川内と吹雪が周りの客やマスターに頭を深く下げ、修理費用はおいおい払うと伝える。
マスターも鎮守府絡みは面倒くさいからか、すんなり許してくれた。
吹雪「大丈夫っすか神通先輩。」
神通「大丈夫だ。心配すんな…。にしても………なんでアイツいっつもあぁなんだか…。昔っからか?」
吹雪「天龍先輩は…龍田先輩2人で指名手配犯だったんすよ。元チンピラみたいなもんすね。」
神通「なるほど…そりゃあ納得がいくぜ…。」
川内「神通。そんな言い方無いでしょ。」
龍驤「でもあんたもあんたやで。なんでウチらが仕事してんのに1人でアホみたいに飲んどんねん。」
神通「だーかーらー!これには訳があんだよ!!!」
龍驤「なんやねん。」
徐に口を開く神通。
みんなも働いているので酒を我慢しながら聞き込みをしていた。その時におっさんに声をかけ話を聞くと、どうやら昔ギンコムで働いていた事があるらしく詳しく聞くことが出来た。
しかしまぁこんなとこで立ち話もなんだと言うことで酒場に入ったのだ。おっさんは酒場の常連であり、今から行くところだったらしい。それに美人と酒を飲むのが趣味らしく奢ってやると豪語。
だらしない姿が固定化されているも、黙って普通にしていたら神通は物凄く美人である。
そしてそのまま調子に乗ってしまい、集合予定時刻を忘れ酒をグビグビと飲んでしまったのだ。
川内「なんですぐに話さなかったのさ。」
神通「話そうとしたよ!!!そんだら急にあいつが殴りかかってきやがって………。」
川内「いいや、天龍は直ぐにはそんな事しない。あんた喋んの遅かったんでしょ。あんた大事なこと喋んの遅いんだから。」
神通「姉貴は天龍の肩持つのかよ!!!」
川内「肩も何も事実を言ってるだけ。」
神通「……………!!!!!」
吹雪「にしても、なんで神通先輩は酒ばっかり飲むんすか。ただただ好きってのもあるんでしょうが、なんか引っかかるんすよ。」
神通「……………………。」
暗い顔をし、俯く神通。
眉間に皺を寄せているのには何か理由があるのだろう。
川内「……………話したら…。そろそろ。」
右手に持っていたボトルを1口ゴクリと飲むと徐に自分の過去について話し出した。
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俺は昔、運良く姉貴と那珂の三姉妹で亞戸間(あべま)鎮守府に所属してた…。聞いた事ぐれぇあんだろ?前線で戦ってた鎮守府だからな。
最初こそ頑張ってたさ。私もこんな性格じゃ無かった。
艤装も持てたし水上も走れてた。前世は艦で今は人の形。
生きていることに喜びを感じながら、人を助ける使命に燃えてた。
そりゃ前線で戦ってただけ厳しい鎮守府だったよ。
それでも姉妹と…鎮守府の仲間と提督と…暁の水平線に勝利を刻むため毎日奮闘してた。
でも…………あの件のせいで何もかもが狂った。
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神通「ぐっ………!!!敵の数が多い……!!!それに良く前が見えねぇ……!!!」
嵐の中、深海棲艦が大量に攻め込んできた。
鎮守府の防衛ラインを突破され、他の艦娘たちも大怪我をおい大破や中破だらけであった。
避難誘導のもと、市民を避難させるもこのままでは巻き込んでしまう。
完全に提督のミスであった。避難誘導を出すのが遅すぎたのだ。
他の艦娘を庇いながら遊撃部隊を待つのは神通1人ではあまりにも重すぎた。
神通(姉貴……!!!那珂……!!!早く来てくれ…!!私一人じゃキツすぎる…!!!)
無論、遊撃部隊も暇を持て余している訳では無い。
各方面からの侵攻に苦戦を強いていた。
ドォォォンンンンッッッッッッッッ!!!!
砲撃で敵駆逐艦などを屠るも相手の編成には空母や戦艦までもいた。
次の瞬間ル級の砲撃が神通に直撃。
吹き飛びながらも後ろにいたツ級に羽交い締めにされる。
それを逃さずにル級とタ級が神通を狙う。
神通「ぐッッッッッッッッ!!!な………めんなッッッッッッッッ!!!!」
肘鉄と艤装でツ級の脇腹を殴り、ダンビラをル級めがけ投げつける。
顔に刺さり神通の砲撃を受け撃沈するも、横にはタ級がまだ生きている。
このままでは殺される。捨て身の戦法を決意する。
タ級の砲撃を躱しつつ、ほぼゼロ距離まで近づく神通。
タ級が構えるも神通の方が速く、そのまま会心の一撃。
しかし撃沈寸前で仰け反ったタ級があらぬ方向へ砲撃。
その方向は逃げ遅れた子連れの家族が居た。
神通「なッッッッッッッッ!!!しまッッッ……………。」
ドガァァァァァァッッッッッッッッンンンン!!!!
