Hello,Goodbye,Night City‼   作:不落八十八

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八話

「でよぉー、旧式のデバイスの外見にして貰ったこれで授業受けた時のあいつらの顔、くっそ笑えたぜ。あからさまに蔑んでたのに、処理機能の速さがダンチで置いてかれてて必死になって追いつこうとすんの! いやぁー、あの笑える姿、ジャグラにも見せたかったぜ!」

 

 だなんて、すっげぇ良い顔でオレに笑い掛けてくれているデイビッドに苦笑いを返しながら、我ながら見事な原作ブレイクを果たした事に戦々恐々としていた。

 成程な、デイビッドをタワーの前で拾った日がドクにデバイスを持ち込んだ日だった訳だ。

 んで、デバイスの不良で他のデバイスも一緒にクラッシュする、あの運命の日をもぶち壊した訳だな。

 デイビッドのやらかしによりアカデミーに呼び出された母親グロリアとのドライブも当然無かった。

 故に、アニマルズのコーポ車襲撃事件に巻き込まれる事無く終わったと言う訳だ。

 んー……、やっべ、マジでどうしよう。

 グロリアは救急隊員でありながら死体などからサイバーウェアを剥ぎ取る言わば隠れスカベンジャーであり、前日にサイバーサイコであるジェームズ・ノリスから軍用試験モデルのサンデヴィスタンを引っぺがした。

 そして、それはデイビッドが加入するチームリーダーであるメインの所に渡る……予定だった。

 先の事件でグロリアはトラウマチームによって運ばれる事無く、原作でも屈指の糞病院である病院に運ばれてしまう訳だ。

 原作でその病院の奴から聞ける話だが、病人を連れ込めば連れ込むだけ節税になる仕組みがあるらしく、トラウマ保険に入れなかった奴らは企業の点数稼ぎに使われて消費されていく運命にある訳だ、ほんと糞だなこの街。

 で、碌に治療もされずにナニカされて殺されたであろうグロリアの入院費を稼ぐために家を粗探しして、彼女の持ち物に隠されていた軍用試験モデルサンデヴィスタンを見つけてしまう訳だ。

 んで、アカデミーでテックを用いた虐めを受けたデイビッドがドクにサンデヴィスタンを持ち込んで……、と言うのが本来の進みだ。

 

「へぇ、なら見てみるか? このデバイスは文字通りミリテクの特殊部隊にも使われているテックだからな、ばっちりと残ってる筈だぜ」

「本当か! なら、見てみようぜ! へへっ、カツオたちのあの形相が形に残ってるって知ったらどんな顔するんだろうな」

 

 デバイスの一件を解決した事によりグロリアの死を回避した事で、これからの未来は未知数だ。

 いやまぁ、オレも勘違いしていたのだ。

 Vがナイトシティでソロの傭兵となり伝説を成す原作の時間軸から一年前にデイビッドが伝説になる。

 つまりはアラサカタワーでアダム・スマッシャーと人外バトルを繰り広げて死ぬ訳なのだが、この時点が原作の一年前、と言う事だ。

 つまり、今の時期は丁度エッジランナーズ本編の時間軸であり、これから一年後にデイビッドが派手に散る、予定だった訳だな、いやー、マジでやらかした。

 でもまぁ、健全な状態でエッジランナーと成って貰う未来もまた、良いのかもしれない。

 ぶっちゃけ、オレが欲しいのは目の前のデイビッドであって、これから軍用試験モデルのサンデヴィスタンが無事に渡って装着して廃人になるであろうメインでは無い。

 軍用試験モデルのアラサカ社製のテックは本当に暴れ馬だ。

 適合の可能性だなんて1%あるかどうかだし、オレのこれのように外付けにできるテックならまだしも、脊髄に入り乱れる神経にぶっ刺すサンデヴィスタンだなんて代物なら目も当てれない結果が目に見える。

 だってよ、三十秒間5%の知覚で動けて、一分でクールダウンが終わる化け物仕様だぞ。

 原作でもチアンTサンデヴィスタンmk5ワープダンサーが、八秒間10%知覚でクールダウンが三十秒だぞ。

 そんな化け物性能のサンデヴィスタンを連続稼働できるデイビッドがどれだけの特別かを分からない奴はいない。

 メインが付けた所で初回で廃人と化すに違いない、ははっ、翌日のニュースが決まったな。

 さて、どーしたもんかな。

 本来では、メインのチームに居るルーシーと出会い、サイバーパンクな先達たちと仲良くやって伝説になるってのが筋書きなのだが……。

 今のデイビッドにはどん底から這い上がるためのハングリー精神なんてありやしないし、同年代の子供を伸したのを無邪気に喜ぶような十六の子供でしかない。

 ……いや、待てよ? 考え方の違いじゃないか?

