北上「なんとなくさ…分かったんだよね…。」
北上「もう……………大井っちは…………助からないって…。」
北上「だから……思ったんだよ…早く…殺して…楽にしてあげんのが…最初で最後の…姉心だって…。」
大井のマスクを殴った時に北上は直感した。
もう大井は元に戻らない。
助からないと。
マスクを壊したところで手遅れなんだろうと。
吹雪「……………………。」
目を瞑り後ろを振り返る吹雪たち。
吹雪「わかりました………。でも…最前は尽くさせてください…。」
北上「あんがと………………。」
町田「せやから北上ちゃんはそこでもう…寝ててくれ…。」
利根「目が覚めた時にはもう全部終わっとる。安心せぇ。」
そう言い残すと3人は大井と対峙すべく駆け抜けて行った。
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少し開けた場所に大井はおり、ゆっくりとこちらに近づいてきている。
こちらに来る途中で改になる吹雪と利根。
利根「自信満々じゃの…。ゆっくりと歩いとる…。」
町田「でもとんでもないくらいのスピードで動きよる…。お前ら構えとけよ。」
全員が構えた瞬間に大井は脱兎のごとく走る。
まるで閃光のような動きに翻弄されるもこちらは3人。
大井の右ストレートを町田は弾き吹雪がすかさず裏拳を顔に叩き込む。
大井は吹っ飛びながら転がるもすぐに復帰し空高く跳び上がる。魚雷拳だ。
町田「なんなあれ!!!!!」
利根「避けるんじゃお前ら!!!!」
ドゴオオォォォォッッッッッッッッ!!!!
バゴォォォォォッッッッッッッッッッッッ!!!!!
連続で叩き込まれる魚雷拳に避けるので精一杯の一行。
大井の動きは衰えるどころか次第にスピードと威力が増していく。
利根「次から次へと間髪なしに………!!!まるで魚雷じゃ!!!!」
利根は大井の攻撃で衣服がボロボロになったので破り捨て、ふんどしとサラシ姿に。
吹雪「しまっ……………!!!!」
大井の動きが読めず、吹雪はこのままでは直撃は免れない状況に。
利根「伏せろ吹雪ッッッッ!!!!!流砂塵(りゅうさじん)ッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!」
〜艦娘解体新書「技の巻」〜
「流砂塵」
利根が使う技のひとつであり、手のひらを地面に叩きつけ岩や土砂を突風の如く巻き上げる砂嵐である。
ズオオオォォォォォォッッッッッッッッ!!!!!
[newpage]
流砂塵に巻き込まれた大井は回転しながら吹き飛ぶ。
しかし先程同様すぐに復帰し、町田たちと距離を取った。
全身がドス黒いオーラに包まれたかと思うとすぐに黄色のオーラに変わる。
町田「進化か!?!」
吹雪「flagship!!!!!!」
更に動きが早くなり、次々となりふり構わずに突っ込む大井。
太い木々がふがしのようにへし折られていく。
走り抜けて躱す町田であるがすぐに追いつかれパンチとキックの猛ラッシュを受ける。
町田(なんちゅう威力じゃ!!!!!ガード壊しかよッッッッ!!!!)
町田は前から吹雪がこちらに向かい走ってくるのを確認すると、大井のパンチを受けつつもどうにか腕を掴み吹雪目掛け大井を投げつけた。
吹雪(ナイスタイミングっすッッッッ!!!)
体勢が崩れた大井に人差し指で何ヶ所か突き刺す。
すると大井は大きく転がりそのまま動かなくなった。
利根「………流石じゃのう吹雪…。」
吹雪「なんとか上手いこといきましたね…。四点体穴(してんたいけつ)…。」
〜艦娘解体新書「知の巻」〜
「四点体穴」
人間と艦娘のツボである四点を突くことによって神経麻痺を起こさせ動きを止めることが出来る。
右肩、胸の中央、右腰、喉をそれぞれ0.02秒の感覚で指を4cm刺すのはかなりの熟練の者でしか出来ないのであまり使われない。
しかし、どの麻痺ツボと比べても強力なのでどうしようもない相手にだけ使われる。
利根「どこで習ったんじゃ?」
吹雪「自衛隊学校でね…。」
利根「真剣に聞いておったか?」
吹雪「いや………実を言うと居眠りしながら聞いてましたね…。にしてもなんでそんな事を…?」
利根「以外と思われるかも知れんがな、吾輩は最初衛生班として学校に通っとったんじゃ。」
吹雪「そうなんすか…?確かに以外っすね…。」
利根は艤装が持てなかったが、衛生班として妹の筑摩と一緒に勉強しないかと海自に言われていた。
しかしまぁ、結局どこにも拾って貰えなかったのではあるが…。
利根「それで吾輩がお主に言いたいことはのぅ…。…………………こう言う事じゃッッッッ!!!!」
ドゴッッッッ!!!!!
