Hello,Goodbye,Night City‼ 作:不落八十八
筋肉質なデイビッドの胸板に押し潰された形で目を覚まし、一糸纏わぬ姿ではあるが生理的な欠伸を噛み締めながら伸びをする。
んー……、もう少し節度を守る生活をすべきだろうか。
休日の朝、ぁー、いや、昼だな……、まぁ、良いか。
翌日が休日だからと少し羽目を外し過ぎたな……、酒が入るとデイビッドは攻めっ気が強いからなぁ。
ゴミ箱から外れていた生々しいゴムなどを捨て直し、散らかした下着や衣服が視界に入る。
……もう面倒だから纏めて洗うか。
自分とデイビッドの物を纏めて抱え込み、洗濯機に投げ入れて自動モードに全てを託した。
デラマンは最近家電にハマっている様で、図面を引いて開発して前のを取り外して設置するのを一人でやっていたりする。
《デラマンズ》はデラマンの指先の様なものなので、実質一人だろう、多分。
中で洗濯物の種類で分別され最適な洗い方をしてくれるハイテク過ぎる洗濯機の活躍に期待を託し、グレーのスポーツブラとショーツを身に付ける。
衣服は……スウェットで良いか、面倒だし。
上下を着て最低限の人間らしさを取り戻し、朝食、もとい昼食を作るべくキッチンに立つ。
寝起きで口の中が気持ち悪いのでうがいをし、ミネラルウォーターをサーバーからコップに入れて二杯程飲む。
「……ふぅ、生きてる心地がするな」
冷たい水って何故か美味く感じるよなぁ、と思いつつ冷蔵庫を見やり、余り物で炒飯を作る事が決定された。
日本企業を誘致してから食生活が前世の頃みたいになってんなぁ、と存在しない記憶を想起しつつ、食材を取り揃えていく。
蕎麦を茹でた時に切り過ぎたネギ、インスタントラーメンに乗せたりする蒲鉾、そろそろ賞味期限が怪しいチャーシューの塊、ぐらいか。
他のは副菜として適当に並べとくか、デイビッドなら美味い美味いと連呼して食うだろうしな。
オレは今の身体になってから食が細いと言うか、女性として色々と気にする事が増えたので制限気味だ。
たまに前世を思い出してドカ食いするけれども。
熱した中華鍋にサラダ油と胡麻油を1:1で大匙で入れ、鍋肌に馴染ませてから溶いた卵を流し入れ、チンしたご飯パックを投入する。
焼いて崩す部分と一体化する部分を作りつつ、チャーハン作るよっ、な気分でお玉でジャカジャカと油と絡ませる様にご飯と卵を混ぜ合わせる。
そして、適当に切った具材を解き放ち、調味料を加えて味を整えていく。
用意した皿に、中華鍋をあおってお玉に入れた炒飯を押し付けて形を整える。
「ジャグ、おはよぉ……」
「ん、起きてきたか。ってこら待て、寝起きのキスは禁止だと言っただろうが、口を濯いでからだ」
「ふぁーい……」
デイビッドは休日だと母親に甘える子供の様にオレに接してくるので、こうしてぺしりとはたき落とさねばならない。
……ん、別に休日だけじゃねぇな、普段からそうか。
冷蔵庫から煮物や日付が怪しい薩摩揚げなどの小物を取り出して纏めてレンジでチンする。
無論、電子レンジにもデラマンの魔の手に掛かっているので非常に使い勝手が良い。
ほかほかに仕上がった余り物をテーブルに並べ、最近漸く供給出来るようになった牛乳をコップに注ぐ。
デイビッドにはオレンジジュースを注ぎ、スプーンなどを配膳し終えた頃に漸くデイビッドが現れた。
オレと同じく予定は無いのかスウェット姿でお揃いになってしまったなぁ。
後ろからぎゅーっと抱き締めてくるデイビッドにタップしつつ、頬にキスをしてやり椅子に送る。
「ご飯が冷めるだろうが」
「……ッス。ごめんなさい。ご飯ありがとう」
「なら良し。いただきます」
「いただきまーす。はふっ、んー、美味いなぁ。前に中華屋で炒飯食べたけど、それ以上だ」
「ふふん、当たり前だろう。そこらの飯屋と比較したら勝つに決まってるだろ。養殖食材が出回り始めてまだ数ヶ月だろ」
「ほーだっけ? んぐ、そういや、俺は前々からジャグに食べさせて貰ってたからなぁ」
「……そういやそうだったな? ったく、変なところにお弁当付けてどうするんだ」
ガツガツムシャムシャと良い食べっぷりのデイビッドの顎元に付いた米粒を指先で取ってやり、そのまま唇に押し付けてやった。
……ってオレの指ごと食べるなバカ。
へへへ、じゃねーんだわ、唾液塗れじゃねぇか。
ティッシュで指先を綺麗にし、食事を再開する。
「ご馳走様でした! ジャグの手料理しか勝たんな」
「はいはい、お粗末さん。洗い物は任せたぞ、オレは洗濯物を片付けるから」
「あいよー」
基本的に家事は適当に分担だ。デラマン印の家電が有能過ぎてあたふたとする必要が無いのは非常に助かる。
まぁ、忙しい時は普通にデラマンが入って来て住居スペースの家事を一通り処理してくれたりするからなぁ。
ただ、夕飯を作ってくれるのは嬉しいし助かるんだが、オレの方がお誕生日席並みに豪華で、デイビッドの方が塩と米と漬物と味噌とお湯だけなのはやめてあげて欲しい。
せめておにぎりと味噌汁に調理してやってくれよ。
毎回、オレの方のおかずを強請るんだからな。
……まさかと思うが、デラマンお前、オレがデイビッドにあーんするのを見たいだけでそうしてたりする???
