ある程度星野アイ   作:パフリン

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私も星野アイみたいに人の名前を覚えるのが苦手です


情熱

 

 

 

☆☆☆

 

 フフ、お兄ちゃん、ま~たアイのこと考えてるでしょ?

 

 うん、考えてる 

 

 それってどっちの星野アイ?

 

 どっちもこっちもないよ、私の中で結論は出てる、アイは、間違いなく星野アイ本人だって

 

 だよね!私は今すごく幸せだよ、だってアイと一緒にB小町でアイドルやってるんだよ?まるで夢を見てるみたい!

 

 夢ね、夢なら覚めないで欲しいかな…私も母さん…ううん、アイと一緒に居られる今の現実が一番幸せだから

 

 だね!きっとアイは一番星の生まれかわりだよ!

 

 ──そうだね─誰も星野アイを覚えていない─B小町のことだって─でも今─誰もが星野アイを知っている─私は─星野アイがいるなら─それでいい──私は毎日が夢のように幸せだ──

 

 

 

☆☆☆

 

 「はいNGリテイク!ワンモアタイム!ぜんっぜん駄目!あかね!貴方それで劇団ララライの若きエース?今のはヘソが茶を沸かすレベルの演技よ!3歳の有馬かなの方がもっと迫真の演技をしてたわ!もう一回やり直し!今度こそ気合いれて頼むわよ!」

 

 「はい……すいません監督……」ビクビク

 

 「はい、5、4、3……」

 

 俺は今心を鬼にして黒川あかねを追い込んでいた。

 アニメ一期の黒川あかねの、追い詰められた顔でメモを取る可愛さを全人類に見せることは、俺に与えられた天命だ。

 残したい、あかねの焦燥顔。

 

 

 

☆☆☆

 

 「撮影開始一時間前に全員現地集合、四股踏み鉄砲すり足股割りをした後、ランニングからのストレッチ、発声練習、休憩した後に撮影開始と同時に撮影開始、昼食をとった後に編集作業、それが終わるとシナリオ会議及び、ディスカッション、後解散。ずいぶん変わった今ガチですね、この展開は想定内ですか鏑木さん?」

 

 「どうだろね?私は予知能力者じゃないんだから、いちいち星野アイの行動を予測できませんよ」

 

 「私は一言も星野アイの名前なんて出してませんよ?」

 

 「見てれば分かるでしょう、今この現場は星野アイを中心に回っている、いや、この現場に限った話じゃないけどね」

 

 

 

☆☆☆

 

 「今みたいな感じで良いでしょうか?」

 

 メモとペンを手に確認してくる黒川あかね、良い!この自信無さげな追い詰められた表情!実に良い!ディス イズ あかね!実に良い!

 

 そのあかねの芸術的な追い詰められた表情はもちろんマリンが録っている。視聴者はみんな幸せもんだなぁ、こんなに可愛い黒川あかねの追い詰められた表情を楽しめるんだぜ?可愛い黒川あかねには追い詰められた表情をさせろ、とは良く言ったもんだ。

 

 ちなみに今ガチ撮影期間中は役作りの為にあかねのスマホは私が預かっている。

 替わりにあかねには通話機能オンリーの、古いタイプの携帯に発信器を仕込んで渡してある。

 

 後、服の下には最先端科学によって開発された、超薄型軽量防弾坊刃ベストを着て貰っている。これはCIAから苺プロに贈られたもので、バレットM82による12.7mm弾を防ぐらしい、よく分からないけど、きっと凄い性能なんだろうな。

 

 

 

☆☆☆ 

 

 「あかねはね、こんな陽キャラ向けの恋リア系バラエティ番組では輝けるタイプでは無いの、それ分かってる?」

 

 「はい、私は陽キャラ向きのバラエティには向かないタイプです」カキカキ

 

 俺のアドバイスを追い込まれた表情でメモする黒川あかね、その様子はマリンはもちろん、番組のカメラも録っている。

 

 スタッフも全員真剣な目で黒川あかねに見入っている。

 

 スゲーよなぁ、黒川あかねにかかれば、ただの文房具に過ぎないメモ帳とボールペンすら至上の芸術品になるんだぜ?