 よーするに、こいつを今からサイバーパンク化させりゃ良い訳で、そのやり方も道筋もオレが自由に動かせる訳だ。

 ぶっちゃけ、将来的にアラサカに入ってもVが潰すので入らない方がマシまである。

 ははっ、インサイダー取引も真っ青な株価の急転直下だったらしいからな、ざまぁみせらせアラサカがよ。

 

「そうそう、この形相! 青筋立てて必死こいて追って来てるんだぜ、笑っちゃうよな!」

「うっわ、顔真っ赤になって必死だな、こいつに掲示板教えてやったらおもしれーことになりそう」

 

 と言うかだ、別に軍用試験モデルのサンデヴィスタンを付けなくても良いんだよな、デイビッド。

 ぶっちゃけ反応20くらいはあるんじゃなかろうか、そうなると……欲しいなぁ、ワープダンサー。

 何処で売ってるんだっけか、あぁ、レジェンドアーム系が揃ってるダウンタウンのリパーのとこか。

 明らかにサンデヴィスタンmk4なんて物を売って無さそうなフィンですら原作通りに持ってたからな。

 何かしらの都合の良い何かで可能性が収束して販売しているんだろうな、此方としては非常に都合の良い。

 連続使用を考えるとレジェンダリー品質のヒートシンクを三積みして、バイオコンダクターも付けておくのが吉か。

 一度手に入れているからレシピもあるのでオレの腕前なら当たり前に作れる。

 レジェンダリー品質、つまりは最高峰の品質のバイオコンダクターはサイバーウェアのクールダウンを30%減らしてくれるとんでもテックだ。

 ワープダンサーのクールダウンが三十秒、レジェンダリヒートシンクが一つ四秒減なので三積み十八秒、そっからバイオコンダクターで30%減で、5.4秒マイナスされて十二秒コンマ六って具合だが原作表記だと十二秒だ。

 ……ただまぁ、これだと軍用試験モデルを取り付けた相手とだと負けるんだよなぁ。

 5%だけ知覚の差異がある訳だし、そこらはもう人外バトルな訳だが。

 多分だが、あの時のアダム・スマッシャーって全身軍用試験モデルの正式版っぽいんだよな。

 恐らく、今巷にばら撒かれている軍用試験モデルってのは、規格外のアダム以外の人物であったらどうなるかをデータ収集するためのお遊びなのだろう。

 あくまで全てのトップを行くテックで埋めたアダムのためであり、それをどれくらいデチューンしたら良いかの具合を知りたかったとかそういう理由だろう、とテッキー目線で見えてくる事実に舌打ちが隠せない。

 

「なぁ、デイビッド、ちょいと聞きたいんだけど」

「ん? なんだジャグラ」

「お前、本当にサイバーパンクになりたいか?」

 

 結局のところ、そこが全てだ。

 流石にそれを望まない奴にパトロンとして施しても先が無いのは一目瞭然の事実だ。

 だが、欠片でも、たった一握りでも掴もうとする気概があるのなら、それを信じても良いと言うのが心情だ。

 何せ、こいつはデイビッド・マルティネス。エッジを突っ走った別世界の伝説の卵なのだから。

 ……昨日はそれを突かれて戸惑ったが、結局のところ、オレがこいつを信じるのはそれが理由だ。

 

「なりたい、って言ったら?」

「オレがパトロンになってやる。お前専属のリパーになって、フィクサーとの中継役になって、サイバーパンク活動の全てを支えてやる」

「……は?」

「おいおい、変な顔してるんじゃねぇよ、レジェンドキッズ。お前はオレが見抜いた才能の持ち主だ。デイビッド、このデバイスから読み取ったお前の反応能力は人の平均を越えたレジェンド資質だ」

「……俺が?」

「ああ、お前が、だ。オレは、ただのリパードクのまま終わろうだなんて思ってはいない。これから樹立されるであろう伝説を見たい。どうだ、それに噛んでみねぇかデイビッド。そこらの伝説を越えた、生きる伝説に成ってみねぇか?」

 

