Hello,Goodbye,Night City‼   作:不落八十八

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七十五話 後日談④

 男性陣がエル・コヨーテ・コホで飲み会をしている同時刻、ジパング地区にある《ドラゴンテイル》が経営するオーソドックスな喫茶店の個室でも集まりがあった。

 主催であるワタシちゃんことカグラの隣にはバツの悪そうな顔のオレくんことジャグが座っており、左にはレベッカとルーシー、右にはヴィクトリアとヴァレリーが座っていた。

 デラマンも参加していたが、主に給仕のために居る様で執事メイド服と言う恰好でアイデンティティを発揮していた。

 それを手伝うのは喫茶店のオーナーであるサーシャであり、黒猫を模したチョコケーキやイチゴのショートケーキなど売れ筋商品をテーブルに並べる手伝いをしていた。

 

「はい、ではレベッカさんとルーシーさんの愚痴がそろそろ鬱陶しいので何とかするべく、女子会を開きます!」

「……言い方に棘があるぞワタシちゃん。まぁ、その、オレのせいなんだろうけども……。ぶっちゃけ、オレに言われてもな、って感じでもあるんだが……」

「ふぅー……、そうね、貴女がくれた時間を有効活用できなかった私達が悪いわ。けどね……、あんなにイチャコラされたらこっちだってもどかしいのよ! 人目を少しは気にしなさいよ!!」

「……む? いや、人前では抑えてる筈なんだが……?」

「あぁもう、分かってただろうがっ!! こいつも! あいつも!! どっちも天然なんだよやってる事がよぉッ!!」

 

 ガァオォーと吠えたルーシーとレベッカの乙女の咆哮にクエスチョンマークを並べるジャグの様子に誰もが肩を竦めた。

 ジャグの反応も無理は無い。何せ、デイビッドとジャグの恋愛感はまるで小学生の仲の良い男女のそれであり、お互いを想ってお互いが楽しめる様にお互いを尊重して、と遣り取りが無限ループしているのである。

 二人からすれば普通にやっている事だが、傍目から見れば砂糖を練乳で練り上げてから砂糖を塗して揚げてまた砂糖を付ける様なゲロ甘なイチャコラムーブである。

 しかもこれで付き合ってるだけで結婚してないのだから、果てが見えぬ砂糖に溺れる心地である訳だ。

 デイビッドに少しでもアプローチすべく隣のガンショップに陣取ったのは良いが、割と慣れない事ばかりで経営の方に意識が行ってしまい、本来の目的がブレてしまっていたのが一番の敗因だった。

 ……もっとも、デイビッドの母親であるグロリアに良い顔をしようと頑張り過ぎた結果とも言うが。

 

「ふふふ、策士策に溺れるとはこの事ね……。はぁ」

「まぁ、元々はあーしらの横恋慕だったしな……。はぁ」

 

 消沈したレベッカとルーシーのガス抜きも終わり、疲れた身体に甘いケーキが染みていく心地であった。

 デイビッドの心の向きが二人に向かわなかった理由であるが、偏に接し方の問題でもあった。

 気恥ずかしくマウントを取りがちなレベッカの弱ツンデレと、お姉さんムーブで魅了しているつもりのルーシーの謎クール。

 そのどちらもギャップ萌えで百点満点越えのジャグの笑顔に勝てなかった。

 流石に気付いていたデイビッドであるが、明らかに自分から告白させようと誘惑しているのが透けて見えてしまい、どうも食指が向かなかった模様。

 二人に好かれていた事は光栄な事だったが、それ以上にジャグの事が好きだった、これに尽きたのだった。

 ……加えて、ジャグに惹かれ始めてから性癖が何度もリビルドされた事も原因の一つだろう。

 男友達の距離感で接してくる好きな女の子の色んな一面に脳が焼かれた結果であった。

 

「因みに、どんな事してるの?」

「む、……これと言って何かしてたか?」

「お前ら隣に居る時恋人繋ぎがデフォルトだし、キスを強請るデイビッドを嗜める時とか指ちゅーしたりしてたろが」

「買い物も基本一緒だし、お互いの好みも完全に理解してるし、テイクアウトを半分にして食べさせてあげてたりしてたでしょ」

「……普通では?」

「「普通じゃないから!!」」

 

 やっている事が明らかに恋人同士のそれではなく新婚夫婦のそれである。

 その初々しくて眩しい光景をずぅーっと見ていた二人はもう色々とノックアウトされてしまっていた。

 ヴィクトリアはジャグの事を自身の救世主として崇め奉っているだけであり、既に性的な対象としては見れていないため、二人の会話をメモして新しいジャグラ伝説を造ろうと画策している始末である。

