、ヴァリーを撥ね飛ばして中へと入って行った。
流石に狭い廊下でカタナを相手にするのは不利と考えたのだろう、その計画的な撤退にアダムがデイビッドをどれ程危険視していたのかを感じさせる。
「よぉーし、行くぞデル。さっさと済ませて上に戻るぞ」
『はぁ、なんのために光学迷彩を使っているのか理解してないのですか。さっさと仕事をしなさいディヴィー』
「へいへい。んじゃ、そう言う事で」
光学迷彩で姿を消しているデラマンが切り落とされたアダムの左腕を回収しつつ、破れた穴へと潜るデイビッドの軽口に叱咤して付いて行く。
その場に居た全員がその仲の良い遣り取りに目をぱちくりとさせたが、美味しい所を持ってかれた事実は変わらず、ぎゃぉーっとキレたヴィクトリアが後に続き、安堵と呆れの溜息を吐いたヴァリーがシリンダーを取り換えながら追いかける。
脳内破壊をされたレベッカとルーシーが数秒困惑と戸惑いと絶望によりショートしていたが、よくよく思い出せばあいつら恋敵でライバル関係だったわと気を取り直してピラルの新兵器を待つ事にした。
《Relic》ルームの一歩手前のデータモノリスが並ぶ空間は広く作られており、盛大に暴れるには十分過ぎる環境が整っていた。
「よぉ、久しぶりだなアダム・スマッシャー。オダとタケムラは俺らでしばいて捕虜にしてるぜ」
【だろうな。お前もあの娘に目を掛けられた一人だろうからな。でなければこの街で最高峰のテックをインストールする事はできん。俺のサンデヴィスタンと同等の物を入れているお前も相手なら、少し本気を出しても問題あるまい】
データモノリスルームの中央で左腕を取り外し、予備パーツを取り付けて仮の左腕を取り戻したアダムは楽しそうに笑った。
有効打を与えられる人物が増えた事で己を倒す可能性が上がった事に、アダムは嬉々として笑みを浮かべた。
アダム・スマッシャーは根っからの戦闘狂であり、一度世界の敵と認識されたアラサカ側に立てば闘争が勝手に歩いて来ると考えてこの場に居る経緯がある。
元より戦闘狂の気のあったアダムは自己改造に手を出し、機械の肉体に段々と入れ替えて行った弊害で、生の実感を闘争による生死の遣り取りで得ていた。
故に、自分を討ち倒す可能性がある者には敬意を示す。
それが例え未成年の若造であっても、だ。
アダムは今の瞬間をとても楽しんでいた。
死に際まで此方に噛みつこうとしたジョニーを宿すヴィンセント。
四肢をジャグラに託してまで力を得たヴィクトリア。
女性の身であれ程の反動がある銃を扱うヴァレリー。
そして、アラサカの総力で以ってして作られた装甲を、折り返し鍛造された日本刀の様に技術を研ぎ澄まし、己が技量で断ち斬ったデイビッド。
【さぁ、力を示せッ!!】
頂上決戦の始まりはアダムの右腕に仕込まれた小型バルカン砲の掃射からだった。
《ビャッコ》を構えたデイビッドは射線に刀身の峰を置き、野球のバントの様に弾丸を弾き落としながら前進した。
数ある選択肢の中で前に進む事を選べたのは、誰よりもジャグラの調整した己の身体を、支援しているデラマンを信じていたからだった。
リアルタイムでキロシカスタムに浮かぶ弾丸の軌跡を信じて前へ、前へと距離を詰めて行く姿はまさしく映画の一シーンの様だった。
光学迷彩で隠れているデラマンによるダイレクトリンクサポートにより、全てのサイバーウェアの稼働率を高めたデイビッドは鬼神の如き力を手にしていた。
自身に当たる弾丸だけが赤く染まり、その導きを信じて前へと駆けた事により、アダムを包囲する時間を稼ぐ事が出来た。
「狙いは……外さない……ッ!」
サポートに回ったデラマンによって弾薬箱とノヴァカスタムと同等の改造が施されたブーリャCOMRADE'S HAMMERを渡されたヴァレリー。
サンデヴィスタンを稼働し、アダムの亀裂の入ったフェイスプレートに弾丸を叩き込むために、遮蔽物にしていたモノリスの間をスライディングしながら横切り、その最中に瞬く様な射撃を行った。
放たれた弾丸はデイビッドの脇腹を掠め、バルカンを放つアダムの右腕の死角を通り過ぎ、見事に顔へと着弾した。
ジャグラ謹製の火薬により更に威力を高められたその弾丸により、顔を大きく仰け反らせたアダム。
しかしながら、瞬時にサンデヴィスタンでフェイスガードをアクティブにした事により衝撃のみのダメージに抑えられた。
記憶痕跡化したアダムの思考速度は人を凌駕しており、アラサカのハイエンドモデルも相まって世界の五指に入る程だ。
見てから避ける事は物理的に不可能であるが、見てから防御する事を選択するだけの瞬間思考を可能としている。
「なっ!? どんな反射神経してるのよ!?」
【……それもあの娘の作品か。フッ、あの二人から才能を引き継ぐだけではなく、独創性にも優れているとはな。草葉の陰でマサヒロたちも喜んでいる事だろう】
「……親戚の小父さんムーブ止めろよ、やりづれぇ」
【クックック、すまないな。久方振りに昂っていてな、感情が揺れに揺れているものでな。楽しくて仕方がない。半世紀前、モーガン・ブラックハンドとの死闘が未だに焼き付いていてな。それに迫る激闘に心が踊っているのだ。さぁ、自分が何者なのかを晒し出せ、死闘の果てにこそ見えるものがあるのだからな!】
脚を止めていたアダムが遂に動き出す。
太腿脇から小刀を射出し、左手で逆手に掴み取ったアダムは強化された脚腰によってデイビッドに肉薄し、換装された左腕の軽さから見た目にそぐわぬ速度で振るわれた。
