Hello,Goodbye,Night City‼ 作:不落八十八
ナイトシティにおいて、強化外骨格や規格外のサイズのパワードスーツが頻繁に見られないのは偏に高コストで金食い虫であるからだ。
故に、開発されているケンタウロスやミノタウロスなどのミリテク製品だけが売れて、民間企業は目を付けられる事を恐れて開発もしない風潮があった。
だが、この日、ナイトシティに住まう者たちは何故開発されていなかったのかをその目で見て魂で理解した。
あんなものが大量に居たら今頃この街は更地だ、と。
夜の帷の降りた夕飯時のナイトシティに《デラマンズ》によるテックオーバーグラードの放たれる重々しい射撃音が鳴り響き、それを受け止めるサイバーエクリプスの姿は圧倒的な強者であった。
その前にスラスターで浮遊するFAカスタムデラマンの姿はスタイリッシュなスーパーロボット系で、フィギュアが作られてもおかしくない曲線美を描いていた。
肩に輝くデラマン社のロゴにより、所属を理解した者は背筋に恐れからくる悪寒を走らせる事だろう。
何せ、今のナイトシティでデラマン社の製品やサービスが見られない場所は殆ど無い。
そして、シェア率八割以上の新星大企業デラマン社の作った機体がアレなのだ。
「最悪アレが飛んで来るってマジ……?」
ナイトシティの何処かで呟かれた言葉は、既にSNSで反復され続けており、デラマン社驚異の技術力を知らしめるには十分過ぎた。
《デラマンズ》の一斉射撃を受けながら、サイバーエクリプスが片手を真横に振い、斥力波を叩き付けてディーヴァたちを真横に墜落させていく。
重力が真横になる、そんなとんでも技術をぶつけられたスナイパー部隊は屋上から落ちる者や壁に叩き付けられてしまう。
「ーー第三ドローン部隊、アクティブ」
『了、飛行型ドローン発進、You Have Control』
三角の形の飛行型ドローンが計五十台、輸送コンテナAVから次々に発進し、サイバーエクリプスを取り囲む様に陣形を取り飛び交っていく。
360度の全包囲から放たれた銃弾を斥力フィールドにより受け止め、弾丸の集合体が球体と化した姿を見てジャグラはその中心を割り出し、発生装置の位置を逆算で分析していく。
「……《Relic》を差し込んだコアの後ろ、か。重力制御だなんてブレイクスルーをこの目で見れるとはな。……良いなぁ、欲しい。うちの宇宙船の動力に組み込みたいなぁ」
【宇宙船、だと? これを? ……成る程、面白いアイデアだな。不可能と言う欠点が難点だがな】
ジャグラの呟きを拾ったサブロウが一瞬呆け、そして朗らかに笑いながら周囲に集まっていた弾丸を飛行ドローンへと返した。
弾丸の平たい面だろうと重力と言う不可視のハンマーに押し付けてしまえば容易くめり込んで行く。
五十もあった飛行型ドローンが十七機まで数を減らされ、不要と断じたジャグラは自爆シーケンスを起動させ、スラスターをオーバーロードさせてサイバーエクリプスへと突撃させる。
ジェネレーターを誘爆させ小範囲ながら爆発しては斥力波に阻まれていく飛行型ドローンを見て、サブロウはかつての戦争を思い出した。
優秀な戦績を叩き出した自分とは違い、何らかの理由で捨て駒とされた戦友たちの最期がフラッシュバックする。
【……何処で間違えたのやら、な】
荒坂家の一員として従軍し、飛行隊で成果を上げて帰って来たサブロウを迎えたのは敗戦を受け入れていく日本人たちだった。
戦争に負けた、天皇陛下の御言葉で誰もが涙に溺れ、帰らぬ身内の遺体に非現実感に苛まれた時代だった。
負けていない、まだ、我らは、俺たちは負けてなんかいない。
祖国に勝利を、と命を託した戦友の誉れは何処にあると言うのだ。
気が狂う心地であった。生まれが良かったから、だなんて陳腐な言い訳をしたくも無い。
まだだ、まだ、終われない。
アラサカを作り上げた根本にその哀悼はあった。
我らが負けたのは地力が足りなかったからだ、ならば、次を見据えて蓄えよう、天より見下ろす戦友たちが見つけやすい様に天高く。
サブロウの狂気的な才能は遺憾無く発揮され、アラサカ社は繁栄した。
