星の旅 作:TT
さて、これはジョルノとの初対面のときのDIOのお話である。そして、ジョルノはその際のDIOの悪戦苦闘をジョルノは全く知らないのだということをここに繰り返して明記しておく。
この物語におけるDIOは、今生ではそれなりに我が子を気にかけることにしようと決めていた(決してジョナサンにぶん殴られたからではない。ないったらない)。そして、実際DIOはDIOなりに(それまで一回も会っていなかったとしても)可愛がっているつもりだったので、その実の我が子が自分の顔を見た瞬間泣き出した衝撃といったらなかった。ジョルノ様は大変大人しいお子さまでいらっしゃいますよとか言っていたテレンスに殺意を覚えた程度の衝撃だった。
とりあえずガキは抱っこだ抱っこ、とプランクトン並みの微かな知識は持ち合わせていたので、泣きわめくジョルノを抱き上げてみたDIOだったが、ジョルノは一向に泣き止まない。むしろ人肌を感じて余計に酷く泣き出した。
ジョルノの泣き声を聞き付けたテレンスが駆け込んできて目を丸くした。
「DIO様!?何事です………ああああジョルノ様!?」
「テレンスゥウウウ!貴様何が大人しいだこの有り様ではないか!」
「お言葉ですがジョルノ様は今までこんなに激しく泣かれたことはございません!」
「WRYYYYYYY!!?」
「ああもっと手のひらをお尻の下にいれるように優しく抱いて差し上げて下さい!DIO様、一体ジョルノ様に何をなさったのですか!?」
「何もしていない!」
珍しいくらいディオは慌てていた。主のテンションにあわせてテレンスもちょっとおかしくなっていた。
「テレンス!ジョルノをどうにかしろ!」
「まずベッドにおろしてさしあげて下さい!」
「おりん!はなさんぞこやつ!」
重ねていうがこの時のジョルノの記憶はないので、当然ジョルノは自分が全身全霊でディオにしがみついていたことも知らない。思い出したらたぶんジョルノはもう父親に堂々と会えないかもしれない。
あたふたと非常にぎこちない仕草でディオはベッドにジョルノを横たえたものの、肝心のジョルノがディオにしがみついたままなのでディオは身動きがとれなくなっていた。
「テ、テレンスゥウウウ!」
「でしたらこちらへ!ジョルノ様ーテレンスですよー!」
「うわぁああああああああああああ」
もう収拾がつかない。
ディオがテレンスにジョルノを渡そうとするがやっぱりジョルノははがれず泣くばかりで、今までジョルノの面倒を逐一見てきたテレンスまで泣きそうになっていた。
「ええい鬱陶しい!帝王の息子が泣きわめくな!」
「びぇぇええええええええええええ」
「ジョルノ様ぁあああああああああ」
「『ザ・ワール……」
「それはなりませんっ!ジョルノ様が傷つきでもしたらどうなさるのです!?」
「何故そこは反応が早いのだ……なんとかしろテレンス!」
「そうだ、お外を見せて差し上げるのは…!今館内の治安は小康状態で落ち着いておりましたよね!?」
「…仕方あるまい!」
身を翻してDIOは部屋を横切った。ジョルノのために誂えさせたこの部屋は、床は柔らかい絨毯張りで壁もまたクッション張りの防音仕様、子どもが喜びそうなおもちゃや仕掛けをたくさん仕込んであり、それでいて危険な目にだけは絶対あわさせないように作り上げられていた。全てはジョルノのためだ。ここはジョルノを護るシェルターで、ジョルノを育てるゆりかごだった。
だから、何があっても、ジョルノがある程度育つまではこの部屋から出さぬと決めていたのだが…、此度はどうしようもない、とDIOは腹をくくった。
扉に近づく。ジョルノを抱いた手を片方放して、ドアノブに手をかけて、
「やぁあああああああああああああああ!!!」
途端、ジョルノは今まで以上に泣き叫んだ。
ドアから手を離したのがまずかったのか、それとも外に出るのが嫌なのか。
「テレンスッ!」
「はっ!」
テレンスが慌てて駆け寄って、扉を開いた。その途端、泣き声が激化する。閉じる。少し泣き声のボリュームが減った。開ける。ボリュームが上がる。
最後にテレンスはそっとドアを閉じた。
「……ひょっとして、箱入り息子に育てすぎましたかね」
DIOとテレンスは、しばし呆然と立ち尽くした。