この小説の有馬かなはゴリラではありません。
アニメや原作通りのスラリとした美少女です。
鏑木プロデューサーの仕事を受けた本当の理由は苺プロの印象を悪くしない為だ。
私が仕事を断れば苺プロの評判が悪くなり、それがB小町の仕事に悪影響を与え、つまりアイの仕事に悪影響を与える可能性がある。
それは許せない、私が原因でアイにに余計な苦難を与えては成らない、それに私の芸能界での立場はとっくに終わっている。
今更仕事を選べる立場では無い。例え死体の役だろうと通行人Aの役だろうと私は喜んで受けるつもりだった。
多分今回の仕事の件は、新しくアイドルとして活動を開始した私に対して、芸能界への恭順の意思を問うことが主な狙いだ。
今回の鏑木プロデューサーの仕事において私が果たすべき一番重要な役割りは、彼ら芸能界の人間を怒らせないことだ。
私は出来るだけ自然にごく普通に振る舞わなければならない。
もちろん礼儀正しく恭順の意を以て。
仕事の内容に関しては全く期待して無かったけど意外にまともなものだった。
吉祥寺頼子原作『今日は甘口で』の実写化、私はそのヒロイン役。えっ?まともな役過ぎない。なんか役者の仕事っぽいんですけど?
私がまともな役者として使って貰える?
あり得ない。
私のように『協調性』が無くて、『我が儘』で『自分勝手』で演技が上手い以外に何の取り得もない『使えない』役者が、まともな役者として、扱って貰えるわけが無い。
もしかして今回私は撮影中の事故で死ぬのかも知れない。
それが役者として干されたのにも関わらず、アイドルなんかをやり始めた私に対する罰なのかも知れない。
仮にそうだとしても、私にはこの仕事を断る選択肢は無い。
それでも良い。
少なくとも、ここ数年間、アイと一緒にインディーズアイドルとして活動をしてきた時間は楽しかった。
ネットで有馬かながアイドルをやっているらしいという噂が広まり始めた時は生きた心地がしなかったけど、それでも私が無事に生きてこれたのは、裏側で斎藤壱護社長の並々ならぬ努力があったのだろう。
社長には感謝しかない。
最初社長にアイドルになるように誘われた時に、私は誠意を込めて、私をアイドルグループに加えることはデメリットしかないことを説明した。
その全てを訊いたうえで社長は言った。『君に会わせたいアイドル候補がいる。彼女と会ってから答えをじっくり考えても遅くはないだろう。
君の出した答えが何であれ私は心から歓迎する』と。
そして私はアイに会った。
後悔はしていない。
例え後千回同じ選択を与えられたとしても、その先に千一回目の死が待っていたとしても、私の答えは同じだ。
アイと共に生きる。
とはいえ私は自分の死に酔う趣味はない、案外ここ数年間の間に芸能界の体質が変わって、普通に私のような役者が、役者の仕事ができる体制が出来たのかも知れない。
最近は某大手男性アイドルグループの元タレントがセクハラ被害を訴えたニュースが大きく取上げられるようになった。
女優さんが性的関係を迫られたことを、訴えたニュース等を見たことがある。
これは一昔前の芸能界では考えられなかったことだ。
原因のひとつにネットの発達により、テレビマスコミがかつてのような情報操作の絶対的な優位を保てなくなったことがあるのだろう。
かつてはマスコミが報道しない事件やインモラルなゴシップは存在しないことと同義だった。
今では一人のタレントがSNSで発した発言が充分国民の共通合意事項に成りうる。
もちろんマスコミは報道しない自由を以て、何も無いふりをすることが出きる。
でもそれが今のマスコミの限界だ。今のマスコミには何もなかったふりは出来ても、何もなかったことにはできない。
そして、何も無かったことにできないマスコミが何もなかったふりをすることは、そのままマスコミの信用の失墜に繋がる。
マスコミにとって信用の失墜は致命的だ、マスコミのスポンサーである企業は、マスコミの広告よりネットの広告のほうが費用対効果が高いと判断したら、容赦なくマスコミを切る。
所詮世の中全ては力の関係だ、そして絶対的な強者が永遠にトップの座につくことはあり得ない。
諸行無常、全ては移ろい行く。
いつまでも変わらないもの等無い。
この言葉は多くの場合人の心に儚さや悲しみをもたらす。だけど時には慰めと希望をもたらす。
☆☆☆
自分が芸能界のメインストリートから遠ざかっていた約10年の間に、芸能界も変わったのかも知れない。
あるいは何も変わらないのかも知れない。
少なくとも私は変わった。
星野アイに影響されて空手を始めて3年、今では煉瓦三枚を叩き割り、ビール瓶の首を手刀で切り飛ばすことが出きるようになった。
素人相手にそうそう遅れをとるとは思えない。
私はもうかつての無力で何もできない幼女ではない。
週3回30㎏のタンベルと、120㎏のバーベルとマシーンを使って筋トレをやってる、ちなみにピエよんとはジム仲間だ。
私はもう無力な幼女ではない。ビッグスリートータル400㎏。
打撃、間接、投げ技、急所攻撃、棒術、投的術。一通り覚えた。
私はもう何もできない無力な幼女ではない。色々できる。
………多分、これであってる。
財布の他にスマホとメモ帳ボールペン、ボイスレコーダー、服等に仕込んだ小型監視カメラ、護身用のスタンガンはいつも持ち歩いている。
これらは私達B小町の7つ道具だ。
ちなみにボイスレコーダー以下は全て社長の発案。
これなら私の死も無駄死ににはならない、必ず社長が私の敵をとってくれる。
……いや、別に死ぬと決まったわけではないんだけど、ただ役者としてドラマに出るだけなんだけど、何でヒロイン役貰って悲壮感に満ち満ちた決意してるのだろう私は?
うちのメンバーの不知火フリルなんて、普通に月9で主演やってるけど何の問題もなくて平然とした顔してるのに……何故私はこんなにビクビクしているんだろう……
あの子の性格からして「そういうこと」を要求されたらさらりとかわしながら、相手が絶対に逃げられない証拠を用意して、淡々と告訴して、相手を社会的に抹殺して、損害賠償金を億単位で取って、ケロリとした顔してそうだから、まず「そういうこと」は無いだろうし………
やっぱり時代が変わったの?それとも私がいじめられ易いタイプだから?確かに友達はいないけど………
どこで差がついた?不知火フリルと有馬かな
慢心と油断、二人を分けたものは何?
自販機に貼ってるミネラルウォーターを飲む有馬かなのポップ絵は可愛いですね