かつてより約束していた婚姻を成し、子供を作ってからサブロウの狂気は少しずつ時の風化に晒されて薄まっていた。
だからだろう、獅子身中の虫が利益を啜ろうとその毒を吐き出してアラサカ社を乗っ取ろうとし始めた事に気付けなかったのは。
気付いた時には害虫共によって、息子に託したアラサカ社はぼろぼろだった。
倫理観の無いクズ共に唆され長男のケイは次兄のヨリノブを殺してクローンと入れ替えていた。
年若いハナコは怯え、お父様、と泣き付いて来たからこそ事態を把握出来た。
……嗚呼、やはり、外国は敵だ。
サブロウの中で鎮まっていた荒魂が怒鳴り叫んだ。
戦友の無念、此処に果たすべし、と。
この恥辱、晴らさずに居られるものか、と。
戦友たちのために建てたタワーが墓標以外のナニカになっていた事にサブロウは、耐えられなかった。
故に、何故か荒ぶっているヨリノブクローンに華を持たせるため日本からナイトシティに拠点を移した。
新合衆国はミリテクの反抗が強い、故に少し離れた北米の地を侵略拠点にしたのだ。
さぁ、復讐を始めよう。悪名高いバイオテクニカを抱き込んで、人々の基盤となる食と医を蝕ませ、企業の圧を高めて得をする社会構造に書き換えて、愚かな資本家を《Relic》で掌に転がし利益を搾り取った。
後数年もすれば完全な縦社会が形成され、貧富の格差からレジスタンスが生じて、ナイトシティを内外から崩壊させてくれるだろう、と考えていた。
ナイトシティと言う主要都市が崩壊すれば、荒み擦り切った心の危うい者たちが新合衆国へと移民として崩壊の種を蒔いてくれる。
そのために新合衆国への道は輸送路として繋げてあるし、途中には型落ちした銃器や弾丸を詰めたコンテナもばら撒いてある。
あまりにも遅ければ《Relic》によりヨリノブクローンの一つを使って蘇って実権を握ろう。
……だなんて、悠長な構想をしていたからか、超弩級の障害が現れてしまった。
ジャグラ・カグラ。
《Relic》開発の第一人者マサヒロ・カグラの一人娘。
特徴的な黒い艶髪を晒し、日本人らしい童顔で幼くも見える少女の成り上がりは怒涛のものだった。
《Relic》の開発が終わり、サブロウ用の生体《Relic》と言う極秘を知るマサヒロを生かしておく事は、疑い続けるサブロウには出来なかった。
アダム・スマッシャーを武装型《Relic》の試験者として誑かし、換装期間中に空いた身体にドール技術を施し、マサヒロの暗殺及び妻子の抹殺を行わせたが、操縦者のミスで妻子を逃してしまった。
追手を放つ事も考えたが、よりによってワカコ・オカダに匿われた事でそれも断ち消えた。
「十年、十年だ。お前がオレと母さんを殺そうとしたあの日にオレと言う人格は形成された。母さんを逃すために、幼い自分じゃない誰かに助けを求め、オレが生まれた。オレはお前を倒さねばならない。オレの存在意義は自己防衛、つまりはお前からの凡ゆる悪意を撥ね除ける事に設定されている。ーーハハハッ、漸く、漸くだ。オレみたいな紛い物に人生を潰されたワタシに報いてやれる」
そして、自身の選択が致命的な間違いを生んだのだと理解して、サブロウは苦虫を噛み潰し飲み込んだ様な心地だった。
実のところ、サブロウは自身の野望が日本人であるジャグラに潰される事を良しとしていた。
明らかにジャグラはこの街を自身に住みやすい街に、ニホンナイズする気満々な動きを見せていたからだ。
故に、腐敗し肥大化した膿を潰すべく、《機龍》の襲撃もといジャグラの強襲を邪魔しなかった。
本来なら《Relic》により蘇り、不死と化した己の手で粛清する手筈だったからだ。
だからこそ、目の前の仮初の人格者の在り方に、無い筈の胸が痛む思いだった。
全てがサブロウから始まり、サブロウにより終わるのだと理解させられたからだ。
【……死ぬ、つもりなのか】
「無論、この人格は役目を終えるためのペルソナに過ぎない。あるべき魂の形に戻すべきだ。泡沫の様に消え行く宿命が今まで伸びたに過ぎない」
【宇宙船は、良いのか?】
サブロウの苦心から放たれた言葉はジャグラの言葉を詰まらせた。
見えない素顔が歪むのをサブロウは感じ取れてしまった。
