Hello,Goodbye,Night City‼ 作:不落八十八
熱々のタマレを頬張って一旦会話が止まった五人は、満足そうな笑みを浮かべて食事を堪能していた。
以前よりも食材が良くなった事により得られる食の快楽が増している事もあり、ビールが進んで仕方が無かった。
そして、残ったビールの中身をぐいっと飲み干したジャッキーが吐息を吐きながらデイビッドに瓶を向けた。
「そういやよぉ、そのジャグが転生者ってのは例の遺言チップにあったって奴だろぉ? この世界がゲームだったりカートゥンだったりしてたって話じゃねぇか。じゃあよぉ、本来のと言うか、アイツが関わらなかった俺たちってそれではどう描かれてたんだ?」
「おいおい、ジャック、飲み過ぎだぞ。呂律が若干回ってないぞ。そろそろ水も頼んでおくか……。まぁ、確かに気になるな。俺たちはカグラからある程度聞いただけで、全部を聞いてる訳じゃないしな」
「あー……、つっても、遺言の中にはアニメの方だけだったな。ゲームの方はたまに教えてもらうくらいだったからなぁ。ズレてても文句は言わないでくれよ?」
「ははっ、良いじゃねぇか。あの嬢ちゃんがどれくらいの成果を叩き出したのか、批評してやろうぜ」
ジョニーがけらけらと酔いに酔った悪ノリでデイビッドに続きを促した。
ビールの酔いで揺れる頭を抑えつつ、ヴィンセントの頼んだ水を貰いながらデイビッドが説明し始めた。
「えぇと、そうだな。時系列的にはアニメの方がゲームよりも前の話だったみたいで、それの名前がサイバーパンク:エッジランナーズってタイトル。ゲームの方はヴィンセント、と言うかVを名乗る主人公の話で、Cyberpunk2077って言うらしい」
「ほぉ、あぁ、だからジャグがヴィンセントたちの名前を聞いて頭抱えてたのか」
「あぁ、うん、そうみたいだな。ゲームの方はライフパスが三つ選べて」
「当ててやるよ、コーポ、ストリート、ノーマッドだろぉ。ヴィンセントにヴィクトリアにヴァレリー! どいつもこいつも最初はVを名乗ってたからよぉ!」
「ジャッキー正解。男女が選べて、それがヴィンセントとヴァレリーだったって話だよ。本当は一人なのに、この世界では三人居たからマジで困惑してたって言ってたな」
「そりゃそうだろうよ。んで、お前が主人公のアニメはどう言う話なんだ?」
「あ、やっぱり分かる? それが理由で俺の事を信頼してたみたいで、あの頃はマジで何でこんな底辺層のガキに良くしてくれてたんだろうなぁってずっと思ってたんだけど、アニメの方の主人公だったんだーって言われて腑に落ちたよ」
「あっはっは! それじゃあ、比較されっぱなしで大変だったろうよ」
「まぁ、導入から違ってるから正直何ともって感じだけどな」
話題の中心になったデイビッドが口を潤すために水を飲み、ついでにタマレを齧ってから続きを始めた。
「えーと、ジャグが言うには俺の成り上がり物語らしいんだけど、最初の方は殆ど変わらなくてその、……ジャグと会わずに闇ドクにデバイスのアップデートを頼んだみたいで、案の定アカデミーの授業をぶっ壊して修理費を請求されるらしい。んで、……アカデミーに来た母さんの車で帰る途中でアニマルズの襲撃に巻き込まれて……、母さんが死んで……」
予想以上に重い展開が語られ、四人の顔が神妙になる。
勿論ながら彼らはデイビッドの母親であるグロリアをクリニックのオフィスに行っていた頃に見た事も話した事もあり見知った顔だ。
まさか初手でそんな人物が死ぬ展開になるとは、とかつてのナイトシティの治安の悪さを思い出して有り得るなぁと腑に落ちてしまった。
「……で、遺品の中にあった救急隊員の制服の裏地に軍用サンデヴィスタンがあったらしくて、最初は売ろうとするけどアカデミーでボコボコにされて、やり返すために闇ドクのところでインストールしたんだとさ」
