星の旅 作:TT
リビングにいくと、リビングの壁には大きな穴が二つ空いていた。
「あっほんとの本気で殴っちゃった…やばいごめんジョリーンジョニィ生きてる!?生きてて!!」
「ディオの野郎と戦った時より威力が増してる…さすがだぜジョースターさん!修行は怠ってなかったんだ!嬢ちゃん坊ちゃん、ご無事ですか!」
どうしてこうなった。本日二度目のそれを思って、やっとジョルノは我に返った。
立て続けの試練はジョルノの得意とするところであったが、さすがにこれはないと首をふった後、ジョルノは改めて駆け出した。
これだけの大穴が二つ。そしてさっきの二人の挙動からするに、ジョナサンが喧嘩したことへのお仕置きだかなんだかをして、それがたぶんものすごくて、ジョリーンとジョニィが二人仲良くブッ飛んでリビングの壁に再び大穴を開けたと、そういうことだろう。
ジョナサンが、何かしらの能力持ちであることは考えないようにした。
庭のど真ん中辺りで倒れている二人をジョナサンが抱え上げた。
「良かった心臓は止まってなかった…これならまだ治せる!」
「勝手に…殺すな……」
「止まってたら大惨事ですよね…喋れるならジョリーンは大丈夫そうですけど、ジョニィは気を失ってますね?ちょっとやばそうだ、ジョナサン、僕が治しますのでそのまま横にして下さい」
「治せるのかい?」
「僕のスタンドは生命を生み出すスタンドです。治せますよ。足は無理でしたけど、怪我なら問題ありません」
ジョルノが腕を伸ばすと、一瞬ジョニィが酷く痙攣して、その次には綺麗に治っていた。
「おお、これはすげぇな!」
「次はジョリーンですね。ちょっと女性にはきついかもしれませんから、逆に気絶してたほうが楽かも」
「は、…ぁ…?」
「治るのは一瞬ですが、部品を埋め込んでるだけなのでものすごく痛いです」
そう言いながらもジョルノは能力を使った。出来るだけ早く治したつもりだが、それでもそこらじゅうが妙な傷つき方をしていたので痛みは相当だったらしい。治った途端にジョリーンが叫んだ。
「痛ってぇええええ!なにこれ!!ジョルノもだけどジョナサンも!」
「ごめんよ、二人共……家族写真が壊れてたの見たら、ちょっと我を忘れちゃって…ついつい本気で殴ってしまったんだ…」
「その本気でって何よ…私ジョニィが家出したときのパンチが一番ブッ飛んでるって思ってたけどあれでも本気じゃなかったわけ?」
「ああ、あの時も結構本気だったけど、今回はちょっと波紋込めちゃったっていうか………。いや、ほんとごめん」
「家族写真ってあれですか家族全員揃った時の…あれってネガどっかにとってありませんしたっけ」
ジョルノはジョナサンが予想以上に怒り狂った訳を理解した。珍しく家族全員とエリナ、スピードワゴンも揃った時に、ちょっと高めの写真屋さんで撮ってもらった時の写真を収めた写真立てが丸ごと破壊されてしまっていたのだ。
「とってなかったんだよ…裏に一緒にしまってあった写真があるんだけど、そっちも破けちゃってて」
「ああ…」
何かを察したようにジョリーンが唸って、申し訳ないとうなだれた。
「ジョルノのスタンドであたし達みたいに直せたりしない?」
「僕の能力は生命限定ですからちょっと…、家もなかなか酷いことになってますし、これ、リサリサ母さんすごく怒るんじゃないですかね」
ジョースター家一怒らせてはいけない人を思い出して兄弟は震えた。そりゃジョナサンだって怖いけど、強いて言うなら全員怒らせると怖いけども。筆頭はリサリサこと一家の母エリザベスである。
前世でもジョージ一世を筆頭にジョナサンジョージ辺りまでは爆発力で済んでいたのが、ブチギレるととんでもないことやらかす一族になったのはもしかしたら彼女の血が入ってからかもしれない。
「……スピードワゴンさん、あたしとジョニィで一生かかってでも金を払うから、家と写真財団の力で復元できたりしない…?」
「可能ですぜ!」
あっさり頷いたスピードワゴンはにっと笑った。
