星の旅 作:TT
「ああ、徐倫…君は今日も美しい…」
ナルシソ・アナスイは、今生においても空条徐倫ことジョリーン・ジョースターにご執心だった。このアメリカにいればもしかしたら出会えるかも、と思っていたのが、本当にジョリーンが道の向こうを通りすがっていって、アナスイは神に感謝したものだ。もしも彼女に会えたとき、殺しをしていたのでは結婚できないもしれない、と思って今生では誰も分解していなかった自分を褒めたくなったくらいだ。
「あのさぁ、おまえ、いつになったら徐倫と会うつもりなわけ?」
そう言ったのはエルメェス・コステロで、彼女もまた前と同じくアメリカにて生を受けていた。彼女の場合、今生では姉は死ぬことはなく、それでも料理店を経営していることには変わりはなくて、そしてエルメェスは今度こそは陸上を続けたかった。ただ、今生の家もまた大変なことも理解していて、エルメェスは一つの約束を姉と取り決めた。
すなわち、負けない。
エルメェスは、一度でも陸上競技の大会で一位以外をとったなら、陸上をやめて料理店を手伝うという約束をしたのだった。そして、その約束はまだ続いていて、今のところエルメェスは誰にも負けていない。次の世界陸上では一位をとるのではないか、と有望されている選手で、スポンサーもつくほどになっていた。それほどまでに有名になっていたからジョリーンがかつての友の存在に気づかない訳もなくて、エルメェスとジョリーンは既に再会していた。アナスイもまたニアミスはしているし、ストーカーまがいのことを繰り返しているくせに会おうとはしない。エルメェスが腹を立てているのはそこだった。
「だが、俺は前、彼女を守り切ることができなかった…彼女に会う資格も、求婚することもできない……」
「いやもうこの際だから求婚云々はつっこまねぇけどよ、それを言うならあたしだって死んでんだ。徐倫はそうやってうじうじしてる男のほうが嫌いだと思うぜ」
「ああ、徐倫……」
「駄目だ聞いてない…」
やれやれ、と肩をすくめたエルメェスは席をたってどこかにいってしまった。
アナスイは相変わらず徐倫へのストーカーを続けた。電柱の影、木の陰、建物の影から徐倫を見守り続けるその姿勢はもういっそあっぱれといっていいくらいの根性だった。
どこから見れば徐倫を見やすいのかということまで熟知しだしたアナスイが、ある日、いつものように物陰からストーカーをしていた時だった。
「む、ここからでは見づらいな…」
いきなり隣からそんな声がして、アナスイはかなり驚いて隣を見た。となりにいたのは、かなり派手な格好をした金髪の男だった。供を連れていて、供に日傘をささせている。
なんだこいつ、とアナスイは思って、どうやら同じことを相手も思ったようだった。
「なんだ貴様は。…む、そちらの方が見やすそうだな、変われ」
「誰が変わるか、ここは俺が見つけたスポットなんだ。……まさか、貴様も徐倫を…!?」
「徐倫?いや、違う、私が見たいのはそちらではない」
そう言った男の目線は、徐倫の隣に立つ少年に注がれていた。確か、彼の名はジョルノといったはずだ。徐倫の弟である。
「……貴様、ホモセクシャルなのか?」
それもジョルノが対象なら恐らくショタコンに分類されるやつだ。うわー変態だー。アナスイは自分のことを棚に上げてそんなことを思った。
「違うわこの猿め!」
男は声を荒げて反論した。
「……ジョースター家の親戚に当たるのだ、私は!ジョルノの世話をしていたことがあるので、気になって見に来ただけだ!」
「……」
「性的な目で見たことは断じてない!…どうにも嫌われているようだから面と向かって会えないのだ、勘違いするな」
アナスイの冷ややかな目に気づいたのか、男は静かに弁明した。信憑性はかなり薄かったが、ただ、確かに言われてみればジョルノとこの男は似ている気がしないでもない、ような気もした。
「…まぁ、俺の邪魔をしなければなんでもいい」
「貴様がこのDIOを邪魔しているではないか、このたわけ!」
「ならば自分で場所を探せ!俺はこの場所を見つけるのに一週間はかかったんだ!先に来たのも俺だから、お前に譲る気はない!」
なんだこいつは…とDIOは戦いた。なんとなくDIOから漂うカリスマ臭に押される人間の方が多くて、ここまでDIOに興味を持たず臆することなく反論してくる男は珍しかったのだった。
「……貴様、名は」
「ナルシソ・アナスイだ。そして徐倫を傷つける気がないならそっちから見ればいいだろう、さぁ、俺の邪魔をするな」
しっしっ、とアナスイはその男を追い払って、徐倫を見ることに専念した。
そして、何故かその後も、しょっちゅうそのDIOという男と物陰で遭遇することとなったのは余談である。
「私はジョルノを見たいのだ、邪魔をするな!」
「お前が俺の邪魔をするな、俺は徐倫が見たい!」
喧嘩をする二人は、どこか似ていたと後に日傘持ちをしていたテレンスは語った。