 

 数百円程度のメモ帳とボールペンを、レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』に匹敵する芸術作品にしてしまう女、黒川あかね。

 こんな人他にいる?あの有馬かなですらこれはできない、ボールペンがメモ帳が、これ程美しく愛らしく尊いものだったなんて……きっと黒川あかねに出会わなければ一生気づかずに過ごしてた……

 

 黒川あかねの魔法にかかったスタッフやキャスト達も、時々自分のボールペンとメモ帳を不思議そうに眺めている。

 鷲見ゆきに至っては何かに目覚めたように目を見開いて、フルフルと首を振りながら涙を流している。いとおしそうに自分のメモ帳とボールペンを撫でながら。あの子も、相当可愛い感度が高い。

 

 私は今、ギリシャ神話のミダースの指の持主を見ている。 

 

 黒川あかねはその手で触れる物を全て黄金に変えてしまう……

 

 

 

☆☆☆

 

 「そんなあかねが今ガチに出演したら、当然他の陽キャラ達の光に呑み込まれて空気になるの、分かる?」 

 

 「……私は空気……」カキカキ

 

 「ネットで今ガチを検索しても、鷲見ゆき可愛い、星野アイ面白いなんてツィートはあっても、黒川あかねに関する書込みはありません、これが現実なのよあかね」

 

 「……うう……ごめんなさい……」カキカキ

 

 残酷な現実に愕然とした顔でメモを取るあかね、目にはうっすら涙が浮かんでいる。視聴者は見た、黒川あかねの涙!

 

 「あなた何の為に今ガチに出てるの!」

 

 突然厳しい声で叱責するように言う俺に、黒川あかねは肩をビクッと震わせる、はい!黒川あかねの肩ビクッ頂きました!どうよこの小動物じみた可愛さ!一見クールそうな見た目とのギャップ!持ってけドロボーッ!

 

 「うう…」

 

 思わず顔を俯かせて嗚咽を漏らすあかね、はい、3番テーブルさん!黒川あかねの俯き肩ヒクヒク嗚咽添えお待たせしましたーーっ!

 

 「……私の許可もなく、勝手に顔を下げては駄目でしょうあかね、顔を上げて」

 

 今度は静かに少し困惑を混ぜた声で言うと、あかねは大人しく顔を上げる。

 唇は健気にキュッと結ばれているが、その両目から流れる涙が彼女の心情を隠せていない。

 

 「……うう、うっ、それは……」

 

 何時の間にか腕を組んで黒川あかねを、見下ろす形で 立っていた俺は、少しだけ顎を動かして話の続きを促す。

 

 「……恋愛を、するためです……」プルプル

 

 「大正解、はい一端休憩!ゆきちゃん休憩中にあかねのメイク治して貰える?マリンは私と画像チェック、ノブユキ君とケンゴ君は二人とも台詞は入った?」

 

 「「入れときました!」」

 

 「じゃあ、休憩明けたら台詞のチェックと演技入れするから私のとこ来て」

 

 「「お願いします!」」

 

 全員に必要な指示を送ると俺は次に必要な仕事にむかった。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 「凄いわね黒川さん、この短期間でどんどん映像演技を身につけている、それも多分自分でも気づかないうちに、やはり彼女は有馬先輩が唯一のライバルと認めるだけの才能の持主なのね」

 

 「あんだけアイに手取り足とり可愛がって貰えたら、私だって短期間で演技上手くなるわよ!」

 

 「でも黒川さんはアイに虐められてると思っているかも?」

 

 「絶対に思ってない!」

 

 「そう?」

 

 「そうよ!カマトトぶってるけど心の中じゃ、ヒャッホーーッ!私がアイの愛を独り占め、私はアイの健気なヒロイン!お~い!有馬かな見てる~~~⁉って思ってるに決ってるじゃない!」

 

 「そういうものかしら?彼女素朴な人柄に見えるけど?」

 

 「そういうものよ!女は誰だって生まれた時から女優なんだから!」ムギユッ




あと自分が書いた小説の内容も翌日には忘れてるので大変です
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