ある程度星野アイ   作:パフリン

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明日15時にスマホ買いに行きます、スマホを使える自信が全くありません
しばらくはスマホとの戦いが続くでしょう


悲劇のアイドル

 

 

 ☆☆☆

 

 「あの二人付き合ってるんですよね?リアリティショーがきっかけで」

 

 キャピキャピはしゃぐ二人を眺めて、お前ら星野アイの中2設定忘れてないよな?と有馬かなが思っていると、鳴嶋メルトが話しかけてきた。

 

 「表向きはね、実際には愛を知らないアイが愛を知りたくて、愛の真似事をしているだけ、というのが真相だけど」

 

 星野アイは愛を知らない、だから愛を知りたくてアイドルをやってる、嘘でも愛してると言ってれば、いつかそれが本当の愛になるかも知れないという儚い希望を胸に。

 

 同様の理由で星野アイは黒川あかねと嘘の恋をして、全てが嘘である舞台に立つ。

 

 いづれも愛を知らない自分が愛を知る為に、嘘を本当に変える為に、儚い希望と知りながら。

 

 元々黒川あかねが星野アイの可愛い度を下げる為に、考えたキャラ設定だが、これが大いにB小町のメンバーに受けまくった。

 

 このキャラ設定は絶対に一般大衆に受ける!と、星野アイや黒川あかね、B小町のメンバー全員が確信した。

 

 古今東西、一般大衆は悲劇のヒロインが大好きである。

 

 可哀想は可愛いは宇宙の真理なのだ。

 

 星野アイに可哀想フィルターが実装されることにより、一般大衆の星野アイに対する可愛い耐性が上昇するのは間違いない。

 

 よって『星野アイ可愛い問題』は二方面作戦で行くことになった。

 

 一方では本来の意図した通り、星野アイにアイドルらしい、どこか人工的で不自然な可愛いさを演じてもらい、可愛い度を下げる作戦。

 

 星野アイ命名による『ビジネス可愛い作戦』である。

 

 ただ星野アイの場合不自然な可愛いさを演じても、そこから不自然可愛いとか、テクノロジー可愛いとか、お人形さん可愛いという概念が発生して、益々可愛くなっていくだけの可能性がある。

 

 そこで同時進行で立案実行されることになったのが、黒川あかね命名による『可哀想可愛い作戦』である。

 

 やり方は単純明快で、単に黒川あかねの考えた星野アイの設定を、機会ある毎に、人に言い広めていくだけである。

 

 この噂が広まれば星野アイがどんなに可愛かったとしても、一般大衆は星野アイを見て、ああこの子がこんなに可愛いのは愛を知りたいからなんだ、この子はこんなに可愛くなるほど、孤独で痛みを抱えて生きているんだ、となり、つまり星野アイの可愛さは常に悲劇のヒロイン性を帯びるようになり、その悲劇性が結果的に星野アイに対する、可愛い耐性を高めることになるという作戦である。

 

 実はこの作戦の背景には、ベットの上でひたすら泣きながら黒川あかねに許しを請い、なおも許されずに何時間にも渡って黒川あかねに泣かされ続け、逝かされ続ける星野アイがキュン死するほど可愛かったという事実がある。

 

 そこから、あれ?もしかして可哀想なアイも可愛い?

 という発想が生まれたのである。無論黒川あかねを始め、B小町のメンバーに本当に星野アイを虐めたい等という発想は微塵もない。

 

 ただ星野アイの幸せの為なら使って良いものは全て使おう、という発想があるだけである。

 

  

 

 

☆☆☆

 

 「愛を知らない?星野アイさんがですか?」

 

 「そう、あの子はある日気がついたら星野アイになっていたらしいの、壱護社長の記憶とは食い違うんだけど、あの子の最初の記憶は、苺プロのレッスンスタジオで、ダンスレッスンを受けてた時から始まってるらしいの」

 

 「記憶喪失ですか?」

 

