最上は目を覚ましガバッと起き上がる。
顔がなんともない。
確かにめり込むように顔面を殴られたはずだ。
どうなっているのか確認すべく、近くに落ちていた鏡の破片を覗き込んだ。
怪我ひとつ無い。それどころか寧ろ肌の質感が前よりも良くなっている気がする。
そこで最上は確証した。情けをかけられたのだ。
負けたことよりも情けをかけられた方が腹が立つ。
足元にあったコンクリートブロックを当たり散らすかのように蹴飛ばし、ジャージに手を突っ込みトボトボと歩く。
特に行先は無い。帰る場所も守るものも無い。
最上は独りであった。
しばらく歩いていると開けた公園のような場所にでた。
公園と言いきれないのは周りにある瓦礫の山や、崩壊し残骸と化した遊具のせいである。
グー………と腹が鳴る。
いつもならごみ箱などを漁るが、ここにはそれらしきものが無い。
顔を上げると少し先にコンビニらしきものがある。
そこもお約束のように崩壊している。
最上「ん………、なんだ残ってんじゃねぇか。」
店の中もぐちゃぐちゃではあるものの、パンやおにぎりなどが残っていた。
こんな状況である。窃盗もクソも無い。
最上は壊れた買い物カゴにあるだけの食料を入れコンビニを後にした。
先程の公園に戻る。
壊れた滑り台に座りジャムパンの封を開けかじろうとした。
少女「………………。」ジッー
最上「…………………んだよ。」
最上「……………………。」ドサッ
少女の目の前に開けたパンと買い物カゴを置く。
そしてまたジャージに手を突っ込み歩こうとした。
少女は慌てるような動きをし最上の前に出た。
最上「……食えよ…。腹…減ってんだろ…。」
少女は最上の心配もしているのであろう。
少しだけ分けて欲しかったのであろうが、まさか全部くれるとは思わなかった。
最上「いらねぇよ…………。そもそも生きる気なんざ無ぇ…。」
最上「いつ死んでも…どうでもいい…。」
少女はそう言う最上の手を引っ張り滑り台に座らせる。
最上「おい………。」
最上「………。」
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最上は少女とパンをつんくじっていた。
少女がおにぎりを食べようとするも開け方が分からない。
それをおぼつかない手で優しく開けてあげる最上。
少女は笑顔でおにぎりを頬張った。
最上「お前親は?」
少女「…………。」ブンブン
最上「つか名前は?」
少女は木の枝で地面に名前を書いた。
「まり」、という名前らしい。
最上「まり……か。俺は最上。てかなんで喋んねぇ………。」
最上はある事に気がつく。
少女の喉元になにか縫合したような後がある事に。
聞いたことがあった。
気色の悪い上級国民の1種は幼いこどもの声帯を好んで食べると。
高値でやり取り出来るため、このご時世では誘拐や拉致などはどこにでもあった。
最上「……………………チッ…。」
まり「……………?」
最上「お前にじゃねぇよ。」
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最上はそのまりに引っ張られどこかに案内される。
振りほどこうと思えば簡単に出来る。
しかしこの状況は最上にとって別に悪くなかった。
寧ろどこか居心地が良いとすら思える。
曲がり角を曲がると小さな花畑があった。
最上「………………綺麗だな…。」
まり「!!!」ピョンピョン!
最上「…………くれんのか…?」
最上は少女から花の冠を頭に付けてもらった。
初めてだ。こんなにも接してくれた人間は。
それから最上はそのまりと一緒に過ごすことになった。
しかし、やはりと言うかその小さな平和は続かない。
まりの体調が悪いので1人何か食べ物が無いか探しに行っていた最上。
適当な食べれる野草しか無かったが無いよりはマシだ。
最上「帰ったぞーまりー!」
返事がない。
いつもならばドタドタ走ってくる音が無い。
心配になり小さなあばら家の中を覗く。
すると1枚の紙切れが落ちていた。
今日の18時までに紅蓮の地に来い。
さもなくばこのガキの命はない。
グシャッ!!!と紙を握りしめ摘んでいた野草をほおり投げ脱兎のごとく走った。
最上(誰だ………!!!!もしまりに何かあってみろ!!!!!!誰であろうがブチ殺すぞ!!!!!!)
