ガチャッ
ドアを開け電は職場に入る。
訪問介護あけぼのというその施設はややこじんまりとしており、パソコンがずらりと並んでいる。
もちろんそこで利用者さんと接する訳では無い。ここは事務室みたいなものである。
電「おはようございまーす。」
職員「おはようございますー。」
電「えーっと、今日は…………清水さんとこなのです。」
矢矧「鎮守府にも所属してる上にバイトで介護って…。大変ねぇ電ちゃん。」
電「お金がないビンボー鎮守府だから仕方ないのです。それにこの仕事は楽しいから好きなのです。」
電はらしくもない笑顔を矢矧に見せる。
作り笑いであろうが無理に笑っているわけではない。ビジネススマイルであろう。
電「そういう矢矧さんこそ凄いのです。」
矢矧「私はもう艤装解除しちゃったから普通の人間になっちゃったからね。仕方ないさ。」
艤装解除
単に艤装展開の後に艤装を仕舞う動作のことでは無い。
鎮守府経由の外部の病院や自衛隊病院で行われる、完全に艦娘を辞め人間になる事である。
現時点では人間から艦娘にするのは不可能であり、艤装解除をした物はこれからの人生を人間として生きていく道を選ぶこととなる。しかし、社会保険やらなんやらで手続きがかなり面倒なのでオススメはあまりされない。
電「でも矢矧さんは大出世なのです。実際こうして生きてるのですから。」
矢矧「ふふっ、ありがとう。」
電はその場を後にし、エレベーターに乗り4階を目指す。
そしてエレベーターを降り、清水と書かれた札の扉をノックして開ける。
そこには車椅子に乗った笑顔が素敵なおばあさんが居た。
電「清水さん!おはようなのです。」
清水「おはようございます。電ちゃん。」
電は中に入り、本日の仕事を全うするのであった。
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次の日━━━━━━━━━━
町田「果てさて、みんな準備出来たか?俺はあと靴下履くだけや。」
電「さっさと履けなのです。」チェッ
利根「皆おやつは持ったのか!?吾輩はこんなにもあるぞ〜!」
利根はリュックサックに詰まったお菓子を見せびらかす。
霧島「利根、悪いけどお菓子は1人300円までよ。」
利根「な!!!なんじゃとおおおっっーー!!」
吹雪「いや遠足じゃねぇんだから。」
各々が準備万端であり、司令室に集まっていた。
先日言っていた井森という博士のところに行くのだ。
井森のラボまで少し距離があり、車での移動が望ましい。この前燕尾から貸してもらっているハイエースで行くつもりだ。とはいえ、貸すと言っているだけで燕尾としてはあげたつもりなのであろうが。
町田「よっしゃ!!!ほな行こか!!」
車に乗り込む一行。
天龍と龍田、龍驤はハイエースに乗らずバイクと式神で移動するつもりらしい。
自分たちが乗らない分、大淀を車椅子ごと乗せられるからだ。
大淀「ごめんなさい皆さん。気を使ってもらって…。」
天龍「いいよいいよ、気にすんな。サイドカーでもありゃ、載せてやるんだけどな。」ニカッ
龍田「えぇ〜。私は乗せてくれないの〜。」
赤城「………くだらない。辞めようかしらこんな鎮守府。」ボソボソ
加賀「赤城さん、そんな事言わないでください。もっとこっちに寄れますよ。」
睦月「そうにゃしい。艤装なんか使えなくても戦えるにゃしい!」パクッ
睦月はコッペパンを頬張る。
中には美味しそうなイチゴジャムが入っている。
赤城「使えるでしょ。そんな気を使わなくても…。」
電「使えねぇのです。この鎮守府の大半が使えないか使ったことの無いポンコツの集まり。艤装の意味なんてねぇのです。」
赤城「…………………。」
睦月「でも赤城さんの言いたいことも十分にわかるにゃしい。これ食べるにゃしい!」サクッ
睦月はコッペパンをちぎり赤城に差し出す。
赤城はそれに対し無言ではあるが軽く頭を下げパンを口に入れた。
吹雪「そろそろ出んぞー!先輩方も気をつけて着いてきてくださいねー!」
バイク組「おっーう!!!」
ラジオ「ジ…ジジジ…………磯山の噴火が……おりま……で…警戒し………さい。」
吹雪「あ、また言ってやがる。火山も地震も怖いっすね。気付けねぇと。」
吹雪「んじゃ、出発しまーす!」
町田一行は車を発進させたのであった。
井森ラボに向かって──────
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檻巌鎮守府から車でおよそ35分程度。
綺麗な灰色と白の外装で出来たそのラボは所々傷んでいたが比較的最近出来たと思われる。
車を降り、インターホンを押す。
町田「……………出てこんな…。」
金剛「留守デース?」
北上「んな訳ないでしょ。向こうから呼んでるんだったらさ。」
赤城「…………。」
しばらく沈黙が続く。
もう一度インターホンを押そうとする町田だったが、ラボの屋根に誰かが居た事を察し顔を上げる。
するとそこには
「ふっふーん、パパのラボに何か用かなー?」
するとその影は屋根から飛び、地面に着地。
顔を上げこちらを見てニヤッ!と笑う。
子日「私、井森子日!!もしかしてパパに呼ばれた鎮守府さん?」
町田「そうそう!こんにちは子日ちゃん!井森さんとお話があるんよ。開けてくれるかの?」
子日「わかったー!その前にー!今日は何の日かわかるー!?」
町田「えっ?何の日………。何やろ。わかるか?」
町田は後ろを振り向き皆に聞く。
霧島「何でしょう。特にこれと聞いた事は無いですけど…。」
天龍「今日祝日じゃねぇよな?」
川内「あれかな?一粒万倍日とか?」
子日「ちーがーうー!」
北上「生理の日でしょ。」
加古「下品だな…。」
町田「わかったぞ!!子日ちゃん!!」
子日「何ー?!」
町田「ねっのひだよー!♪」
頬に指を当て体を少しひねりポーズを取る町田。
周りは汗を垂らしながら見守る。
子日「違うー!!」
町田「うそん!?!自信あったんやがなぁ…。」
吹雪「勿体ぶらずに教えてちょ。」
子日「こーたーえーはー!!!」
子日「侵入者抹殺の日だよおおおぉぉっっっーー!!!!!」
町田一行「!!????!!?!?!!」
ガチャン!!!!