 「そう、でも本人は覚えてないけど、近くの小学校に通っていたらしいわ」

 

 「だったら親御さんとかが分かるはずですよね?」

 

 親が居るなら親と会えば、直ぐに親の愛を体験できる筈だ、そうメルトは考えた。

 

 「アイは施設から学校に通っていたらしいの、親は居るらしいけど行方不明、アイは全然親の顔も覚えていないらしいの」

 

 「凄い話ですね、じゃあ苺プロにスカウトされた時のことすら覚えてないってことですか?」

 

 「そうよ、アイがこの世界で記憶している初めて聞いた声は『はい、ワンツーワンツー』だったっていつか本人が私に言ったことがある」

 

 「……不思議な人ですね、星野アイさんて」

 

 「それは一目見れば分かるでしょ?」

 

 「確かに」

 

 こっから有馬かなは黒川あかねが考えた、架空の設定を語ることにした。

 

 「本人は覚えて無いらしいけど、最初にスカウトされた時にアイは言ったらしいわ」

 

 「なんて言ったんですか?」

 

 「こう言ったの、『人を愛した記憶も、愛された記憶も無いんだ、そんな人にアイドルなんて出来ないでしょ、こんな私は、きっとファンを愛せないし、ファンからも愛されないよ』って」

 

 鳴嶋メルトは目を輝かせて食いついてきた。

 

 「なんすかそれ超かっこいい!完全にヒロインじゃないっすか⁉」

 

 「その時に壱護社長から言われた言葉、『皆愛してるって言ってる内に、嘘が本当になるかもしれん』という言葉を聞いて、アイはアイドルになることを決意したのよ、いつか心から『愛してる』と誰かに言いたくて」

 

 「深い!実に深い話っすね!」

 

 「アイ本人はその時の社長との会話も覚えていないみたいだけど、でも彼女自身の口から私は聞いたのよ」

 

 「是非聞かせてください!」

 

 

 「アイはある時、私にこう言ったの『かな、私には愛が分からない、私は全て嘘で出来ているの。私は頭の先から足の爪先まで全部嘘で出来ているの……いつか、私の嘘がばれて、全てのファンを失うとしても、私はその日まで命を削ってでも嘘をつき続けるよ?だって、私には嘘しかないもの、嘘だけが私の唯一才能、嘘だけが私のたったひとつの味方、嘘だけが私の帰る場所だから……だから私は『東京ブレイド』に賭けてるの、全部が嘘で出来た、お芝居の中に、もし嘘じゃ無い何かを見つけることが出来たなら、私は……私が生きていて良い言い訳を見つけられるかも知れないから……』だから彼女は今日も嘘を付き続けるの、嘘の中に愛を探して、いつか自分の嘘が本当の愛に変わることに儚い希望を夢見て、自分の命を削りながら……」

 

 「……うう……星野さんがそんな思いでアイドルをやってたなんて、そんな思いで『東京ブレイド』の舞台出演を決めたなんて……俺は……俺は……なんて甘っちょろい気持ちで今ここに居るんだうおおおおおおおッッッ!!!」

 

 鳴嶋メルトは号泣しながら走り去って行った。彼は胸が痛くて張り裂けそうだった、まだまだ自分には覚悟が足りない!まだまだ自分は努力が足りない!

 

 もっとだ!もっとだ!もっとだ!もっとだ!

 

 星野アイの真実を知ってしまった今、自分に出来ることはもっともっともっと血反吐をはく努力をして。少しでも彼女が心血を注ぐこの舞台を良いものにすること以外にあり得ない!

 

 鳴嶋メルトの心は炎と燃え上がっていた。孤独で愛を知らぬ少女、星野アイがこの『東京ブレイド』の舞台に、真実の愛の欠片でも見つけてくれることを心から願いながら。

 

 

 

 

☆☆☆ 

 

 もちろん星野アイが愛を知りたくてアイドルをやってるなど嘘である。

 

 

 




自分のキャラ設定を自分で考えるとかみんなしますよね?
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