「うっそだろお前……。聞けばアレ、アダム・スマッシャーが使う事前提で作られてた試作品だって話じゃねぇか」
「まぁ、割と耐性があったみたいで、連続稼働とかしてたっぽい。んで、メトロの中でピックソケットで小銭稼いでたルーシーに出会って、サンデヴィスタンを披露した事でそれ使ってる事がバレて、なんやかんやで騙されてメインと対面するんだとさ。んで、本来ならメインが買う予定だったサンデヴィスタンを俺が付けてたから、今の生活を脱却するためにサイバーパンクとしてチームに入れてくれって感じで話が進むみたいなんだ」
「はぁー、それはまた……、良かったなぁデイビッド。グロリアさんが元気で」
「あぁ、ほんとマジでそれ。母さんがそんなしょーもない事で死ぬとかマジで有り得ないから……。そう言う意味ではジャグは命の恩人なんだよな、……俺含めて」
「おぉっと、なんか意味深な事を言いやがったな。面白くなってきやがったぜ」
人の不幸でビールが美味いと言わんばかりにジョニーが煽り立てる。
見ればこっそりとテキーラを注文していたようでべろんべろんに酔っている様だった。
「まぁ、そんなこんなで新入りとしてサイバーパンクの依頼に挑んでいくんだけど、その、アニメだと俺、ルーシーと恋仲になるみたいで色々とイベントがあったみたいなんだよな。……多分、そう言う事もあって俺の想いを受け取り辛かったんだと思うんだよな。そう言う未来もあった、って知ってた訳だから」
「ほぉーん、それはまた、面白い展開だな。まぁ、確かにルーシーは孤独気取ってるが、キーウィに懐いてた事もあって寂しがり屋でもあったしな。デイビッドみたいな真面目で熱い奴が居たら、そりゃぁ……あっ」
デイビッドが露骨に視線を反らした事で、この世界でもルーシーがデイビッドに惚れている事実を思い出したメインがバツの悪そうに頬を掻いた。
実際、男女の恋愛で崩壊するチームも珍しくなく、レベッカもまたデイビッドに惚れている様子だったので、どちらかと付き合っていたら今頃大変な事になっていた事は間違いない。
そう言う意味では、メインとしてはデイビッドがジャグ一筋で此処まで耐え抜いてくれた事は感謝する案件と言って良いだろう。
「とまぁ……、途中までは良い感じに和気藹々な成り上がり物だったらしいんだけど、ピラルがサイバーサイコに殺されてから段々とチームが不安定になっていって、最終的に責任感じてクロームを足しまくったメインがサイバーサイコ化してドリオと一緒に死んで、俺を旗印にチームを続けていく感じなんだよね」
「しれっとお前、俺とドリオを殺したな? と言うかマジかよ、俺も死ぬ未来だったのかよ……」
「……んで、それから暫く経ってからアラサカに俺が軍用サンデヴィスタンを使ってるってのがバレたらしくて、何かの実験に使えそうだーって調べられてたのを知った恋人のルーシーが一人で何とかしようとアラサカのネットランナーを暗殺しまくってたら、ファラデー、あー、キーウィの元カレだった奴がフィクサーとしてアラサカから依頼を受けたらしくて。昔の関係を持ち出してキーウィを裏切らせて、俺らがミリテクの物資を奪う依頼で騙して悪いがされて、その、サイバースケルトンって言う欠陥試作パワードスーツに乗せられてサイバーサイコなりかけでミリテクの追手をぶっ潰して、そのまま拉致されたルーシーを助けるためにアラサカ社にカチコミしたらしい」
「待て待て待て、情報が多い。もう少し考えて喋れ」
「仕方がないだろ、俺だってジャグからのまた聞きなんだから、細かいところまで流石に覚えてねぇよ。ファラデーに裏切られてキーウィが死ぬ間際に、裏切りをゲロってアラサカ社に行く流れになるんだとさ。んで……、レベッカはアダム・スマッシャーに押し潰されて死んで、俺もバラバラにされて死ぬんだと。ファルコにルーシーを逃がす様に言って、二人だけ生き残るんだとさ」
再びキンキンに冷えたビールの様に空気が凍り、うわぁ、と四人は有り得る展開に額を抑えた。