しかし、ジャグラは首を振り、自らギロチンの待つ断頭台へと足を進めた。
それだけが、己のすべき事だと断じて。
「託すさ、そのためにあの部屋のパスワードを教えたんだ。完成させてくれたら月に遊びに行って欲しいものだ」
サブロウの返事を待たずにジャグラはFAカスタムデラマンのスラスターを噴かせ、次の手を実行すべく天高く飛翔した。
そして、右腕の投射装置を可変させ、腰にマウントしていた銃身を取り付けてサブジェネレーターを稼働させた。
武装車両などに取り付けていたレールガンは小型化されたものであり、その原型こそがこの可変装着型レールガンだった。
「メメント・モリ起動、連射モードアクティブッ!」
『了、電磁投射装置メメント・モリに電力供給開始。完了。トリガーフリー』
超音速の銃弾が虚空を飛翔し、重力の波を突破せんと叩き付けられて行く。
斥力波発生装置が軋みを、過負荷により悲鳴を上げる音を聞きながらサブロウは全力で弾丸を受け止めて行く。
メメント・モリの銃身が真っ赤に染まりひしゃげて破裂する瞬間、自動で右腕からパージされた。
くるくると回りながら爆発して落ちて行く残骸を一瞥する事無く、ジャグラは左腕のグレネードランチャーをアクティブしながら急降下する。
解き放たれた榴弾が軋んだ斥力波に叩き込まれ、爆発に塗れたサブロウは回避行動を即座に行った。
地面を爆炎により燃やし尽くしながら、ジャグラはグレネードランチャーをパージし、上空で待機させた輸送AVから新たな武器を受け取る。
左腕に換装された巨大な杭打ち機を即座にアクティブし、左拳によるぶん殴りのインパクトの瞬間に合わせた。
頑強な斥力波が強烈な衝撃を受け止め続けた事で弛み、ニ撃、三撃と叩き込まれ遂に発生装置が黒煙を吹いた。
「ちぃッ!」
しかし、同時に無茶な使用をしたツケを払う事になり、FAカスタムデラマンの左腕がダウンした。
もはやバランスを取るための重りにしかならない左腕から武装をパージし、杭の部分を右手で掴んだジャグラは勢いままに振り下ろした。
斥力波で受け止めようとしたサブロウだったが、インパクトの瞬間に波が解けてしまう。
ジェネレーターを即座にオーバーロードし、重力制御装置をアクティブにしたサブロウの目の前で鉄屑が跳ね返る様に弾かれた。
【よもや、力業で斥力フィールドを破壊されるとはなっ!】
「この世に不可能なんざ存在しねぇッ!」
死なば諸共の精神で全力で殺しに来たジャグラを何とか捌いたサブロウだったが、守りの要である斥力波発生装置が力業で破壊されたのは完全に誤算だった。
このままジャグラに殺される事は別に構わない、しかし、己が為した罪を清算せずにそれを選ぶ事をサブロウは出来なかった。
フラッシュバックした光景に、戦友から託された想いを思い出してしまったからだ。
ジャグラがアメリカ人ならば、はたまた別の人種であれば、サブロウは足掻く事もせずに野望を捨てた事だろう。
【ならば、何故死ぬ事を良しとする! 不可能なんて無いのだろう!】
「それが出来るなら苦労してねぇんだよッ!」
両腕に仕込まれていた最後の可変機構がアクティブされ、五指を纏う様に巨大なマンティスブレードの鉤爪を装着したFAカスタムデラマンが両脚を可変させ、跳躍力を高めた獣を模したユニットを露わにした。
着地の瞬間にスラスターを噴かし、跳躍ユニットのバネを活かしてサイバーエクリプスへと襲い掛かった。
【舐めるなぁッ!】
サブロウの視界に上から押し潰す重力を放つグラビトンハンマーの着弾位置が映り、FAカスタムデラマンの機動を潰す様に解き放った。
不可視の重力の槌に潰されたFAカスタムデラマンが軋みを上げ、サブロウは畳み掛ける様に二打、三打を叩き込む。
完全にダウンしたFAカスタムデラマンの中で、重力に潰されたジャグラは血反吐を吐いていた。
それは生体的な条件反射では無く、油断を晒したサブロウへ最後の一手を放つためだった。
「……《デラマンズ》、ウェポン、フリー……!」
『了、待機中の《デラマンズ》を再起動。ウェポンズフリー』
更地となった道路に次々と武装車両が集結し、ターゲッティングされたサイバーエクリプスへと闇夜を切り裂いてマイクロミサイルの雨が降り注ぐ。