 ナニをしゃぶって生き残ったかは知らないローグだなんてめじゃねぇ、歴としたレジェンドを見たい。

 あの糞スマッシャーを越えて、ナイトシティの頂点に、アラサカだなんて土台を踏み躙って、本当の伝説を見たい。

 だってよ、このナイトシティに産まれたんだぜ、この、糞汚いのにどうしようもなく輝いて綺麗な街によ。

 語り継がれるだけの墓標めいた伝説の話なんて過去の垂れ流しにして、誰もが認める伝説を見たいじゃねぇか。

 死神なんて怖くない、だなんてマジモンの偉業を成し遂げた原作のVの、あの時の高揚感と輝きを。

 そして、何よりも、全てに手を届かせる事のできる環境での最高を目指してみたい。

 デイビッド・マルティネスを生存させ、ジャッキー・ウェルズの悲劇を無くし、ヴァレリーの伝説の隣に立つ。

 そんな、黄金の山の様な光景を見てみたいと思わない奴が居るか?

 あのVの熾烈な生き様をこの目で見てきたプレイヤーとして、捧げてやれる一輪の花なんてこれぐらいだろう。

 父さんと言う鎖を解き放った誰かのせいだぜ、これは。

 オレは、根っからのサイバーパンクな生き物だった、と言う訳だ。

 肉体に恵まれなかったからテッキーの道を駆けたが、それを補ってくれるこいつが居てくれるなら何でもできるだろう。

 

「……わりぃ、考えさせてくれないか」

「ま、そうだよな。悩め悩め、悩んで、答えを出してくれ」

 

 苦い顔でカツオの醜態を見つめるデイビッドの横顔を一瞥する。

 今のデイビッドはただのサイバーパンク志望の若い十六の少年でしかない。

 アムロみたいに必要に駆られての事じゃないし、シモンの様に生き様に憧れた訳でも無い。

 今のオレはただのデイビッドでしかない少年に、悪い道に誘い込ませる悪魔でしかない。

 ま、サブプランは考えておかなくちゃならないので、無理強いはしないが。

 サンデヴィスタンには致命的な弱点があるからな、銃弾は避けれるが近接戦闘は避けれないと言う致命的なのが。

 お互いにサンデヴィスタンを発動させて、どちらが先に相手に当てられるかと言う戦いになる訳で。

 原作でブレードとかのレベル上げにマックスタックを相手した奴なら分かるだろうが、中距離から撃たれた弾丸は避けれても近距離から放たれた一撃はあいつ等は避けられなかった。

 真っ直ぐ飛ぶ銃弾ならワンチャンあるが、線として振るわれた近接戦闘は避けるのが必死であり、尚且つ距離が近ければ近い程その時間は刹那になる。

 で、あれば、オレの持つこのモノワイヤーこそが対サンデヴィスタン戦闘における鬼札である。

 文字通り線が襲い掛かる武器なのだ、避ける場所なんて後ろしか無い上に、同じ速度に居てはそれすらも不可能だ。

 こいつが駄目なら、オレ一人でやるしかない、サブプランBとは大抵そう言うものだ。

 

「さてと、仕事に入るぞデイビッド。今日からは制服に着替えて仕事して貰うからな」

「お、おぅ。どれを着れば良いんだ?」

「NCPDの救急隊員の所から合法チョッパーしてきた衣服だ。気分、上がるだろ?」

 

 アニメ、サイバーパンクエッジランナーズで終始着ていたデイビッドの黄色いウェア。

 母、グロリアの着ていた救急隊員の上着であるが、これは別物の新品だ。

 誰かの使い古しを使わせる程オレの貯蓄は浅くは無いし、何よりも意味が無い。

 誰かの夢を背負い続けて倒れたこいつに、誰かの物を与える程オレは無粋でも無い。

 先程までの辛気臭い顔が吹っ飛んで、めっちゃくちゃ嬉しそうな顔を見ているとただの子供なんだなと思ってしまう。

 

「……あれ、今オレこいつに夢を背負わせようとしてなかったか?」

 

 正気に返れて正解だった。

 あっぶねー、オレがグロリアの代わりとばかりに夢を背負わす存在になり掛けていた。

 まさかと思うが、これが俗に言うところの原作収束と言う奴なのだろうか。

 どれだけ捻じ曲げようとも本来の運命に戻そうとする力が働いている……訳ないか。

 言うなれば、これこそがデイビッドと言う男の本当の良さと言う訳だ。

 こいつになら夢を託しても良い、そんな気にさせる奴と言う話なのだろう。

 ……ま、暫くはただの子供のまま、アカデミーに通う子供のままでも良いのかも知れないな。

 無邪気に親の制服と同じな事を喜ぶ笑顔にオレは絆されるのであった。

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