ある程度星野アイ   作:パフリン

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睡眠大切ですね




 

 ☆☆☆

 

 「ふぁっ……眠いんだよね、収録早すぎてさー」

 

 完璧だ、コイツ間違いなく黒川あかねだ、本物だ

 

 「あっもうカメラ回ってる?」

 

 そこに居るのはもう地味で内向的な黒川あかねではなかった

 

 人間の姿をした何かだった

 

 これが私?これが星野アイ?

 

 「てへっ☆」

 

 「ア…あかね?」 

 

 「アイ、どうしたの?幽霊とか見たような顔して」

 

 「いや……」

 

 黒川あかねってこんなに凄かったんだ、知ってるつもりだったけど……全然分かってなかった、私何も黒川あかねのこと分かってなかった──

 

 

 

 そして何よりも星野アイのことを──

 

 

☆☆☆

 

 

 一瞬で持って行った

 

 キャストも

 

 スタッフも

 

 カメラマンですら

 

 視線を向けざるを得ない不思議な引力

 

 まるでアイのようなカリスマ性

 

 それが彼女にもあった

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 星野アイが監督をした黒川あかねを中心に構成された動画は、24時間後に7億4000万RTを達成、黒川あかねのイメージを変革すると同時に、『今ガチ』の人気を決定付けるものとなった。

 

 

 

☆☆☆

 

 俺が黒川あかねの演じた星野アイの演技に圧倒されて、呆然としてると、当の黒川あかねが近づいてきた。

 

 幸い今はいつもの黒川あかねだ、やっぱりいつものあかねの方が落ち着くなぁ、アレはなんか健康に悪い、自分の何もかもが吸い寄せられて、溶けて消えてしまいそうな恐怖すら感じる……

 

 あれが星野アイ……つまり私?……あれ?もしかして私ってもの凄く迷惑な存在?

 

 

 

 まだインディーズアイドルとしてデビューする前に、私は鏡に写った自分の姿に圧倒されて恐怖したことがある、きっと何かの不具合で、周囲の人間達が自分を見ている目線で、自分を見てしまったんだと思う……

 

 

 

 

☆☆☆

 

 「いよいよ撮影も終わりだね?寂しいなぁ」

 

 ああ、いつもの素朴なあかねに凄く心が癒されるのを感じる…俺はこっちの黒川あかねの方が好き、あっちの黒川あかねは怖い、圧倒される、私が消えてしまいそうな恐怖を感じる…

 

 

 

 「アイの言う通りキャラ付けしたら人気もでて……かなり助かったよ、ありがとう」

 

 こんな可愛い子があんな化物……星野アイになるなんて、パンドラの箱を開けちゃったかな、俺が好きなのは黒川あかねであって星野アイではないんだと、今さらながらハッキリと理解した。

 

 あかねが星野アイである私を一生管理してくれたら嬉しいんだけど、多分他の誰かでは無理、化物の面倒をみれるのは化物だけ。

 

 そして私とあかねは女同士、子孫を残さず二人一緒に人の世から去るのが一番良い気がする

 

 そう思ってしまうくらい、私は黒川あかねが演じる星野アイにショックを受けていた、アレはもう見たくない、自分がアレであることを思いだしなくない。

 

 私にはアレが人間だとはどうしても思えなかった

 

 「ううん、どういたしまして、むしろ私の方があかねからいろいろ教えてもらって助かっちゃった、撮影中は厳しくしてごめんなさい」

 

 何でもない日常の会話に心が癒されていく、忘れよう、自分があんな存在であることなんか

 

 

 

 「私の魅力を引き出す為にわざと厳しくしてくれてたんでしょう?分かるよ、ほんの短い間に、どんどん自分の演技の幅が広がっていくのが、毎日実感できたもん、古い私はどんどんアイに壊されて、新しい私がどんどん生まれてくるのが分かるの、毎日楽しかったなぁ、毎日泣いてばかりだったけど……それは決して嫌な涙なんかじゃなかった……」

 

 

 どこかうっとりした顔で幸せそうに話すあかね。こうして見てるとただの可愛い女の子なんだけどなぁ……

 

 「どういたしまして、ところで、私が訊くのも可笑しな話なんだけども、一応今後の勉強の為に教えて欲しいことがあるの」

 