吹雪は利根の蹴り(裸足)を胸に受ける。
吹雪「な!!!!何するんすか利根先………!!!!!」
グジュッッッッッッッッ!!!!!
利根は左横腹を大井の貫手で大きく抉られていた。
すかさず大井の顔面にストレートを決める。
その衝撃で大井のマスクはクラックが大きくなり、利根と距離を取った後にガシャンと音を立て完全に割れた。
利根「ぐぅ……………………ッッッッ!!!!!」
吹雪「利根先輩!!!!!!」
町田「利根ッッッッ!!!!!」
利根「吹雪…………あの四点体穴は指の深さ…突く場所は完璧じゃった…………じゃがタイミングがバラバラじゃ!!!」
利根「これが終わったら…吾輩の講義を受けてもらうぞ………!!!!」
その場でうずくまる利根。
横腹からはドクドクと大量に血が流れる。
町田はすぐに利根に駆け寄り軍服を噛み切り体に巻き付ける。しかしサラシではないので効果は薄い。
町田(クッソ………!!!鈍臭いの俺……!!!!全く反応出来へんかった…!!!!)
吹雪「クソッッッッ!!!!私のせいで……!!!!」
大井の顔は真っ白に染まっており、無表情で生気が全く感じられない。
そして急に高く跳びあがると思えば足の裏に黒いモヤが塊になっていく。
吹雪「まだなんかあんのかよ…………!!!!」
先程の魚雷拳を上回る威力で地面に突っ込む大井。
衝撃で岩盤ごと抉れ吹雪はそれに巻き込まれてしまった。
利根「グ………………!!!!!提督よッッッッ!!!これをッッッッ!!!!!!」
町田「利根ちゃん!!!!!!分かった!!!!!!」ガシッ
吹雪「っつ…………!!完全に足折れてやがる……。」
前を見ると大井が猛スピードでこちらに向かってくる。
次で仕留める気なのだろう。
ここから脱出するだけならば足が折れていても吹雪ならば出来る。
しかし、目の前の大井の事を考えれば時間が無い。
吹雪「間に………合わねぇ……!!!!」
吹雪が覚悟した時。
パァァァァッッッッンンン!!!!
と何か布の様なものが激しく何かに当たった音が響く。
見ると町田が利根のふんどしで大井の顔を包み、後ろから羽交い締めにしていた。
町田「距離離れてるけども吹雪ならいけるやろぉぉぉッッッッ!!!!今しか無い!!!!!殺れぇぇぇッッッッ!!!!!」
吹雪「……………!!!!!!」
町田「はよ………せぇや!!!!!!もうこれしかあらへん!!!!!!殺してやるしかもう出来へんのやッッッッ!!!!!」
町田(何で俺の能力が発動せんのや!!!!波動で影響与えるんとちゃうんかッッッッ!!!!全然大井戻らんやんけ、んの役立つがよぉ!!!!)
大井は逃れようと肘鉄でなんども町田を殴る。
町田の肋はとっくにバラバラであり、血を口から吹き出しなんとかこらえ続ける。
町田「吹雪いいぃぃぃぃッッッッッッッッ!!!!」
利根「やるんじゃ吹雪いいぃぃッッッッッッッッッッッッ!!!!」
吹雪「!!!!!!!!!!!」
吹雪が走り出そうとしたその時。
何かにふいに腕を掴まれ後ろを振り向き正体を確認する。
吹雪「き…………北上………先輩…。」
[newpage]
ビッコ引きながらズタボロの北上がそこには立っていた。
北上「ごめんね吹雪っち………みんな………酷いこと頼んじゃって………。」
北上「誰かが…姉妹が苦しんでるんだったら…その家族が真っ先に…助けてあげないといけないのにね…。」
北上「ほんっと………なっさけない女だよ……。」
吹雪「北上せ…………。」
吹雪が喋ろうとすると手をパーにし、それを制止する。
北上「ごめんね大井っち……。最初に殺してって言ったのに………。そん時に私が躊躇したから………余計に苦しむ羽目になっちゃって……。」
北上「大井っちは…私が…すぐにぶっ殺してあげるべきだったよね………。」
町田「北上ちゃん……………。グオッッッ!!!!!」
大井に横腹を殴られるのと同時に股間を蹴り挙げられた町田。
横腹は黒に近い青あざが出来ており、見るも耐えない。
大井は北上に向い全力で駆ける。
町田「逃げろ北上ッッッッ!!!!」
北上「……………………。」
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(ずっと会いたかったんです!!!)
