叢雲は最初[[鏉个 (ほるこ)]]基地に所属していた。
そこの鎮守府は最前線で戦っていたこともあり戦績と周りからの評判は高かった。
提督も40代という若さで少将まで登り詰める実力の持ち主であった。
しかし、実態は周りから得れる評判とは全く事情の違うものであった。
そこの艦娘は毎晩提督の下の世話をさせられていた。
無論、介護のような立派な理由ではない。
慰めものだ。
順番は代わる代わる行われ、叢雲も当然回ってくる。
それだけでは無い。暴力も食事を与えられぬいなども頻繁にあった。
しかし艦娘は逃げることなどは考えなかった。
そんなことをした所で行く宛てなど無いからだ。
毎日泣きじゃくり、鬱寸前になる艦娘も存在した。
しかしそれでも叢雲は逃げようと説得を続けた。
全て無駄に終わると分かっていても…。
そして遂に叢雲は戦闘の後遺症で艤装を展開できなくなり、鎮守府内では除け者扱いを受けた。
それでも優しくしてくれる、接してくれる艦娘は存在した。
それもあり、精神的にも限界が来た叢雲は提督に扱いを変えるように直談判。
だが聞く耳を持たず。
挙句の果てにはその場で提督に殺害されそうになったところを反撃。
そして殺害してしまったのだ。
叢雲「責任は全部私が取るわ!これでもうみんな暴力振るわれることも、襲われることもないわよ!」
嬉々として報告するも、皆から帰ってくる反応は想像とは違った。
叢雲「な…………なんでそんな目で見るのよ………。なんで睨むのよ!!!」
戦士としてしか生きてこなかった艦娘。
提督が死んだことによりその鎮守府の内情がマスコミに流れ、解体。
全員が拾って貰えた訳ではなく、路頭に迷う艦娘も発生。
こんな目にあうならば提督の言いなりになる方が良かったと叢雲を責め始めた。
無論叢雲は情状酌量があるとは言え提督殺害の容疑で追放。
野良艦になった。
なんとか日雇いなどをこなすも、安すぎる賃金や悪列な職場関係で続くことがままならない叢雲。
ゴミなどを漁りその日をやっとのこさ生き延びる日々。
しっかりとした鎮守府に所属する艦娘や人間からは蔑みの目や、可哀想などといった目で見られた。
心身共にボロボロになった末、とある場所にたどり着くのであった。
日畑藤「お!もしかして、新しく来てくれた初期艦の子か?!」
日畑藤提督であった。
日畑藤「って!!!ボロボロやないか!!!大丈夫か!?小さい鎮守府やけど、ドックはしっかりしてるから入ってや!!!」
言い返そうも手を払おうとも力がなく、日畑藤にされるがままにドックに入れられた。
服も下着も脱がされたが、下心などは感じられず兎に角助けたいんだろうと言う優しい気持ちが肌を通して伝わる。
初めて人の優しさに触れた叢雲は涙を流し、日畑藤に抱きつき赤子のように泣きじゃくった。
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その後、似たような理由で艦娘がワラワラと集まった。
12人しか居ない鎮守府と言うには小さすぎる集まりだ。
日畑藤はくせっ毛のある長髪。身長は176cm。
モデルか俳優をやっていてもおかしくないレベルの容姿。
みんな日畑藤に恋をしていた。
異性として、親として、兄として。理由や思いはそれぞれであろう。
貧乏な上、バイトと依頼をこなしてやっと生活ができるレベル。
しかし、それでも楽しかった。
凄惨な過去を忘れられるくらいに…。
それに楽しいのは鎮守府だけが理由ではなかった。
「提督さんや〜!野菜持ってきたぞ〜!!!」
「クッキー焼いてみたの!みんな食べて食べて〜!!!」
街の人たちの優しさであった。
それぞれが自分たちの事で精一杯にも関わらず、食料や色々な日常品を持ってきてくれる。
まるで家族のような存在。
それで心が更に温まった。
拾熄鎮守府は館山の更に端にあり、海や陸の深海棲艦を相手にしていた。
理由が理由なので海よりも陸を相手にすることが多かったのであるが、そこは檻巌鎮守府と同じである。
周りの人達は優しく接してくれたものの、そこから向こうの人達からは疎まれていた。
艦娘は恐ろしい、武力を使って支配する気なのだろうと行った言われのない憶測を持っていたのだ。
しかし家族が居る叢雲はそんなことはもうへっちゃら。
何も気にしないでいた。
あの時がくるまでは。
叢雲「あ!吉川さん!こんにちは!」
吉川「ん………?あぁ、叢雲ちゃんか……。こんちは。」
叢雲「……………?」
ニッコリと笑うものの、どこかぎこちない吉川。
不思議に思いどうしたのかと尋ねる。
徐に口を開く吉川。
どうやら最近他の市町村の人とかなり揉めているとか。
それだけではない。最近変な宗教を勧められているらしい。
暁「え?揉めてるって………喧嘩とかじゃなくてその宗教を勧めてくるの?」
吉川の孫の美乃里ちゃんをヨシヨシする暁。
美乃里ちゃんは今年で7歳である。
吉川「あぁ…?でな、その宗教…………。深海教って言うらしいんだよ。」
夏潮「深海……!??!!おっちゃんあかんで!そんな変な宗教にまけたら!!!ウチらも言うたるわ!!!次来たら教えてぇな!!!」
東雲「そうですよ!!!他の区域の人達にも伝えてください!!!」
吉川「もちろんだ!艦娘は、鎮守府は俺たちの味方だって!家族だって!負ける訳にはいかねぇよ!!!」
その場ではいい笑顔で話し合いが終わり、このご時世だからこそ祭りをしようと言う話になった。
大きな祭りではないが、少しでも雰囲気を楽しくするために盛り上げようと。
依頼を終えた扶桑たちにもこの事を伝え、日畑藤と艦娘が集まり仲のいい人達とともに祭りの準備に取り掛かった。
青葉「相も変わらず子供たちにモテますね〜山城さん!みんなこっち向いて〜!」
子供たち「はぁ〜〜い!」
パシャバシャッ!!!