子日は叫ぶと左腕を構える。
拳が上に開き、エネルギー砲が発射された。
町田が防ごうとする前に、とある影がそれを弾き飛ばす。エネルギー砲は軌道を変え空へと消えていった。
初雪「あっぶねぇことしやがる………!!!何のマネか知らねぇが………!!!やってやろうじゃねぇかぁぁぁー!!!!!」
構えを取る初雪。
子日はこっちを睨み続ける。
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町田「待った待った!!!何で喧嘩なんかするんや!!!俺は正式に連絡を受けて来とるんや!」
子日「信用できるかっ!!そう言ってパパを攫おうとした奴らがどれだけ居たか!!!!」
初雪「だってよ司令官。だいぶお怒りのようだぜ。」
吹雪「んじゃ戦うしかないか…。初雪、私が…」
初雪「姉ちゃんは引っ込んでてくれやぁ!!ここは私に任せてくれ!!!」
初雪「バイト終わりのジークンドー教室での実力!見せてやる!!!!」
龍驤「なんやその肩書きは。」
川内「気をつけて。あの子、内側のエネルギーが凄い量だよ。」
川内の言葉に対し、振り向くことなく親指を立てる初雪。
初雪「覇ッッッ!!!!!」
地を蹴り走る初雪。
それに合わせ子日を駆けてくる。
初雪「ゼラッッッ!!!」
初雪が子日に向かい殴る。
拳の向きは横ではなく縦である。
子日はそれを躱し、右の手刀で初雪の首を狙う。
初雪は左足でそれを蹴りあげ間髪入れずにかかと落としを仕掛ける。
それすらも子日は躱し、回し蹴りで返す。
両腕で防ぐもその威力から少し仰け反る初雪。
初雪「かっっっ………硬ぇ……。」
初雪(何だコイツ…。普通の艦娘のそれとは違う…。何か…何かある…。)
子日「やるねぇ!!!!これならどうかな!!!」
子日渾身の飛び蹴り。
その様はまるで弾丸のようである。
初雪は躱すのは無理と判断。両腕をクロスし体を守るもそのまま吹き飛ばされる。
町田「初雪いぃ!!!」
睦月「こんのっっ……!!!!」
ガシッ!
電「辞めるのです。ここで加勢したらまるで初雪がバカみたいなのです。それに…」
吹雪「任せてくれって、言われたからよ。」
睦月「……………。」
初雪「かぁぁ…………。へし折れるかと思ったぜ。」
初雪「スピードじゃ負けるか…。ならば力で対抗するしかねぇか…!!!」
初雪が子日に向かい膝蹴りを繰り出すも左手で受け止められる。
それを見逃さない初雪は左足で子日の顔に上段蹴りを食らわせる。当たった。マトモである。しかし…
子日「……………。」
初雪「効かんか………。だろうな。」
次の瞬間子日の蹴りが初雪の顔に直撃。
反応に遅れてしまったがなんとかギリギリマトモには受けない体で仰け反る。
初雪(今だッッッ!!!!!)
初雪は体を捻り円を描くように回転。
子日の胸あたりに拳を当て、そのまま子日をぶっ飛ばす。
寸勁。ジークンドーの必殺技の1つ。
初雪のタイミングは完璧で子日にクリーンヒット。
初雪「……………!!!!!こ……こいつ………!!!!」
初雪が何かに気づく。
子日は立ち上がり破けたセーラー服を引き裂く。
子日「またパパに縫ってもらわなきゃ…。」ビリビリ
町田「なっ!!!!あの子……!!!」
電「こいつぁ驚きなのです…。」
天龍「ラボ、だもんなぁ。そらそうか。」
子日のセーラー服の下は超合金で出来たメタリックボディであり、サイボーグであった。
子日「まさか出力上げなきゃいけないとはね。」