(ずっと探してたんですよ…。)
(姉妹の事…、北上さんの事…。)
(素敵な鎮守府ですね…。)
(一緒に居れて嬉しいです!)
(北上さんとお買い物…すっごく楽しいです…。)
(良いんですか!?ありがとうございます!ずっと大切にしますね!!!)
(これからもずっと……一緒に居たいです…。)
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北上「ごめんね……何にもしてあげられなくて…。」
北上(ずっと一緒に居たかった…。一緒にご飯食べたり、仕事したり、遊んだり、鎮守府の皆と一緒に過ごしたかった…。でも……………………もう……………!!!!!!!!!)
北上(だからせめて……………せめての………!!!!)
北上は覚悟を決めた顔で顔の横に手刀を構える。
大井は北上の目の前まで接近。
北上「最初で最後の……!!!!!!姉心だよッッッッ………………!!!!!」
手刀を横に振りかぶる。
それは大井の首に当たる瞬間の事であった。
大井「…………………。」
大井「ありがとう…北上さん…。」
北上「!!!!!!!!」
ザンッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!
[newpage]
最後に大井は笑顔であった。
首をはね、大井の体が倒れる。
北上「…………………………。」
町田「…………最後の最後で……大井は勝ったんや………。」
利根「実の………魂子の姉に…礼を…言うために…。」
吹雪は大井の服のポケットから何かがはみ出ている事に気が付き、折れた足を引きずりながらそれを確認した。
それは紙袋であった。
吹雪「……………あ………。」
中を確認した吹雪は徐にそれを北上に渡す。
吹雪「北上先輩はさっき、何にもしてあげられなかったって言ってましたけど……大井先輩はそう思ってなかったみたいっすよ………。」
北上が渡された紙袋の中身を見るとそこには手紙と写真、さらに袋が入ってあった。
写真は昨日撮った集合写真である。
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このアクセサリーとっても可愛いです!
一生大事にしますね!
これはお返しです!北上さんに合うと思って買いました!
使ってくださいね。
それにしてもすごく良い鎮守府ですねぇ……。
ここに所属出来て良かった…。
ずっとみんなと、北上さんと一緒に居たいなぁ…。
大井
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袋の中にはカーキ色のネクタイが入ってあった。
北上は紙袋ごと強く握りしめる。
北上「わ…………私…さぁ……。こんな………こんなに愛されてるのに…………それを…さぁ………。」
北上「私は…………この世で1番どうしようもない雷巡だよ…………………!!!!!!!!!」
ボロボロと涙を零す。
吹雪は北上の肩に手を置き、大井を鎮守府に連れて帰ってあげようと。
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鎮守府の裏にある海辺。
そこに大井の墓はたてられた。
辛い話ではあるが、大井の割れたマスクを大淀が調べた結果脳神経や細胞全てを侵食する物質でできており、どの道大井は助からなかったのだ。
最上、大淀、筑摩が北上たちを見守る。
利根「吾輩も…あの工場にずっとおったら…大井みたいに改造されておったのかもしれん…。」
筑摩「………………。」
お墓の前で手を合わせる北上たち。
後ろで物音が響く。
それは胸に大きな穴を開けた古鷹を抱き抱えるズタボロの加古と睦月、電、金剛であった。
大きな目を開き驚いた表情を浮かべる加古。
全員が心に悲しみの大雨を降らせるさなか、天気は快晴であり、まるでその雨を乾かそうとしてるかのようにお天道様がギラギラと照らし続けるのであった。