謎が一つ解けてしまった昼下がり、洗濯物を畳みながら日向ぼっこをしつつ、平和を享受する。
「お邪魔するわよー?」
前世の方角からミーム汚染されたナニカが脳裏を飛来したが知らぬ振りをして受け流す。
どうやらデイビッドの新実家であるガンショップと繋がっている扉からグロリアさんが来たようだった。
「こんにちは、何かトラブルでも起きましたか?」
「あはは……、分かっちゃう? うちの受付嬢とガンスミスの片割れが寝不足と脱水症状で死んでるからお店閉じて来ちゃった」
「……またかぁ。分かりました。今度デイビッドがオレの名を口にしながらディープなキスをしてくるゲロ甘なセックスBDを撮って生モノで渡しておきます」
「底無し沼に蹴り落とすのはやめてあげて?」
「……万が一、オレに何かあった時の保険が居てくれると助かるかなぁって」
「だからと言って腹黒な闇の重そうなのもやめて? もうそんな事言っちゃ駄目よ。こう言うのは病は気からって言うのでしょう?」
「……そうですね」
オレは誰かを最後まで信じ切れるタイプでは無いので、クローン体である事実は見えない爆弾に感じてしまうのだ。
頭の片隅に置かれているサブカルチャーでクローン体って大概致命的な欠陥あったりするよね、と言う嫌な予感のせいでもある。
……最悪デラマンに記憶痕跡化されそうだけどなぁ。
まぁ、その時はその時だ、ぶっちゃけ記憶痕跡化したオレはオレでは無いだろうしな。
記憶痕跡化した新しいオレは上手くやってくれるでしょう、ってな。
「うちの子と仲良く……仲良し過ぎるけども良くしてくれたジャグちゃんには感謝してるのよ。だから、末永く見守らせて欲しいの」
「あはは……、善処します」
「……はぁ。まぁいいか。デイビッドが何とかしてくれるだろうしね。あの子は?」
「洗い物から転じてお風呂掃除してくれてるみたいです。家事も分担してくれるのでありがたいですね。御義母様の躾の賜物ですかね?」
「ぁー、その、ね? 疲れたら寝ちゃうわよね……、あはは……」
表は救急隊員でシングルマザー、裏はスカベンジャーの横流し家業だったろうからな、そりゃストレスと疲れが溜まるでしょうよ。
深く根掘りはせずに話題を流し、井戸端会議宜しく近況を御喋りした。
ガンショップのオーナーはオレで、グロリアさんは店長なので、経営の風通しは非常に良い。
ぶっちゃけ金持ちの道楽みたいなものだからな現状。
最初期の資金調達の足場がいつの間にか横に広がって街になってたみたいな感じなので、仮に毎日赤字でも問題無い。
だが、生真面目なグロリアさんはそうは思っていないようで黒字を継続していきたいらしかった。
「まぁ、最近のナイトシティは平和だからねぇ。《ドラゴンテイル》の子たちが護身用とかで買っていくくらいなのよねぇ」
「模擬弾丸の販売も始めてみますか。あくまで暴徒鎮圧を掲げたものを。またはカスタムショップの一面を伸ばすとかですかね。護身用に持ち歩くと言う事はファッションの一面性もある訳ですし、銃をデコレーションする流行りの風を吹かすのも一興かと」
「……良いかも知れないわね。子供の護身用に模擬弾丸はやり過ぎかも知れないけど、実弾よりかはマシだろうしねぇ」
だなんてビジネスの話題やジパング地区の美味しいケーキ屋さんの話だとか、心がポカポカできる話題が続いていく。
あ、そう言えば、デイビッドと秘密基地でこっそり作っている宇宙船の打ち上げがあるのを伝えておかなきゃな。
安全性を考慮して遠隔操作出来る義体を乗せてのフライトだが、打ち上がる様子は見応えがあるだろうしな。
一通り検査項目をクリアしたら皆で月にでも遊びに行こうかな。
願わくば、この陽だまりの様な毎日が続きますように。
宛先の無い祈りを空に飛ばし、平和を噛み締めるのだった。
【Tips】
・新婚生活めいた同居生活
後日談五弾目「マルティネス家の団欒」です。
今作は後日談からギャグパートなので気にしない様に。
お隣さんへのおかずのお裾分けは程々に。
・小動物の様なジャグ……?
デイビッドから見ると身長差から全て小動物的な行動である。
基本的に男が夢見る理想の嫁の姿であり、夜の営みの攻勢は交代制。
先日ヤられた事を次にヤり返すシステムであり、今回はデイビッドがヤる番だった。
V側の描写を入れずにサブロウ戦まで進めた方が良かった?
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流れを切るな、そのまま続けろ派
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足並み揃えないと後でダレるからヨシっ派
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そもそも場面を分けずに書き進めろ派