 カクテルの用意をして来たサーシャがそれに気付いて脳天にチョップを食らわせて止めるまでが最近のワンセットだったりする。

 基本的に暴走しがちなヴィクトリアのストッパーになっているサーシャが一礼してからカクテルを置いて行く。

 ウォッカのロックにニコーラを少々加えたカクテルを置いて行ったサーシャは次の準備に取り掛かるべく厨房の方へと戻って行った。

 

「ん? あぁ、これデイビッドカクテルか。教えたっけ?」

「一応お姉ちゃんの中に居た頃に、サブカルチャー漬けの毎日を過ごしてたからその時にね」

「デイビッドカクテル? なんだそれ」

「んー、《アフターライフ》って言うローグが仕切る酒場があって、そこの伝統から作られたカクテルだな。まぁ、この世界だとオレが阻止したからある訳無いんだが」

 

 ジャグは匂いでウォッカとニコーラを判別して、ピンと来た名前を説明した。

 

『ジャグ、説明が足りてませんよ。貴女の遺言チップを聞いたのは、カグラお嬢様以外では私とデイビッドだけですので』

「ん? そうなのか。酒の席だしカミングアウトすると、オレは所謂転生者って奴でな。ん、割と炭酸キツイなこれ。アイツ炭酸苦手だっただろうに意趣返しか?」

「変な脱線しないでお姉ちゃん。ワタシたちの世界がゲームやアニメになってる世界線からワタシに入り込んだみたいで限定的だけど未来を知ってたんだよ」

「……成る程ね、先回りしてるみたいな動きはそう言う仕掛けだったのね。……《アフターライフ》の伝統的なカクテルネームは、伝説になった者の名前から取るってクレアが言ってたわ。つまり、貴女の知る世界ではデイビッドくんはどでかい何かをして死んだのね」

 

 勘の鋭いヴァレリーの言葉が向けられたジャグはしらばっくれる様にそっぽを向き、向けられた先に居たデラマンがショートケーキを一口に切って食べさせた。

 

「美味いなこのショートケーキ。やっぱり日本から企業を誘致したのは正解だったな」

「なーに話題を変えようとしてるのよ、ヴィンセントたちには教えたんでしょ?」

「教えてる訳無いだろ。それに、これに関してはマウントを取る様な真似をしたくないからノーコメントだ」

 

 感性は男寄りのジャグは一抜けたと言わんばかりに、後ろに居たデラマンに頭を預けて早々に逃げた。

 そうなると片割れであるカグラに好奇の視線が向かうのは当然の事だった。

 何処ぞの菓子屋のキャラ宜しく舌をペロっと出して誤魔化しに掛かったが、がっしりと肩を掴む小さな掌がそれを許さなかった。

 

「話せ、全部しっかりと」

「ひぃーん。……ぶっちゃけ、後悔するだけだと思うけど、本当に聞きたいの?」

 

 お茶化た表情からスンッと真顔になったカグラの様子に、大分とんでもない話が飛んでくる気配を感じ取った二人だが、此処で聞かねばチャンスが無くなる気がしてしまったが故に頷いてしまった。

 

「なら、仕方が無いかぁ。これは別の世界線の話で、この世界とほぼ似た様な世界の話なんだけどね。その世界だと、グロリアさんが事故死して、ピラルさんがサイバーサイコの浮浪者に殺されて、メインさんがサイバーサイコ化してドリオさんを巻き込んで自爆して、キーウィさんが裏切って切り捨てられて殺されて、アダムさんにレベッカさんは押し潰されて、デイビッドくんは達磨状態で死ぬんだよね。あ、サーシャさんもダイナミック飛び降り自殺してるね。因みにその世界にはお姉ちゃんは居ないよ」

 

 次々と羅列される死亡報告に段々と顔を顰めた二人とヴァレリー、そしてこっそりと聞いていたサーシャ。

 ジャグが何故言いたくなかったのかを理解してしまい、罪悪感と後悔に苛まれたのだった。

 そんな未来予想図を手にしていたからこそ、随分と無茶で綱渡りな行動を取り続け、奇跡の様な結果を齎した。

 ……その代償に自身の存在が消えようとも。

 言うなれば伝説の樹立者であり、出来ればそれを誇らずにひっそりと隠しておきたかったのは、一度でも聞いてしまえば助けられたのだと自覚してしまうから。

 そんな気持ちにしたくなかったからこそ、誇る事もせずに口にしなかったのだと、その優しさに気付いてしまった。

 

「……全部、もしもの話だ。あの日、アラサカタワーの前でデイビッドと出会わなければ、もっと違う遣り方をした筈だ。此処まで力を得るつもりも無かったしな。一リパードクとして支援に留めていた、そんな可能性だってあった。結局のところ、オレは皆を利用していただけだ。そんなオレを許してくれるな。こんな、私利私欲で誰かに誰かを殺させた悪人を。感謝なんかしてくれるなよ……」

