ピッタン、ピッタン、ピッタン、ピッタン
「見て見て!私達のファーストライブが朝のニュースで取り上げられて、それがアイチューブでアップされて、再生数百万越えてるよ!」
ピッタン、ピッタン、ピッタン、ピッタン
「あ~~!そう言えば当日けっこう業界関係者っぽい人達いたね~~」
ピッタン、ピッタン、ピッタン、ピッタン
「まぁうちの社長、私らのレッスン風景とか良く撮らせてたからさ、けっこう各テレビ局や知りあいの伝にメールとか宣材入りで送ってたり?」
「アハハ、うちの社長やりそう!」
1go!
いや、B小町のライブは極めて極秘利に行ったはずだ。彼女達がある程度成長出来て、芸能界の荒波に耐えられるようになるまで、固定のファンが付いて、彼女達の芸能界での立場が磐石になるまでの修行期間として、収益を度外視してやるつも りだった。
彼女達のメジャーデビューはせめてアイが高校生になってから、それまではインディーズアイドルとしてジックリ3年間経験を積ませ、実力を伸ばしてやるつもりだったのに、どうしてこうなった?
彼女達のレッスン風景を撮ってたのは、やがて彼女達がここを卒業して一人立ちする時に、彼女達の卒業DVDに添えて、彼女達の精神面、金銭面での手向けとするための親心に過ぎない。
クソ!俺はまだ海千山千の芸能界では夢見る坊っちゃんに過ぎんというわけか!
だが…俺は絶対に!
☆☆☆
ピッタン、ピッタン、ピッタン、ピッタン
「……なんかちっちゃいの元気無くない?」
「そう?コンサートの疲れじゃないの?どうせあの子のことだから寝る間も惜しんで修行に明け暮れてたんでしょ?あの子三度のメシより修行が好きなんだから心配してもムダよ」
「心配するわよ、私達の生活あの子にかかってるのよ」
「カーッ情けない!あの子を追い越して、自分がトップアイドルになってやる!って気概は無いの?」
「あるわけないじゃん!」
ピッタン、ピッタン、ピッタン、ピッタン
1go!
芸能界は才能の集まる世界。それは事実だ。
だが超弩級の才能はそうそうは現れない。
それも事実だ。
そして星野アイは間違いなく後者だと一目で分かる存在だった。
一目見て我が目を疑った。
自分は今、本当に現実を見ているのか?こんな人間が実在するのか?これは自分のような塵芥に染まった人間が話しかけることが許される存在なのだろうか?
私は聖母マリアの処女受胎等、一笑に付すようなリアリストだ。
世界に神秘等存在しない。魔法など在りはしない。世界は全て、物理と科学の法則で成り立っている。そこに神の介在する余地等無い。
殆どの現代人が当時の私と同じ考えではないだろうか?
人生とは生まれてから死ぬまでの限られた時間に過ぎない。
現代人の誰もが当たり前に抱く思考を私もまた当たり前に受け入れていた。
──そして──
彼女を見た瞬間に私の当たり前はあっさり崩れ去った。
聖母マリアの処女受胎はあり得る。
この目の前の少女なら神が望めば処女のまま子供を産むこともあり得る。
世界には神秘しか存在しない。世界には魔法じゃないもの等無い。
現代科学は河原に転がる石ころ一個が何故存在するのかすら未だ解明出来ていない。
物理学は、何故この物理的宇宙が存在するのか説明出来ない。
そもそも物理的宇宙が本当に存在することを証明できた科学者等一人もいない。
神とはあらゆる存在を支えている「何か」であり石ころ一個と言えども神の介在なしには存在しえない。
世界中のテクノロジーを結集しても、人類は石ころ一個、コアラ一匹作れない。
でも世界には確かに石ころやコアラを作り出した「何か」の力が存在するのだ。その力を「偶然」のひと言で済ますのは、太古の人達が地震や雷や台風を、神々の怒りと言っていたのと同様に無知の表明に過ぎない。
皮肉にも科学の発達が「偶然」という概念を駆逐しつつある。一つの素粒子と全宇宙の素粒子は時間も空間も越えて連動している。
素粒子レベルまで視野を広げれば、この宇宙に偶然に起きるていること等何も無いのだ。
偶然とは人類の観察力の限界を示す概念に過ぎない。
彼女を見た瞬間に理屈では無く、感覚で分かった。
かつて神等存在しないと思っていた私は、例えるなら海で産まれ、海の中を泳ぎ回る魚が、海なんて存在しない、僕は産まれ一度も海を見たことが無い。
と、言ってるようなものだったのだ。
世界には神しか存在しない。
神という言葉と存在という言葉は同義だ。
存在するものは存在する。
ということは神が存在する。ということだ。
ただ、神だけが存在するということだ。
『私は存在である。私は存在する存在である。私は神である。私は全てである。私の他には何も無い。』
学生時代に暇つぶしで読んだ、聖書に書かれた一文が想起された。
存在とは本質的に神秘であり永遠に未解明な何かだ。
神とは本質的に神秘であり永遠に未解明な何かだ。
星の愛を前に私は理解した。
私は今、愛そのものを見ている。
私は今、奇跡を体験している。
私は今、神を見ている。
私は今、奇跡以外の何も存在しないことを実感している。
─見馴れた1羽の蝶が存在するそのわけを、人が知ることはついにない─
私は大いなる出合いに感謝して、目の前に存在する奇跡の少女。地上に降りた女神、星野アイに、心から溢れだす言葉を言わないではいられなかった───
「君、可愛いね、アイドルやってみない?」
まだ、あどけなさを残す少女は、キョトンとした目で私を見ていた。
その双眸に星の輝きを湛えながら。
目指せ!ワールドダイスター☆