ある程度星野アイ   作:パフリン

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アニメ8話のアクアは、黒川あかねに対する複雑な感情を整理する為に、有馬かなを利用してるようにみえますた


可愛いに負ける

 

 

 

☆☆☆

 

 人間の女の子の可愛い度など自然界では最低ランクだと私は思っていた。

 

 コアラ、カピパラ、ラッコ、アザラシ等は言うに及ばず、日常生活で良く見かける犬や猫、鳩やスズメ等も良く見ると物凄く可愛い、狂おしいほどに可愛い、圧倒的に可愛いのだ。

 

 私鷲見ゆきはファッションモデルをやっている。

 

 自慢じゃないけど、私は整った容姿をしている。

 あくまでも相対的に見て、私は美人、美少女、可愛い、綺麗と言われる部類の女だ。

 

 幼い頃は可愛さ故にチヤホヤされたり、虐められたりしたが、やがて私は可愛い自分が平和に生きる方法を色々模索して今日まで生きてきた。

 

 まず可愛い私はいつも堂々としていないといけない。私は強いです。王者です。チャンピオンです。いつでも追われる立場です。

 

 言葉で説明するのは難しいけど、兎に角そういう雰囲気を身に纏っていることが大事。

 

 美少女は弱そうに見られたら負け、毅然とした態度こそが美少女が生きて行く上では、絶対に必要な作法だと小学1年生の時に学んだ。

 

 もちろん弱さを見せた方が自分の利益になると判断したら弱さを見せれば良い。

 

 大事なことはその時の自分の態度や振るまいといったものが周囲の共感を得られるかだ。

 

 その為に私は人が何に共感を覚えるのか何に反感を感じるのかを常に観察して生きてきた。

 

 日常からテレビ、本や雑誌、漫画やアニメ等を通じて私は人間の心理を学んできた。

 

 もちろん美少女である以上、ある一定レベルの学力や運動能力、社会的な常識は必要だ。

 

 なにか突出した才能があるならともかく、生憎容姿以外は凡人の域を出ない私は、勉強も運動も音楽も図画工作も家庭科も、上位10%に入るくらいには努力をしてきた。

 

 もちろん私の唯一の才能である可愛いに関しては食事から運動、ファッションや振るまい、表情の作り方など、できる努力は全てしてきた。

 

 その上で人間関係を円滑にする為に、休みの日は市立図書館に通いつめ、心理学の本や、人間関係をよくするマニュアル本を読みあさり、少しずつ取り込んでいった。

 

 少しずつ、少しずつ、私は人に好かれる振るまい、や態度、人に好かれる表情、人に好かれる話し方、人に好かれる声の出し方を取り込んでいった。 

 

 こうやって私は今の自分を作ってきた。完璧な美少女の在り方を身に着けてきた。

 

 そして私は誰もが憧れるカリスマファッションモデル、鷲見ゆきになった。

 

 

 

☆☆☆ 

 

 誰もが私を可愛いと褒め称える。私はそれに対して計算された表情で、計算された声で、計算された言葉で、計算された身振りで応える。

 

 私の計算はいつも正解を弾き出してきた。

 

 

─────

 

 だから誰よりも私自身が知っている、私は本当に可愛いんじゃないって。

 

 私の可愛さ等、そのあたりで見かける一匹の犬にも遠く及ばないって。

 

 

 わざわざ動物園に行ってコアラやパンダを見るまでもない。

 

 日常で見かけるスズメや鳩ですら、私なんかより遥かに可愛い。完璧に可愛い。欠点が無い。限りなく美しい。

 

 自然界は可愛いに充ちている。私鷲見ゆきが可愛いというのは幻想に過ぎない。

 

 人間の女の子は全然可愛くない。醜い。人間の女の子は例外なく醜い。

 

 

 

☆☆☆

 

 すみません、私鷲見ゆきが間違ってました黒川あかねさん、貴女は可愛いです、コアラやラッコと比べても全く劣らず可愛いです。そして限りなく美しいです。醜いのは私鷲見ゆきの歪んだ心でした、さーせん、さーせん。