「あぁもぅ、お姉ちゃんのメンタルが一般人のそれなの忘れてた……。ごめんお姉ちゃん、良かれと思ってぇ……」

 

 死んだ目で蓋をしていた感情を露わにしたジャグに、カグラが半泣きで抱き付いた。

 女子会の空気が氷点下並みに下がった瞬間であった。

 後ろからデラマンが無言で抱き締めてセラピーしている間、レベッカとルーシーは非常に居心地が悪かった。

 そんな空気の中、カッと目を開いたヴィクトリアがジャグの手を取った。

 

「けれど、貴女が救った命もあります。あたしは誰でもない貴女に救われました。だから、悔やむ事だけをしないでください。貴女に救われた者の一人として、心からの感謝をさせてください。貴女が居てくれて本当に良かった」

「……随分と口が達者になったな。はぁ、だから知られたくなかったんだ、メンタル死ぬっつーの……」

 

 魂の込められた真摯な言葉に、気を持ち直したジャグの瞳に生気が戻っていく。

 感動的なシーンであるが、サーシャだけはヴィクトリアの魂胆を理解していた。

 こいつ絶対ジャグラ伝説の新章を書き上げようとしてやがる、と。

 そして、其処にしれっと自分だけ捩じ込もうと画策してるな、とも。

 実際、ジャグを神の様に信仰している狂信者の考えている事はドンピシャだった。

 

「まぁ、そう言う訳でこの話は終わりだ。はい、やめやめ! 折角のスイーツが不味くなるだろ、次の話題だ、なんか出せ」

「えっ、……じゃあ、恋バナとか? ……あっ、ごめんなさい」

「マジトーンで謝るのはやめなさい」

 

 急に話題を振られたカグラが口にするが、ジャグ以外は恋人が居ない上に、レベッカとルーシーはデイビッドに懸想している。

 

「アイツ以外に良い男が居ねぇんだよ……。メインはドリオと宜しくしてるし、糞兄貴は論外だし、ファルコはジジイ。《ジャッカルズ》の男メンツは全員既婚者だろ。……はぁ、最初からやり直してぇ……」

「と言うか、一番のライバルはルーシーさんでしょ。その世界線では恋人だったし」

「嘘でしょ……、な、何を間違えたの私」

「急にマウント取りに来てんじゃねぇ! つーか、さっきの話がマジならお前とファルコだけじゃねえか生きてるの!」

「えーっとね、ピックソケットしてる時に出会って、お前が拾って来たんだから世話しとけってメインさんに言われてから、交流を重ねて月の話題で盛り上がって行くんだよ」

「わーッ?! な、なんで知って、と言うかさっきの話の信憑性が上がっちゃったんだけど!? え、なら私の過去も……?」

「ブラックウォールにダイブするのはもう二度と辞めておけよ」

 

 ジャグの親切心からの助言を聞いたルーシーは崩れ落ちた。

 この世界でそれを知る者はほぼ居ない情報であり、ジャグがマジで平行世界を知っていて、死に物狂いで奮闘した救世主だったのだと魂で理解してしまった瞬間であった。

 最初からこうしとけば良かったな、とジャグは溜息を吐いたのだった。




【Tips】

・喫茶店の個室での女子会
後日談第四弾は「ジャグの秘密」でした。
度々描写しているけれど、ジャグのメンタルは日本人の一般男性オタク型のそれと変わらないので、誰かを殺した事に対する罪の意識がすんごいです。
けれどもそれを成さねばデイビッドやヴィンセントたちが死ぬので、優先順位を遵守して他を切り捨てていました。
死にたくなったりしていたのは実はサイバーサイコシスの影響ではなく、マジでメンタルがやられていたと言う裏話。

え?モノワイヤーで父親(母親)の仇(無関係の別人)をぶち殺してるだろって?
あの頃のジャグラくん尖ってたから……(目逸らし

……女子会か、これ?
右から、美女、美人、美少女、美少女、美少女、美人。
ヨシッ、女子会だな! ほんとぉ?




エッジランナーズを久しぶりに見直してるんだけど、一話でメトロ乗ってる時に国際宇宙空港の打ち上げ見てるのね……。
つまりはもうこの段階からDLCの内容盛り込まれてたんだなぁって(逆輸入かもだけども

V側の描写を入れずにサブロウ戦まで進めた方が良かった?

  • 流れを切るな、そのまま続けろ派
  • 足並み揃えないと後でダレるからヨシっ派
  • そもそも場面を分けずに書き進めろ派
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