一瞬その小刀を切り落とそうと考えたデイビッドだったが、その見覚えのある刀身の木目模様に思い至り、弾くだけに留める。
それは《ビャッコ》の刀身にも現れている特徴的な木目模様であり、その模様が浮かぶ金属は一つしか無い。
ダマスカス鋼。それを用いて最新技術で数百層以上重ねて作られる刀身は硬度指数100オーバーの逸品であり、その技術の希少価値により世界で数本あると噂される代物だ。
奇しくも同じ鋼材を使われた二振りがこの場にある事で、得物による差異は無くなった。
「随分と良いもん使ってんな」
【……マサヒロにお土産と称して贈られたものだ。銘は《ゲンブ》、護り刀らしく無病息災を祈り、仇成す者を断ち切る名刀だそうだ】
「ははは……ッ! 親子揃って似た様な事してんだな。これの銘は《ビャッコ》。その昔、人喰い虎の牙なんて呼ばれ方してたみたいだぜ。ワカコさんからジャグラに渡って、使い熟せって俺にくれたんだ」
【ふっ、あの娘らしいな。もう少し穏やかに過ごせる環境を整えたかったが、力一歩及ばずに居たからな……。小僧の様な友人を得られたのは万金に値する幸運だな】
と、言いつつ割と殺意の高い一撃を繰り出すアダムに、デイビッドは冷や汗をかきながら捌いていた。
常に右腕のバルカンの照準を向けられているため、大胆な動きが取れず、攻めあぐねる結果となっていた。
加えて、アダムはあえてデイビッドにインファイトの距離に詰めているため、迂闊な援護射撃が誰も出来ない拮抗状態を作り出していた。
常に不特定多数を相手にしているアダムの戦闘技術は手練の古参兵のそれであり、純粋培養にも似た絞った依頼で荒く削ったデイビッドでは経験の差が著しかった。
「【だからどうした、信じてるなら撃てるだろ】」
そんな均衡を破壊する体現者の乱入により、無防備な背中にEMP弾頭の弾丸が叩き込まれ、電磁波の爆発の余波に自らも頭を抱えつつもヴィンセントが凶悪な笑みを浮かべていた。
銀色の左腕で握ったオーバーチュアカスタムを、右手で包み込んだ姿でザマァみろと中指立てる様に吼えた。
「【どうせ、後で揃ってぶっ倒れて治療されるんだ。傷が深いか浅いかの違いだけだろうが、なぁ、アダム・スマッシャーッ!!】」
《Relic》は精密機器であり、アダムの思考が揺らぐ。
『しゃがみなさい!』
すかさずサンデヴィスタンを起動したデイビッドは、デラマンの指示に従いしゃがみ込んだ。
頭上を亜音速の弾丸が通り過ぎ、身じろぎしたアダムの中心を見事に貫いた。
放たれた先を見遣れば、気絶から覚めたジャッキーがレールガンの投射機を構えて不敵な笑みを浮かべていた。
「ヒーローは遅れてやってくる、ってな」
レールガンの一撃により、サイバーウェアの神経回路が破損し、下半身が動かなくなったアダムが遂に膝をついた。
即座に右腕を動かそうとしたアダムだったが、持ち上げる事を止め、深い溜息を吐いて顔を上げた。
人間だった頃と違い、電力で動いていたが故に、既にサンデヴィスタンを起動する残量を切っていた事が敗因に繋がった。
電力残量が既に底についており、数%で動いているに過ぎないと察したアダムは抵抗を止めた。
【……見事。《神輿》のデータはデータポートに刺さっている。持って行け】
「【ハッ、随分と愉快な姿になったなアダム・スマッシャー。いつぞやの俺みてぇになってんぜ】」
【フッ、他人の身体に乗って大はしゃぎかジョニー坊や。サブロウと同じ事をしているぞ】
「【……お前、そりゃあ無しだろ。……はぁ、テンション下がったぜ】」
自身の仇討ちをしようとオーバーチュアカスタムを構えていたヴィンセントだったが、アダムの言葉でシンクロが切れる様な冷や水を浴びせられ、近くのモノリスの瓦礫に座り込んだ。
自分一人の、ヴィンセントとジョニーだけの勝利であれば有無を言わさずトドメを刺していた事だろうが、チームの勝利のため全てはジャグラの意思に委ねられる。
未だに頭上で響いている地鳴りがサブロウとの死闘を物語っていた。
「……負けるなよ、ジャグラ」
頭上に顔を向けたデイビッドの声援が静かに響いた。
【Tips】
・真・アダム・スマッシャー戦(ベリーイージー)第二ラウンド
機械の身体になった事で、実は時間制限があった。
ヴィンセントたちと出会す前に、これでもかと《神輿》に今までの鬱憤などをぶつけていたが故に残量が減っていた。
尚、ベリーハードだと電池残量の概念が無いので軽快に動いて仕留めに来る(怖い
勿論ベリハだとジャッキーは死んでるし、来た奴ら皆そこで真っ二つに燃え焦げてるので救いの手はありません、自ら勝ち取るのみ。
(尚、DLC仕様なのでプレイヤーのレベルに強さは比例する)
アダムVSドリームチーム、此処に完。
正直Vたちやデイビットにラスキル取らせると偏るなーと思ったので、ジャッキーです。
これで全員に出番が出来たな、ヨシッ。
V側の描写を入れずにサブロウ戦まで進めた方が良かった?
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流れを切るな、そのまま続けろ派
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足並み揃えないと後でダレるからヨシっ派
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そもそも場面を分けずに書き進めろ派