北上「な…………何言ってんのさ!!訳わかんないよ大井っち!!!」
大井「もう無理なんです!!!限界なんです!!!今しか!今しか無いんです!!!」
血走った目で北上の両肩を掴み激しく懇願する大井。
北上は鎮守府に早く戻り井森に連絡を取ろうと考えたが、よりによって現在井森は出かける予定があったのでラボには居ない。
北上「とっ、とにかく落ち着こ!!!鎮守府戻ろう!!!」
大井「ダメです!!!もう……今でも………大好きな北上さんを…………殺したくて殺したくて……堪らないんです…。」
大井「そればかりか……鎮守府のみんなを………!!!あっ…………………!!!!」
大井「ぐ…………!!!!!!もう…………!!!せめて………逃げ……………て!!!!!!!!」
ドンッ!!!っと北上を突き飛ばす大井。
北上は20mほど転がり、大井に目を向ける。
大井は体をダランとしており、左手を顔に当てる。
左手にはドス黒い塊のようなものがユラユラと揺れており、やがてそれが形作られた。
大井「フッーーーー………。」
北上「あれ……………確か雷巡の………。」
大井の顔は深海棲艦の雷巡チ級のマスクで覆われていた。
目からは青色のオーラが浮き出ていた。
するとどうだ、20mほど離れていたのが一瞬のうちに目の前に大井が近づく。
北上「!!!!!」
みぞおち辺りを殴られるも両腕で防ぐ。
衝撃で飛ばされる北上。
腕に激痛が響く。
北上(防いだのにこれかよっっ!!!)
スタッ!
北上「大井っち………大体分かったよ…。あのクソどもに毒さるてんだね……。すぐに気付けずにごめん。でも今すぐに…………。」
北上「戻してあげるから!!!」
改に超化する北上。
大井に向かい飛び蹴りを放つ。
それを右膝と両肘で挟まれ受け止められる。
北上「そうくるかっっ!!!でもね!!!」
もう片方の脚で回し蹴りを仕掛けようとするもそのよりも先に大井の攻撃がヒット。
ドッッッ!!!
ガッッッ!!!
バキィィィ!!!!
北上「グブッッッッ!!!!!」
北上(嘘でしょ………!!!あの体勢から二段蹴りの上段回し蹴りッッッッ………!!!!!)
空中で留まる北上に、左斜め上からの振り下ろしストレートが顔面に命中。
その場に虚ろな目で倒れる北上。
大井はそれを見下ろしていた。
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現在鎮守府には町田・吹雪・利根・筑摩・大淀・最上が居た。
他のものは仕事や古鷹姉妹とともに買い出しに行っていた。
大淀「そろそろ北上さんと加古さん方が帰ってこられるんじゃないですかね?」
筑摩「姉妹に会うって、素敵ですね。」
町田「せやなぁ…………。」
吹雪「……………。」
利根「どうしたんじゃ?」
町田「なんか嫌な予感がする…。吹雪ちゃんもか?」
吹雪「はい………。ちょっと迎えに行きます。」
あぐらをかいていた吹雪が徐に立ち上がる。
町田「待ってくれ、俺も行くわ。」
利根「吾輩も行く。3人は留守番をしてくれんか。」
筑摩、大淀、最上は承諾し町田たち3人を見送った。
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北上にトドメを刺そうと貫手を繰り出す大井。
しかし北上は気絶しておらず、瞬時にそれを躱しカウンターを狙う。
手数で勝負を試みるも全て躱され腹に蹴りを受け吹っ飛ばされた。
北上「クソ…………1発も当たらんか………。」
大井「………………。」
北上「その仮面が気持ち悪いんだよね…。それを叩き壊しゃあ良いんだ……………。」
北上「ねぇ大井っち…。私、負け続けで戦闘員からサポート員に移ろうかなって考えてるって言ったこと覚えてる?」
大井「……………。」
北上「でもねぇ…、私も鍛えてない訳じゃないんだよ…。」
そう言うと北上は片膝を立て、両手を八の時になるように地面に手のひらを合わせる。
北上「…………………。」
時は少し遡る。
禍深島の後、大量の食料品や生活品を木曽たちに持って行った時のことである。
様々な踊りや食事を楽しんでいる中、北上は姉妹ということもあり木曽と話していた。
その時にある技を教えてもらうことに。
北上「これは人間魚雷………回天なんてもんじゃないよ…。己を極限までに鍛えて為せる技よッッッ!!!」
北上「行くよッッッ!!!!!」
ドバァッッッン!!!!
ととてつもないスピードで地面を蹴り、木々を移動。
木から木へ、時折地面に飛び移る。
そして大井の後ろ目掛け、木を蹴り上げ突撃。
北上「魚雷拳ッッッッッッ!!!!!」
〜艦娘解体新書「技の巻」〜
「魚雷拳」
強靭な脚力を持つ軽巡洋艦、特に雷巡が得意とする技である。
地面を蹴り上げ数十メートル跳び上がる事も出来れば、木や遮蔽物を蹴り上げ相手目掛けて突撃することも出来る。
魚雷のごとく突っ込む事から魚雷拳と呼ばれている。
しかし、軽巡・雷巡ならば全員取得することができる訳ではなく残念ながら木曽は取得する事が出来なかった。
そこで姉はどうだろうかと思い、北上に全てを教えたという事である。
とはいえ口頭で伝えただけで鎮守府の皆が寝静まった後に校庭で練習していた北上の賜物である!!!
ドゴォォォッッッッ!!!!