途中で斥力波で吹き飛ばされたディーヴァたちも部位換装でリカバリ施術を経て現場復帰し、構えていたテックオーバーグラードのトリガーを引いていた。
決してジャグラの方へと跳弾しないように弾道計算された弾丸が次々とサイバーエクリプスのパイプなどを撃ち抜いて行き、無防備となった途端に付近に転がっていた破損を免れた四脚ドローンが起き出してガトリングを掃射し始める。
斥力波による絶対の盾を失ったサイバーエクリプスにそれらから自身を護る兵装は無く、死闘の終わりは死体撃ちめいたオーバーキルにて飾られたのだった。
ナイトシティの頂点を決める激闘が終幕し、《機龍》の襲撃から始まったアラサカタワー襲撃はジャグラ側の成功に終わった。
次々と集結する《デラマンズ》によりFAカスタムデラマンから助け出されたジャグラは内臓を痛めた事で死に体の様子だったが、肩を貸すディーヴァに支えられサイバーエクリプスの前に立つ。
腹部を押さえながら震える手でコアから生体《Relic》を引き抜き、炎に照らされたその紅い輝きを確認し、懐に仕舞い込んだ。
「……撤収だ、全て終わった」
『承知致しました。他のディーヴァに伝達します』
深く長い溜息を吐き出したジャグラはアラサカタワーを見やり、申し訳無さそうに苦笑した。
最期の別れの言葉は直に伝えたかったな、とか細く独り言ちてゆっくりと瞳を閉じた。
肩を貸していたディーヴァがジャグラのバイタル変化に気付き、メディカルチェックを行う。
だが内臓へのダメージ以外は何も問題無いため、気絶と処理して回復ポッドが組み込まれたドローンを呼び、撤収に取り掛かった。
「ジャグラ! ジャグラは何処だ!?」
『……ディヴィー、ジャグは回復ポッドで眠りについているようです』
数分後、階段を全力疾走してきたデイビッドとデラマンがエントランスから正面玄関を経て、外の壊滅具合を目撃してジャグラの姿を探した。
ジャグラからの指示なのか、《デラマンズ》の管理権限を制限されていた事で、デラマンは漸くリンクを繋げて情報を得る事ができた。
回復ポッドに横たわるジャグラの姿を見つけたデイビッドたちが慌てて駆け寄ると、すーすーと穏やかな寝息が聞こえて安堵の息を吐き出した。
「はぁー……、良かった。外がこんな有り様だからマジで心配したぜ」
胸を撫で下ろしたデイビッドが同意を求めて口にしたが、隣に居るデラマンは深刻な表情を浮かべてログを取得していた。
全てのログを収集し、精査し、二度、三度、四度と繰り返しログを見直して、デラマンは膝から崩れ落ちた。
肩を貸していたディーヴァが回収していた音声ログを聞いて、間に合わなかったのだと理解してしまったからだ。
『ディ……デイビッド、落ち着いて聞いてください。ジャグは、ジャグ……は……、表人格に戻りました。恐らく、ジャグの言っていたワタシちゃんの人格が表面に出ている筈です。最期の別れの言葉は直に伝えたかったな、そう言い残して私たちの知るジャグは眠りについたようです』
「……は?」
目の前ですやすやと眠るジャグラを、崩れ落ちたデラマンを二度見三度見したデイビッドは理解を拒んだ。
ワタシちゃんと称された人格を知るのは、あの日オルトとの会話で直接話したヴィンセントたちとリアルタイムで見ていたデラマンだけだった。
陰陽の関係である、とだけ聞いていたデイビッドは理解が追いつかなかったが、ジャグラから布教されていたかつての日本のサブカルチャーにより、二重人格のカラクリを理解した。
理解してしまった。
「つまり、目が覚めたら……」
『はい。ご想像の通りでしょう。カスタムからのログを回収しましたが、どうやらジャグの人格は十年前、アダム・スマッシャーの抜け殻により襲われた際に生じた様です。アラサカ社から、サブロウから自身を護る事を条件に人格が表層に出ていた、と自身で明かしています……』
「嘘だろ、なんで、なんで言ってくれなかったんだ……。なんとかなったかもしれないだろ、此処はナイトシティだぜ……?」
