ある程度星野アイ   作:パフリン

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誰にでも泣きたい時がある


アイドルの心得

「常に見られていることを意識しなさい、それが人を美しくするのです。」

 

これはリアルでもよく言われるな、まぁリアルの俺は男だから自分は関係無いと思っていつも軽く聞き流してるけどな。

 

「日常即アイドル活動!アイドルは家を一歩でたらアイドル!この気持ちを常に忘れないように」

 

そこは普通に帽子とサングラスで良くね?

後は少し大きめサイズの服装で体型隠せば完璧じゃん。

俺が思うにキラキラしたアイドル衣装ってのは、その衣装とアイドルを強く関連付けた印象をファンに与えて、私服のアイドルがアイドルだと気づかれ難いようにしてる効果があると思うんだけどね。

 アイドルの時はできるだけ派手に目立つように、プライベートの時はできるだけ地味に目立たないように。

これアイドルの基礎基本じゃね?

 

「特に、気をつけなければいけないのは」

 

そう言いながら先生は一瞬俺を見る。

いや、俺は真面目に話を聞いてますよ?少なくとも先生の話を真面目に聞いてる完璧なアイドルの卵を演じてるはず……

 

 「自分のことを精神的に大人で理知的で頭が良いと思ってる、お馬鹿なアイドルにありがちなのですが」

 

セーフ、これは俺のことじゃないな、俺は俺の知的な側面はなるだけ普段から見せないようにしてるからな。

 

チラッと一瞬だけ誰がターゲットなのか確認する為に周囲を見渡すと、メンバー全員が俺を見ていた。怖い。

 

「ハァッ」っと微かに苛立ちを押さえるようなタメ息が聞こえる。

 

「良いですか、これはアイさんだけではなく、貴方達全員に言ってるんですよ!」

 

えっ?どうして俺に言ってるの何で?

 

「そういう浅はかな考えのアイドルほど、スッピンで地味な服装で体型を隠して、帽子をかぶってサングラスでも掛ければ、普段の派手なアイドル衣装とのギャップで、誰にも気づかれ無いと 考えがちなものです。それ一番目立ちますからね!気をつけなさい」

 

「いや、アイさんじゃないんだから、誰もそんなお子様じみたこと考えませんよ!」

 

メンバーの誰かが言うと他のメンバーが一斉に笑う。

 

ぐぬぬ………

 

 俺に出来ることは、ひたすら恥辱に耐えて、うつむき、ひたすら時をやり過ごすことだけだ。

自分でも顔が真赤に染まっているのが分かる。

 だが俺は無敵のアイドル星野アイ!せめてもの矜持に涙だけは流すまい!負けてたまるか

 

「可愛い」「プクーッ」「子どもみたい」「チュッ!」 また一斉に巻き起こる笑い。

 

まけるな俺!頑張れ俺!人類の未来は俺にかかっている!俺は金輪際現れない完璧で究極の………

 

「フグウ…フグウ……」

とりあえず涙を決壊させないことには失敗したが、日頃鍛えた精神力により、ギャン泣き一歩手前で耐えてみせる!

 

「ウウウ……フウゥゥ…」

 

「がんばれー」

「泣くな泣くな」

「いやもう涙ポロポロ溢してんじゃん」

「シッ!」

「ウイィィッイッイッイッ……」

 

「5秒前、4、3、2、1、」

 

パンッ!

 

「はい、今日は社長から大切な話があります。顔をあげられる人は顔を上げて、社長の話を聞いてください」

 

助かった、先生のとっさの機転で俺はギャン泣きを回避出来て、最強で無敵のアイドル星野アイのイメージをギリギリで守れた。ふ~~っ危なかったぜ。

まぁ、これが大人の余裕ってやつだ、先生にはいつか何かの形でお礼をしないとな、大事、感謝の気持ち。

 

「よし、メンバー全員揃ってるな、今日は大切な話がある」

 

おれが大人のエチケットとして涙の跡を隠すように俯いていると社長が入って来た。

 

メンバー全員に期待と緊張の入り雑じった独特の雰囲気が高まる。

そのどさくさに紛れて、俺がごく自然に然り気無く服の袖で涙の跡を拭うと、隣からハンカチが差し出された。

 

いや、ハンカチ使うと泣いてるのバレバレで逆に辛いんだが。

 

「アリガト…」

 

しかし人の好意を無下にするほど俺はお子様ではない、一言礼を述べてハンカチを使わせて貰う、ハンカチは後日洗って返そう、流石に自分の涙が染み込んだハンカチを返すのは人として……

 

「あっ、そのハンカチもう要らないやつだから、使ったら捨てちゃっていいから」

 

……そこまで気を使ってくれるとはなんて優しい子だろう、嬉しくてまた涙が溢れた……大体300㏄くらい……




星野アイが目立たないのは無理ですね
帽子にサングラス大きめサイズの服とか悪目立ちすぎます
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