大井に当たるも両腕で防がれる。
北上「チッ……………とんでもない反応速度だな…。でも次こそは……!!!」
北上がまた先程の構えを取ろうとすると、大井が北上と全く同じ構えを取った。
北上「えっ……………。な…何してんの…。」
すると大井は地面がえぐれる程の威力で跳び上がり次々と木々を蹴り上げる。
北上よりもスピードも威力も遥かに上である。
北上「う…………嘘でしょ………。まさか1回見ただけで…………、覚えたの……………?」
ズドオオオオオォォォォォォッッッッッッッッ!!!!
北上の鳩尾にヒット。
ゴボッッッ、と血を吐きながら木を潰しながら吹っ飛ぶ北上。
このまま倒れたら確実に殺されることは明確なのでどうにか踏ん張り体を回転させながら受身を取る。
北上「ハァ………ハァ………。じょ………冗談じゃねぇぞ…。」
ジリジリと滲みよる大井。
北上「大井っちッッッッ!!!私は殺さない限りずっと立つよッッッッ!!!」
大井「………………。」
北上「クソ深海棲艦どもッッッッ!!!テメェらの思うようにさせねぇぞボケがッッッッ!!!!!魚雷拳ッッッッッッッッ!!!!!!!」
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鎮守府の玄関から少しほど歩いた先で周りを見渡す町田たち。
町田「どこにおるんやろな…。」
利根「んむぅ!?!提督よッッッッ!!!あれを見るんじゃッッッッ!!!」
利根が指さす方には数十メートル飛び上がる北上と大井がおり、北上が一方的にズタボロの姿であった。
町田「何してんなアイツら!!!!」
吹雪「とにかく急ぎましょう!!!!」
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北上「しまった!!!!高く跳びすぎた………!!!蹴り上げる遮蔽物がねぇ!!!!」
ブォンッッッッ!!!!
と北上よりも高く飛び上がる大井。
次は確実に仕留める気だ。
北上「大井っち!!?着いてきたの!!!??」
北上(でも大井っちも蹴り上げるものが無い…!!!先に私が降りてそっから反撃に…………!!!)
そう北上は思ったが裏をかくように大井の足の裏に黒いモヤが集まり次第に塊になっていく。
北上「えっ、ちょ……………。」
大井はそれを蹴り上げると塊は破裂。
その勢いで北上目掛け突進を繰り出す。
北上「……………それ応用技じゃん……。マジかよ…。」
胸を思いっきり殴られる。
ボキィッッッッ!!!!
ゴキィィッッッッ!!!
と胸骨と肋がへし折れる衝撃が響く。
北上「グボッッッッ。」
殴られた衝撃で地面に突っ込む北上。
しかしまたもや体を回転。
勢いを利用し、自慢の脚力で地面を蹴り上げる。
地面は大きく抉れ崩壊。
大井目掛け右拳をこれでもかというくらい握りしめる。
北上「大井いいいいいぃぃぃぃぃぃッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッーーーーーー!!!!!!!!!」
バァァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッンンンンンンンン!!!!!!
北上の一撃は大井のマスクにクラックが入る。
少しだけ静寂がその場に流れる。
すると大井は北上の頭の両サイドを掴み顔面に膝を入れた。
重力のままに落下する2人。
ドォォォォッッッッンンン!!!!!
と地響きが鳴る。
大井は綺麗に着地するも北上はあの高さから地面に叩きつけられた。
北上「……………ま…マジで強いね大井っち…………。ごめん…ね………。もう……私動けないや……。」
北上「戻して………あげられなくて…ごめん……………。」
大井は北上のすぐ側まで来ていた。
そのまま貫手は確実に北上を捉えている。
ズボアッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!
[newpage]
大井が貫いたのは地面であった。
北上は居ない。
ゆっくりと後ろを振り向く大井。
その先には町田率いる3人が北上を抱き抱えていた。
大井「…………………。」
吹雪「大丈夫っすか北上先輩…………。なんだよアレ………。」
利根「あれは確か雷巡の…………。」
町田「クソッタレが…………。アイツらのやり方か…。大井を洗脳かなんかして俺んとこにスパイとして送り出したんやろ…。」
吹雪「ゴミ見てぇなことしやがって…。でも大丈夫っすよ大井先輩…。今戻してあげますんで…。」
利根「みんな構えろッッッッ!!!来るぞッッッッ!!!!」
大井がこちらに向かい走る。
100mほど離れているというのにほぼ一瞬で目の前まで接近。
大井はパンチを繰り出すも利根に弾かれ町田と吹雪に殴り飛ばされる。
利根「なんちゅう威力じゃ………!!!!」ビリビリ
吹雪「とにかく今は北上先輩を安全な場所まで移動させましょう!!!!!」
バッッッッッ!!!!!!
町田一行は急いでその場を離れる。
大井はすくっと立ち上がり、それを追いかけた。
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先程の場所よりも太い木々があつまる木陰。
そこにとりあえず北上を横にする。
吹雪「…………………あの一撃で…。」
吹雪たちはそれぞれ修復剤を持参していたのだが大井の先程のパンチで粉々にされてしまった。
町田「とにかく今はここで待っててくれ北上ちゃん。俺らは大井ちゃんとちよっと喧嘩してくるわ。」
北上「みんな……………。」
利根「喋るでない。傷口に響くぞ。」
北上は顔面が腫れ上がり全身痣だらけ。
そればかりか出血も酷く皮膚はところどころ大きく裂けていた。
よく死ななかったものである。
北上「みんな……聞いて…。お願いが………あるんだけど…。」
吹雪「……………なんすか先輩。」
北上「大井っちをさ………。」
北上「殺してあげて。」