 嬉しそうな笑顔を見せるあかね、綺麗。

 

 「もちろん良いよ、私ばっかりアイにもらってばかりじゃ悪いもん、何でも聞いて」

 

 私は今一番気になっていることを訊いた。

 

 「アイの演技、いや…役作り?まるで夢(悪夢)を…本物(の化物)を見てるみたいだった。あれってどうやってるの?」

 

 俺の質問に、あかねは目をパチクリとさせて俺を見ると、もじもじしながら話し始める。

 

 「いや、そんな大層な物じゃ(本人が目の前にいるんだし)、一応プロファイリンクの本とかは読んだりしてるんだけどね 」

 

 だいたい原作通りか

 

 「あとは普段から、アイのことを一杯調べて自分なりに解釈してるだけ、どんな食べ物が好きだとか、普段どんな音楽を聴いているのかとか、どんな本を読むのかとか、どんな映画やドラマやアニメを見るのかとか、好きな漫画は何かとか、どんな服を着るのかとか、どんな店に行くのかとか、休日はどうやって過ごしているのかとか、平日はどうやって過ごしているのかとか、例えば毎朝起きたら、まず5分間の瞑想。ウォームアップにランニング2㎞、それからストレッチ、四股踏み鉄砲すり足、また割り。

腕立て腹筋背筋スクワット20回3セット。

空手の型を行い、ヨガをやった後瞑想10分。

それから発声練習をしてることとか、週に2回ボイトレしてることとか、週1回劇団シリアスに演技の勉強に行ってることとか、平日は夕方4時から6時まで苺プロで通常レッスンをしていることとか、そのレッスン内容とか、お風呂の時間は30分くらいだとか、下着はいつも清潔で汚れが見当たらないとか、毎晩9時には寝てるとか、どんなパジャマを着てるのかとか、プロレスラーのアントニオ猪木が好きで、彼の言葉をレッスンスタジオで言うのが日課だとか、学力は少し低めだとか、特に親しい友人はいないとか、可愛い動物が好きだとか、3ヶ月に一回は動物園に行くとか、必ずアフリカ象を15分間以上見るとか、恐竜が好きで恐竜展に何度も行ってるとか、月に一回は映画を観るとか、かなちゃんと一緒に劇団ララライの舞台を何度も観にきてくれてるとか、将来の夢は役者に成ることだとか、刑事コロンボが好きだとか、天性の声の持主であることとか、ダンスはプロ顔負けの実力だとか、いつもB小町の七つ道具を身に着けてるとか、いつもSPとドローンによって警護されてることとか、だいたいそんなとこかな?でも、やっぱりアイと一緒に過ごしたこの3ヶ月間がアイを知る上で一番勉強になったよ、ありがとう」

 

 だいたい原作通りか

 

 「それで新しく設定足したりもしたけど」 

 

 「設定、どんな?」

 

 これ原作通りならアイには隠子がいたってあかねが見抜いて、アクアがギョッとするところだけど、俺にはそんな秘密は無いからなぁ

 

 「でも、これを言うとアイが気を悪くするかも知れないし、言わない方がいいかも?」

 

 「絶対怒らないよ、言って、気になって夜しか眠れなく成りそう」

 

 「本当?絶対怒らない?」

 

 あかねはじっと俺の目を覗き込んで言う。身長差のせいで俺があかねを見上げる形になる。

 気がつけば俺は壁とあかねに挟まれる形になっている。

 

 今、初めて俺は少しだけあかねを怖いと感じてる、何故か嫌な予感…… 

 

 「絶対の絶対!」

 

 そんな予感を振り払うように俺は言った。俺は精神的には男だ!

 

 「じゃあ言うね、アイはね、精神的には男の子って感じがするの、よくアニメとかで男の人が女の子になったりする話あるでしょ?いわゆるTSヒロインて言われるキャラなんだけど、もしかしてアイってTSヒロインなの?」

 

 

 

 

☆☆☆

 

 頭がまっ白に成った、今はハッキリと黒川あかねのことが怖かった。

 

 呆然と黒川さんを見上げる私の足は、気がつくと、小刻みに震えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今日は12時間くらい寝ました
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