チュンチュン…………………
小鳥が鳴いている。
いや、もしかしたら泣いているのかもしれない。
心に大きな傷を負ったのは生きとし生けるもの、日本国という日出処国に住む全てのものであろう。
神通「………………………胸糞悪ぃ三が日だな……。」
平成12年。2000年1月3日。
瓦礫の山をどかしつつ呟く。
周りは絶望の2文字以外に例えようのない惨状。
嫌なことがあれば叫び倒し酒を飲む神通でさえ、なんの気力も湧かない心情であった。
空を見上げる。
北上と阿武隈が跳びながら食料やブランケット、様々な必需品を運んでいる。
多摩が結界をギリギリのところまで張っていてくれたおかげでここ高尾山薬王院付近はダメージはあるにはあるものの、そこまで被害は酷くない。
しかしそのせいで多摩は寿命が一気に縮み、今は横になっている。
周りの僧と尼が気を送っているものの、あまり芳しくない。
夕張「………………でも私たちがしっかりしないと……。誰も…………心の支えが無くなっちゃう…。」
神通「……………おう。」
天龍「おーい!!!2人ともこっち手伝ってくれーー!!!!!」
夕張「はい!!!今行きます!!!!………行こう、神通。」
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泣きながら手を動かす長門。
ぐったりとした子供を抱き抱えている。
その子はもう、亡くなっていた。
長門の肩に手を置く金剛。
龍驤と大鳳は艦載機を飛ばし、市や役所、住民の情報交換などを承っていた。
艦載機の妖精さんも真剣な顔で汗を流しながら働いている。
かなりキツイのであろうが、そんな事を言っている場合ではない。
龍驤「ごめんな………妖精ちゃん…。」
加賀と赤城も合わせて3つの艦載機で食料や水を運んでもらっていた。
それに赤城と信濃は人一倍瓦礫や車の残骸などをどかし働いていた。
加賀「赤城さん………………。」
赤城「……………………。」
ガラガラ……ガラガラ………
信濃「私たちは……………お腹空いてるんです…。」
加賀「えっ?」
赤城「でも私たちだけで食べたいんじゃないんです。私、もちろんご飯食べるのは大好きなんです。でも本当は皆と…大事な家族と食べるのが好きなんです…。」
信濃「でも……その大事な人と会えない人達がいるんじゃあ………………食べれません……。」
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得意の土遁で泥やドブを片付ける利根。
ふんどしも尻も汚れているがなんのそのだ。
最上は集会所であったかいココアを被災者に配っていた。
加古「何してんだ青葉?」
少し休憩がてら煙草を吸いに簡易ハウスに入る。
青葉はノートパソコンをカタカタと動かしていた。
真剣な顔をしながら画面とにらめっこ。
しかし少し目の下にクマが出来ている。
青葉「ちょっと…………ね………。とある人と連絡を取り合っているんです………。」
加古「男か?」
青葉「えぇ………。」
加古「もしかしてぇ!これかぁ!!?」
ニヤニヤしながら小指を立てる。
少しでもこの空気を壊したくておどけてみせる。
加古も加古で精一杯なのにだ。
静寂が少しだけ続いたので滑ったかと思ったが、青葉の頬は少し赤くなっていた。
青葉「まぁ……………そう…………ですねぇ。」
加古「なぁんだ!!やっぱしそうかよ!!!なんて名前なんだ!!!?」
青葉「福田……福田年春って言います…。ジャーナリストをしてまして…。さっき連絡が入ってて、今から政府…官房長官の記者会見があるみたいでして。」
加古「ジャーナリストかぁ…。すげぇな。確か………今の官房長官は名倉秀幄か。」
コクリと頷きマウスをクリックする。
すると次第に目が大きくなる青葉。
青葉「えっっっ!???!!!!何…………これ…………。」
加古「どうしたんだよ青葉!!!!!!」
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吹雪たちも同様に動いていた。
睦月「原発だっけ?壊れたらしいね…。」ガラガラ
初雪「放射能もダダ漏れだってな。」ドガアッ
雪風「でもでも!黒いフードの深海棲艦が原発付近で見たんですって!そしたら放射能レベル?が一気に下がったらしいです!」
電「………………………。」
そこに数十人の足音が響く。
ザッザッザッザッザッ
吹雪「…………ん?」
電「お前ら……………………。」
あきつ丸「ご無沙汰してるであります。水陸機動連隊第三…………………師団、あきつ丸であります。」ビシッ
