最強の呪術師〜様々な術式を模倣できる姉と様々な攻撃を防げる弟〜 作:黒谷月咲
「アリア!」
茜がメールで提示された待ち合わせ場所に行くと、そこにはメールの送り主…京都校の加茂アリアがいた。
「茜!迷惑じゃなかった?」
「全然!」
加茂アリアは、茜と同じ“御三家”の一つ、加茂家出身の呪術師である。正室の子である茜とは違い、母親は外人である妾で、当主継承権は低い。…はずなのだが。アリアは加茂家の正室の子の間に生まれなかった相伝持ちであり、その関係で当主継承権は妾の子だとは思えないくらい高いのだ。
「浅香!久しぶり」
「お久しぶりです、アリアちゃん」
アリアとハグをした浅香は、周りを見渡すと首を傾げた。
「ここってハチ公の像がある場所ですよね?なのに像はなければ人もいませんよ?」
「あぁ、そのことね。今回は遊びじゃなくて、呪霊の討伐任務で協力して欲しかったから」
「呪霊絡みでなんか事件が起きてるの?」
茜の言葉にアリアは顔を顰めながら頷く。
「ハチ公の像を中心とする円形の領域が展開されてると思う。ただ、被害者はそれほど…それこそ玉藻前の事件ほど多くないから領域自体は不完全だとは思うんだけどね」
玉藻前の事件。それは東京郊外の住宅街で起きた誘拐事件のことである。元々上層部もただ単なる一般人による犯行だと思って放置、茜と浅香はスケジュールが詰まりすぎて向かえずに泣く泣く手を出さずにいた事案だったのだが、現場である住宅街に住んでいる中学生が解決したのだ。その時茜が驚いて夏休みに見に行ったのだが、その中学生は変な前髪だった。ピアスもしていたような気がする。顔も声も朧げなのに、前髪だけやけにはっきりと覚えている。つまり、それくらい変だったのだ。
そしてその後の茜の調査で特急呪霊“玉藻前”の犯行だったと判明、上層部に報告は上げずに茜は浅香とアリアにだけ話していたのだった。
「じゃあ…領域破壊する?」
「まぁ、それが一番手っ取り早いよね。ただ…領域に取り込まれた人達がどうなるか…」
アリアが悩ましげな表情を浮かべるが、茜はバッサリと切り捨てた。
「玉藻前の事件だって人数は十数人でしょ?これから何万人の命が危険に晒されるより、数人の命を切り捨てたほうがよっぽどいいわ」
茜の言葉に浅香はやれやれと言ったように肩をすくめた。
「茜ちゃんってそういうところありますよね。なんというか、冷酷というか…。いや、基本的には温厚で人を助けるんですけど。たまに数人の命よりも何万人の命を取るから…」
「おかしくないわよ。どっちもできるならまだしも、呪霊によるものなのか、呪詛師によるものなのかすらわからない。そんな状況でわざわざ危険な選択をするほど私は…この世界は甘くない」
アリアはふふふ、と苦笑するとバックから血液パックのようなものを取り出した。
「なにそれ?」
「見たまんまよ。血液パック。私の術式、“赤血操術”でしょ?貧血で倒れるのはごめんだね」
血液パックをリボルバーのような銃に接続する。
「なんか…見てない間にアリアの赤血操術が進化してる…」
「そう…ですね。まさか銃に接続するとは…」
茜はしばらく呆然としていたが、すぐに切り替えてキリッと表情を切り替える。
「使う必要なさそうだけどね」
「まさか…」
「そう、そのまさか。二人とも、私に捕まってなよ?」
茜の声でアリアと浅香がそれぞれ茜の肩を持った。
「行くよ。“森羅万象”」
茜の詠唱と共に、辺りの景色が変わった。
大山浅香について:どんな結末がいいでしょうか?
-
呪詛師に堕ちる①処刑エンド
-
呪詛師に堕ちる②光堕ちエンド
-
任務中に死亡