何せ、雨の代わりに死体が降ってくるようなナイトシティの頃である。
しかも、ジャグの影響が無く、アラサカが大手を振って動けていると言う環境でその立ち回りは死ねる事間違いない。
ナイトシティだしなぁ、と四人は嫌な納得をしてしまい、酒に逃げた。
「って事は、なんだ、ジャグは《エッジランナーズ》の奴を全員救ったって事か?」
「んー、どうなんだろな。俺もジャグにそう聞いてみたけど、IFの話をしても仕方が無いだろ、って諭されちまったんだよな。ジャグ曰く、そう言う可能性があったってだけで実際にあった訳じゃ無いんだから感謝されても困る、ってさ。本来一人のVが三人も居た訳だし、とんでもな有り様にならなくて本当に良かった、とは言ってたけども」
「あー……、成程な。バタフライエフェクト以前の問題って訳か。アニメそっくりに世界が進んでる訳じゃないんだから、あくまで並行的な世界の話って事だな」
「あん? つまり、どう言う事だ?」
「お前がミスティとくっつかずに、別の奴と結ばれる世界もあるって言う可能性の話だよ」
「あぁ……、そう言う事か」
ママ・ウェルズが気に入っていた女性と自分をくっつけようと画策された事があったな、とジャッキーは漸く理解できた。
それが成功した世界とそうならなかった世界がある、そう言う訳だな、と。
アニメの説明が終わり、喋り疲れたデイビッドはフルーツを煮た甘いメキシコのジュースであるポンチェで喉を潤す。
「んで、ゲームの方はどんな感じなんだ? 勿論、俺が活躍するんだろう?」
「えーと、ジョニーは今と同じでヴィットの中に入って、最終的には背中合わせの相棒みたいな感じに収まるらしいぜ。因みに、最初はお前の身体を奪ってやるって殺しに掛かってたらしいけど」
「ゲームの中のお前物騒過ぎるだろ」
「あぁん? 割と紳士的なアプローチだったと思うんだが、勘違いかヴィンセント」
「あー……その、ゲームの説明なんだが、ボリュームがめっちゃくちゃあるらしいからストーリーだけにしとくからな。どのライフパスのVも、最初は失敗から始まるらしくて、えぇと、コーポVは上司の失敗の道連れにされて、ストリートVは車泥棒が失敗して、ノーマッドVは密輸入が半ば失敗する、だったかな? どのルートでもジャッキーと出会って、相棒としてヘイウッドでペアの傭兵になる道筋っぽい」
「……つまり、ボスは俺らを拾うためにアンテナ張ってた訳だ、ジャックに」
「そう言う事になるな。まぁ、後々でジャッキーが紺碧プラザで死ぬから重点的に囲ってたらしいぞ」
あっさりとしたデイビットの言葉にジャッキーはきょとんとするが、先程のメインの有り様を聞いていたからか肩を震わせて笑い始めた。
「ははは! そうか、俺も死ぬのか! いやぁ、流石ナイトシティ、容赦が無ぇな。死因はなんだ?」
「えーと、ゲームだとデクスター・デショーンの《Relic》強奪の依頼を受けて、VとジャッキーがT-バグって人のサポートで紺碧に行って、フラットヘッドを侵入させてヨリノブの部屋に行くらしいんだけど、そっちには《機龍》は無くて、普通にヨリノブがサブロウの首を絞めて殺すらしいよ。んで、モニター裏でそれを見てた二人が逃げ出す時に、マックスタックのセントリーガンでジャッキーが負傷して、最終的に脱出できるんだけどデラマンの中で失血死するんだとさ。その時に《Relic》をVに託すらしいよ。衝撃的な別れの後に、モーテルでデクスにVが頭を撃たれて死んで、《Relic》が起動して蘇生されて、ゴミ捨て場に捨てられた後にタケムラが回収しに来て、なんやかんやで《Relic》を取り除こうと足掻く本編に繋がるんだとさ」
「……マジかよ、T-バグの名前を其処で聞くとはな」