鹿島「救助隊か?どこ見ても瓦礫の山だ。大歓迎だぜ。」
あきつ丸「勿論それもさせていただきますであります。でも………………お伝えしたいことがありまして。」
少し話辛そうな顔をしているあきつ丸たち。
鋭い目で見つめる香取と鹿島。
あきつ丸「その前に………テレビはあるでありますか?」
鹿島「あると思うか?」
熊野丸「ラジオなどは?」
香取「ぶっ壊れたよ。だから外界の情報が全く入らん。」
神州丸「わかったであります。こんな事を聞いて申し訳ございません。」
汗を垂らしつつ、あきつ丸が重い口を開く。
あきつ丸「単刀直入に言うであります。我々大多数の自衛隊と艦娘が政府と手を切りました。」
一同「!!???!!!!」
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夕月「政府と!?!何で??!!!」
あきつ丸「これを見て欲しいのであります。」
鞄から取りだしたのはノートパソコン。
そして政府の管轄のウェブサイトに繋ぎ、動画を再生させる。
神州丸「その前に軽く最初の経緯を述べさせてもらうであります。」
年末前に起きた日本全土大震災の後に当たり前であるが自衛隊は各地方自治体と協力しつつ救助活動に当たった。
現在自衛隊は陸が425032人、海が180235人所属しており艦娘を含めると100万人近く居ることになる。
最初こそ多額の税金を自衛隊に注ぎ、上手いこと回っていた。しかし、多額の金を横領や虚偽報告などの水増しなどが増え少しづつ経費は削減されていった。
そのせいか大きな場所を除き、各鎮守府の維持が難しく杜撰で鎮守府と呼ぶには機能していない場所もちらほらあった。
そして今回、官房長官がなんと80%もコストカットをすると宣言。
動画からは声高らかにベラベラと能書きを垂れる名倉官房長官が。
話を聞いている記者からはヤジの嵐である。
吹雪「これから…………あんたらどうすんだ…?」
あきつ丸「………………………復興支援をしつつ、民間の防衛部隊としてやっていくしかないであります…。」
熊野丸「で、極めつけがこれだ。」
再度一同がパソコンの画面に集中する。
名倉官房長官は何か注射器のようなものを手に取っている。
睦月「なにこれ?」
熊野丸「ビックリすんぜ。聞いててくれ。」
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名倉官房長官「質疑応答はまた後ほど。今回お伝えしたいのは経費削減よりもこちらの方でございます。」
「なんだそれはっっっーー!!!!」
「それよりもコストカットについて詳しく説明しろおおおぉ!!!!!」
「そっちの方が大事だろうがぁぁぁぁッッッッッッ!!」
名倉官房長官「えー、お静かに。出来ないのであればご退場願います。こちらの注射器…ただの注射器ではございません。ワクチンであります。」
名倉官房長官「1978年に突如として現れた深海棲艦は勢力が弱まるばかりか強くなっていく…そして深海棲艦の血や内臓は有害物質で出来ており毒でございます。」
名倉官房長官「そしてこの有害物質はウイルスで出来ており、人や動物などの体に入ると感染してしまうと言うことがわかったのです。」
名倉官房長官「そしてアメリカのマインテックポコンチ社が開発したこのワクチン…これを日本の国民たちに打たせたいのです。経費削減はこのワクチンの開発費用に使われたと思ってください。」
またヤジが飛び交う。
静粛にするよう呼びかけるも記者の顔ぶれはどれもこれも政府しかり、名倉官房長官の言葉を一切信用していないといった具合だ。
名倉官房長官「深海棲艦は全世界に出現し猛威を奮っておりますが、とくに日本が顕著に叩かれています。その次にオーストラリア、ニュージーランド、海に囲まれている国ばかりですね。」
名倉官房長官「そして深海棲艦の二次被害である感染、この被害を打開するべくワクチンを開発したということであります。」
名倉官房長官「このワクチンの中身の説明は…………」
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吹雪「深海棲艦の血って………ウイルス入ってんのか…?」
香取「知らん。でもワクチンってことはあの注射器の中に深海棲艦の血が入ってるってことだろ。普通の人間が耐えれる訳がねぇ。」
鹿島「パンデミックでも起こす気か…。メリケンの政府に騙されてるのか…はたまた政府が深解側に着いたのか…どっちにしろもう信用出来ねぇな。」
静かにパソコンを閉じ、鞄にしまうあきつ丸。