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チンピラ「ん?思ったより着くの早いじゃん。」
目の前には15人程度のチンピラ。
最上「テメェらまりはどうした。」
チンピラ「ここだよ〜ん。」
最上「まりっっ!!!!」
まりは十字架のようにロープで磔にされていた。
口にはガムテープを付けられている。
チンピラ「声帯剥ぎ取ろうとしたけどよぉ、こいつもぅねぇじゃねぇか。」
ハッハッハッハッハッ!!!!!!
最上「テメェら…もしまりになんかしてみろ…。そんときゃ全員ぶっ殺すぞ。」
チンピラ「俺らだけじゃありませ〜ん!!!」
すると後ろからズラズラと深海棲艦が出てくる。
数は15人。
合わせて30人は居る。
最上「上等じゃねぇか………!!!全員ぶっ殺してやらぁぁぁっっっっっっ!!!!!!」
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最上「ゴブッッッ」
ドサアァァッッ
チンピラなどは問題では無い。
深海棲艦が連携の取れた動きで最上を圧倒していた。
最上(こ………こんな強えのか……深海棲艦って………。)
チンピラ「大丈夫。お前を犯したりしたいわけじゃねぇ。メシアに捧げんのさ。お前の命を。」
最上「な………………なに……言って…やが………。」
立ち上がろうとするも体が動かない。
ネ級が目の前まで近づく。
腕を振りおろされ、ここまでかと思った最上。
最上(まり……………まり…だけは…。)
するとその瞬間ネ級の上半身と下半身が分裂。
紫色の血を撒き散らしながら絶命。
最上「……………??」
「大丈夫か?瑞雲。」
「もう大丈夫だからね。」
最上「あ……………あんたら…。」
チンピラ「助っ人かぁ?…お前らも艦娘か!!!お前ら殺るぞぉぉぉ!!!!!」
チンピラ・深海棲艦「うぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!!!!!!」
伊勢「もう人間じゃないねお前ら。」
日向「なればやることは1つ。」
伊勢・日向「瑞雲流ー」
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最上「ハッッッ!!!!」
日向「動くな。今修復剤を体に塗ってる。」ニコリ
最上「え……………あ!あいつらは!まりは!!!?」
伊勢「まりちゃんって言うのねこの子。可愛いわぁ〜。で、あいつらは大丈夫。」
まりを抱っこする伊勢が後ろに指を指す。
そこには血まみれの深海棲艦とチンピラたちが居た。
もう既に屍である。
最上「まり………良かった………。ていうか…お前ら2人だけであの人数を殺ったのか…………。」
日向「瑞雲に不可能は無い。艦娘において、瑞雲は最強だ。」
伊勢「あなた、ただのチンピラと思ってたけどそうじゃないみたいね。もし…もし良かったら一緒に瑞雲やらない?」
最上「………………………。」
まり「!!」ニッコリ
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最上「で、その後に伊勢と日向と瑞雲流拳法を師匠のところで学んだのさ…。」
町田「そうやったんかぁ………。ところでまりちゃんは?」
最上「信頼できる施設に入ったよ!まりみたいな子を育てる…一緒に暮らす家に…。耀子って人と戦艦武蔵がやってたんだっけな。」
金剛「素敵な話デース!」
龍驤「その後どうしたんや?あんた、あの工場に捕まっとったやろ?」
最上「………………。」
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その後、まりを宝石の家に預け師匠の元で瑞雲流を極めていた。
しかし、最上は上達がかなり遅く他の艦娘や人間と比べて下手くそであった。
最上「クソッッッ!!!!」
最上「次こそ……………!!!!」
最上「華山雲ッッッ!!!!」
ザンッッッッッッッ!!!!!!!
