Hello,Goodbye,Night City‼   作:不落八十八

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七十八話 後日談⑦

 ナイトシティの海側に国際宇宙空港と言う建物があり、時折企業のロゴのついたロケットが飛ばされているのだが、デラマンが天下を取ってからは打ち上がるのは民間企業だけになっていた。

 オレが暇潰しにハックして探ってみれば、どうやらどいつもこいつも自社の衛星軌道ミニステーションを宇宙に建造していたようで、表向きの《Relic》で不老不死擬きになった奴らの楽園を作っていた様だった。

 因みに元天下のアラサカは月にそれを作っていたらしく、サブロウがしれっと色々と暴露したが、その中でも面白い内容があった。

 

「月にオフラインの遺伝子貯蔵庫作ってるとか誰が思うよ。まったく……、アポカリプスものかっつーの」

「あはは……、だけどまぁ良かったじゃん。熱核で滅んだのも保存してあるって話だろ? 再生医療で復活できるかは別だけどさ」

「最悪品種改良の種にするさ。……自分の目で見たかったなぁ」

「いや、反重力ジェネレーター積んでるとは言え、身重のジャグを乗せる訳無いだろ」

 

 後ろからオレの身体を抱き締めたデイビッドは、ふっくらと少し膨らんだ下腹部に優しい手付きで手を置いた。

 そう、今現在オレは新しい生命を授かっていた。

 相手は無論デイビッドだ、デラマンでは無いのは明確である。

 ……挿入する穴が後ろだしな、孕む訳無いんだわ。

 安全日だからってハメ外したのがまずかったかねぇ、流石にマンネリから子宮姦に手を出したのは時期尚早だったか。

 多分あの時ゴム破けてたからなぁ、デイビッドも興奮してたし、なるべくしてなったと言うべきか。

 

「……それもそうだな。ただでさえクローンの身体なんだ、慎重にするのが吉だな」

「だぞ。……にしても、俺が父親かぁ……、上手くやれるかな」

「問題無いさ。グロリアお義母様にちゃんと愛情を注がれていたデイビッドならな」

「……それもそうだな」

 

 物心付く前に父親を失っている事もあり、デイビッドはグロリアさんとの生活しか知らない母子家庭の息子だ。

 なんならこっちは父親に扮した母親である、実に似た者同士だな。

 

「なれるさ、父親に。オレも母親をやるんだ。一連托生、比翼連理に末永く、頑張って親になろう」

「あぁ、そうだな。ジャグが居てくれるしな」

 

 オレを抱き締める力を少し強めてデイビッドは笑った。

 ジパング地区デラマンユニバース本社開発地区にある宇宙船試作七号がカタパルトに進んでいくのを屋上から見ている訳だが、随分とコンパクトになったなぁと感想を漏らす。

 オレとデイビッドの作った宇宙船のエンジンは反重力ジェネレーターであり、大気圏を通過するための噴射剤は組み込まれていない。

 そのため、国際宇宙空港の打ち上げ台の様な大掛かりな設備を必要としない、まさしくブレイクスルー品だ。

 量産されれば一家に一台、家族で月にピクニックだなんて光景が見られる事だろう。

 まぁ、量産はまだしないが。完全なブラックボックス化してからじゃないと悪用されるからな十中八九。

 潜在的な仮想敵であるブルーアイズ一派の動きも怪しいのだが、何処から嗅ぎつけたのか赤ちゃん用品とお祝いのメッセージカードを送って来てんだよなぁ……。

 思わず、正月に年賀状送ってくるショッカーかよ、とつっこんでしまった。

 

「打ち上げはヴィットたちが集まってからだったよな」

「あぁ、一番見栄えする此処を集合場所にしてある。エンジン起動して重力反転するだけだしな」

 

 今回七号に搭乗するのは生体パーツ型の計測用に調整した《デラマンズ》たちだ。

 母体である《メガコン》に居るデラマンの指先であるため人道的な面をクリアし、人が乗っても問題無いかのテストが可能になる訳だ。

 次回のフライトは……出産後だな。流石に身重のまま乗る気はしない。

 カタパルトにより垂直に固定された七号が準備完了した旨が伝達されて来たので待機を命じる。

 今回の打ち上げの純利益はデラマンユニバースに渡るため、打ち上げプロジェクトと言う形で管制室に居るワタシちゃんたちが計器管理をしているのだが、何故か宇宙船のエンジニアである筈のオレに指揮権が渡っている。

 今のオレ、《グラッカー》のリパードクとして派遣みたいな形で出向してるんだが?

