艦これevolution   作:銀ノ森 睾

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第46話「雪子の面影」

チュンチュン……………

 

朝の小鳥たちの鳴き声で目が覚める初雪。

今は10月の半ばだというのに暑さが残る。

しかしここは山なので少し肌寒いくらいだ。

目をティッシュで擦り目ヤニを取り、ふわぁと欠伸をする。

少し背伸びした後、ベッドに腰掛け周りを見渡す。

 

初雪「…………やっぱり夢じゃないか…。」

 

昨日の今日である。

へし折れたプライドとメンタルを癒してくれる空間。

どうも馴染んでしまう。

雪聖と典子の事を考えれば、私は雪子ではないと突っぱねる気力なんてそもそも無い。

吹雪や鎮守府に申し訳ないと思うも、どうせ戻っても役に立てない。それどころか足を引っ張ってしまうのではないかという考えが拭えない。

2度も姉と仲間に助けてもらった。情けない…と。

それに改めて写真を見るも、胸が締め付けられる感覚が初雪の心に拍車がかかる。

するとコンコンと部屋を優しく叩く音が響く。

 

典子「雪子ー!朝ごはん出来てるわよー!早く降りてらっしゃい!」

 

初雪「……はーい。」

 

部屋を後にし階段を降りる。

この時点でとても甘い香りが漂う。

ハニートーストとココアがテーブルに並べられていた。

 

初雪「おぉ。美味しそう。」

 

雪聖「おはよう雪子。昨日はよく眠れたかい?」

 

典子「ここは山だからね。肌寒くなってきてるから風邪だけはひかないようにね。」

 

初雪「うん。ありがとう。」

 

だんだんと雪子になりつつある初雪。

3人でいただきますと手を合わせ朝食を摂る。

その後ゆっくりとココアを飲みつつ典子の話を聞く。

 

典子「そうだ!今日は村のみんなに挨拶してきたら?みんな喜ぶよー!」

 

雪聖「そうしなさい、そうしなさい。俺はいつもの仕事だから家を空けるからな。」

 

初雪「雪………お父さんなんの仕事してたっけ?」

 

雪聖「林業じゃないかぁ。自衛隊行って忘れてしまったのか?」

 

ワッハッハと笑う雪聖はその後服を着替え家を出た。

楽しい。そう思ってしまう。

いつまでもこの空間が続いたらいいのに。

戦意喪失、過去のトラウマに嫌な記憶。

ここならばそれを忘れられる。

そして、艦娘であることも。

 

初雪「んじゃ行ってくる。お母さんは何すんの?」

 

典子「お母さんは買い物しにちょっと山降りるわね。」

 

典子「ここは妖怪たちも出ないから、安心して行ってきなさい。」

 

初雪「わかった。気つけてね。じゃ、行ってくる。」

 

[newpage]

 

電「おせえええええぇぇぇぇぇぇぇぇツツツツツのですツツツツツツツツツツ!!!!!!!!」

 

イライラしながら腰に手を当てうろちょろする電。

当然である。出前に行ったっきり1晩帰ってこないのだから。

他のものも心配しつつ出前の仕事をこなしていた。

 

町田「まさか………深海棲艦に襲われた…なんてこたぁ無いよな…。」

 

筑摩「それについては大丈夫です。近隣で深海棲艦の出現情報は出ていません。しかし相手が艦娘攫いだったら…。」

 

電「あいつが人間ごときにやられる魂(たま)かよ。」イライラ

 

雪風「なんで帰ってこないんでしょう…。」

 

神通「嫌になったんじゃね?鎮守府とか戦うこととか。」

 

川内「神通。」

 

神通「例えばだよ!例えば…。もしかしたらって話だ。」

 

あぐらをかきながら酒を飲む神通。

島風も心配そうに眉を八の字にしている。

 

天龍「確か山手に出前行ったよな?迎えに行こうか?」

 

吹雪「…………………、もうちょい後にしましょう。アイツもアイツで色々考えてんでしょう。」

 

利根「…………………そうするか。」

 

大淀「にしても山手じゃGPSが役に立たないとは…。情けない話です…。すみません…。」

 

龍驤「アンタは悪ないやろ。しょーもない機械渡す大本営が悪いんや。ほんっまに昔っから下のもんの事いっこも考えんとなぁ。そもそも…」

 

睦月「あ、長くなるやつにゃしいこれ。」

 

龍驤は大本営や政府の話になってしまえば止まらなくなるのである。

町田が強行で出前を頼み、マシンガントークを中断させるのであった。

 

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村では樵や野菜を収穫している者、走って遊んでいる子供たちがワラワラと居た。

決して多くは無いが少なくもない。

その内の30代らしき若い青年と目が合ったので挨拶をした。

 

初雪「どうも…。こんちは。」

 

青年「なっ………。雪子…ちゃん…?」

 

その一声に周りの者も気が付き急いで初雪に駆け寄った。

そこで昨日から海山の元で世話になっていること、自分は雪子ではなく初雪である事など色々と話した。

 

土浦「そうか…。俺…土浦(つちうら)って言うんだ。そりゃ雪子ちゃんじゃ…ないよな。」

 

初雪「はい…。あの…海山さんの事とその雪子ちゃんって子の事…聞いていいですか?」

 

土浦「あぁ……。俺らにとっても思い出したくもないんだけど……。君には話すべきだと思う…。」

 

土浦「雪子ちゃんって子はね…、海山さんとこの娘で一人娘だったんだ。昔っから面倒見が良くて、周りに気を使って進んで動いてくれて…。親御さんにも村の人にも優しい子だったんだ。」

 

初雪「…………。」

 

土浦「ここは山だから若い人はだんだん山を降りていって…人が少なくなってたんだけどそれでも雪子ちゃんは年配の方の事を考えて村から出なかったんだ。」

 

土浦「で、急にあいつらが現れた…。」

 

初雪「深海………棲艦。」

 

土浦「あぁ。あちこちであいつらが暴れだして…。でもここは山だからか現れなかったんだ。でも雪子ちゃんがね…。」

 

雪子(私自衛隊の衛生兵になる!看護師になってみんなを守りたい!)