目の前の巨岩が横1文字に真っ二つになる。
ドサァァァッッッ!!!と大きな音を立て巨岩の上部崩れ去った。
最上「た……………やった!!!!!出来たぞ!!!!」
気がつくと後ろから師匠がこちらに向かい歩いている。
やっとのこさ技が出来たので喜びながら報告する最上。
最上「師匠!!!見てくれ!!!やっと出来たんだ!!!」
師匠と呼ばれる人物は冷静な目で最上の手を見つめた。
何度も何度も練習したのであろう。
皮膚は裂け、血が滲んでいる。
テーピングをしているが、それも意味を成してないほどにボロボロであった。
そして次に目線を巨岩に移す。
師匠はゆっくりとそこまで移動。
師匠「最上。」
最上「はいっ!!!」
パシン!!!!
最上「………………え…。」
最上は頬を押さえる。
叩かれたのだ。
最上「な……………何すんだよッッッ!!!!」
師匠「見てみろ。」
師匠の目線を辿る。
最上「あっ……………!!」
そこには岩に足を下敷きにされたリスが居た。
片足が潰れ苦しそうにもがいている。
師匠は軽く岩を蹴飛ばしただけでまるでサッカーボールのように岩は遠くに飛んで行った。
最上はリスに駆け寄り何度も謝る。
師匠はそのリスを手のひらに乗せたかと思うと、鮮やかな黄緑色のオーラが滲み、リスの潰れた足は何ともなかったかのように回復。
師匠「お前は自分の技を極めんとし、周りを見ていなかった。そして成功したから褒められたくて俺に報告したのだ。」
師匠「言っただろう。技を極めるのは腕にあらず、心にあり…と。」
最上「………………………。」
師匠「お前に教えることは何も無い。頭を冷やせ。」
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大淀「それで…お師匠さんの元を…?」
最上「うん…。それでまた一からやり直すために髪の毛も地毛にして喋り方も直して…見た目も普通にしたんだ。」
最上「で、その後に例の工場にたくさんの艦娘と人が捕まってるって聞いて…。名誉挽回のために孤軍奮闘したんだけど………………。情けなくも返り討ちにあってね…。」
町田「そうやったんか………。教えてくれてありがとうなモガミン。どこでお師さんに鍛えて貰ったんや?」
最上「比叡山だよ。でも今は居ないと思う…。」
比叡「ひえー!」
最上が言うには師匠率いる瑞雲流は日本各地を移動しながら修行をしているようで、1箇所に留まっている訳ではないとの事。
最上「みんな…元気してたら良いんだけどね…。」
町田「にしてもそのお師さんて何もんなんや?人間か?」
最上「人間だったよ。普通では無かったけどねwそれに確か日向が元提督だとかなんとか言ってたような気がする。」
町田「なんやと!提督やと!?」
吹雪「提督?町田司令官みたいな深海棲艦の血が入ってる人だったんすかね。」
町田「ほな話は早いがな!元提督やったら大本営に履歴が残っとるはずや!聞きに行こうや!!!」
天龍「大本営ねぇ………、えらい長旅になるな…。それに行く機会がねぇ。電話じゃダメなのか?」
町田「確かになぁ………、でも電話しても絶対に答えへんぞアイツら。ていうかまず出てくれへん。」
ふと何かに気づいたかのように加賀が口を開く。
加賀「ところで提督。さっきあきつ丸から貰った封筒…何なのかしら?」
町田「ん…せやな、見てみるか。」
町田が自室に戻り、2〜3分経ってからリビングに戻ってきた。
封筒と共に。
町田「おもろいの…天龍ちゃん。」
天龍「?なにが。」
町田が大きく見せた資料には堂々とこう書かれていた。
「陸海空合同会議」と。