 宇宙船には船長が必要だから何も問題は無いだなんて丸め込みされたからな、やれやれだ。

 だなんて若干黄昏れていると屋上の扉が開いてぞろぞろと見物人たちが現れた。

 ヴィンセントとパナム、ジャッキーとミスティ、ジョニーとオルト、メインとドリオ、その他未婚勢のお出ましだ。

 既婚勢の女性陣は傍目から見ても分かるくらいに腹が膨らんでおり、妊娠しているのが見て取れる。

 ナニとは言わんが、着床順はパナム、ミスティ、オルト、ドリオ、オレの順だ。

 

「よぉ、デイビッド。結婚式振りだな。元気にしてる様で何よりだ」

「久しぶり、皆。よく来てくれたな」

「ははは、当たり前だろ。前人未到なすげぇ事するんだ、バッドランズの端でも来るさ」

「アラサカの技術を分捕って趣味道楽に費やして形にするとはなぁ、実にロックだぜ」

「新しい宇宙開拓の始まりだな! 浪漫があるな、やったなデイビッド!」

「流石は元インテリアカデミーボーイ、ってところか? 自慢できるぜ、歴史的偉業の瞬間を見れるってんだからな」

 

 男性陣がデイビッドの背中を叩きながら笑顔で褒め称えるのを、未だに抱き締められたままのオレは暖かく見守っていた。

 ……ほんと、この光景が見られただけで泣けて来そうだ。

 エッジランナーズ組が和気藹々と笑っているのを、2077組が馬鹿騒ぎしているのも、オレが掴む事が出来た幸せなIFなのだと痛いくらいに理解している。

 誰一人として欠けなかった未来が此処にある。

 嗚呼、本当に良かったなぁ……。

 だなんて感傷に浸っていたら、抱き締められたままくるりと持ち上げられて反対側を向けられた。

 そして、ぽっこりと膨らんだ下腹部を見て、全員がポカンとしていた。

 

「……ん? オレ妊娠したの言って無かったっけ?」

 

 だなんて事を口にしたら頷かれた。

 あっれぇー、言って……無かったな。

 最近になって妊娠しているのが判明したからなぁ。

 おめでた報告は聞いてたが、確かに伝えてはなかったな。

 実際、数ヶ月にたまにしか集まらないしな。

 これで既婚勢全員が妊娠してる訳か。

 つまり、同世代の幼馴染として過ごす訳だ。

 それはまた……、豪華な世代だな。

 十年、二十年後も平和になるように、まだまだ頑張らないとなぁ。

 

「まぁ、そう言う事だから宜しく頼むよ。多分オレの子が最後に産まれるだろうしな。あ、出産はデラマン系列にしておいてくれ、必要経費の諸々はおまけしとくからさ。その代わり、うちの子と宜しくしてやってくれ」

 

 だなんて未来の自分を信じられないのでそんな事を口にしてしまい、あ、と自重のために口を閉じた。

 デイビッドに杞憂禁止令を出されていたのになぁ。

 罰則のお叱り代わりにぎゅーっと熱い抱擁をされてしまったので甘んじて受け止めておく。

 いや、だって、お前らオレが介入してなきゃ死んでたじゃん、だなんて言葉はファンとして絶対に吐きたくないので心の奥底に沈めておく。

 オレの杞憂癖の原因は確定的にそれであるのは言うまでもなく、数年もお前らの生存を願い続けて走り駆け抜けたんだからもはや職業柄みたいな癖なんだよ、勘弁してくれ。

 自分の消滅も織り込み済みで、実際割と死に掛けたしなぁ。

 ぶっちゃけ、こうして生きているのも奇跡的なもんだしなぁ、科学的に証明できんし……。

 

「はぁ、また沈んじまった。ジャグ、この身体になってから杞憂からの自己嫌悪で負のスパイラルに陥り易くなってんだよ」

「……多分、本格的に女性として身体が整えられたから感情の動きが女性的になってるんだと思う……」

「と言う事で、そろそろ打ち上げるか。そっちの方が気分が晴れるだろ。万が一落ちたところで人命の心配も無いしな」

「だな……、先に徹底しておけば憂い無しだ、へへへ……」

 

 打ち上げ前に既に疲れ切っているオレへの視線がやや怪しいが、へらへらと笑って誤魔化した。

 結局やってる事が前と変わってねぇじゃねぇか、って視線だなぁ、はぁ。

 デイビッドに再び抱っこされてくるりと反転し、打ち上げを待っている宇宙船七号のスイッチをポケットから取り出す。

 