直撃は免れなかったのだ。
神通「………………………。」ドサッ
目を大きく開いたまま膝をつく。
助けることができなかった。
嫌な言い方にはなるが、せめてもの救いは家族全員一緒に死んだという事であろうか…。
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その後遊撃部隊が駆けつけ激戦は収まり、瓦礫の片付けや救助活動などの後始末をしてその場は収まった。
死者数21名、負傷者139名。
これを機に各鎮守府の戦力を上げるプログラムが始まった。
あまりにも犠牲者が多すぎた。
軍属の人や艦娘も心身ともに来ただろう。
だがしっかりと前を向き地に足をつけ他の守るべき人々のために日々尽力を尽くしていた。
しかし、神通は耐えられなかった。
目の前で吹き飛ぶ家族。
宙を待っていたのは幼い子供の腕だろう。
その光景が鮮明に焼き付いていた。
それからだ。神通が浴びるように酒を飲み始めたのは……。
それだけではなく神通はPTSDで艤装の展開、水上歩行なども出来なくなっていた。
言い方は悪いが、そんな役立つを置いておくほど鎮守府も余裕がある訳では無い。
神通は解雇通知を受け暴れに暴れまくった。
鎮守府の窓や物を壊し、艦娘に対しても同じように暴れる。
しかし、数の暴力もあり返り討ちに会いそのまま鎮守府を追い出される形となったのだ。
神通「そりゃ私が悪いさ…。人さんを見殺しにしたんだからよ…。でもあん時の提督も提督だったんだよ…。」
そう。他にもショックやPTSDで動けなくなった艦娘は居た。しかしその艦娘は手厚く介護されたり治療を施されていた。
では何故神通はそんな待遇を受けれなかったのか。
神通が助けることができなかった家族は「上級国民」だったのだ。
それでバツが悪くなり、神通は鎮守府や周りから白い目で見られたのだ。
神通「それで………酒飲まねぇと………耐えられねぇんだ…。手が…震えて…、あん時の記憶が…鮮明に蘇るんだよ…。」
川内「それは分かるよ。無理に飲むの辞めろとは言わないけどさ…。ちゃんと伝えなきゃいけない事は伝えないと。」
神通「……………………。」
吹雪「川内先輩と那珂先輩は何故鎮守府を?」
川内「あの時は提督の判断ミスが大きかったのに神通に全責任を押し付けたからね。それはおかしいって抗議したら仲良く三姉妹、クビだよ。」
川内「それからそれぞれ別れることにしたんだよ。天からのお伝えがあってね。そうしたら皆成長出来るって。」
神通「仏さんねぇ………。ま、那珂には嫌われたけどね。」グビグビ
川内「嫌ってないよ。ずっとあんたの事気にかけてたから。今でも手紙来てんの知ってんでしょ。無視してんのあんたでしょ。」
神通「どうせ恨み辛みの内容だろ。」
川内「またそんな事言う。」
睦月「神通さんの事はわかったにゃしぃ…。でも天龍さんが心配にゃしい!探してくる!!!」
龍驤「うちもそうするわ。」
吹雪「………………。」チラッ
3人は天龍を追いかけバーを後にした。
店内に残るは川内と神通の2人のみである。
神通「ケッ…勝手にしろ…。」ゴクゴク
川内「ほら、私らも迎えに行くよ。もし深海棲艦に襲われてたらどうすんのさ。」
神通「アイツなら大丈夫だろ。」
川内「アイツらも強くなってんだよ。ほら。」
神通「姉貴ひとりで行けや。私は知らねぇ。」
川内「アンタねぇ…。仏さんが傷ついてどうしようもなくなったアンタにまた生きるチャンス与えてくれてんのがわかんでしょ?荒れてた時人様から金品奪おうとかもしてたけど、それら引っ括めてまたやり直しの場…」
神通「うるっせぇな!!!ま〜たお得意の説法かよ!!!聞き飽きてんだよそんなもん!!!喧嘩売ってるようにしか聞こえねぇんだよ!!!」
暫し睨み合う2人。
しかし折れたのか神通が口を可愛く尖らしフンッとそっぽ向く。
川内「そう…。それがあんたの答えね…。じゃあいつまでも不貞腐れてろ!!!」
川内はバーを後にした。
軽く後ろを確認すると神通は項垂れていた。
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バーを出ると目の前に睦月がこちらに走ってくるのが見えた。
睦月曰く道行く人に尋ねると髪の毛が紫の姉ちゃんがバイクに乗ってどこかに行ったとの事であった。
吹雪「どこ行ったんすかね…。」
龍驤「も〜!!!アイツもアイツで面倒やの〜!!!」
4人がどうしたものかと考えているとふと声がかかった。
神通「海だろうな。」
吹雪「神通先輩…。」
神通「アイツ、嫌なことあったら海を眺めるつってたからよ。確かこのまま真っ直ぐ行ったら岬のはずだ。」
睦月「神通さん!やっぱり天龍さんが心配にゃしぃ!」
腕を組みまたそっぽ向く神通。
しかし今度は面白い顔をしながら懸命に啖呵を切る。
神通「あたりめぇだろ!!!天龍は…私の…親友だぞ…。」ボソボソ
川内「そんな照れんでもいいじゃんか…。えらいよ神通。」
吹雪「そうそう。私らは何があっても裏切ったりしませんよ。」
睦月「こんな楽しい鎮守府他には無いにゃしい!」
龍驤「そうそう!アンタが思てる以上に檻巌鎮守府は一枚岩なんや。切りたくても切られへんで〜!」
龍驤「ちょっちキツイけど、ウチの式神乗るで!!!」
神通「おう!」
5人はなんとか式神に乗り、天龍を追いかけるのであった。