恐らく全世界の政府が同じことをするだろうと憶測ではあるものの考えており、各国の軍の動きがどうでるかが気になるところではある。
因みに政府側に残っている自衛隊のほとんどはコマンド・アーミーズである。
あきつ丸「そして………極めつけがこれであります。」
1枚の写真を取り出す。
鹿島と香取に見せ、確認した後吹雪たちにも写真をまわす。
あきつ丸「突然現れた歪な塔のようなものが4つ現れたのであります。中を確認したいところではありますが、何かバリヤーのようなものが覆ってあり、近づけないのであります。」
鹿島「……………………。」
隊員「この後、自衛隊のミサイル攻撃が行われる予定であります。それで無理ならば上空からグレネードを落とす計画です。」
鹿島「辞めとけ。ガソリンと弾の無駄だ。」
隊員「えっ。」
重い腰を持ち上げ、ゆっくりと歩きながら説明をする鹿島。
鹿島「ありゃ蜂の巣みてぇなもんだ。これからわんさか出てくるぞ。」
あきつ丸「という事はあの中に深海棲艦が?」
香取「いや、まだ中には居ねぇ。」
神州丸「では製造工場…といった具合でありますか?」
香取「それも違ぇ…。備えてんだ、お盆に。」
あきつ丸たちは不思議そうな顔をしている、
吹雪たちは冷や汗を流す。鹿島たちに聞いていたのだ。
これから起きるであろう惨劇を。
あきつ丸「どういう事でありますか…?」
鹿島「深海酋長……あぁ、深海棲艦の親玉の事な。で…そいつの能力が今まで倒してきた深海棲艦を甦らせるってもんだ。その力が強まるのが今から7ヶ月後。つまりお盆。」
香取「前の大戦の時に地中深くに埋めてたのが、この震災で飛び出したんだろうな。あれが出てくるってこたァ…日本…神々の国が弱ってる証拠だ。今は微力ながら神仏のエネルギーは保たれてるが………許しちまったな。」
鹿島「今の私らの状態考えたら…どうにも出来ねぇな………。」
椅子に座り煙草を吹かす。
どこか目が遠くを見つめているようにも見える。
あきつ丸「えっ?!?!あえ……?!!申し訳ありません…いきなりの話でついていけないであります………深海酋長……?神仏………?」
鹿島「しっかりしろやお前艦娘だろうが。この日出ずる国は神々の島国だ。前の大戦で先代の深海酋長が他の国を先に攻めてたんだが日本に、私らに邪魔だてされて倒された…。死ぬ寸前で息子を産んだ訳だが…。」
香取「で、今回は親と違って先に日本を攻め始めたんだ。上手いこと民衆とかを使って内側から壊し始めたんだろ。」
香取「今回の地震もそうだ。私らの仲間らが少しづつプレートを動かして、小さな地震を慣らして行くことで大きな地震や災害を食い止めようとしてたんだ。これは陰陽師や神主に僧、んで元干支艦である私らがやってた…。でもよ…。」
眉間に皺が寄る香取。
少し怒っているのか、悲しんでいるのか…。
香取「民衆がもっと神仏に感謝して手でも合わせてたらここまでの被害はなかったはずなんだ。欧米や西洋の文化を半端に取り入れて、野山離れて神仏の事ほったらかしにして…まるで自分だけで生きてきたかのような驕った振る舞いをしてた人間たちの責任でもあるんだぞ。」
あきつ丸「………………はぁ……。」
鹿島「チッ…、んな顔されるってわかってるから言いたく無かったんだ………。まぁ、要するになんも出来ねぇよ。今のところは。」
あきつ丸たちが少し慌てながらどうにか出来ないものかと2人に詰め寄る。
しかし2人は涼しい顔をしつつ、机の椅子を反対側に座り背もたれに腕と顎を乗せる。
今は深海側のほうが有利だと…………。
お盆までに一気に現存の勢力でその深海酋長たちが攻め込んでくるのではないかと隊員たちが疑問を持つが、脳筋の先代とは違い今の酋長は頭が良く計算高いのでそんな冒険はしないだろうと2人は考えていた。
完璧に叩ける状態に持っていくだろうと。
それに微力ながらまだ日本には神仏の気が流れている。
まだ希望を、平和を強く望んでいる人間たちがいる証拠である。
そしてそれを壊すために幹部たちが数人程度襲ってくるかもしれない。
そう告げると2人は目をつぶった。
あきつ丸「……………………おふたりは……ご協力くださるんですか…?」
鹿島「するにはするけど、私らはもうほとんど寿命が残ってねぇ。ソイツらに言うてくれや。」
目線は吹雪たち10人。
こんな状況にも関わらず、人命救助及び復興支援をしつつ更に今よりも強くならなければならない。
憶測ではあるものの、最終決戦は7ヶ月後。
その間に幹部が来るであろうと予想。
あまりにも重い状況ではあるものの、吹雪たち干支鎮守府の者たちには戦う選択肢しか用意されていない。
下唇を噛み汗を流すも、覚悟を決めるのであった。