『二重人格と言うのは脳の認知誤認から生じるペルソナとも言えます。一人の身体に二人の人格が混在するのではなく、一人を複数に分割した結果片方が表に出ているのです。故に厳密には表と裏は同じ人物なので、ソウルキラーにより乖離する事は不可能と判断したのでしょう』
「……生体科学を齧ってたからこそ、諦めてたのか、最初から」
『それと、表に十年も現れていた事に申し訳無さも感じていた様です。思春期の大切な時間を奪ってしまった、と後悔していたログもありました』
「そっか、だから……」
分かっていただろうデイビッドの恋慕をそれとなく躱していたのは、本来の主人格たるワタシちゃんに身体を受け渡した後の事を考えての事だったのだろう。
やがて消える運命と理解していたからこそ、ジャグラはどちらの選択も取らず好意的で有り続けた。
自分と言う守護者が消えた後、デイビッドが去っても良い様に契約で縛り付ける事もせずに、デラマンと言う裏切らない後進を置いて行ったのだ。
美味しい物を食べて、健康的な生活を送り、生涯を悔い無く生きて欲しい。
そう願って道を舗装するだけ舗装して、自分の夢も傍に置いて、主人格の一人の少女のために時間を費やした。
……そんな人物が報われず、誰にも看取られずに静かに眠りについた事実に二人は耐え切れ無かった。
「なんでだよ、なんで……、ジャグラ……ッ!」
『……この身体に涙を流す機能を付けなかった事をこれ程まで後悔するとは思いませんでした。これが、悲しみと言う感情なのですね……』
下を向いて涙を溢すデイビッドと上を向いて悲しみに馳せるデラマンの構図は正反対だった。
そんな二人を遠目で見たヴィンセントたちはまさかと青褪めるが、近付いて回復ポッドにすやすやと眠るジャグラを見て安堵の息を吐いた。
吐けなかったのは二人の様子から察してしまったヴィンセントだけだった。
【……あの様子だと逝っちまった様だな。ったく、礼ぐらい言いたかったんだがな】
瓦礫に腰掛けたジョニーは悼む気持ちが抑えられないのか、弔いのテキーラを地面に流しながら悲痛に口ずさんだ。
ジョニーの言葉を否定したかったヴィンセントだったが、泣き崩れるデイビッドの様子から否定出来ない事実なのだと呑み込むしかなかった。
デイビッドとデラマンの肩を抱き、痛みを受け止める様に無言で肩を貸した。
「ヴィット、ジャグラが、ジャグラが……ッ!」
「ワタシちゃんに後を託したんだな」
「知って……、知ってたのか?」
「……オルトと初めて会話した時に、《神輿》を破壊する依頼をワタシちゃんからされたんだ。それがボスの願いだから、と。……あの子はボスをお兄ちゃんと呼んでいたから、多分、その逆もある筈だ。妹のために自らを犠牲にした、しっくりこないか?」
「……ははは、ジャグラらしいや」
悲しみの枷が外れたのか涙をヴィンセントの肩に溢した。
よく頑張った、と背中を叩き、ヴィンセントは辛い別れを悲しむデイビッドが泣ける様に大人を演じた。
内心で鉄塗れの砂を噛み締める心地で、悔しさに押し潰されていたヴィンセントに、よくわからんが、とジャッキーが肩を叩いて慰めた。
「……帰ろう、オフィスに」
ある程度泣いて心境が落ち着いたデイビッドをわたわたしていたレベッカとルーシーに投げ渡し、すっかり消沈したデラマンを姫抱きにしてヴィンセントは歩き出した。
全ての始まりと終わりの場所、アラサカタワーを背にヴィンセントたちは輸送AVに乗り込み、クリニック二階のオフィスへと飛び去った。
……アラサカタワー前の惨状をそのままに、《デラマンズ》も撤収した事で辺りは静寂に包まれた。
【Tips】
・リインカーズ・ギルト憑依型
転生者特有の先天的精神病の派生系。
なんやかんやで本来の人格の存在を自覚してしまい、その対象に対して精神的年齢差により申し訳無さを感じていると派生しがち。
〜〜のために自分は居るのだ、と悟りを勝手に開きがちで、自己犠牲精神の強い憑依者だと尚更に顕著。
特効薬は憑依元との精神会話や夢での邂逅し、折り合いを付ける事。
出来なかったら? 見ての通り。
自己満足してなんやかんやで休眠したり消えたりする。
・ワタシちゃん
失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した!!