山城「もぅ〜、こんなんじゃ不幸だなんて言えないじゃない……。」
信濃「嬉しそうな顔をしてますよ〜。」ニコニコ
扶桑「可愛い…………みんないい子ね〜。」ヨシヨシ…
大鳳「ここに来れて本当に良かった…………。阿武隈さんもほら…。」
阿武隈「うん…………。」
笑顔で返す阿武隈。
以前、深海側に操られた長良と戦い、殺してしまったのだ。
心身ともに衰弱してしまったが、周りの優しい人と家族のお陰で少しづつ元気を取り戻す。
全員で祭りの準備を楽しんだ。
それを見ていた影に気づかずに…………。
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前日は明日は祭りなので中々寝付けなかった。
日頃からレディレディばっかり言っている暁が1番はしゃいでいた。
日畑藤に頭を撫でられ、明日に備え早く寝るようにと促される。
ワクワクしながら床に就く。
しかし楽しみなのは暁だけでは無い。
鎮守府のメンバー全員である。
目を閉じ、楽しい事だけを考え眠りについた。
しかし翌日、離れたところに深海棲艦がワラワラと出現。
急いで現場に向かう。
何故か近辺には現れた報告を聞かなかったので、吉川率いる区域の人達に避難勧告だけを伝える。
拾熄鎮守府は全員改二になれるまで鍛え上げていた。
もちろん普通に鍛えた訳では無い。
鹿島神宮や高尾神社に修行をしに行っていたのだ。
その間は陸上自衛隊の一派が町を守っていた。
最近の情勢のせいで日本人は少なく、外人が多く揃っていた。
しかし腐っても自衛隊。
全員しっかりものでとても気のいい人達ばかりであった。
信頼出来る。
しかし、あまりも治安情勢が悪くなっているので改二になったのを節目に一旦修行を中断。
鎮守府に戻ったというわけだ。
急いでflagshipの群れを蹴散らし、町に戻る一行。
近辺には出現情報は無い。
しかし、日畑藤を含め全員がなんとも言えない嫌な気持ちを心に抱えていた。
これの正体はなんなんであろうか…。
またみんなの笑顔が見たい…………。
早く一緒に楽しい祭りをしたい………。
それだけを希望に持ち、町に戻った。
そこはみんなを受け入れてくれる姿ではなく、瓦礫の山であった。
叢雲「なっ………………………何よこれ…………………。」
美味しい野菜の取れる畑。
楽しくテニスをしたコート。
お金が無いのに無料でご飯を食べさせてくれた定食屋。
無邪気に走り回る子供たちと遊んだこども園。
全てが崩壊していた。
日畑藤「これ…………………。」
何かを見つけた日畑藤。
なんのガラクタかと思っていたがよく見るとひしゃげた戦車の一部であった。
これを見るに陸上自衛隊が戦闘をしたのがわかる。
ゆっくりと周りを見ながら人を探す。
しかし人っ子一人も居ない。
夕月「みんな避難出来たんですね………良かった…。」
阿武隈「ダメだよ!私たちが帰ってきたって!安心させないと!」
扶桑「そうね………!にしても………どこに避難したんでしょう…………。」
青葉「集会場!!!集会場に行ってみましょう!!!あそこは防弾で出来てますし、陸自の駐屯地がありますから!」
東雲「行こう!」
全員急ぎ足で集会場に向かう。
すると当然のように集会場はボロボロ。
しかし、他の崩壊していた場所とは違い外面はまだ綺麗である。形が保っているのだから。
汗が流れ、動悸がする。
お願いだから無事でいて………。
そう思い、取っ手が壊れた集会場の扉を開く。
吉川「叢雲……………ちゃんか………?」
叢雲「あっ!吉川さ…………………………」
吉川「ゴメンな…………………そこに……タバコ………ねぇかな…。吸わせて………………くれねぇか………。」
吉川は両目が潰れ、四肢を切り落とされていた。
周りを見ると大勢の男と女が町の人達の衣服を剥がし、犯す者も居れば体を切断し弄ぶ者たちも居た。
こどもたちも例外では無い。
叢雲「ウワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
泣きながら吉川を抱き上げる。
しかし既に事切れていた。
周りの人間もどきはニヤニヤと笑いこちらを見ている。
これが人間のやることか?こいつらは本当に人間なのか?