「どうも、原作のVは《Relic》の起動が正規の起動じゃなかったらしくて、初めからジョニーの遺伝子に書き換えられながら過ごすらしいぜ。何でも《Relic》の正規起動には対象の心停止が必要らしくて、小口径で傷口が浅かったVは脳死状態だった可能性が高くて、バグで無理矢理起動したみたいな感じでアレな感じだったんだとさ。だから、アダムにヴィットの心臓をぶち抜いて貰ったってジャグが……あっ」
「……んん??? 今、聞き捨てならない事を口走らなかったか? なぁ、デイビッド?」
「いや、その……、ジョニーを起動しないとオルトを回収できないから必要不可欠な犠牲だったって言うかその、……な?」
「な? じゃねぇーよ。……はぁ、道理で至れり尽くせりだった訳だ。まぁ、そのお陰で俺はジョニーに寄生されても無事だったって事だろ? ならまぁ、荒療治って事で呑み込んでおくさ」
「はっはっは! そうなると最終的に俺がヴィンセントの身体を乗っ取る可能性もあった訳か」
「あぁ、実際にそう言うエンディングもあったみたいだぜ。ゲームだと《神輿》に接続して、ジョニーをオルトの居るネットに送って、ヴィンセントをソウルキラーで記憶痕跡化して《Relic》に宿し直して治療する流れなんだとか。まぁ、その場合寿命が半年くらいだったらしいけども」
寿命ががっつり減ると言う衝撃的な裏話を聞かされたヴィンセントは、思わず十字を切ってからジャグに感謝の祈りを捧げていた。
今の話を纏めれば、心停止の条件をちゃんと履行したからこそ《Relic》が正規起動し、エラーを起こして半ばで止まってくれたと言う事実だけが残る。
心臓をぶち抜かれてある意味死んでいたヴィンセントだが、生体データから作り出された生体パーツの心臓を移植されて蘇生されてなければ、とっくの昔に慰霊堂に納められていた可能性が高かったのだと察してしまった。
原因となるジョニーは少しバツが悪そうな表情でテキーラを直飲みして、別に俺悪くねぇわと開き直ったのだった。
【Tips】
・エル・コヨーテ・コホで男子飲み会
主要キャラに原作と今作の違いを話させるのを一度してみたかったからと言う後日談三弾でした。
全部終わってからじゃないとできない贅沢な話だからね、いやぁ、完結できてて良かったなぁ。
脅威の原作死亡率なんですよねこの卓、五人中一人だけですからね生きてるの。
しかも生きてても寿命をボッシュートされていると言う世知辛さ、やっぱナイトシティつれぇわ。
ついでにジャグの罪もしれっと清算させていくスタイル。
ぶっちゃけこのタイミングぐらいでしか言う場面が無いって言う。
この世界の医療はとんでもなので医療ミスなくヴィンセントは普通に生きて行けるからセーフだな!
ご都合主義だって?此処は二次創作だぞ、最初からご都合主義の世界だぜ。
女子会……、カグラ、ジャグ、デラマン、レベッカ、ルーシー、ヴィクトリア、ヴァレリーとかで?
話題わっかんねぇ……、何話させたら良いんだろうか。
と言う事でこっそりと活動報告のところに御題箱みたいな感じでアンケートみたいなのを置いておきます。
どうぞお気軽に投げてね。
サーシャ? ぶっちゃけあの子PVだけだからキャラわっかんないのよな……。
ひっそりとカクテルとかおつまみを給仕してる感じで何卒勘弁。
因みに、感想欄に要望等を書いちゃうと違反扱いになっちゃうのでお気を付けください。
どうぞよろしくお願いします。
V側の描写を入れずにサブロウ戦まで進めた方が良かった?
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流れを切るな、そのまま続けろ派
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足並み揃えないと後でダレるからヨシっ派
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そもそも場面を分けずに書き進めろ派