 

雪子(いつあいつらがここに来るかも分からない……。それでみんなと戦ってくる!絶対に………絶対に帰ってくるから!!!!)

 

土浦「そう言って自衛隊に入ったんだ。」

 

初雪「まさか………それで…。」

 

土浦「いや、その時は一旦戦いが落ち着いて帰ってきたんだ。」

 

笑顔で答える土浦だったが、次の瞬間顔が強ばりゆっくりと唇を動かし話し始めた。

 

土浦「帰ってきたんだ…。元気よくね。看護師として戦場のど真ん中に居たにも関わらず生きて帰ってきてくれたんだ

。」

 

土浦「そりゃあみんな喜んださ。俺もみんなも。で、帰ってきた祝いになにか催しをしようとしたんだ。」

 

初雪「…………。」

 

土浦「でもあいつらが全部ぶち壊した。」

 

目と表情に怒りとどうすることも出来ない後悔の念を浮かべる土浦。拳を握りしめフルフルと震えている。

 

土浦「その夜だった。あいつらが現れたんだ。こんな山手に現れたことなんて無かったからみんな大パニックだった。自衛隊や艦娘が来るのも時間がかかる。」

 

土浦「そこで先陣切って避難誘導や手当をしてくれたのが、雪子ちゃんだった。」

 

土浦「勇敢にテキパキと全てをこなし、自衛隊で培った経験を活かして俺たちを助けてくれた…。でもね…。」

 

土浦「逃げ遅れた老夫婦が居てね…。瓦礫に下敷きになってたんだ。それを急いで助けて大人たちに後を頼んだんだ。」

 

土浦「そしたらね…。雪子ちゃんの後ろに腕がすごく太い深海棲艦が居て…。雪子ちゃんは捕まったんだ。」

 

初雪(腕…………ツ級………!!!)

 

土浦「にも関わらず雪子ちゃんはみんなに振り向かずに逃げてって叫んで…。情けない話し、俺たちは走って逃げたよ。海山さんは最後まで助けようとしたけど………。」

 

土浦「俺は後ろを振り返っちまった。………見てしまったんだ…。雪子ちゃんが食い殺される所を。」

 

初雪「……………!!!」

 

土浦「その後は自衛隊と艦娘が駆けつけて沈静化したんだ。でもその後……海山さんは少しおかしくなってしまった…。」

 

土浦「それに……………その日…、雪子ちゃんが帰ってきた日は…雪子ちゃんの誕生日だったんだ…。」

 

土浦「……ごめんねこんな話聞かせて…。しんどいだろう。」

 

初雪「いえ、寧ろ辛いのに話させてごめんなさい。」

 

頭を下げる初雪。

土浦と周りの村人は顔が沈み暗い表情をしている。

 

土浦「色々と思うことはあるだろうけども、君も艦娘で戦いばかり強いられて辛いだろう。気が済むまで……いや、ずっと居てくれていいからね…。」

海山夫婦は初雪と雪子を重ねているのだろう。

その後は色々と村人の手伝いをし、家路に着いた。

 

[newpage]

 

初雪「あれ…?お母さんは?お父さんは仕事だけど…。」

 

家に着くと誰もいない。

家でじっとしてるも退屈なので家の中を色々と探索する事に。

そこでアルバムを見つけゆっくりとページをめくる。

そこには産まれたばかりの雪子と若かりし頃の海山夫婦。どれを見ても楽しそうでこれから来る明るい未来を待望しているかのようであった。

ポタ…………

アルバムに水滴が落ちる。

初雪の涙であった。

自分には親は居ない。

しかし、鎮守府には仲間が…家族が居る。

それを裏切るような形で今ここに自分は居るのだ。

それに雪子のような目にあう人、辛い思いをする人が大勢いるしこれからも増える一方であろう。

アイツらがいる限り。

アルバムを閉じた頃には目が霞んで見えなくなるほど大粒の涙を流していた。

涙を拭い、時間を確かめる。

今は昼の15時。

少しくらい昼寝をしようかと思ったその時。

ふと窓ガラスが気になり少し眺める初雪。そのずっと遠く向こうにはなにか数人の影が見える。

 

初雪「お父さんの仕事仲間かな…。」

 

じっくりとその影を見てその正体がわかった。

深海棲艦であった。

その中にはツ級もおり、前の腕がへし折られたシーンが蘇り脂汗と悪寒が襲う。

それに村人にも知らせなければならない。

初雪は恐怖を押さえ込み、家を急いで出るのであった。

 

初雪「なんでこんなとこに深海棲艦が!!!!!!」

 

 

 

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