井森の部屋に入り、ソファーに腰掛ける町田。
入れてくれたオーガニックコーヒーを啜りながら部屋を見渡す。
研究の資料の束や本は勿論のこと。ゲッターロボやグレンダイザー、ゴジラやウルトラマンのフィギュアも置いてあり趣味の話で盛り上がっていた。
井森「ここまで話が合うとはねw楽しいよw」
町田「僕かて嬉しいですわwええ人で良かった。」
井森「さて、本題に入ろうか…。趣味の話も良いが…君に尋ねたい事がある。」
町田「ん?何でしょう。」
井森「君は艦娘についてどう思う?」
町田「………………。」
核心をつく質問である。
今の世界ではごく普通に居る艦娘。
しかし概要としては、前世は艦だったのだ。それが人の形をし、現世に降りたつ。それは人と戦うためではなく、海から突如現れた深海棲艦と戦うためである。よく考えるとファンタジーそのものである。
町田「…………。難しい質問ですね…。しかしうちの子を考えると…。」
井森「考えると…?」
町田「家族。それ以外の何者でもないです。」
井森「家族か…。なるほどね。」
町田「井森さんかて子日ちゃんが居はりますしね。ここのラボにおる艦娘は子日ちゃんだけなんですか?」
井森「いや、他にも居るよ。後々挨拶するだろう。その時は頼むよ。」ニコ
井森「いやぁね、なんでこんな事を聞くかと言うとね…。あの子日。拾ったんだ。」
町田「……………野良艦ってやつですか。」
井森「そうだ。しかもそれだけじゃない。四肢がちぎれていて内臓もほとんどやられていたんだ。」
町田「………………。」
井森「捨てられてたんだよ。ゴミのようにね。周りには他の艦娘は居なかった。海から流れ着いたのかどうかは分からない。ただあの子がそう言っていたんだ。」
井森「あの子が所属していた鎮守府も分かっている。しかし訴えたところでなんのお咎めも無しだ。こんな時代、誰も私の事なんか相手にしない。」
井森「だから私はあの子を改造したんだ。以前のようにね。」
町田「高速修復剤はあかんかったんですか?」
井森「遅すぎたんだよ。試して見たがうんともすんともいわなかった。」
井森「ここに居る艦娘は似たような子ばっかりだよ。だから那珂ちゃんの話を聞いて君の檻巌鎮守府に興味を持ったんだ。似たようなものを感じたしね。」
町田「なるほど…。確かにうちの子らも偽装が持てんかったり、どっか違和してたり。そんなんばっかりですね。」
町田「でも、しっかり働いて貰ってますよ。ちゃんと生きてます。前向いてますわ。」
井森「フフッ、いい顔をしているじゃない。ありがとうね。変なことを聞いてしまって。」
町田「いやいや、とんでもないですよ。」
井森は立ち上がり立派な額縁に入れられた2つの写真を手に取る。それを愛おしそうに眺める。
町田「井森さんとこの艦娘ちゃんですか?」
井森「そうだよ。みんな私が何かしら手術を施した子たちだ。見るかい?」
町田「おぉ〜、ええ写真やないですか!井森さんも男前ですし!」
井森「はっはっはっ!!嬉しいこと言ってくれるねぇ!!!」
町田「あれ…。もうひとつの写真…。御家族ですか?」
井森「あぁ、妻と娘だよ。今妻は色々あって離れて暮らしているんだ。ここよりも安全な場所にね。」
町田「そうですか。安心安全が何よりですからね。ちなみに娘さんは?」
井森「娘はここに居るよ。研究員として働いてくれてる。」
町田「立派なもんで!!!井森さんの頭脳がそのまま遺伝しはったんですな!」
井森「ハハハッ!そんな事はないさ。それに私の頭だけじゃないさ。」
町田「そら奥さんの美貌も引いてるでしょうよ!」
井森「無論、それもある!しかし根本的に違うものがあってね…。」
町田「…?なんです?」
井森「娘はね………。如月なんだよ。」
町田「へ…?お名前ですか?」
井森「いや…。もっとハッキリと言うとね。」
井森「駆逐艦如月。艦娘なんだよ。」
町田「なっ………………!!!」
[newpage]
シャゴオオオオオオオオッッッ
蒸気と共に蓋が開く。
その中から出てきたのは電であった。
電「ふわぁぁぁ〜………気持ちよかったのです。もっと居たかったのです。」
大きな欠伸をし、体を伸ばす。
電「で、これで改装出来たのです?」
「えぇ、出来ましたよ。電さんは改になりました。」
電「改……………か。ありがとうなのです。」
「いえ、礼は父と町田さんに言ってください。」ニコッ
電「先生はともかくアイツには言いたくないのです。」
「ウフフッ」
電「じゃあ次の奴を呼んでくるのです。」ピョンッ
電は小走りに部屋を出ていき次の艦娘を呼びに行った。
電「終わったのですよー。次はどいつなのです?」
睦月「睦月にゃしい!!!改二になれるかなぁ〜!!」ワクワク
電「改二どころか改にもなれねぇんじゃねぇのです?」
睦月「あぁ!!言ったな〜!!今に見てろよ!」