「んじゃ、行って来ーい」

「かっる……」

 

 カチッと小気味良い音を奏でたスイッチをポケットに仕舞う。

 ぶっちゃけ、これ合図だけで、発射シーケンスは管制室に居るワタシちゃんたちが頑張る感じである。

 今頃良い感じにナニナニオールグリーン、七号発進行けます、みたいな楽しいノリで操作してる筈だ。

 ワタシちゃんそう言う様式美好きだし。

 宇宙船がカタパルトの推進力によって空中へと放り出され、その勢いのまま重力反転により空へ落ちていく。

 ……思った以上に静かな発進だなぁ、もう少し改良した方が良いか?

 実用性と言うか周りへの配慮と言う面では百点満点だが、浪漫があるかと言うと失格レベルだ。

 

「……え、これで終わり?」

「そうだぞ。あのまま宇宙に向かって落ちていくんだ。一応行き先は月の表層にあるアラサカの秘密基地」

「何と言うか……地味だな」

「あっちの方で打ち上げているアレよりも遥かにエコで未来的なんだがな。……まぁ、あれだ。行き過ぎた科学は魔法に見えるって言う感じで一つ」

 

 シュパーンッと大気圏外へと向かって行った七号が小さくなっていき、やがて見えなくなった。

 うーむ、地味だな! 

 管制室の反応を見るに何も問題は無いようだが、地球の引力をぶっちぎった時の負荷がやはり高いらしかった。

 許容範囲内であるが、宇宙旅行と称して幾つも星を経由したらメンテナンスは必須らしい。

 まぁ、こればっかりはどうしようもないか。

 まだまだ始めたばかりだしな、宇宙世紀宜しくコロニーを建造している訳でも無いので、今はそれでいい。

 

「……ふふふ、夢が一つ叶ってしまったな。次はどんな夢を見ようか」

 

 数百年後の宇宙世紀を夢見て作り上げた玩具が上手く飛んだのを見て思わず笑みが浮かぶ。

 結局のところ、オレたちが作ったのはそう言うことがしたいだけの趣味の産物だ。

 これを使って新しいエアリアル技術を革新したい訳でも、宇宙征服を望んでいる訳でもない。

 別に宇宙コロニーが作りたかった訳じゃない、名誉や名声を得たいがために作った訳じゃない。

 あれは、オレとデイビッドの作った単なる飛ぶ秘密基地だ。

 子供が勝手に場所を見つけて、勝手に物を集めて、それっぽく仕上げた自分たちの小さな城に過ぎない。

 だから、次に見る夢はもっと浪漫があって、楽しいものを作ろう。

 願わくば、お腹の子が気に入るようなとっておきを残せるように。

 

「デイビッド」

「ん? なんだ、ジャグ」

「……幸せだよ」

「……俺もさ」

 

 皆が見ていると言うのにデイビッドはオレをしっかりと抱き締めて頬にキスを落した。

 あぁ、こんな未来になるとは露とも思っていなかったが、まぁ、これは……良い物だな。

 オレたちの紡いだ物語は続いていく、今までも、これからも、ずっと。

 嗚呼、今のオレはとっても……幸せ者だ。




【Tips】


・あとがき
エッジランナーズから2077まで駆け抜けて、蛇足の様な後日談も書き終えて、これにてこの作品に完結の看板を掛けさせていただきます。

燃え尽き症候群めいてしまい、最後のこの話が難産でしたが、産まれて初めての完結作品にピリオドを打てて良かったです。

この作品がこうして完結できたのも、一話ごとに感想をくださった方々のお陰です。
サイバーパンク2077小説が少ない事もあり、マイナー分類であるこの作品を盛り上げてくれました方々には感謝の言葉しかありません。
結局のところ、作者の書きたい物を書いただけの作品ですが、有難い評価なども頂き、大変楽しく書く事ができました。

主要キャラの生存と言う目標を完遂した事もあってやりたかった事は一部除いて書く事ができたので、大変満足しております。
本編+DLCのコンプリートエディションが発売されるそうですし、もっとサイパン人口が増えてくれると良いなーと思いつつ、一旦筆を置かせていただきます。

では、また会いましょう、この夢の街で。

V側の描写を入れずにサブロウ戦まで進めた方が良かった?

  • 流れを切るな、そのまま続けろ派
  • 足並み揃えないと後でダレるからヨシっ派
  • そもそも場面を分けずに書き進めろ派
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