お兄ちゃんの精神ガード強過ぎなんですけど!?
覚悟を決めたオレくんがクッソ硬くてガードを抜けなかったどころか、早々に精神エレベーターへ閉じ込められて、全てが終わってから主人格の表層階に送り出された。
ワタシちゃんの敗因はオレくんの精神年齢が成人並みである大人な事を失念していた事。
ループやタイムマシンものなら次回はオレくんを速やかにデラマンに診察させる事でしょう。
こっからハッピーエンドになる保険があるってマ?
・サブロウ戦(ベリーイージー)
何故かサブロウが主人公みたいになった、なんで?
サブロウの経歴から紐解いていくと、大企業として市民に圧を掛け続けた理由が利益ではなく、アメリカへの復讐だったと考えると何となく良い感じのラスボスになる。
二次創作のラスボスとして相応しい原作解釈の体現者になったが、自身すらも信じてないジャグラくんちゃんの後詰め部隊にオーバーキル(死んではいない)された。
IFだが、あの日マサヒロを殺さなかったら原作通りの展開になった。
ジャグラくんちゃんにならず、ただの無名ジャグラちゃんとしてアラサカタワー襲撃に巻き込まれる。
多分死因はドローンの暴走による銃殺(オルト
尚、原作時空にはマサヒロもミヤビも居ないので産まれていない、安心してアラサカタワーを襲撃しよう。
デイビッドとデラマンがラストバトルに参加出来なかった理由は見ての通り、居たら流れ弾であっさり死ぬ。
加えて、レスバに参戦されると困るので(暗黒微笑
・ベリーイージー……?
ベリーイージーの理由ですが、今作中に回復描写無いんですよね。
プレイヤーなら分かると思いますが、戦闘後の自動回復で事足りていると言う事実。
ベリーイージーだな、ヨシッ。
・原作死亡者回避ルートのリザルト
→デイビッド生存
→エッジランナーズ生存
→ファラデー生存
→サーシャ生存
→ジャッキー生存
→デクス、T-バグ、エヴリン生存
→ロイス、ダム・ダム、ブリック生存
→メレディス、ギルクリスト生存
→スコーピオン、アルデカルドスモブ生存(ついでにパイロットも生存)
→アダム・スマッシャー生存
→ヨリノブ生存
→ハナコ生存
→オダ、タケムラ生存
→サブロウ生存
……多分漏れは無いな、ヨシッ!
原作で死んでる主要キャラを片っ端から死亡回避していくルートでしたので、大分ご都合主義と言うか、デラマン社を魔改造しましたが此処まで書く事ができました。
皆様の感想と御愛読のお陰です、誠に有難う御座いました!
と言う事で次回エンディングです。
その後は後日談を幾つか書こうかなと思っています。
DLCは無いです、ソングバードさんは何かこう、一患者として勝手に救われた感じで一つ。
良かったなリード、ついでにお前はカウンセリングされていけ。
V側の描写を入れずにサブロウ戦まで進めた方が良かった?
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流れを切るな、そのまま続けろ派
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足並み揃えないと後でダレるからヨシっ派
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そもそも場面を分けずに書き進めろ派