吹雪「改になっても毒舌は治らんか。」
金剛「むしろ増してる気がしマース。」
霧島「改になっても特に何も感じませんね…。」
雪風「気を高めるんです!そしたら何時でも改になれます!!!」
電の他に数人が改装を終えていた。
改装自体はすんだものの、見た目に特にこれと言った変化はない。
気を高めるとなれるらしい。
因みに夕立は既に改二、天龍と龍田は改であるため今回は何も無しである。
天龍「改二の道のりは遠いな…。なぁ龍田。」
龍田「そうねぇ〜天龍ちゃん。にしても…夕立ちゃん、どこで改ニになったのかしらね〜…。」
夕立はラボの屋上で空を眺めていた。
隣には修理を終えた子日が居る。
北上「家で筋トレしてたお陰か、私らも改になれるとは…。しかもなんか私軽巡じゃ無くなったみたいだし…。」
加古「雷巡?だっけか。なんか服も変わってんじゃん。」
赤城「改になったところでスロットは変わらず………そんなもんでしょうね。」
加賀「まぁまぁ、質が変わったのかもしれませんよ。」
龍驤「なんかウチまた乳デカなってへんか…。もうええて……。」
電「みんな好き勝手いいやがるのです。」
コンコン
睦月が部屋をノックする。
「どうぞ〜」
睦月「失礼しますにゃしい!睦月型駆逐艦む………つ…き……」
元気よく挨拶する睦月は途中で話すのを辞めた。というより話せなかったのだ。
睦月「き…………きさ…如月……ちゃん…?」
如月「お姉…………ちゃん…?」
[newpage]
町田「ど、どういう事です!?まさか艦娘に改造したんでっか!!?!」
井森「似ているが少し違う。そうだね…これは本来ならば超秘密事項なんだが君になら話しても大丈夫だろう。」
井森は写真立てを置き、キッチンでドリンクを作る。お次は紅茶である。
井森「私は最初政府に雇われていたんだ。直属の研究員としてね。でも嫌になって辞めたんだ。妻と一緒にね。それでこの民間のラボを作ったんだ。」
井森「ラボが出来上がった時には娘は生まれていた。だが娘は生まれつき心臓が弱かったんだ。その時だ。政府から連絡が来たのは。」コポポポ
井森「私は最初は断ったさ。しかしどこで手に入れたのか娘の心臓の事を向こうは知っていた。娘が助かるかもしれないと。………善意は表面だけでほとんど脅しだったがね。」カチャッ
井森「政府の研究所に行ったんだ。そこで何を見たと思う?」
町田に紅茶を差し出す井森。
町田「……艦娘ですか?」
井森「惜しい。そこにはオーブがあったんだ。カプセルに入れられてね。」
町田「オーブ!?」
井森「知っているだろう?魂さ。慎太郎くんは艦娘がどうやって出来るか知っているかい?」
町田「お恥ずかしながら…全く。」
井森「無理もない。知っているのは上の奴らだけだ。艦娘はね、何処からともなく魂が降りてくるんだ。何故か決まって大本営にね。」
井森「そして魂が別れるんだ。その艦種、姉妹の数に合わせてね。」
町田「まさか…そんな事が…。」(睦月が言うてたホンマの姉妹ってこの事やったんか…!!)
井森「それで私が見たのは睦月型の魂だったんだ。他の子はしっかりと形ができるのに対し如月に当たる子だけがハッキリしない。」
井森「ここまで言えばもう分かるだろう。私の娘にその魂を入れろって魂胆だったんだ。」
町田「………………。」
井森「迷ったさ。このままでは娘は直に死ぬ。しかし魂を入れて助かったとて戦いの道具にされるんじゃないかってね…。」
井森「妻は反対したよ。このまま楽にしてあげようってね。しかし私は娘を諦めきれなかった…。」
井森「諦めれるわけが…………無かったんだ…!!!」
自分のズボンを強く握りしめる井森。
町田「それで………入れたんですね…。」ズズズ
井森「あぁ、なんとかね。まるで待っていたかのようにすんなりと娘に入ってくれたよ。でも副作用なのか髪と肌が真っ白になってしまってね。」
井森「そのあとやっぱり娘は政府に回収された。しかし直ぐに帰ってきたんだ。艤装も持てない、何も出来ないと理由で返されたんだ。」
井森「今思えば無茶な判断だと思うが、こうして娘が生きて居るだけでも嬉しいよ。」ズズズ
町田「貴重なお話をありがとうございます。」
座ったまま頭を下げる。
井森もそれに対し同じようにする。
井森「外部のものでこれを話したのは君だけだ。何故か君なら話しても大丈夫と思ってしまうんだ。」
町田と井森はお互いに微笑み紅茶を飲みきる。
そろそろ全員終わったであろうと井森は改装部屋に行こうと町田を促す。
井森「そうだ、一応慎太郎くんも精密検査と健康診断をして行ったら良いよ。」
町田「ありがとうございます。まさか…お金取らないっすよね…?」
2人は笑いながら部屋を後にした。
泣きながら幸せそうに抱き合う睦月と如月が居る部屋に向かって。