 

 悔しいけど認めないわけにはいかない、黒川あかねの可愛さは本物だ。

私ではあんな完璧なプクーッは出来ない、あの黒川あかねのプクーッが可愛いのは黒川あかねの純粋な心があってこそのものだ。

 

 私は黒川あかねの天然プクーッの可愛さに腰を抜かしそうになりながらも、毎日50回のスクワットと50回のオープンスクワットと縄飛び300回で鍛えた下半身の力で何とか耐えた。

 

 

 だが

 

 

  そこで星野アイが動いた

 

 

 大したことをしたわけではない、彼女はただプク見する黒川あかねを前にして、顔を少しだけ俯かせて、悪戯を成功させた子供のように微かに笑ったのだ。ただそれだけで、それまで黒川あかねの可愛さに圧倒されていた私の目は一瞬で星野アイに釘付けになる。

 

 

 黒川あかねとアイ、あの二人が日常的な会話をしているだけの、この今ガチというバラエティ番組の収録現場は─

 

 

 今や劇場と化していた

 

 

 キャストもスタッフも、カメラマンさえも

 

 黒川あかねとアイという二人の才能に心を奪われていた

 

 ただ普通に話してるだけの黒川あかねとアイ、その二人から誰も視線をそらせない

 

 誰もが心を奪われている

 

 これが役者というものなの?これが俳優というものなの?

 

 私は、私達は、今何を見せられているの?

 

 私は、私達は、今何に魅せられているの?

 

 

 ああ、この二人は本物のスターなんだ、私は今本物を見せられている

 

 私は今本物に魅せられている

 

 私は今本当に魅せられている

 

 そしてアイは小さく肩を竦めると、一瞬だけ少し舌を出して直ぐに引っ込めた

 

 ムギュ、私の中で何かがペチャンコになった、何故か久しぶりに有馬かながヒロイン役をやった『今日アマ』を観たくなった

 

 

 

 

 『おおおお………』

 

 撮影スタッフ達から感嘆とも驚愕ともとれる声が洩れる。

 

 「リアルテヘペロ…リアルテヘペロ…」

 

 「可愛い…可愛い…」

 

 「ありがとう、ありがとう」

 

 「尊い、尊い…」

 

 そんな声が随所から洩れ聞こえて来る。

 

 

 そして私は、二人の本物の可愛いに魅せられた私は──

 

 

 

 

 

──気がつくとちょっとオシッコを漏らしていた。

 

 その時になって気づいた、別のカメラがちゃんと私達他のキャストもガッチリ写し出していたことに。

 

 私の視線に気づいたカメラマンが私に親指を立てて見せてニヤリと笑いながら頷いている。

 

 そのすぐ後ろで、今日に限って現場に来ていた私のマネージャーが、カメラ片手に私に向かって笑いかけながら手を振っている。

 

 

 「なにこの地獄……」

 

 

 私はブツブツと何かを呟きながら、コッソリコッソリと現場を後にしてトイレに向かう。

 

 大丈夫、大丈夫、誰にも気づかれて無い。

 

 あっ、バカ変なフラグ立てるな!

 

 

 

 何故か一瞬私を見ているマリンと目が合い、直ぐにお互いに目を剃らした。

 

 あれはなにかをさっしたかおだ。

 

 

 

 もう無理!これ以上この現場にいることは私の精神を破壊する。

 

 それ以前にモデル生命が破壊される危険が危ない。

 

 私は真っ青な顔をして、マネージャーに体調不良を理由に今ガチを降りる意向を伝えた。

 

 実際気力を使い果たした私は、その後気を失い病院に運ばれた。

 

 医者は極度の精神的な緊張が原因の心身不調だと診断した。

 

 うん、だいたい合ってる。

 

 

 その後、自宅に戻った私は、通販で、有馬かなのグッズを買いあさり、ミネラルウォーターを飲む有馬かなのポスターを部屋に貼り、不思議な共感を有馬かなに感じながら、有馬かながヒロイン役を演じた、『今日は甘口で』を繰り返し観たのだった。ムギュ




ムギュ
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