目から血が流れ出す叢雲。
他のメンバーと日畑藤も同じである。
叢雲「…………………じゃない。お前ら人間じゃない……………………………!!!!!!!!!!!」
日畑藤「地獄に落ちろゴミクズ共おおおおおおぉぉぉおおぉぉぉッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
━━━━━━━━━━━━━━━
叢雲たちはその場の人間の形をしたやつらを皆殺しにした。
膝をつき、目から光が消えた叢雲たち。
すると後ろから肩に手を置かれ囁く声が響く。
深海日棲姫「わかったか………?これが人間の本性だ…。」
叢雲「…………………………。」
深海日棲姫「お前らと仲良くしていた町の者たちは、深海教に入ろうとしていたんだ。最初に深海教を名乗り誘っていたヤツらが今お前らが殺したクズ共だ。」
深海日棲姫「深海教はこの世からクズどもだけを抹殺する教えがある。その吉川と言う者も勇敢に立ち上がり入ろうとしたのであろう…………。それをこのクズ共は気に入らなかった…………。それでこんな酷いことをしたのであろう…。」
日畑藤「…………………深海棲艦は……罪もない人も殺しているだろう…………。」
深海日棲姫「それも大きな誤解だ…。各政府が気に入らない奴らを殺し、それに合わせ洗脳をかけているのだ。深海棲艦はそんな事はしない…。寧ろ人助けをしている…。」
深海日棲姫「深海教には深海棲艦だけではない。立派な人間たちも居る。だから君たちにも入ってもらい、この教えを引っ張っていって欲しいのだ……………。」
全員がゆっくりと力無く深海日棲姫を見つめる。
深海日棲姫の目はどす黒く輝き、拾熄鎮守府のメンバーを見つめ返す。
深海日棲姫「こちらに来るのだ…………。世の中を正そう……………。」
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吹雪「違うぞ………………。その最初に襲ってきたクソ野郎ども………………そいつらこそ深海教のパシリだ……………。」
叢雲「黙れ!!!!!アンタらに何が分かんの!!!!大切な人を助けられなかった!!!!なすすべもなく殺された気持ちが分かんの!!!!!?」
電「電たちも守れなかった人達が………艦娘が居るのです……………。お前らは良いように使われてるだけなのです…………………。」
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北上「私も………………妹…殺したから……………アンタの気持ち…すごい分かるよ…………。そこを…………弱い所を狙って近づいてきたんだよ深海どもは…………………。」
阿武隈「黙れぇぇぇぇッッッッッッッッ!!!!」
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叢雲「最後の忠告よ。こっちに来なさい吹雪。わたしたちとアンタらの力があれば世の中を正しい方向に導けるわ。」
吹雪「こと………………わる………………!!!!」
話を聞き吹雪たちは涙を流していた。
そんな辛い過去があったのかと。
そして弱っているところを良いように利用されているのかと。
しかし、叢雲はそれを聞き何かを決意したかのように目を閉じた。
叢雲「…………残念ね………。みんな。最大艦力で殺すわよ。」
全員が改二に超化。
高く飛び上がり、それぞれ目掛け技を繰り出す。
叢雲「諳絶葬送 ( なだそうそう)!!!!!!!」
暁「雷迅紅暴楼 (らいじんぐぼうる)!!!!!!!」
夕月「麝貫羅颯 (じゃがんらさつ)!!!!!!」
夏潮「夏死囐 (なつしがつ)!!!!!!」
東雲「綱昴血鬽 (こうこうけつみ)!!!!!!」
迫り来る5人。
吹雪たちはそれを眺めることしか出来なかった。
そして……………
ズドォォォォォォォォォァッッッッッッッッ!!!!!
吹雪「ゴブァッッッッッッッッ!!!!」
心臓を槍で貫かれる吹雪。
電たちも心臓を抉られ弾き飛ばされた。
数十メートル吹き飛ぶ。
途中岩盤や大木を巻き込みながら転がり、崖の手前で血だらけで止まった。
他のメンバーたちも全員が技を喰らい、とどめを刺されていた。
叢雲は槍に付着した血を払い落とす。
檻巌鎮守府
吹雪・電・睦月・初雪・雪風・北上・神通・加古・加賀・赤城・龍驤・長門・比叡
全員心肺停止及び心臓破裂により、死亡。