「ただ、俺がやるよりもうちょっと安くすんで、ついでにジョルノ坊ちゃんのお悩みとジョースターさんのお悩み、後、嬢ちゃんがちったぁ納得できるんじゃないかって方法も一緒に思いつきました。聞きますかい?」
気絶したままのジョニィを抱えて、三人は顔を見合わせた。
「是非」
ジョニィが復活して、語りきかせたスピードワゴンの提案はこうだった。ジョースター一族の遠縁に、東方仗助という少年がいる。彼のスタンドは万物を直す力だから、きっと写真も家も元通りに直してくれるだろう。幸い今日本では春休みだから、本人を上手く説得して、旅費をこちらで負担する形にすればきっと来てくれるはずだ、と。その説得にジョルノジョニィジョリーンで向かえばいい。
無事仗助を説得できたら、そのまま三人はエジプトに飛ぶ。
「要するに、会いにこられるのが癪ならこっちから会いに行ってやればいいんじゃねぇかと。ゲロ以下野郎に奇襲をかけるくらいのつもりで行ったらでどうでしょう」
そりゃあ俺だってジョルノを会わせたくねぇけどよ、そう言ってスピードワゴンは頭をかいた。
「本人がもう覚悟決めちまってるなら、もう外野はどうこういったって無駄ってやつさ。ならせめて、ディオの野郎の思い通りにだけは絶対させてやりたくないね」
「ああ、うん。ディオに意趣返しってなかなか新鮮かも」
嬢ちゃんはジョルノを会わせたくないって話でしたが、こうなっちまったら仕方ねぇ、一緒に同行して、ジョリーン嬢ちゃんもディオがどんなやつかっていうのを見極めてくるといいだろう。そして、ディオに会ったら、その後に、イタリアへ行く。
「ジョルノ坊ちゃんはイタリアのギャングだったんでしょう。わりかしね、皆前世で生まれて暮らした地域にまた生まれたり、そこで暮らしてたりするんです。イタリアに行ってみれば、ジョルノ坊ちゃんのお知り合いがいるかもしれない」
会えばわかるかもしれないし、もし、ジョルノ坊ちゃんがわからなかったとしても、相手の方はわかるかもしれない。どちらにせよ、アメリカにいるよりは何かが変わると思います。
「どうでしょう」
「三人だけで送り出すのは心配なんだけど…、仕事の関係があるからなぁ…。うん、行っておいで」
「僕は賛成です。それにほかの二人も賛成してくれるなら、僕も旅費を出しましょう、僕の貯金結構あるんで」
「あたしもいいわ、もう覚悟決めた。全部の元凶ってやつとはずっと会ってみたかったし…ジョルノを一人では会わさせない」
「うっわ金のこと言われると…、あー」
さっきまで乗り気だった様子のジョニィが渋った様子を見せて唸った。
「身体のことで何かご不安でも…?」
「あー、うん、それもあるんだけど……」
ごにょごにょと呟いたジョニィはしばらく迷って、日本までなら、といった。
「日本から僕がそのヒガシカタジョウスケってやつを連れ帰るよ。整備されてる日本ならまだしも、その先ってなると足のこともあるから苦労かけそうだし。…それじゃ駄目か?」
「大丈夫よ」
力強く頷いて、ジョルノは任せて、とジョリーンは言った。
「確か、その東方仗助と同じ街に空条承太郎も住んでるはずだ。徐倫嬢ちゃん、会いたいなら住所を控えておくが」
「お願いするわ」
即答して徐倫は優雅に微笑んだ。
「あのクソ親父にはずっと一言言いたかった」
「空条承太郎?」
ジョルノがひそひそとジョニィに聞くと、ジョニィもひそひそ声で返してきた。
「ジョリーンの前世の父親。なんか、結構色々あったらしいよ。ジョータローってやつはDIOに文句言いにいったときの筆頭戦力だったとか」
「…なんだか、聞いたことがあるような気もしますね。そういえばジョニィ、ジョニィの前世の父親や、奥さんは?もう会ったことあるんですか?」
「父親は……いざこざあったからなぁ、一応和解はしたけどあんまり会いたくないし、今生じゃ気まずすぎて会っても他人のフリしたいね。母さんはちっさい時に死んじゃったから覚えてないし、兄さんは、」
そこでジョニィは息が詰まったような声をした。
「兄さんにも、ちょっと会いたくない。
奥さんは、あれ、」
呆然とジョニィは目を見開いた。
「僕の奥さん、名前なんだったっけ…?」